「新拾遺和歌集」一覧
1912件
| 1 | あけわたる そらにしられて ひさかたの いはとのせきを はるやこゆらむ | 為藤 |
| 2 | あまのとの あくるをみれは はるはけふ かすみとともに たつにそありける | 光厳院 |
| 3 | いつしかと とやまのかすみ たちかへり けふあらたまる はるのあけほの | 定家 |
| 4 | うくひすの さへつるけさの はつねより あらたまりける はるそしらるる | 後嵯峨院 |
| 5 | はるたつと ひかけもそらに しられけり かすみそめたる みよしののやま | 亀山院 |
| 6 | たつひより はなとみよとて よしのやま ゆきのこすゑに はるやきぬらむ | 基俊 |
| 7 | やまさとは つもれるゆきの いつしかと きえぬややかて はるのはつはな | 俊頼(源経信男) |
| 8 | たにのとは ゆきもこほりも とけやらす やまかけさむき はるのあらしに | 為氏 |
| 9 | ときしもあれ みねのかすみは たなひけと なほやまさむし ゆきのむらきえ | 永福門院 |
| 10 | はるのきる かすみのころも なほさむみ もとのゆきけの くもそたちそふ | 実兼 |
| 11 | はるはまた はつせのひはら かすめとも のこるゆきけに さゆるやまかせ | 実教 |
| 12 | あしひきの やまはかすみの あさみとり はるともしらす さゆるそらかな | 覚助法親王 |
| 13 | みよしのの やまのしらゆき きえぬまに ふるさとかけて たつかすみかな | 為定(御子左二条為道男) |
| 14 | みよしのの たきのしらいと はるくれは あはにとけゆく うすこほりかな | 為相 |
| 15 | はるのくる あさけのかせの おとはかは たきついはねも こほりとくらし | 冬平 |
| 16 | はるかせに のさはのこほり かつきえて ふれとたまらぬ みつのあはゆき | 雅経 |
| 17 | そらにのみ ちりてみたるる あはゆきの きえすははなに まかひはてまし | 後宇多院 |
| 18 | はるたちて かせやふきとく けふみれは たきのみをより はなそちりける | 貫之 |
| 19 | ふくかせに さきてはちれと うくひすの しらぬはなみの はなにやあるらむ | 貫之 |
| 20 | こほりとく かせのおとにや ふるすなる たにのうくひす はるをしるらむ | 斉信 |
| 21 | たにちかき やとにきなくや うくひすの さとなれそむる はしめなるらむ | 頼政 |
| 22 | うくひすの たにのといてし あしたより とやまのかすみ たたぬひもなし | 師賢(藤原師信男) |
| 23 | けさみれは みねにかすみは たちにけり たにのしたみつ いまやもるらむ | 忠通 |
| 24 | あさまたき やまのかすみを みわたせは よをさへこめて たちにけるかな | 通俊 |
| 25 | あさひかけ またいてやらぬ あしひきの やまはかすみの いろそうつろふ | 隆祐 |
| 26 | はるのたつ しるしはかりは かすめとも なほゆききえぬ みわのすきむら | 実重(三条公親) |
| 27 | ふしのねの ゆきにははるも しられぬを けふりやそらに かすみそむらむ | 義詮 |
| 28 | ゆきもふり かすみもたてる よしのやま いつかたをかは はるとたのまむ | 能宣 |
| 29 | あつさゆみ はるになるらし かすかやま かすみたなひき みやこはるけし | 赤人 |
| 30 | いそのかみ ふるのやしろの はるのいろに かすみたなひく たかまとのやま | 師頼 |
| 31 | かすかのの かすみのころも やまかせに しのふもちすり みたれてそゆく | 定家 |
| 32 | はしひめの そてのあさしも なほさえて かすみふきこす うちのかはかせ | 俊成女 |
| 33 | たましまの このかはかみも しらなみの しらすかすめる ゆふくれのそら | 知家 |
| 34 | ゆきかへり みつのをかはを さすさをの みなれしあとも かすむはるかな | 為家 |
| 35 | みるめなき ならひしられて はるはなほ かすみにたとる しかのうらなみ | 基忠(鷹司兼平男) |
| 36 | しかのうみの しらゆふはなの なみのうへに かすみをわけて うらかせそふく | 家隆 |
| 37 | もしほやく けふりもなみも うつもれて かすみのみたつ はるのあけほの | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 38 | あかしかた はるこくふねの しまかくれ かすみにきゆる あとのしらなみ | 後鳥羽院 |
| 39 | はるくれは きしうつなみは のとかにて かすみかかれる すみよしのまつ | 越前(嘉陽門院) |
| 40 | いにしへの ねのひのみゆき あとしあれは ふりぬるまつや きみをまつらむ | 良経(九条兼実男) |
| 41 | やまのかひ かすみわたれる あしたより わかなつむへき のへをまつらし | 好忠 |
| 42 | かすみたつ あしたのはらの ゆききえて わかなつむらし はるのさとひと | 尊氏 |
| 43 | しろたへの そてもまかはす ゆききえて わかなつむのは はるめきにけり | 定為 |
| 44 | かすかのは はるめきにけり しらゆきの きえすはありとも わかなつみてむ | 経継 |
| 45 | よをこめて わかなつみにと いそくまに はるかにすきぬ をきのやけはら | 公能 |
| 46 | いつかたに わかなつむらむ あしひきの やまさはみつは なほこほりつつ | 実雄 |
| 47 | たちかへり またきさらきの そらさえて あまきるゆきに かすむやまのは | 為兼 |
| 48 | たちかへり なほはるさむし たにかけや うちいてしなみの またこほるまて | 内経 |
| 49 | うめかかに ゆくてのそても うつるまて やまわけころも はるかせそふく | 為藤 |
| 50 | ひとりぬる くさのまくらの うつりかは かきねのうめの にほひなりけり | 西行 |
| 51 | たちよりて うめのにほひを かりころも そてにうつさむ ひとなとかめそ | 為世(御子左二条為氏男) |
| 52 | つれなくて うめのたちえを すきにしを おもひのほかの ここちこそすれ | 小弁 |
| 53 | はるかせの にほふかたにや たとるらむ うめさくやとを とふひともなし | 為親 |
| 54 | このころは さけるさかさる おしなへて うめかかならぬ はるかせもなし | 尊氏 |
| 55 | うめかかは ねさめのとこに にほひきて まとにかたふく はるのよのつき | 実兼 |
| 56 | ふるさとの のきはのうめよ いくはるの こころをそむる つまとなりけむ | 伏見院 |
| 57 | うきよには よしなきうめの にほひかな いろにこころは そめしとおもふに | 伏見院 |
| 58 | かをたにも あくことかたき うめのはな いかにせよとか いろのそふらむ | 花山院 |
| 59 | うめのはな かたにのこらす ちりにけり うらみてなとか をしまさりけむ | 宇多天皇 |
| 60 | はるさめも ふりかはりゆく あさはのに たつみわこすけ いろもつれなし | 通光 |
| 61 | いたつらに ふりぬとおもひし はるさめの めくみあまねき みよにあひつつ | 家良 |
| 62 | はるさめの なこりのつゆの たまかつら みたれてむすふ あをやきのいと | 俊光 |
| 63 | あさみとり まついろまさる あをやきの いとよりはるは くるにやあるらむ | 匡房 |
| 64 | うちなひき はるさりくれは みちのへに そめてみたるる あをやきのいと | 基良 |
| 65 | さほひめの かすみのそては あをやきの いともておれる ころもなるらし | 公雄 |
| 66 | いけみつに なみはひまなく あらへとも やなきのいとは ほすひともなし | 素性 |
| 67 | はるかせに いけのこほりの とけしより むすひかへたる あをやきのいと | 読人不知 |
| 68 | あさみとり のへのあをやき いててみむ いとをふきくる かせはありやと | 人麿 |
| 69 | はるかすみ たなひくかたの ゆふつくよ きよくてるらむ たかまとのやま | 赤人 |
| 70 | かすむよの つきのかつらも このまより ひかりをはなと うつろひにけり | 為家 |
| 71 | あまのはら ふけゆくそらを なかむれは かすみてすめる はるのよのつき | 家隆 |
| 72 | かすむよは ゆふゐるくもの いつくとも やまのはしらて つきそまたるる | 後光厳院 |
| 73 | はるのよの おほろつきよに かへるかり たのむもとほき あききりのそら | 光厳院 |
| 74 | いつくとも みえこそわかね かりかねの きこゆるそらや なほかすむらむ | 良基(二条道平男) |
| 75 | うらとほく ひかけのこれる ゆふなきに なみまかすみて かへるかりかね | 為道 |
| 76 | おほよとの うらよりをちに ゆくかりも ひとつにかすむ あまのつりふね | 知家 |
| 77 | みつくきの をかのみなとの なみのうへに かすかきすてて かへるかりかね | 素暹 |
| 78 | やまこゆる かりのはかせに あめはれて くもさへかへる あけほののそら | 基家 |
| 79 | われはいさ なれもしらしな はるのかり かへりあふへき あきのたのみは | 伏見院 |
| 80 | なににかは こころもとめむ はなをたに みすててかへる はるのかりかね | 道嗣 |
| 81 | たちかへる くものかよひち よそなから したふもしらし はるのかりかね | 内実 |
| 82 | おもひたつ くものかよひち とほからし あかつきふかく かへるかりかね | 基嗣 |
| 83 | はるきても つれなきはなの ふゆこもり またしとおもへは みねのしらくも | 良経(九条兼実男) |
| 84 | おもかけに こひつつまちし さくらはな さけはたちそふ みねのしらくも | 定家 |
| 85 | やまさくら さきやらぬまは くれことに またてそみける はるのよのつき | 俊成(藤原俊忠男) |
| 86 | くもとのみ みるたにあるを やまさくら いかにかすみの たちへたつらむ | 為遠 |
| 87 | あけわたる かすみのをちは ほのかにて のきのさくらに かせかをるなり | 後伏見院 |
| 88 | まかひこし くもをはよそに ふきなして みねのさくらに にほふはるかせ | 小宰相(土御門院) |
| 89 | いりあひの おとはかすみに うつもれて くもこそかをれ をはつせのやま | 慈円 |
| 90 | さのみやは あさゐるくもの はれさらむ をのへのさくら さかりなるらし | 俊恵 |
| 91 | いまそしる くもにまかひし はなのいろは やまのはとほき よそめなりけり | 崇光院 |
| 92 | たかさこの をのへのくもの いろそへて はなにかさなる やまさくらかな | 為氏 |
| 93 | をちこちの さくらはくもに うつもれて かせのみはなの かににほひつつ | 為明 |
| 94 | やまかせの かすみのころも ふきかへし うらめつらしき はなのいろかな | 道家 |
| 95 | かすみたつ みねのさくらの あさほらけ くれなゐくくる あまのかはなみ | 定家 |
| 96 | あさひかけ うつろふみねの やまさくら そらさへにほふ はなのいろかな | 公宗(西園寺公衡男) |
| 97 | みるままに なほくもふかし さくらさく とやまのはるの あけほののそら | 為定(御子左二条為道男) |
| 98 | ひにそへて たちそかさなる みよしのの よしののやまの はなのしらくも | 讃岐(二条院) |
| 99 | わけゆけは はなにかきりも なかりけり くもをかさぬる みよしののやま | 義詮 |
| 100 | さくらはな いまさかりなり ひさかたの くもにくもそふ かつらきのやま | 為秀 |
| 101 | さきのこす たえまもあらは やまさくら かさねてかかれ みねのしらくも | 慈勝 |
| 102 | みよしのの たかきのさくら さきぬらし そらよりかかる みねのしらくも | 為実(御子左二条為氏男) |
| 103 | あらしふく とほやまさくら にほはすは しらてやなほも くもにまかへむ | 経教 |
| 104 | くもにいる おもかけつらし はなのえに なきてこつたふ はるのうくひす | 実教 |
| 105 | をりわひて かへらむものか かつらきの やまのさくらは くもゐなりとも | 忠見 |
| 106 | はるさめの ひかすふるのの さくらかり ぬれてそかへる はなそめのそて | 性助法親王 |
| 107 | やまひめの かすみのそてや うすからし へたてもはてぬ はなのしらくも | 邦省親王 |
| 108 | をはつせや かすみにまかふ はなのいろを ふしみのくれに たれなかむらむ | 後鳥羽院 |
| 109 | みのうさも なかむるからに わすられて はるのこころそ はなにのとけき | 法守法親王 |
| 110 | けふもまた おほみやひとの さくらはな のとけきはるの かさしにそさす | 為家 |
| 111 | ももしきや みかきかはらの さくらはな はるしたえすは にほはさらめや | 経信 |
| 112 | なれてみし くもゐのはなも よよふりて おもかけかすむ ここのへのはる | 伏見院 |
| 113 | きみゆゑと けふこそみつれ しかのやま かひあるはるに にほふさくらを | 後宇多院 |
| 114 | しかのやま かせをさまれる はるにあひて きみかみゆきを はなもまちけり | 後二条院 |
| 115 | さきちるも しるひともなき やとのはな いつのはるまて みゆきまちけむ | 永福門院 |
| 116 | よよをへて みゆきふりにし やとのはな かはらぬいろも むかしこふらし | 花園院 |
| 117 | あれはてし しかのふるさと きてみれは はるこそはなの みやこなりけれ | 為兼 |
| 118 | みよしのの はなはむかしの はるなから なとふるさとの やまとなりけむ | 為氏 |
| 119 | ふるさとの よしののさくら さきにけり いくよのはるの かたみなるらむ | 実経 |
| 120 | はなのいろの むかしにかへる はるなれは これをみるにも ものおもひもなし | 道家 |
| 121 | つねよりも めつらしきかな しらかはの はなもてはやす はるのみゆきは | 忠通 |
| 122 | そことなき はなのところも やまふかみ そらにしられて にほふはるかせ | 公賢 |
| 123 | みにかへて おもふもくるし さくらはな さかぬみやまに やともとめてむ | 秀能(藤原秀宗男) |
| 124 | たつねてそ はなをもみまし このもとを すみかともせぬ わかみなりせは | 光俊(葉室光親男) |
| 125 | さくをまち ちるををしむに ひかすへて さかりすくなき はなのころかな | 宰相典侍(後宇多院) |
| 126 | くれはてて いろもわかれぬ はなのうへに ほのかにつきの かけそうつろふ | 光厳院 |
| 127 | さくらさく たかねをかけて いてにけり はなのかかみの はるのよのつき | 公雄 |
| 128 | あかすみる はなのにほひも ふかきよの くもゐにかすむ はるのつきかけ | 為家 |
| 129 | あかすみる やまさくらとの あけほのに なほあまりある ありあけのかけ | 後伏見院 |
| 130 | あたらよの ありあけのつきに ひとはこて やとのさくらに はるかせそふく | 経継 |
| 131 | たつたやま ゆふつけとりの おのかねを よふかきはなの いろにまつかな | 為藤 |
| 132 | としをへて をりけるひとも とはなくに はるをすくさぬ はなをみるかな | 中務 |
| 133 | またみせむ ひとしなけれは さくらはな いまひとえたを をらすなりぬる | 道済 |
| 134 | ひとえたの にほひはあかす かみかきや はなのこすゑを ゆきてなかめむ | 実定 |
| 135 | ひとえたを あかすおもはは さくらはな こすゑにのこる ほとをすくすな | 読人不知 |
| 136 | きてみよと さらにもいはし やまさくら のこりゆかしき ほとにやはあらぬ | 隆信 |
| 137 | こころをは まつさきたてつ やまさくら たつねゆくまも めかれすなとて | 寂蓮 |
| 138 | いへつとに をりつるはなも いたつらに かへさわするる やまさくらかな | 為明 |
| 139 | やまもりも いかかいふらむ いたつらに かせにまかする みねのさくらを | 花山院 |
| 140 | さけはかつ うつろふいろを あたなりと みてこそはなに かせはふくらめ | 小宰相(土御門院) |
| 141 | ちるはなの こころもしらて はるかせの さそふをよそに うらみけるかな | 道嗣 |
| 142 | ふくかせの えたをならさぬ はるたにも なにをかことに はなのちるらむ | 後光厳院 |
| 143 | はなのかを さそはさりせは ふくかせを つらしとのみや おもひはてまし | 冬平 |
| 144 | ふくとしも よそにはみえて もろくちる はなにしらるる にはのはるかせ | 内侍(永福門院) |
| 145 | やまさくら うつろふいろの はなのかに かすみのそても にほふはるかせ | 為世(御子左二条為氏男) |
| 146 | よしのやま ふもとのさくら ちりぬらし たちものほらて きゆるしらくも | 重之 |
| 147 | あけわたる とやまのこすゑ ほのみえて はなにわかるる みねのよこくも | 公忠(藤原実忠男) |
| 148 | はるのよは あけゆくかねの ひひきまて はなにかすめる をはつせのやま | 忠房親王 |
| 149 | けさはまた くれはとたのむ かけもなし さくらにくもる よものやまかせ | 通光 |
| 150 | たちかへる こころそつらき さくらはな ちるをはみしと おもひしものを | 俊頼(源経信男) |
| 151 | おのつから ちるはならひの はなになほ うらみをそへて はるかせそふく | 有房(六条通有男) |
| 152 | いささくら ちるをつらさに いひなさて こすゑのほかの さかりともみむ | 基任 |
| 153 | こすゑより ちりかふはなを さきたてて かせのしたゆく しかのやまみち | 新宰相(伏見院) |
| 154 | そこきよき なかれたえせぬ みつのおもに はなのにほひを うつしてそみる | 読人不知 |
| 155 | なかれては いつくにはるの とまるらむ はなちりかかる やまかはのみつ | 崇光院 |
| 156 | よしのかは はなのしらなみ なかるめり ふきにけらしな やまおろしのかせ | 教長 |
| 157 | いけみつに はなのにしきを うつしては なみのあやをや たちかさぬらむ | 忠通 |
| 158 | くやしくそ うつろふはなを たをりつる あやなくそての ゆきとふりけり | 後二条院 |
| 159 | ちりつもる はなのしらゆき あともなし さかりまてとや ひともとひけむ | 実継 |
| 160 | ゆきとふる はなにしをりも うつもれて またふみまよふ はるのみやまち | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 161 | ふきみたる はなのしらゆき かきくれて あらしにまよふ はるのやまみち | 光厳院 |
| 162 | またさそふ このしたかせに かつきえて ふるとしもなき はなのしらゆき | 道性 |
| 163 | これもまた ありあけのかけと みゆるかな よしののやまの はなのしらゆき | 後嵯峨院 |
| 164 | たつねつつ けふみさりせは さくらはな ちりにけりとや よそにきかまし | 長実 |
| 165 | はるかすみ たなひくやまの さくらはな はやくみてまし ちりすきにけり | 人麿 |
| 166 | あすかかせ あすもふきなは たをやめの かさしのさくら ちりかすきなむ | 経継 |
| 167 | あかさりし こころにはるや とまるらむ なほおもかけの さらぬはなかな | 仲正 |
| 168 | としをへて わかみはあらす なりゆけと はなのすかたは かはらさりけり | 清輔 |
| 169 | いたつらに さきてちりぬる さくらはな むかしのはるの しるしなりけり | 具平親王 |
| 170 | やまたかみ さこそあらしは さそふとも あまりなるまて ちるさくらかな | 公相 |
| 171 | ちりまかふ はなはころもに かかれとも みなせをそおもふ つきのいるまは | 忠岑 |
| 172 | みなそこの かけもうかへは かかりひの あまたにみゆる はるのよひかな | 躬恒 |
| 173 | ちらぬまに ゆきてをみはや いにしへの いろはかはらし ゐてのやまふき | 実氏 |
| 174 | いくはるに ゐてのしたおひ めくりあひて さくやまふきの はなをみつらむ | 国冬 |
| 175 | よしのかは きしうつなみの たかけれは さけるやまふき ちらまくもをし | 良基(二条道平男) |
| 176 | かはかせは いかにふくとも やまふきの ちりゆくみつを せきやとめまし | 順 |
| 177 | かけうつす ゐてのたまかは そこきよみ やへにやへそふ やまふきのはな | 俊成(藤原俊忠男) |
| 178 | そこきよき ゐてのかはへに かけみえて いまさかりなり やまふきのはな | 長能 |
| 179 | ちりぬれは くやしきものを おほゐかは きしのやまふき けふさかりなり | 季綱 |
| 180 | なかれゆく かはせのみつに かけみえて ちらぬもうかふ やまふきのはな | 基氏(足利尊氏男) |
| 181 | やまふきの はなのかかみと なるみつに はるのひかすも うつるとそみる | 覚誉法親王 |
| 182 | ちりはつる やまふきのせに ゆくはるの はなにさをさす うちのかはをさ | 公経(藤原実宗男) |
| 183 | やまたかみ まつにかかれる ふちのはな そらよりおつる なみかとそみる | 道済 |
| 184 | ふちのはな あたにちりなは ときはなる まつにかかれる かひやなからむ | 貫之 |
| 185 | なにゆゑに なほしたふらむ はなとりの あとなきのちの はるのわかれち | 実教 |
| 186 | はなゆゑに あかぬわかれは ならひけむ おもひしらすも かへるはるかな | 丹後(宜秋門院) |
| 187 | うつりゆく つきひもしらぬ やまさとは はなをかきりに はるそくれぬる | 頓阿 |
| 188 | はなもちり とりものこらす ものことに またあらたまる はるのくれかな | 為藤 |
| 189 | はつせやま をのへのはなは ちりはてて いりあひのかねに はるそくれぬる | 尊円法親王 |
| 190 | はなはみな ちりはてにけり いまいくか ひかすはかりの はるをしたはむ | 尊氏 |
| 191 | すかのねの なかなかしひも いつのまに つもりてやすく はるはくるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
| 192 | をしむとて くるるひかすの ととまらは なほいかはかり はるをしたはむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 193 | みやひとの そてつきころも けふかへて なつきにけらし たかまとのやま | 基家 |
| 194 | きのふにも そらはかはらて もろひとの ころものいろに なつはきにけり | 尊氏 |
| 195 | けふもなほ かすむとやまの あさほらけ きのふのはるの おもかけそたつ | 崇光院 |
| 196 | なつころも たちかへてしも わすれぬは わかれしはるの はなそめのそて | 進子内親王 |
| 197 | なつころも はるにおくれて さくはなの かをたににほへ おなしかたみに | 家隆 |
| 198 | うくひすの わすれかたみの こゑはあれと はなはあとなき なつこたちかな | 光厳院 |
| 199 | はなさかぬ こすゑとみしは よしのやま はるにおくるる さくらなりけり | 読人不知 |
| 200 | なつあさき あをはのやまの あさほらけ はなにかをりし はるそわすれぬ | 為子(従二位) |
| 201 | あをはのみ しけりにけりな かたをかの こすゑははなの かけとみしまに | 為藤 |
| 202 | わかれての のちしのへとや ゆくはるの ひかすにはなの さきあまるらむ | 家良 |
| 203 | わかそてに かみはゆるさぬ あふひくさ こころのほかに かけてみるかな | 後京極院 |
| 204 | もろかつら かかるためしは あらしかし けふふたはなる ちよをそふれは | 兵衛(上西門院) |
| 205 | ふたはなる ちとせをそふる もろかつら しめのうちには ためしにそひく | 安芸(崇徳院) |
| 206 | わすれすよ いのるみやまの あふひくさ かけしむかしは とほさかれとも | 宰相典侍(後宇多院) |
| 207 | ほとときす なくへきころも あやにくに まてはやしのふ はつねなるらむ | 尊道法親王 |
| 208 | なへてよに またるるころの ほとときす さそしのひねは もらしかぬらむ | 為明 |
| 209 | しのひねと おもふものから ほとときす ききてはひとに まつかたるかな | 一条(昭慶門院) |
| 210 | ひとつてと いはぬはかりそ ほとときす きくともなくて すきぬなるかな | 顕輔 |
| 211 | さたかなる ひとつてよりは ほとときす たとるはかりの ひとこゑもかな | 良基(二条道平男) |
| 212 | まちかねて ややふけにける うたたねの ゆめちにかよふ ほとときすかな | 実房 |
| 213 | やよやなけ ありあけのそらの ほとときす こゑをしむへき つきのかけかは | 行家(藤原知家男) |
| 214 | あくるよの つきかけしたふ ほとときす こゑさへくもの いつくなるらむ | 為嗣 |
| 215 | つきをたに あかすおもひて ねぬものを ほとときすさへ なきわたるかな | 貫之 |
| 216 | ひとしれぬ おもひやしけき ほとときす なつのよをしも なきあかすらむ | 読人不知 |
| 217 | つれなさの たくひならしと ありあけの つきにしもなく ほとときすかな | 実兼 |
| 218 | あかつきと おもはてしもや ほとときす またなかそらの つきになくらむ | 順徳院 |
| 219 | やまのはの つきになくよの ほとときす またれしよりも いこそねられね | 少将内侍(後深草院) |
| 220 | ほとときす なきてすきゆく やまのはに いまひとこゑと つきそのこれる | 浄弁 |
| 221 | ほとときす まつよひすきて やまのはに いさよふつきの かけになくなり | 公蔭 |
| 222 | あかつきの おもひをそへて ほとときす なといひしらぬ そらになくらむ | 大弐(安喜門院) |
| 223 | さのみやは こころあるへき ほとときす ねさめのそらに ひとこゑもかな | 後鳥羽院 |
| 224 | きくままに ほのかになりぬ ほとときす くものよそにや とほさかるらむ | 為教 |
| 225 | ほとときす ほのかになのる ひとこゑの あかてわかるる みねのよこくも | 忠季(藤原公蔭男) |
| 226 | むらくもの たなひくそらの ほとときす たえたえにこそ こゑもきこゆれ | 仲綱 |
| 227 | さよふけて ねさめてきけは ほとときす なくなるこゑや いつこなるらむ | 道信 |
| 228 | はしひめの まつよふけてや ほとときす まきのをやまに はつねなくらむ | 有光 |
| 229 | ほとときす やまのしつくに たちぬれて まつとはしるや あかつきのこゑ | 定家 |
| 230 | つのくにの いくたのもりの ほとときす おのれすますは あきそとはまし | 定家 |
| 231 | ほとときす きなくをきけは おほあらきの もりこそなつの やとりなるらし | 信明 |
| 232 | よしさらは こころつくさて ほとときす おのかさつきの ころやまたまし | 頼重 |
| 233 | しはしたに かたらははこそ ほとときす こころつくしの ほともうらみめ | 定為 |
| 234 | みやこひと さこそまつとも ほとときす おなしみやまの ともなわすれそ | 花園院 |
| 235 | あかすなほ しはしかたらへ ほとときす いかにまたれし はつねとかしる | 後光厳院 |
| 236 | うちしのひ ことかたらはむ ほとときす あすをあやめの ねにはたつとも | 延光 |
| 237 | あやめくさ さつきのけふの ほとときす そてにはかけぬ ねをやそふらむ | 成久 |
| 238 | ほとときす おのかさつきの ときしらは あやめかりふく やとになかなむ | 経通(一条内経男) |
| 239 | おしなへて しけるのさはの なつくさに しめひきわけて さなへとるなり | 氏久 |
| 240 | けふもまた うらかせあれて みなとたに つりせぬあまや さなへとるらむ | 宣時(北条) |
| 241 | さととほき やまたのさなへ かへるさを いそかてとるや いそくなるらむ | 国冬 |
| 242 | さみたれの はるるをひまと をやまたに このゆふくれや さなへとるらむ | 邦省親王 |
| 243 | おほあらきの もりのうきたの さみたれに そてほしあへす さなへとるなり | 雅朝 |
| 244 | やまかけや たこのをかさを ふくかせも すすしきくれに さなへとるなり | 後二条院 |
| 245 | かせにちる はなたちはなを そてにうけて きみかためにと おもひけるかな | 赤人 |
| 246 | たかそての なこりをとめて たちはなの むかしかはらぬ かににほふらむ | 俊定(藤原経俊男) |
| 247 | そてふれて みはしにちかく たちはなの にほひもいまは むかしなりけり | 公清 |
| 248 | しのふるも とほからぬみの むかしかな はなたちはなの ちかきまもりは | 実継 |
| 249 | こころには ちかきまもりの たちはなの たちなれしよそ とほさかりゆく | 光厳院 |
| 250 | たちはなの そてのかはかり むかしにて うつりにけりな ふるきみやこは | 定家 |
| 251 | ふくかせに むかしをのみや しのふらむ くにのみやこに のこるたちはな | 土御門院 |
| 252 | いつまてか われもしのはむ たちはなの したふくかせに のこるむかしを | 御匣(式乾門院) |
| 253 | むらさめの なこりのつゆや こほるらむ かせにたまちる のきのたちはな | 雅孝 |
| 254 | おくつゆも むかしのそての なこりかは しのふくさおふる のきのたちはな | 為信 |
| 255 | ほとときす たれにむかしを しのへとて さのみおいその もりになくらむ | 氏村 |
| 256 | かくはかり つれなきものを ほとときす なくやさつきと たれかいひけむ | 直義 |
| 257 | うきくもの みねたちまよふ むらさめに さそはれいつる やまほとときす | 実氏 |
| 258 | つきかけは おもひたえたる さみたれの くもよりいつる ほとときすかな | 宮内卿(後鳥羽院) |
| 259 | さみたれの ふるえのむらの とまやかた のきまてかかる たこのうらなみ | 定円(葉室光俊男) |
| 260 | さみたれは いりえのまこも かりにこし わたりもみえす なりにけるかな | 河内(前斎宮) |
| 261 | けふみれは かはなみたかし みよしのの むつたのよとの さみたれのころ | 義詮 |
| 262 | さみたれに やそうちかはを みわたせは あしろやいつく せせのうもれき | 信実 |
| 263 | くもくらき まきのをやまの さみたれに やそうちかはは みつまさるらし | 冬平 |
| 264 | さみたれの ふるのたかはし たかしとも みかさまさりて みえぬころかな | 基任 |
| 265 | なとりかは せせのうもれき うきしつみ あらはれてゆく さみたれのころ | 為定(御子左二条為道男) |
| 266 | はれやらて ふるさみたれに あすかかは ふちはせになる ひまやなからむ | 具行 |
| 267 | ふちはせに かはるならひも あすかかは きこえぬみよの さみたれのころ | 内実 |
| 268 | さみたれの くものとたえの ゆふひかけ さすかはれまと みゆるそらかな | 通相 |
| 269 | さしもくさ さしもひまなき さみたれに いふきのたけの なほやもゆらむ | 家良 |
| 270 | さみたれに ふしのなるさは みつこえて おとやけふりに たちまさるらむ | 慈円 |
| 271 | ときしらぬ やまほとときす さつきまて ゆきにやふしの ねををしむらむ | 行氏(祝部行言男) |
| 272 | あやにくに はつねまたれし ほとときす さつきはおのか ときとなくなり | 為氏 |
| 273 | あやにくに きくへきつきは かさなれと やまほとときす おとつれもせす | 顕仲(源) |
| 274 | さつきやま ゆすゑふりたて ともすひに しかやはかなく めをあはすらむ | 崇徳院 |
| 275 | ともしする さつをのまゆみ はるはると かへるやまちの すゑそあけゆく | 基成 |
| 276 | ともしすと いりにしやまの ふかけれは あけてもかへる みちやたとらむ | 為藤 |
| 277 | ともしすと つゆわけころも たちぬれて こよひもあかす みやきののはら | 基氏(足利尊氏男) |
| 278 | くるるより つゆとみたれて なつくさの しけみにしけく とふほたるかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 279 | いしはしる たきのしらいと よるよるは たまぬきちらし とふほたるかな | 盛徳 |
| 280 | とふほたる おもひはふしと なるさはに うつるかけこそ もえはもゆらめ | 公雄 |
| 281 | ひさかたの つきのかつらの ちかけれは ほしとそみゆる せせのかかりひ | 道命 |
| 282 | よかはたつ うふねのかかり さしもなと またるるつきの かけいとふらむ | 実教 |
| 283 | おほゐかは せせのうふねの かすかすに うきてそもゆる かかりひのかけ | 公宗母 |
| 284 | うかひふね うきてかかりの みえゆくや たつかはきりの たえまなるらむ | 後宇多院 |
| 285 | ひとりのみ ぬるとこなつの つゆけさは なみたにさへや いろをそふらむ | 伊勢 |
| 286 | われのみは あはれともいはし たれもみよ ゆふつゆかかる やまとなてしこ | 式子内親王 |
| 287 | のへにおく おなしつゆとも みえぬかな はすのうきはに やとるしらたま | 俊成(藤原俊忠男) |
| 288 | みなかみは ゆふたちすらし やまかはの いはねにあまる たきのしらなみ | 通光 |
| 289 | かつらきや たかまのやまに ゐるくもの よそにもしるき ゆふたちのそら | 後醍醐院 |
| 290 | ゆふたちの なこりひさしき しつくかな しのたのもりの ちえのしたつゆ | 伏見院 |
| 291 | ひとかたに ききのこのはを ふきかへし ゆふたちおくる かせそすすしき | 伏見院 |
| 292 | なるかみの おとほのかなる ゆふたちの くもるかたより かせそはけしき | 為兼 |
| 293 | くもかかる ゆふひはそらに かけろふの をののあさちふ かせそすすしき | 覚誉法親王 |
| 294 | くさふかき まかきのつゆを つきにみて あきのこころそ かねておほゆる | 後伏見院 |
| 295 | くれたけの よをへてあきや ちかからむ はわけのかせの おとそすすしき | 尊氏 |
| 296 | なつころも たちよるそての すすしさに むすはてかへる やまのゐのみつ | 雲雅 |
| 297 | つきのゆく なみのしからみ かけとめよ あまのかはらの みしかよのそら | 後二条院 |
| 298 | まちいてて しはしすすしく みるつきの ひかりにやかて あくるみしかよ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 299 | なつのよは つきこそあかね やまのはの あなたのさとに すむへかりけり | 業平 |
| 300 | あけやすき よのまならすは つきかけを あきのそらとや おもひはてまし | 為家 |
| 301 | あけやすき ならひたにうき みしかよの つきにはくもの かからすもかな | 実躬 |
| 302 | いたつらに ふくるはやすき おいかよも おもひしらるる なつのよのつき | 為綱 |
| 303 | ことのねに ひひきかよへる まつかせを しらへてもなく せみのこゑかな | 読人不知 |
| 304 | やまひこも こたへそあへぬ ゆふつくひ さすやをかへの せみのもろこゑ | 俊恵 |
| 305 | けふはまた しのにをりはへ みそきして あさのつゆちる せみのはころも | 和泉式部 |
| 306 | よるせなき みをこそかこて おもふこと なほおほぬさに なつはらへして | 行輔 |
| 307 | おほぬさや あさのゆふして うちなひき みそきすすしき かものかはかせ | 進子内親王 |
| 308 | なみかくる たもともすすし よしのかは みそきにやかて あきやきぬらむ | 実夏 |
| 309 | けふしはや かへるさすすし みそきかは ゆふなみかけて あきやたつらむ | 実兼 |
| 310 | あききぬと おもひもあへぬ あさけより はしめてすすし せみのはころも | 光厳院 |
| 311 | せみのはの うすきたもとに ふきかへて やかてみにしむ あきのはつかせ | 義詮 |
| 312 | あきかせの ふきにしひより かたをかの せみのなくねも いろかはるなり | 家隆 |
| 313 | すまのあまの そてになれぬる うらかせも あきとやけさは ふきかはるらむ | 為子(贈従三位) |
| 314 | つねよりも あきになるをの まつかせは わきてみにしむ ものにそありける | 西行 |
| 315 | おほともの みつのはままつ かみさひて むかしなからの あきのはつかせ | 経信 |
| 316 | のきちかき まつのこすゑに おとつれて そてにしくるる あきのはつかせ | 宮内卿(後鳥羽院) |
| 317 | あすかかせ おとふきかへて たをやめの そてにもけさや あきをしるらむ | 邦省親王 |
| 318 | たをやめの ころもをうすみ あきやたつ あすかにちかき かつらきのやま | 匡房 |
| 319 | こすゑふく かせよりあきの たつたやま したはにつゆや もらしそむらむ | 良経(九条兼実男) |
| 320 | いとはやも つゆそみたるる たまたれの こすのおほのの あきのはつかせ | 寛尊法親王 |
| 321 | あきはまた あさちかすゑの ゆふかせに わかそてかけて つゆけかるらむ | 一条(徽安門院) |
| 322 | ひとりゐて なかむるやとに あききぬと をきのうははの おとろかすらむ | 基俊 |
| 323 | いかなれは をきのはそよく かせのおとの あきときくより さひしかるらむ | 御匣(式乾門院) |
| 324 | よもすから をきのはかせの たえせぬに いかてかつゆの たまとぬくらむ | 具平親王 |
| 325 | わきてなと をきのはにのみ のこるらむ ほとなくすくる にはのあきかせ | 後光厳院 |
| 326 | そてにのみ おきこそまされ をきのはの かせにたまらぬ あきのしらつゆ | 尊氏 |
| 327 | むかしたれ あきのあはれを しりそめて いまもなみたの つゆこほるらむ | 兵衛督(達智門院) |
| 328 | あききぬと おもひもあへぬ ころもての たかならはしに つゆけかるらむ | 基忠(鷹司兼平男) |
| 329 | おもひいてて ひとこそとはね やまさとの まかきのをきに あきかせそふく | 孝標女 |
| 330 | ひさかたの あまのかはきり たつときや たなはたつめの わたるなるらむ | 躬恒 |
| 331 | あまのかは かちおときこゆ ひこほしの たなはたつめと こよひあふらし | 赤人 |
| 332 | さはるへき ちきりならねと たなはたの くるるまつまや くるしかるらむ | 基嗣 |
| 333 | いくあきも たえぬちきりや たなはたの まつにかひある ひとよなるらむ | 道嗣 |
| 334 | ここのへの にはのともしひ かけふけて ほしあひのそらに つきそかたふく | 法守法親王 |
| 335 | いくとせを ゆきめくりても たなはたの ちきりはたえし よはのしたおひ | 行家(藤原知家男) |
| 336 | たなはたの まれにあふせも としふれは わたりやなるる あまのかはなみ | 経顕(藤原定資男) |
| 337 | あまのかは としのわたりは とほけれと なかれてはやく あきもきにけり | 崇光院 |
| 338 | かさねても うらみやはれぬ たなはたの あふよまとほの くものころもは | 忠季(藤原公蔭男) |
| 339 | いつのまに もみちのはしを わたすらむ しくれぬさきの ほしあひのそら | 兼氏 |
| 340 | あまのかは おもふかなかに ふねはあれと かちよりゆくか かささきのはし | 宗尊親王 |
| 341 | いくあきか わたしきぬらむ あまのかは おのかよりはの かささきのはし | 後二条院 |
| 342 | たなはたの いほはたころも かさねても あきのひとよと なにちきりけむ | 経宣 |
| 343 | たなはたの くものころもの きぬきぬに かへるさつらき あまのかはなみ | 為家 |
| 344 | たなはたの あかぬわかれの かへるさに いまこむとしを またちきるらむ | 実俊(西園寺公宗男) |
| 345 | かせふけは しのにみたるる かるかやも ゆふへはわきて つゆこほれけり | 俊成女 |
| 346 | ゆふされは をはなかたよる あきかせに みたれもあへぬ つゆのしらたま | 長方 |
| 347 | かせふけは まののいりえに よるなみを をはなにかけて つゆそみたるる | 瑒子内親王 |
| 348 | のへことに みたれてみゆる かるかやの つゆふきむすふ あきのやまかせ | 甲裴(輔仁親王家) |
| 349 | おきあへぬ あさけのつゆに さきそめて こはきかすゑは はなそいろこき | 為子(従二位) |
| 350 | あさなあさな みれともあかぬ あきはきの はなをはあめに たれぬらしけむ | 月花門院 |
| 351 | わすれすよ はきのとくちの あけたては なかめしはなの いにしへのあき | 光厳院 |
| 352 | ちくさなる はなのにしきを あきくれは みるひといかに たちうかるらむ | 具平親王 |
| 353 | うつらなく いはれののへの あきはきを おもふひととも みつるけふかな | 読人不知 |
| 354 | みやきのの つゆわけきつる そてよりも こころにうつる はきかはなすり | 隆淵 |
| 355 | はきかはな をりてをゆかむ みやきのや このしたかせに ちらまくもをし | 定為 |
| 356 | あきかせは すすしくなりぬ こまなへて いさみにゆかむ はきのはなみに | 人麿 |
| 357 | はるされは かすみかくれに みえさりし あきはきさけり をりてかささむ | 人麿 |
| 358 | わかかとに あきはきさけり このねぬる あさかせはやみ はなちりぬへし | 家持 |
| 359 | さをしかの しからむのへの はきかはな ころもにすらむ ちらまくもをし | 公蔭 |
| 360 | あきはきの つゆちるはなの すりころも うつろふつきも かけそみたるる | 後光厳院 |
| 361 | からころも すそののくさの しらつゆの むすへはとくる はなのしたひも | 為氏 |
| 362 | あきののは こころもしのに みたれつつ こけのそてにも はなやうつらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 363 | をみなへし にほひをそてに うつしては あやなくひとや われをとかめむ | 貫之 |
| 364 | あたしのの こころもしらぬ あきかせに あはれかたよる をみなへしかな | 基俊 |
| 365 | をみなへし よかれぬつゆを おきなから あたなるかせに なになひくらむ | 讃岐(二条院) |
| 366 | なへてさく はなのなかにも をみなへし おほかるのへは すきうかりけり | 元輔(清原春光男) |
| 367 | かけくらき まかきのもとの きりきりす くるるもまたて ねをやなくらむ | 実性 |
| 368 | こゑたえす あきのよすから なくむしは あさちかつゆそ なみたなりける | 上総(堀河院中宮) |
| 369 | つゆふかき またあさあけの くさかくれ よのまのむしの こゑそのこれる | 伏見院 |
| 370 | ふるさとの まかきのむしや うらむらむ のへのかりねの よさむなるころ | 伏見院 |
| 371 | あさとあけて はなのひもとく いててみむ たちなかくしそ のへのあききり | 高遠 |
| 372 | かせさわく くさのまかきの はなすすき おほふはかりの そてかとそみる | 邦世親王 |
| 373 | ゆふくれの のへふきすくる あきかせに ちくさをつたふ はなのうへのつゆ | 道良女 |
| 374 | はきのうへの つゆとなりてや くもゐとふ かりのなみたも いろかはるらむ | 頓阿 |
| 375 | うつらなく あたのおほのの まくすはら いくよのつゆに むすほほるらむ | 顕季 |
| 376 | うつらなく ゆふへのそらを なこりにて のとなりにける ふかくさのさと | 定家 |
| 377 | ふかくさや わかふるさとも いくあきか のとなりはてて うつらなくらむ | 宗経(平経親男) |
| 378 | たちとまる ひとはかたのの はなすすき なにとほにいてて まねくなるらむ | 兵衛(上西門院) |
| 379 | ゆきかへり ふるさとひとに みをなして ひとりなかむる あきのゆふくれ | 梅壷女御(教通女生子) |
| 380 | さらてたに ものおもふことの かきりなる ゆふへをときと あきかせそふく | 良基(二条道平男) |
| 381 | おきあまる つゆはみたれて あさちふの をののしのはら あきかせそふく | 光吉 |
| 382 | あらあれて つゆやこほるる みちのくの しのふかはらに あきかせそふく | 兼経 |
| 383 | あらちやま ゆふきりはるる あきかせに やたののあさち つゆもとまらす | 隆教 |
| 384 | よをこめて くさはのつゆを わけゆけは ものおもふそてと ひとやみるらむ | 花山院 |
| 385 | あたなりな つゆもてむすふ のへのいほ まかきとたのむ きりのへたては | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 386 | はなすすき そてになみたの つゆそへて くるるよことに たれまねくらむ | 亀山院 |
| 387 | いまよりは はやいねかての あきかせに いろつきそむる にはのあさちふ | 雅有 |
| 388 | つきまつと ひとにはいひし いつはりの いまやまことの ゆふくれのそら | 家隆 |
| 389 | いてぬまに くもふきはらへ つきかけの いさよふみねの あきのゆふかせ | 公忠(藤原実忠男) |
| 390 | あきかせは こすゑをはらふ ゆふくれに くももかからぬ やまのはのつき | 進子内親王 |
| 391 | あきかせの はらふもまたて むらくもの かかるをのへを いつるつきかけ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 392 | はつせやま をのへのかねや ふけぬらむ いさよふくもに いつるつきかけ | 為藤 |
| 393 | おのつから たたよふくもも すむつきの ひかりにきえて はるるそらかな | 為明 |
| 394 | いてそむる つきのひかりに あしひきの やまのこのまも あらはれにけり | 通顕 |
| 395 | そらにすむ ひかりそおそき みねこえて まつはらつたふ あきのよのつき | 経有(一条内経男) |
| 396 | おしてるや なにはのうらの ゆふなきに あしのすゑはを いつるつきかけ | 公相 |
| 397 | わたのはら しほちはそらと ひとつにて くものなみより いつるつきかけ | 頼輔 |
| 398 | かせわたる かとたのすゑに きりはれて いなはのくもを いつるつきかけ | 後醍醐院 |
| 399 | いつるより ひかりそしるき あきのつき くもらぬみよの ゆくすゑのそら | 良実 |
| 400 | きみかすむ はこやのやまを いつるより くもらぬつきは そらにみえつつ | 実雄 |
| 401 | ひさかたの そらにもくもの のこりなく をさまれるよの みゆるつきかな | 為遠 |
| 402 | なにたかき こよひはあきの なかそらに ひかりみちたる つきのさやけさ | 貞重 |
| 403 | おもひやる ちさとのほかの あきまても へたてぬそらに すめるつきかけ | 俊光女 |
| 404 | あしひきの やまたちのほる つきかけの ゆくかたとほき あきのそらかな | 知家 |
| 405 | つきをみて こころのままに あくかれは いつくかあきの すみかならまし | 三河内侍(二条院) |
| 406 | さらしなや をはすてやまの つきはみし おもひやるたに なみたおちけり | 実房 |
| 407 | しかのあまの おもひもいれぬ そてまても あきはいろそふ つきやみるらむ | 小宰相(土御門院) |
| 408 | みぬよまて こころにうかふ あきのよの つきやむかしの かかみなるらむ | 顕実母 |
| 409 | くものうへに なれしむかしの おもかけも わすれやすると つきにとははや | 公雄 |
| 410 | あきのつき むかしをいまに うつしても ややすみまさる やとのいけみつ | 実雄 |
| 411 | はちすはの たまかとそみる いけみつの にこりにしまぬ あきのよのつき | 後嵯峨院 |
| 412 | おほゐかは しもはかつらの つきかけに みかきておつる せせのしらたま | 土御門院 |
| 413 | かみよより いくよろつよに なりぬらむ おもへはひさし あきのよのつき | 後嵯峨院 |
| 414 | すみのほる こころやそらに たちそひて こよひのつきの かけとなるらむ | 俊恵 |
| 415 | ふきはらふ あらしのままに あらはれて このまさためぬ つきのかけかな | 為道 |
| 416 | あきかせの ねやすさましく ふくなへに ふけてみにしむ とこのつきかけ | 伏見院 |
| 417 | あれにけり しほくむあまの とまひさし しつくもそても つきやとるまて | 定家 |
| 418 | もろともに なみのうへにも やとるかな つきもあかしや とまりなるらむ | 重家 |
| 419 | みなれても いそちになりぬ よはのつき わきてしのはむ あきはなけれと | 家親 |
| 420 | みるままに おもひもはるる つきかけや こころをてらす かかみなるらむ | 頼康 |
| 421 | あまのはら ひかりさしそふ かささきの かかみとみゆる あきのよのつき | 為家 |
| 422 | ふけゆけは つきかけさむし かささきの よわたるはしに しもやさゆらむ | 宗尊親王 |
| 423 | いにしへの ますみのかかみ よよかけて かみちのやまに てらすつきかけ | 実任 |
| 424 | あしひきの やまのはたかく すむつきに まつふくかせの おとそふけゆく | 為藤 |
| 425 | あまのはら ふりさけみれは つききよみ あきのよいたく ふけにけるかな | 実朝 |
| 426 | なにはかた あしまをわけて こくふねの おとさへすめる あきのよのつき | 為業 |
| 427 | かすかのに あさゐるくもの あともなく くるれはすめる あきのよのつき | 家隆 |
| 428 | なにたかき あきのなかはの なかそらに くももおよはす すめるつきかな | 定宗(藤原家親男) |
| 429 | いけみつに うつれるかけも のとかにて あきのよすから すめるつきかな | 摂津(二条太皇太后宮) |
| 430 | たかせさす よとのわたりの ふかきよに かはかせさむき あきのつきかけ | 為氏 |
| 431 | しろたへの ふしのたかねに つきさえて こほりをしける うきしまかはら | 有長 |
| 432 | これもまた かみよはきかす たつたかは つきのこほりに みつくくるとは | 良経(九条兼実男) |
| 433 | すきたてる かとたのおもの あきかせに つきかけさむき みわのやまもと | 浄弁 |
| 434 | つゆなから もりくるつきを かたしきて とはたのいほに いくよねぬらむ | 四条(安嘉門院) |
| 435 | いかはかり ひかりそふらむ つきかけの よなよなみかく つゆのしらたま | 行経 |
| 436 | たれすみて あはれしるらむ ときはやま おくのいはやの ありあけのつき | 道済 |
| 437 | くさふかく さひしからむと すむやとの ありあけのつきに たれをまたまし | 深養父 |
| 438 | つきかけの さひしくもあるか たかまとの をのへのみやの ありあけのそら | 真昭 |
| 439 | よもすから われをさそひて つきかけの はてはゆくへも しらていりぬる | 清輔 |
| 440 | とまるへき かたをもしらす こきいてて つきをかきりの あきのふなひと | 読人不知 |
| 441 | なみのうへに うつれるつきは ありなから いこまのやまの みねそあけゆく | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 442 | なにはかた いりしほちかく かたふきて つきよりよする おきつしらなみ | 為藤 |
| 443 | あきかせの よとこをさむみ いねかてに ひとりしあれは つきかたふきぬ | 光厳院 |
| 444 | あしひきの やまのこからし ふくからに くもるときなき ありあけのつき | 後鳥羽院 |
| 445 | のへはみな おもひしよりも うらかれて くもまにほそき ありあけのつき | 寂蓮 |
| 446 | ひくらしの なくゆふくれの うきくもに むらさめそそく もりのしたくさ | 有家(藤原重家男) |
| 447 | ひくらしの なくやまかけは くれぬらむ ゆふひかかれる みねのしらくも | 知家 |
| 448 | あきかせや しほせのなみに たちぬらむ あしのはそよく ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
| 449 | みたれあしの ほむけのかせの かたよりに あきをそよする まののうらなみ | 良経(九条兼実男) |
| 450 | をしかなく をかへのわさた ほにいてて しのひもあへす つまやこふらむ | 後光厳院 |
| 451 | あきののの をはなかもとに なくしかも いまはほにいてて つまをこふらし | 後嵯峨院 |
| 452 | むすひおく のはらのつゆの はつをはな わかたまくらと しかやなくらむ | 定為 |
| 453 | つきかけの いるののすすき うちなひき あかつきつゆに しかそなくなる | 直義 |
| 454 | たかさこの をのへのつきに なくしかの こゑすみのほる ありあけのそら | 経継 |
| 455 | つまこひの なみたやおちて さをしかの あさたつをのの つゆとおくらむ | 義詮 |
| 456 | かねてより こころそいとと すみのほる つきまつみねの さをしかのこゑ | 西行 |
| 457 | をくらやま あきはこよひと さをしかの つまとふみねに すめるつきかけ | 為藤 |
| 458 | つれなさの ためしはしるや さをしかの つまとふやまの ありあけのそら | 為氏 |
| 459 | をしかなく とやまのすその ははそはら いろにいててや つまをこふらむ | 実氏 |
| 460 | しかのねそ そらにきこゆる ゆふきりの へたつるかたや をのへなるらむ | 師良(二条良基男) |
| 461 | やまさとは きりたちこめて ひともなし あさたつしかの おとはかりして | 通俊 |
| 462 | さらてたに ねさめかなしき あきかせに よるしもなとか しかのなくらむ | 家清 |
| 463 | やまさとの しかのなくねそ なかきよの ねさめのともと ききなれにける | 実衡 |
| 464 | つまこふる さをしかのねに さよふけて みのたくひをも ありとしりぬる | 小町 |
| 465 | たかさこの まつをともとも なくさまて なほつまこひに しかそなくなる | 尊円法親王 |
| 466 | たかしまや まつのこすゑに ふくかせの みにしむときそ しかもなきける | 増基 |
| 467 | いろにいてて あきしもしかの なくなるは はなのをりとや つまはたのめし | 康資王母 |
| 468 | なにめてて つまやこふらむ をみなへし おほかるのへの さをしかのこゑ | 雅家 |
| 469 | さをしかの よはのくさふし あけぬれと かへるやまなき むさしののはら | 家隆 |
| 470 | しかのねの ふきくるかたに きこゆるは あらしやおのか たちとなるらむ | 清輔 |
| 471 | よをさむみ つまやこふらむ あしひきの やましたかせに しかそなくなる | 為理 |
| 472 | ゆふひさす たのものいなは うちなひき やまもととほく あきかせそふく | 為氏 |
| 473 | ゆふひさす たのものいなは すゑとほみ なひきもはてす よわるあきかせ | 花園院 |
| 474 | しらとりの とはたのほなみ ふきたてて もるいほさむき あきのやまかせ | 公賢 |
| 475 | あけわたる やまもととほく きりはれて たのもあらはに あきかせそふく | 公雄 |
| 476 | きりきりす かへのなかにそ こゑすなる よもきかそまに かせやさむけき | 兵衛(上西門院) |
| 477 | あきをへて なるるまくらの きりきりす しるやいそちの なみたそふとは | 隆博 |
| 478 | あさちふや とこはくさはの きりきりす なくねもかるる のへのはつしも | 順徳院 |
| 479 | むしのねは あさちかつゆに うらかれて よさむにのこる ありあけのつき | 為実(御子左藤原為氏男) |
| 480 | きけははや うらかれにけり あさちはら むしのねまても しもやおくらむ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 481 | あきふかき あさちかにはの しものうへに かれてもむしの こゑそのこれる | 道平 |
| 482 | よをさむみ かれゆくをのの くさかけに よわりもはてぬ むしのこゑかな | 為藤 |
| 483 | なかつきの ありあけのかけに きこゆなり よをへてよわる まつむしのこゑ | 読人不知 |
| 484 | わきてなほ あはれにたへぬ ときそとや ゆふへはむしの ねにもたつらむ | 邦省親王 |
| 485 | あきくれは むしもやものを おもふらむ こゑもをします なきあかすかな | 花山院 |
| 486 | まつひとに いかにつけまし くものうへに ほのかにきゆる はつかりのこゑ | 信明 |
| 487 | あきかせも ふきたちにけり いまよりは くるかりかねの おとをこそまて | 醍醐天皇 |
| 488 | きりわけて かりはきにけり ひまもなく しくれはいまや のへをそむらむ | 家持 |
| 489 | かりなきて さむきあしたや やましろの いはたのをのも いろかはるらむ | 基家 |
| 490 | いまよりの あきのねさめよ いかならむ はつかりかねも なきてきにけり | 雅冬 |
| 491 | みつくきの をかのくすはを ふくかせに ころもかりかね さむくなくなり | 行意 |
| 492 | かりかねは くもゐかくれに なきてきぬ はきのしたはの つゆさむきころ | 伏見院 |
| 493 | ふるさとを くもゐになして かりかねの なかそらにのみ なきわたるかな | 相模 |
| 494 | なきわたる くもゐのかりも こころしれ こぬひとたのむ あきかせのころ | 寂蓮 |
| 495 | はつかりの なきわたりぬる くもまより なこりおほくて あくるつきかけ | 友則 |
| 496 | いくちさと あるみちなれや あきことに くもゐをたひと かりのなくらむ | 是則 |
| 497 | つらかりし はるのわかれは わすられて あはれとそきく はつかりのこゑ | 政村 |
| 498 | あまのかは とわたるかりや たなはたの わかれしなかに かよふたまつさ | 義政 |
| 499 | からすはに かくたまつさの ここちして かりなきわたる ゆふやみのそら | 西行 |
| 500 | はれやらぬ あさけのそらの きりのうちに つらこそみえね わたるかりかね | 親子(従三位) |
| 501 | へたつとは みえてまちかく きこゆなり きりのうへゆく はつかりのこゑ | 後光厳院 |
| 502 | ゆふされは くもにみたれて とふかりの ゆくへさためす あきかせそふく | 実兼 |
| 503 | あきかせに やまとひこえて くるかりの はむけにきゆる みねのしらくも | 躬恒 |
| 504 | をやまたの おしねかりかね ほにあけて なくこゑきけは あきふけにけり | 実名(藤原公脩男) |
| 505 | かりなきて よさむになれは はつしもの おくてのいなは いろつきにけり | 為信 |
| 506 | あきふかき つきのよさむに をりはへて しもよりさきと うつころもかな | 為藤 |
| 507 | さとひとの きぬたのおとも いそくまて つきやよさむの しもとみゆらむ | 具行 |
| 508 | ききわひぬ はつきなかつき なかきよの つきのよさむに ころもうつこゑ | 後醍醐院 |
| 509 | なかつきの つきもよさむの いねかてに おきゐてたれか ころもうつらむ | 公賢 |
| 510 | あくかれて つきみるほとの こころにも よさむわすれす うつころもかな | 為定(御子左二条為道男) |
| 511 | よもすから あきのこころを なくさめて つきにうつなり あさのさころも | 行忠(藤原) |
| 512 | とりのねの きこゆるまてに さとひとの ねぬよもしるく うつころもかな | 経賢 |
| 513 | たかために あさのさころも うちわひて ねられぬよはを かさねきぬらむ | 経朝 |
| 514 | つのくにの あしふくこやの よをさむみ ひまこそなけれ ころもうつこゑ | 内経 |
| 515 | さよころも たかねさめより うちそめて ちさとのゆめを おとろかすらむ | 実忠 |
| 516 | たちこむる きりのまかきの ゆふつくよ うつれはみゆる つゆのしたくさ | 為秀 |
| 517 | もろひとの けふここのへに にほふてふ きくにみかける つゆのことのは | 為家 |
| 518 | なかつきの とよのあかりは なのみして いまはむかしに きくのさかつき | 良基(鷹司道平男) |
| 519 | さきぬれは よそにこそみれ きくのはな あまつくもゐの ほしにまかへて | 堀河中宮 |
| 520 | いつれをか はなとはわかむ なかつきの ありあけのつきに まかふしらきく | 貫之 |
| 521 | いくかへり ちとせのあきに あひぬらむ いろもかはらぬ しらきくのはな | 公能 |
| 522 | うつしうゑは ちよまてにほへ きくのはな きみかおいせぬ あきをかさねて | 行済 |
| 523 | にほひこそ まきれさりけれ はつしもの あしたのはらの しらきくのはな | 師房 |
| 524 | なにしおへは はなさへにほふ むらさきの ひともときくに おけるはつしも | 読人不知 |
| 525 | あまくもの よそにかりかね ききしより はたれしもふり さむしこのよは | 人麿 |
| 526 | ふるさとの はつもみちはを たをりもて けふそわかくる みぬひとのため | 人麿 |
| 527 | ときまちて おくるしくれの あまそそき あさかのやまは うつろひぬらむ | 読人不知 |
| 528 | はつしくれ またふらなくに かたをかの はしのたちえは いろつきにけり | 教実 |
| 529 | あきやまは しくれぬさきの したもみち かつかつつゆや そめはしむらむ | 為子(従二位) |
| 530 | よそにみし くもやしくれて そめつらむ もみちしてけり かつらきのやま | 長綱(菅原重長男) |
| 531 | いりひさす とよはたくもに わきかねつ たかまのやまの みねのもみちは | 崇徳院 |
| 532 | ゆふひかけ さすやたかねの もみちはは そらもちしほの いろそうつろふ | 覚助法親王 |
| 533 | はなならは うつろふいろや をしからむ ちしほをいそく あきのもみちは | 道嗣 |
| 534 | いつのまに ちしほそめけむ きのふより しくるとみえし みねのもみちは | 邦省親王 |
| 535 | しきしまや やまとにはあらぬ くれなゐの いろのちしほに そむるもみちは | 為家 |
| 536 | あしひきの やまのもみちや ぬしなくて さらせるあきの にしきなるらむ | 杲守 |
| 537 | いつのまに しつはたやまの はつしくれ そめてもみちの にしきおるらむ | 成国 |
| 538 | しくるれは いろまさりけり おくやまの もみちのにしき ぬれはぬれなむ | 清正 |
| 539 | くれなゐの やしほのあめは ふりくらし たつたのやまの いろつくみれは | 人麿 |
| 540 | をくらやま ききのもみちの くれなゐは みねのあらしの おろすなりけり | 清輔 |
| 541 | みつのあやを からくれなゐに おりかけて けふのみゆきに あへるもみちは | 公実 |
| 542 | あきふかく なりゆくときは おほゐかは なみのはなさへ もみちしにけり | 斉信 |
| 543 | みなそこに かけのみみゆる もみちはは あきのかたみに なみやをるらむ | 頼基(大中臣輔道男) |
| 544 | やまひめの こころのままに そめなさは もみちにのこる まつやなからむ | 万秋門院(尚侍藤原瑣子朝臣) |
| 545 | たかねより もみちふきおろす やまかせや ふもとのまつの しくれなるらむ | 信生 |
| 546 | かはらしな ときはのもりの むらしくれ よそのもみちに あきはみゆとも | 近衛(今出河院) |
| 547 | かねてより うつろふあきの いろもなほ しくれてまさる かみなひのもり | 良瑜 |
| 548 | ふりつもる もみちのいろを みるときそ くれゆくあきは まつしられける | 定頼 |
| 549 | みやこいてて なににきつらむ やまさとの もみちはみれは あきくれにけり | 公任 |
| 550 | としことに とまらぬあきと しりなから をしむこころの こりすもあるかな | 読人不知 |
| 551 | あすもなほ くれゆくあきは あるものを をしむこころを けふつくしつる | 範兼 |
| 552 | くれはつる あきのかたみと あすやみむ そてになみたの つゆをのこして | 実俊(西園寺公宗男) |
| 553 | いりひさす かたをなかめて わたのはら なみちのあきを おくるけふかな | 経正 |
| 554 | よわりゆく むしのねにさへ あきくれて つきもありあけに なりにけるかな | 通具 |
| 555 | ゆくあきの すゑののくさは うらかれて しもにのこれる ありあけのつき | 後醍醐院 |
| 556 | ありあけの ほのかにみえし つきたにも おくらぬそらに かへるあきかな | 家隆 |
| 557 | つゆわけし のへのささはら かせさえて またしもこほる ふゆはきにけり | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 558 | したはれし あきのなこりの つゆをたに ほしあへぬそてに ふるしくれかな | 内実 |
| 559 | したひこし あきのわかれの なみたより そてもほしあへぬ はつしくれかな | 後光厳院 |
| 560 | まきのやに ふゆこそきぬれ とはかりを おとつれすてて ゆくしくれかな | 光厳院 |
| 561 | このはちる うへやまかせの あらしより しくれになりぬ みねのうきくも | 有家(藤原重家男) |
| 562 | さそはるる くものゆききの さためなき しくれはかせの こころなりけり | 公蔭 |
| 563 | ふきおくる かせのままなる うきくもの かさなるやまは しくれふるらし | 有房(六条通有男) |
| 564 | たえたえに くものうきたつ やまのはに かせをしるへと ゆくしくれかな | 一条(昭慶門院) |
| 565 | ふきよわる あらしのひまの うきくもや しはしやすらふ しくれなるらむ | 為藤 |
| 566 | みわやまは しくれふるらし かくらくの はつせのひはら くもかかるみゆ | 隆教 |
| 567 | うきくもを さそひもはてぬ やまかせに たちかへりふる むらしくれかな | 為理 |
| 568 | たまくしけ みむろのやまも ふゆきぬと あくるそらより ふるしくれかな | 基平(近衛兼経男) |
| 569 | やまかせの ふくにまかせて さためなく このはさへふる かみなつきかな | 実重(三条公親男) |
| 570 | いつくより ふきくるかせの さそふらむ こすゑもしらぬ にはのもみちは | 房経 |
| 571 | ふゆきては さゆるあらしの やまかせに つきてこのはの ふらぬひはなし | 実雄 |
| 572 | いつしかと ふゆをやつくる はつしくれ にはのこのはに おとつれてゆく | 永福門院 |
| 573 | ふきおくる あらしのそらの うきくもに しくれをそへて ふるこのはかな | 良冬 |
| 574 | むらしくれ おとをのこして すきぬなり このはふきまく みねのあらしに | 公明 |
| 575 | うきてゆく くものたよりの むらしくれ ふるほともなく かつはれにけり | 伏見院 |
| 576 | このはちる あさけのかせや さそふらむ しくれになりぬ うきくものそら | 覚助法親王 |
| 577 | しからきの とやまのもみち ちりはてて さひしきみねに ふるしくれかな | 秀能(藤原秀宗男) |
| 578 | ゆくつきの したやすからぬ うきくもの あたりのそらは なほしくれつつ | 公雄 |
| 579 | うちしくれ ひとのそてをも ぬらすかな そらもやけふは あきをこふらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 580 | きくひとの そてさへぬれぬ このはちる おとはしくれに たくふのみかは | 実定 |
| 581 | いととしく ものおもふよの ひとりねに おとろくはかり ふるしくれかな | 赤染衛門 |
| 582 | ゆめちまて よはのしくれの したひきて さむるまくらに おとまさるなり | 為兼 |
| 583 | おとろかす このはのおとの なかりせは あくるそゆめの かきりならまし | 兼実 |
| 584 | ちしほまて そめしこすゑの のこりなく にはのおちはと いつなりにけむ | 宰相(瑒子内親王家) |
| 585 | やまたかみ こすゑをさして なかれくる たきにたくへて おつるもみちは | 貫之 |
| 586 | みなかみに かせわたるらし おほゐかは もみちをむすふ たきのしらいと | 大輔(殷富門院) |
| 587 | おほゐかは けふのみゆきに もみちはも なかれひさしき ゐせきにそみる | 祐家 |
| 588 | おほゐかは みつのなかれも みえぬまて ちるもみちはの うかふけふかな | 俊忠 |
| 589 | かはかみに しくれのみふる あしろには もみちはさへそ おちまさりける | 躬恒 |
| 590 | おちつもる もみちをみれは ひととせの あきのとまりは あしろなりけり | 貫之 |
| 591 | うちやまの あらしにおつる もみちはや あしろによるの にしきなるらむ | 如寂 |
| 592 | かみなつき あさひのやまも うちしくれ いまやもみちの にしきおるらむ | 俊綱(橘) |
| 593 | きみみねは あさひのやまの もみちはも よるのにしきの ここちこそすれ | 紀伊(祐子内親王家) |
| 594 | ささわくる たもとはかせの おとさえて しられすむすふ のへのゆふしも | 雅孝 |
| 595 | きくのはな ふゆののかせに ちりもせて けふまてとてや しもはおくらむ | 是則 |
| 596 | きくのはな こきもうすきも いままてに しものおかすは いろをみましや | 躬恒 |
| 597 | すかのねも うつろひかはる ふゆのひに ゆふしもいそく やまのしたくさ | 信実 |
| 598 | かせさゆる あさちかにはの ゆふひかけ くるれはやかて むすふしもかな | 実教 |
| 599 | なにはかた みきはのあしに しもさえて うらかせさむき あさほらけかな | 西行 |
| 600 | しもふかき まかきのをきの かれはにも あきのままなる かせのおとかな | 尊氏 |
| 601 | かきりあれは あきもかくやは ききわひし あらしにさやく しものしたをき | 後光厳院 |
| 602 | みわたせは ましるすすきも しもかれて みとりすくなき ゐなのささはら | 土御門院 |
| 603 | ふゆきぬと ともにかれゆく やまさとの ひとめやくさの ゆかりなるらむ | 為子(贈従三位) |
| 604 | かりひとの いるののくさの しもかれに つかれのとりや かくれかぬらむ | 忠基(九条経教男) |
| 605 | みしまのや くるれはむすふ やかたをの たかもましろに ゆきはふりつつ | 為家 |
| 606 | みなとえや あしのかれはに かせさえて しもよのつきに ちとりなくなり | 雅孝 |
| 607 | ひさきおふる かはらのちとり なくなへに いもかりゆけは つきわたるみゆ | 家持 |
| 608 | ふゆされは さほのかはかせ さゆるよの ふけたるつきに ちとりなくなり | 公顕 |
| 609 | なるみかた わたるちとりの なくこゑも うらかなしさは ありあけのそら | 光厳院 |
| 610 | うらとほく わたるちとりも こえさむし しものしらすの ありあけのそら | 後二条院 |
| 611 | わかかたや なみたかからし ともちとり ことうらになく こゑそきこゆる | 隆教 |
| 612 | ふけゆけは やまおろしさえて ささなみの ひらのみなとに ちとりなくなり | 宗尊親王 |
| 613 | にほとりは をろのはつをに あらねとも かかみのやまの かけになくなり | 為藤 |
| 614 | にほとりの かよひちもさそ たとるらし よひよひことの いけのこほりに | 義高 |
| 615 | あしかもの はらふつはさに なみこえて うはけのしもや なほこほるらむ | 兼好 |
| 616 | よもすから かものうはけを はらふかな いくたひしもの おくにかあるらむ | 実行 |
| 617 | すみわひて いけのあしまを たつかもの こほりにのこる あともはかなし | 道助法親王 |
| 618 | なかなかに しもよのそらや さむからむ こほりにかへる いけのをしとり | 行能 |
| 619 | しもにたに うはけはさゆる あしかもの たまものとこは つららゐにけり | 隆房 |
| 620 | さゆるよは ころもかたしく とこのしも そてのこほりに つきやとるなり | 為明 |
| 621 | さえまさる そてのあらしを かたしきて しもよのとこに つきをみるかな | 信専 |
| 622 | そてかへす あまつをとめも おもひいてよ よしののみやの むかしかたりを | 後醍醐院 |
| 623 | みのやまの しらたまつはき いつよりか とよのあかりに あひはしめけむ | 行家(藤原知家男) |
| 624 | よさむなる とよのあかりの しものうへに つきさえわたる くものかけはし | 為家 |
| 625 | はやきせは こほりもやらて ふゆのよの かはおとたかく つきそふけゆく | 実教 |
| 626 | おのつから こほらぬひまも こほりけり つきかけさむき やまかはのみつ | 達智門院(奨子内親王) |
| 627 | たつなみの おとはのこりて おきつかせ ふけひのうらに こほるつきかけ | 成光(祝部成国男) |
| 628 | まののうらや いりうみさむき ふゆかれの をはなのなみに こほるつきかけ | 実超 |
| 629 | にほのうみや ひらのやまかせ さゆるよの そらよりこほる ありあけのつき | 慈能 |
| 630 | さゆるよの しもをかさねて そてのうへに やとれはこほる つきのかけかな | 時光 |
| 631 | かれはつる くさはのしもの しろたへに やとるもさむき つきのかけかな | 公敏 |
| 632 | いまはとて あさちかれゆく しものうへに つきかけさひし をののしのはら | 忠良 |
| 633 | あきのいろは あとなきのへの しものうへに なほみしままの つきそよかれぬ | 一条(昭慶門院) |
| 634 | はれくもり うきたつくもの やまのはに かけさたまらぬ ふゆのよのつき | 公雄 |
| 635 | しくれてそ なかなかはるる かせませに このはふるよの やまのはのつき | 善成 |
| 636 | あきよりも さえにけらしな ふるゆきの つもりてはるる やまのはのつき | 成茂 |
| 637 | ひさかたの そらさえわたる ふゆのよは つきのひかりも ゆきかとそみる | 成仲 |
| 638 | さゆるよの ゆきけのそらの むらくもを こほりてつたふ ありあけのつき | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 639 | はつせかは ゐてこすなみの そのままに こほりてかかる せせのしからみ | 頓阿 |
| 640 | さゆるよは こほるもはやし よしのかは いはきりとほす みつのしらなみ | 為遠 |
| 641 | たちかへる おともきこえす ふゆかはの いしまにこほる みつのしらなみ | 為定(御子左二条為道男) |
| 642 | たにかはや むすふこほりの したむせひ なかれもやらぬ おともさむけし | 崇光院 |
| 643 | おとたてし あらしやまつに のこるらむ ささなみこほる しかのからさき | 宣明 |
| 644 | かせさわく ならのおちはに たまちりて おとさへさむく ふるあられかな | 宣子(従二位) |
| 645 | あさゆふの おとはしくれの ならしはに いつふりかはる あられなるらむ | 定家 |
| 646 | うたののや やとかりころも ききすたつ おともさやかに あられふるなり | 雅経 |
| 647 | たまもかる いちしのあまの ぬれころも ゆふひもさむく あられふるなり | 源承 |
| 648 | かせさむみ そらはゆきけに なりそめて かつかつにはに ちるあられかな | 後宇多院 |
| 649 | にはのおもに かれてのこれる ふゆくさの むらむらみえて つもるしらゆき | 為定(御子左二条為道男) |
| 650 | いととまた ゆきにはあとも なかりけり ひとめかれにし にはのふゆくさ | 為子(従二位) |
| 651 | いつくとも みきはそみえぬ いけみつの こほりにつつく にはのしらゆき | 賢俊 |
| 652 | よひのまの のきのしつくも おとたえて ふくれはこほる ゆきのむらきえ | 長舜 |
| 653 | さとわかぬ ゆきのうちにも すかはらや ふしみのくれは なほそさひしき | 良経(九条兼実男) |
| 654 | はつゆきの ふらはといひし ひとはこて むなしくはるる ゆふくれのそら | 慈円 |
| 655 | はつゆきの にはにふりはへ さむきよを たまくらにして ひとりかもねむ | 家持 |
| 656 | みやこにも みちふみまよふ ゆきなれは とふひとあらし みやまへのさと | 好忠 |
| 657 | とはるへき みともおもはぬ やまさとに ともまつゆきの なにとふるらむ | 有房(六条通有男) |
| 658 | かれはつる をののしのはら みちたえて あまりひかすの つもるゆきかな | 親清女 |
| 659 | いまよりは とたえもみえし しらゆきの つきてふりしく くめのいははし | 師信 |
| 660 | いととまた かきりもみえす むさしのや あまきるゆきの あけほののそら | 後嵯峨院 |
| 661 | おいかみの たくひとやせむ よよをへて ゆきをいたたく まつのこころは | 実泰 |
| 662 | たけくまの まつのみとりも うつもれて ゆきをみきとや ひとにかたらむ | 光行 |
| 663 | みつとりの かものかみやま さえくれて まつのあをはも ゆきふりにけり | 頼貞 |
| 664 | つきのこる まきのとやまの あけほのに ひかりことなる みねのしらゆき | 実兼 |
| 665 | しろたへの ひかりそまさる ふゆのよの つきのかつらに ゆきつもるらし | 後嵯峨院 |
| 666 | かさしをる そてもやけさは こほるらむ みわのひはらの ゆきのあけほの | 後鳥羽院 |
| 667 | ふゆのよの さゆるにしるし みよしのの やまのしらゆき いまそふるらし | 二条院 |
| 668 | ふりつもる ゆきをかさねて みよしのの たきつかふちに こほるしらなみ | 為氏 |
| 669 | おほゐかは そまやまかせの さむけきに いはうつなみを ゆきかとそみる | 左近(三条院女蔵人) |
| 670 | こきかへる たななしをふね あともなし なにはのあしの ゆきのしたをれ | 兵衛内侍(順徳院) |
| 671 | ふるゆきは それともみえす ささなみの よせてかへらぬ おきつしまやま | 知家 |
| 672 | よしのやま ゆきふりはてて としくれぬ かすみしはるは きのふとおもふに | 国冬 |
| 673 | いたつらに すきゆくものと おもひこし としのなにとて みにつもるらむ | 資季 |
| 674 | わきてしも をしむとなしに あはれなり ことしもかくて くれぬとおもへは | 花園院 |
| 675 | くれぬとて いまさらいそく ことしかな つきひのゆくも しらさりしみに | 高定 |
| 676 | いまさらに としのくれとも おとろかす いそきなれたる あさまつりこと | 後光厳院 |
| 677 | はたすすき をはなさかふき くろきもて つくれるやとは よろつよまてに | 元正天皇 |
| 678 | きみかよは なからのはしの はしめより かみさひにける すみよしのまつ | 道長 |
| 679 | きみかよは やそしまかくる なみのおとに かせしつかなり すみのえのまつ | 公経(藤原実宗男) |
| 680 | かみよより あひおひのまつも けふしこそ ありてちとせの かひもしるらめ | 国助 |
| 681 | ときはなる たままつかえや いくちよも きみかよはひに かけをならへむ | 公明 |
| 682 | かせかよふ まつをうつして いけみつの なみもちとせの かすによるらし | 尊氏 |
| 683 | かそへしる よはひをきみか ためしにて ちよのはしめの はるにもあるかな | 為道 |
| 684 | さくはなも けふをみゆきの はしめにて なほゆくすゑも よろつよやへむ | 大納言典侍(後嵯峨院) |
| 685 | よろつよの きみかかさしに をりをえて ひかりそへたる やまさくらかな | 通重 |
| 686 | きみかへむ ちとせのはるを かさぬへき ためしとみゆる やへさくらかな | 顕昭 |
| 687 | ちよふへき ためしときけは やへさくら かさねていとと あかすもあるかな | 覚性法親王 |
| 688 | あらたまの としのちとせの はるのいろを かねてみかきの はなにみるかな | 定家 |
| 689 | きみかため ひさしかるへき はるにあひて はなもかはらす よろつよやへむ | 兼季 |
| 690 | きみのみや ちとせのまつの はなのいろに とかへりまても なれむとすらむ | 為秀 |
| 691 | ちとせとも かきらぬきみか ともなれは まつもはなさく はるやかさねむ | 師平 |
| 692 | いろかへぬ はこやのやまの みねのまつ きみをそちよの ともとみるらむ | 公重(西園寺実衡男) |
| 693 | ひさにへむ ともとやきみに ちきるらむ とかへりのまつの はなのさくまて | 経顕(藤原定資男) |
| 694 | まつかえも やほよろつよの いろそそふ ちとせもあかぬ わかきみのため | 公蔭 |
| 695 | ゆくすゑを おもふもひさし ひめこまつ いまよりきみか ちよをちきりて | 忠季(藤原公蔭男) |
| 696 | きみかへむ ちとせのはるの ゆくすゑも まつのみとりの いろにみゆらし | 実名(藤原公脩男) |
| 697 | いくちよそ みとりをそへて あひおひの まつときみとの ゆくすゑのはる | 雅家 |
| 698 | いろかへぬ をのへのまつに ふくかせは よろつよよはふ こゑにそありける | 花園院 |
| 699 | つるかをか こたかきまつを ふくかせの くもゐにひひく よろつよのこゑ | 基氏(足利尊氏男) |
| 700 | きみかすむ はこやのやまの たまつはき やちよさかえむ すゑそひさしき | 俊光 |
| 701 | よををさめ たみをあはれむ まことあらは あまつひつきの すゑもかきらし | 後光厳院 |
| 702 | よものうみ ななつのみちも わかきみの みよそをさまる はしめなりける | 尊氏 |
| 703 | よものうみ をさまりぬらし わかくにの やまとしまねに なみしつかなり | 後醍醐院 |
| 704 | ももとせに ちかつくひとそ おほからむ よろつよふへき きみかみよには | 俊成(藤原俊忠男) |
| 705 | わかのうらに よるとしなみを かそへしる みよそうれしき おいらくのため | 経家(六条重家男) |
| 706 | なからへて けさやうれしき おいのなみ やちよをかけて きみにつかへよ | 宮内卿(後鳥羽院) |
| 707 | きみそなほ けふよりもまた かそふへき ここのかへりの とをのゆくすゑ | 右京大夫(建礼門院) |
| 708 | かめやまの ここのかへりの ちとせをも きみかみよにそ そへゆつるへき | 俊成(藤原俊忠男) |
| 709 | おほゐかは みかさやまさる かめやまの ちよのかけみる みゆきとおもへは | 敦賢親王 |
| 710 | きみかよは のとかにすめる いけみつに ちとせをちきる あきのつきかけ | 家良 |
| 711 | かけきよき いけのかかみに てるつきも くもるときなく よろつよやへむ | 行能 |
| 712 | あきらけき みかけになるる いけみつを つきにそみかく よろつよのあき | 信実 |
| 713 | きみかよの つきとあきとの ありかすに おくやくさきの よものしらつゆ | 定家 |
| 714 | きみかよに ちたひあふへき あきなれと けふのくれをは をしみかねつも | 行成 |
| 715 | あめつゆの めくみにそむる もみちはの ちしほはきみか ちよのかすかも | 実教 |
| 716 | さきそむる まかきのきくの つゆなから ちよをかさねむ あきそひさしき | 宰相典侍(後宇多天皇) |
| 717 | きみかよの かすにかさなる ものならは きくはいくへも かきらさらまし | 公教 |
| 718 | むらさきの にはにみとりの いろそへて ゆくすゑとほき ちよのくれたけ | 経教 |
| 719 | よよをへし みかきのたけの たねなれは すゑもちとせの いろそそふへき | 冬平 |
| 720 | をさまれる くもゐのにはに きこゆなり こころとけたる たつのもろこゑ | 実俊(西園寺公宗男) |
| 721 | つるのこの すたちはしむる けころもは ちよにやちよを かさねてそきむ | 弁乳母 |
| 722 | むしろたに ちとせをかねて すむつるも きみかよはひに しかしとそおもふ | 師光(源師頼男) |
| 723 | としをへて つかさくらゐを ますかかみ ちよのかけをは きみそみるへき | 永縁 |
| 724 | よろつよに よろつよそへて ますかかみ きみかみかけに ならへてそみむ | 基俊 |
| 725 | わかきみは ひとをかかみと みかくなり こころくもらて ちよもつかへむ | 義詮 |
| 726 | わかのうらに ふたたひたまを みかくこそ あきらけきよの しるしなりけれ | 定煕 |
| 727 | あめつちと ともにひさしき しきしまの みちあるみよに あふかうれしさ | 法守法親王 |
| 728 | わかきみは をののえくちし としをへて たみのななよの すゑにあふまて | 国冬 |
| 729 | きみかよは とよあしはらの あきつすに みちひるしほの つきしとそおもふ | 有長 |
| 730 | はるかにそ いまゆくすゑを おもふへき なかをのむらの なかきためしに | 経衡 |
| 731 | みかみやま いはねにおふる さかきはの はかへもせすて よろつよやへむ | 匡房 |
| 732 | くもりなき たまたののへの たまひかけ かさすやとよの あかりなるらむ | 清輔 |
| 733 | はるはると くもりなきよを うたふなり つきてかさきの あまのつりふね | 清輔 |
| 734 | ときをえて ちたのむらひと いくちたひ とれともつきぬ さなへなるらむ | 時光 |
| 735 | しきしまの みちもいまこそ さかえけれ よろつをすてぬ きみかめくみに | 為定(御子左二条為道男) |
| 736 | たちかへり なにとなこりを をしむらむ こころはひとに わかれやはする | 家良 |
| 737 | みとせまて なれしさへこそ うかりけれ せめてわかれの をしきあまりに | 宗尊親王 |
| 738 | あつまちの のはらしのはら わけゆかは こひむなみたを おもひおこせよ | 隆信 |
| 739 | とまるへき みちにもあらぬ わかれちは したふこころや せきとなるらむ | 仲実 |
| 740 | わかれちは せきもととめぬ なみたかな ゆきあふさかの なをはたのめと | 肥後(京極前関白家) |
| 741 | くるるまも さためなきよと しりなから かへりこむひを まつそはかなき | 成通 |
| 742 | おほのうらの そのなかはまに よるなみの ゆたにそきみを おもふこのころ | 聖武天皇 |
| 743 | いはせのの あきはきしのき こまなへて こたかかりをも せてやわかれむ | 家持 |
| 744 | こぬひとを まつあきかせの ねさめには われさへあやな たひここちする | 兼輔 |
| 745 | もろこしへ ゆくひとよりも ととまりて からきおもひは われそまされる | 成尋母 |
| 746 | かきりある いのちなりせは めくりあはむ あきともせめて ちきりおかまし | 道我 |
| 747 | こきいつる あしわけをふね なとかまた なこりをとめて さはりたにせぬ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 748 | なみのうへの つきのこらすは なにはえの あしわけをふね なほやさはらむ | 実教 |
| 749 | またいつと あひみむことを さためてか つゆのうきみを おきてゆくらむ | 行尊 |
| 750 | たのめおく あすのいのちも しらなくに はかなきものは ちきりなりけり | 土御門院 |
| 751 | たのますよ これはあるよの わかれとも またあふまての いのちしらねは | 実伊 |
| 752 | めにみえぬ こころはかりは おくれねと ひとりややまを けふはこゆらむ | 為家 |
| 753 | これをみよ こひしかるへき ゆくすゑを かねておもふに ぬるるたもとそ | 俊恵 |
| 754 | ものかはと きみかいひけむ とりのねの けさしもなとか かなしかるらむ | 経尹(藤原懐経男) |
| 755 | ふるさとに たちかへるとも ゆくひとの こころはとめよ ふはのせきもり | 頼康 |
| 756 | あはれまた ことしもくれぬ おいかみの おとろへまさる ひなのわかれに | 基世 |
| 757 | ことのはに なけくとはみよ かかみやま したふこころに かけはなくとも | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 758 | ここにして いへやはいつこ しらくもの たなひくやまを こえてきにけり | 読人不知 |
| 759 | たまもかる としまをすきて なつくさの のしまかさきに ふねちかつきぬ | 人麿 |
| 760 | きみかため なみのたましく みつのはま ゆきすきかたし おりてひろはむ | 貞数親王 |
| 761 | あふさかを うちいててみれは あふみのうみ しらゆふはなに なみたちわたる | 読人不知 |
| 762 | とまりする をしまかいその なみまくら さこそはふかめ よさのうらかせ | 通具 |
| 763 | けふいくか なみのまくらに あけくれて やまのはしらぬ つきをみるらむ | 為藤 |
| 764 | わたのはら やそしまかけて しるへせよ はるかにかよふ おきのつりふね | 秀能(藤原秀宗男) |
| 765 | すみたかは ふるさとおもふ ゆふくれに なみたをそふる みやことりかな | 俊成(藤原俊忠男) |
| 766 | かきりなく とほくきにけり すみたかは こととふとりの なをしたひつつ | 後光厳院 |
| 767 | くさむすふ かりほのとこの あきのそて つゆやはぬらす ゆふくれのそら | 忠良 |
| 768 | ゆきなれぬ ひなのあらのの つゆわけて しをるるたひの ころもへにけり | 近衛(今出河院) |
| 769 | ふるさとを わすれむとても いかかせむ たひねのあきの よはのまつかせ | 為兼 |
| 770 | あきのよも あまたたひねの くさまくら つゆよりつゆに むすひそへつつ | 為道 |
| 771 | おほえやま こえゆくすゑも たひころも いくののつゆに なほしをるらむ | 義詮 |
| 772 | つゆふかき のへのをささの かりまくら ふしなれぬよは ゆめもむすはす | 伏見院 |
| 773 | いつまてか くさのまくらの しらつゆの おくとはいそき ぬとはしをれむ | 為秀 |
| 774 | あつまのの つゆわけころも こよひさへ ほさてやくさに まくらむすはむ | 宗秀(藤原宗奉男) |
| 775 | みやこをは よふかくいてて あふさかの せきにまたるる とりのこゑかな | 有忠 |
| 776 | せきのとも はやあけかたの とりのねに おとろかされて いそくたひひと | 資明 |
| 777 | あふさかの とりのねとほく なりにけり あさつゆわくる あはつののはら | 頓阿 |
| 778 | たれかまた つゆけきのへの かりねせむ むすひてすつる くさのまくらに | 宗経(平経親男) |
| 779 | わけすくる ちくさのはなの すりころも おもひみたるる たひのそらかな | 後嵯峨院 |
| 780 | さくらいろに はるたちそめし たひころも けふみやきのの はきかはなすり | 有家(藤原重家男) |
| 781 | わけゆけと はなのちくさの はてもなし あきをかきりの むさしののはら | 行春(二階堂時元男) |
| 782 | しらかはの せきやをつきの もるかけは ひとのこころを とむるなりけり | 西行 |
| 783 | こよひこそ つきにこえぬれ あきかせの おとにのみきく しらかはのせき | 忠守 |
| 784 | あきかせに けふしらかはの せきこえて おもふもとほし ふるさとのやま | 基家 |
| 785 | あしからの やまちのつきに みねこえて あくれはそてに しもそのこれる | 成茂 |
| 786 | ゆくすゑは つきにやこえむ たひころも ひもゆふくれの さやのなかやま | 善了 |
| 787 | たひのそら いくゆふくれに まちいてて やまのはかはる つきをみつらむ | 兼好 |
| 788 | たひひとは またいてやらぬ せきのとに つきそさきたつ ありあけのそら | 為相 |
| 789 | われならぬ ひともやかかる たひねして ありあけのつきに ものおもふらむ | 家経(一条実経男) |
| 790 | ふりすてて たれかはこえむ すすかやま せきやはよはの つきももりけり | 氏忠 |
| 791 | たひひとの よこほりふせる やまこえて つきにもいくよ わかれしつらむ | 家持 |
| 792 | さらぬたに みやここひしき あつまちに なかむるつきの にしへゆくかな | 後鳥羽院 |
| 793 | まつかねの あらしのまくら ゆめたえて ねさめのやまに つきそかたふく | 伏見院 |
| 794 | いほりさす はやまかはらの かりねには まくらになるる さをしかのこゑ | 頼実(藤原経宗男) |
| 795 | まつかねの まくらにしかの こゑはして このまのつきを そてにみるかな | 丹後(宜秋門院) |
| 796 | かりなきて あさかせさむし ふるさとに わかおもふいもや ころもうつらむ | 頼貞 |
| 797 | こよひもや さののをかへの あきかせに ささはかりしき ひとりかもねむ | 知家 |
| 798 | ささまくら よはのころもを かへさすは ゆめにもうとき みやこならまし | 長舜 |
| 799 | くさまくら つゆうちはらふ そのままに なみたかたしく よはのころもて | 業氏 |
| 800 | ふるさとに かよふたたちは ゆるさなむ たひねのよはの ゆめのせきもり | 実超 |
| 801 | くさまくら そてのみぬるる たひころも おもひたちけむ ことそくやしき | 顕輔 |
| 802 | しもさゆる たひねのとこの さひしさを いかにとたにも とふひともかな | 仲正 |
| 803 | たひならぬ われもころもを かたしきて おもひやれとも いかかとふへき | 読人不知 |
| 804 | からころも はるはるきぬる たひねにも そてぬらせとや またしくるらむ | 為家 |
| 805 | さととほき やまちのくもは しくれつつ ゆふひにいそく あきのたひひと | 為氏 |
| 806 | しくれつる くもをとやまに わけすてて ゆきにこえゆく あしからのせき | 兼直 |
| 807 | やすらはは なほそつもらむ ふるゆきに しひてやこえむ ふゆのやまみち | 承覚法親王 |
| 808 | かひかねは なほいかはかり つもるらむ はやゆきふかし さやのなかやま | 寂真 |
| 809 | かへるさは としさへくれぬ あつまちや かすみてこえし しらかはのせき | 隆博 |
| 810 | たひころも はるはるきぬる やつはしの むかしのあとに そてもぬれつつ | 為家 |
| 811 | やともかな さののわたりの さのみやは ぬれてもゆかむ はるさめのころ | 家長(源時長男) |
| 812 | たのめおく やとしなけれは たひのそら くるるをみちの かきりにそゆく | 読人不知 |
| 813 | ゆきくれぬ こやにひとよの やととひて なにはのあしの かりねをやせむ | 季賢 |
| 814 | けふこそは よそになりぬれ かつらきや こえしたかまの みねのしらくも | 公順 |
| 815 | ふるさとを へたてきにけり たひころも かさなるやまの やへのしらくも | 通相 |
| 816 | たちかへり またもやこえむ みねのくも あともさためぬ よものあらしに | 雅経 |
| 817 | みやまちを ゆふこえくれて やともなし くもゐるみねに こよひかもねむ | 花園院 |
| 818 | みやこおもふ うつのやまみち こえわひぬ ゆめかとたとる こころまよひに | 尊円法親王 |
| 819 | つゆしけき つたのしけみを わけこえて をかへにかかる うつのやまみち | 定円(葉室光俊男) |
| 820 | あけぬとて ふもとのさとは いてぬれと またきりくらき さよのなかやま | 斉時 |
| 821 | いつくにか やとをからまし いはねふみ かさなるやまに ひはくれにけり | 性厳 |
| 822 | たつたやま ゆふこえくれぬ おほともの みつのとまりに ふねやまつらむ | 家隆 |
| 823 | こきいてし みなとへたてて わたのはら かさなるくもに かかるしらなみ | 行親 |
| 824 | こくふねの ゆくへもしらぬ なみまより みゆるこしまや とまりなるらむ | 基嗣 |
| 825 | わたのはら おきこくふねの よるへなみ あまのすむてふ さとやとはまし | 為定(御子左二条為道男) |
| 826 | いかにして ひともかよはむ わたのはら ふねとかせとの たよりならすは | 後宇多院 |
| 827 | みわたせは みとりのそらに なみかけて とまりもしらぬ ふなてしにけり | 公能 |
| 828 | ふしなれぬ とこのうらかせ みにしみて こころうきたつ なみのおとかな | 守覚法親王 |
| 829 | ふしなれぬ はままつかねの いはまくら そてうちぬらし かへるうらなみ | 定家 |
| 830 | こととひて いくたひすきぬ ともちとり あらいそなみの よるのうきねに | 実夏 |
| 831 | ふしわひぬ あしのはそよく みなとかせ さむくふくよの なみのまくらに | 杲守 |
| 832 | みにそしむ かかるところの よはもまた なれぬたひねを すまのうらかせ | 為子(贈従三位) |
| 833 | かちまくら いかにさためて ゆめもみむ うきねになるる ひとにとははや | 基任 |
| 834 | ころもてを しきつのうらの うきまくら なみたもなみも かけぬよそなき | 覚寛 |
| 835 | うきまくら むすひもはてぬ ゆめちより やかてうつつに かへるなみかな | 行氏(平胤行男) |
| 836 | おもひやれ なれたるあまの そてたにも なみのうきねは ぬるるならひを | 忠基(九条経教男) |
| 837 | こころして とまひきおほへ うきくもも あめになるとの おきつふなひと | 成清 |
| 838 | ふねとめて かたしくそての うらかせを たゆたふなみの まくらにそきく | 源意(藤原源守男) |
| 839 | ともさそふ むろのとまりの あさあらしに こゑをほにあけて いつるふなひと | 茂重 |
| 840 | うかりける あらいそなみの おとまても ならはぬたひに そてそしをるる | 貞重 |
| 841 | まとろまて つきをそみつる よるなみの あらきはまへの よはのかりねに | 兼氏 |
| 842 | いせしまや つきにをりしく はまをきの かりねもさむし あきのしほかせ | 源承 |
| 843 | をりしかむ ひまこそなけれ おきつかせ ゆふたつなみの あらきはまをき | 家隆 |
| 844 | くさのはに おきゐるつゆの きえぬまに たまかとみゆる ことのはかなさ | 人麿 |
| 845 | ひさかたの そらみることく あふきみし みこのみかとの あれまくをしも | 人麿 |
| 846 | かからむと おもひしもせは おほふねの とまるとまりに しめゆはましを | 額田王 |
| 847 | ふちころも おりけるいとは みつなれや ぬれはまされと かわくまもなし | 貫之 |
| 848 | ことのはに いひおくつゆも なかりけり しのひくさには ねをのみそなく | 重之 |
| 849 | かりそめの わかれならねは しのふくさ しのふにつけて つゆそこほるる | 輔親 |
| 850 | あしひきの やまほとときす このころは わかなくねをや ききわたるらむ | 道命 |
| 851 | いとへとも あまりうきみの なからへて ひとにおくるる かすつもるらむ | 赤染衛門 |
| 852 | なきひとに ゆきあふさかと おもひせは たえぬなみたは せきとめてまし | 新少将 |
| 853 | よのなかに うかりしあきと おもへとも くれゆくけふは をしくやはあらぬ | 公通 |
| 854 | かきりなく けふのくるるそ をしまるる わかれしあきの なこりとおもへは | 堀河(待賢門院) |
| 855 | いろはみな むなしきものを たつたかは もみちなかるる あきもひととき | 定家 |
| 856 | こよひこそ おもひしりぬれ あさからす きみにちきりの あるみなりけり | 西行 |
| 857 | かかりける わかれをしらて やましろの とはにもきみを たのみけるかな | 信実 |
| 858 | いまはとて みしおもかけの さらになほ みにそふものと なりにけるかな | 秀茂 |
| 859 | あけくれは みをもはなれぬ おもかけの ありてなきこそ はかなかりけれ | 基平(近衛兼経男) |
| 860 | ときのまも わすられはこそ なくさまめ おもかけはかり うきものはなし | 公豪 |
| 861 | おもひいてて みるもかなしき おもかけを なになかなかに うつしおきけむ | 如円 |
| 862 | あはれとも いふへきひとは さきたちて のこるわかみそ ありてかひなき | 左京大夫(永陽門院) |
| 863 | ことわりの ならひたかはて たらちねの あととふみちは なにかかなしき | 円伊 |
| 864 | ことわりの たかはぬのみそ うかりける みにもかへてと おもふわかれは | 有忠 |
| 865 | しひてこそ よのならひとは おもひなせ あはれたくひも なきわかれかな | 頼時女 |
| 866 | よのうさも いかはかりかは なけかれむ はかなきゆめと おもひなさすは | 兵衛督(達智門院) |
| 867 | よのなかの うつつのやみに みるゆめの おとろくほとは ねてかさめてか | 慈円 |
| 868 | きみたにも ありていとはは わひつつも みのうきのみや なけきならまし | 隆信 |
| 869 | ひとしれす おもひしことを ちきりおかて うきなをとめむ あとのかなしさ | 読人不知 |
| 870 | かよひける こころをしらて いとはせて のちはくやしき ねをのみそなく | 読人不知 |
| 871 | かきくらす そてのなみたに せきかねて ことのはたにも かきもやられす | 後伏見院 |
| 872 | いろふかき そてのなみたに ならふらし ちしほやちしほ そむるもみちは | 花園院 |
| 873 | おもへたた つらねしえたは くちはてて たのむかけなく なれるなけきを | 実継 |
| 874 | つねよりも しくれしくれて すみそめの ころもかなしき かみなつきかな | 大弐(安喜門院) |
| 875 | あめとのみ ふるはなみたと おもひしに そらさへくるる きのふけふかな | 雅言 |
| 876 | かきくらす なみたはかりに ほしわひて ふりけるあめも わかぬそてかな | 邦長 |
| 877 | そらたにも なほかきくれて ふるあめに なみたのそてを おもひこそやれ | 源承 |
| 878 | おもひやれ そらもひとつに かきくれて あめもなみたも しほるたもとを | 行済 |
| 879 | おもはすよ よはのけふりと のほるまて ひとりたちそふ ちきりありとは | 境空 |
| 880 | さらにまた たちおくれしと したふかな もえしけふりの あとをたつねて | 吉子(従三位) |
| 881 | きのふといひ けふとさきたつ ゆふけふり きえのこるみの あはれいつまて | 玄円 |
| 882 | たちのほる のへのけふりや なきひとの ゆきてかへらぬ かきりなるらむ | 澄経 |
| 883 | ぬきかふる ほとをもまたて ふちころも なけくなみたに くちやはてなむ | 経深 |
| 884 | このままに おもひやたたむ ぬきかへは なこりもかなし すみそめのそて | 行春(二階堂時元男) |
| 885 | きしよりも ぬくそかなしき きみかため そめしころもの いろとおもへは | 長家 |
| 886 | おくりおきし のはらのつゆを そのままに ほさてくちぬる ふちころもかな | 広房(大江広房男) |
| 887 | とほからぬ つひのすみかを いつくとて のへにひとよを あかしかぬらむ | 長明 |
| 888 | つゆきえし くさのゆかりを たつぬれは むなしきのへに あきかせそふく | 寿成門院 |
| 889 | おもひいつる はるのみやまの かけまても なみたにうかふ よはのつきかな | 俊顕 |
| 890 | くものうへと みしはのはらと なりぬれと むかしににたる つきのかけかな | 西花門院 |
| 891 | あきらけき こよひのつきに さそはれて むなしきそらに いまかへりぬる | 妙宗 |
| 892 | ゆくすゑを おもふにそての ぬるるかな つひにのかれぬ みちしはのつゆ | 高秀 |
| 893 | いまはわれ たれとともにか ならふへき ふるきまくらそ みるもかなしき | 久明親王 |
| 894 | しられしな おなしうきよの わかれちに よそのあはれも そてぬらすとは | 宰相典侍(後宇多院) |
| 895 | なきあとの みそちあまりの みとせまて とふにそおいの うさもわするる | 栄運 |
| 896 | たまぬきし あやめのくさは ありなから よとこはあれむ ものとやはみし | 江侍従 |
| 897 | あやめくさ ことしはよそに みるそてに かはりてかかる わかなみたかな | 義詮 |
| 898 | またもこむ はるたにもうき わかれちに こそをかきりの あとそかなしき | 性威 |
| 899 | こひしさや たちまさるらむ かすみさへ わかれしとしを へたてはつれは | 出羽弁 |
| 900 | わかれにし としをはかすみ へたつれと そてのこほりは とけすそありける | 経信 |
| 901 | けふとても いそかれぬかな なへてよを おもひうみにし たなはたのいと | 上東門院(道長女彰子) |
| 902 | なかきよの ためしとききし すみのえの まつのけふりと なるそかなしき | 頼忠 |
| 903 | もろともに こえましものを してのやま またおもふひと なきみなりせは | 成仲 |
| 904 | きみかため いとといのちの をしきかな かかるうきめを みせしとおもへは | 成仲女 |
| 905 | みつのおもに うかへるたまの ほともなく きゆるをよその ものとやはみる | 教長 |
| 906 | よそまても そてこそぬるれ あたしのや きえにしつゆの あきのあはれに | 慈道法親王 |
| 907 | ひかすふる のちもいまさら せきかねつ とふにつらさの そてのなみたは | 実性 |
| 908 | つゆのみを はかなきものと おもひしる こころそやかて むなしかりける | 師教(九条忠教男) |
| 909 | すゑのつゆ あさちかもとを おもふにも わかみひとつの あきのむらさめ | 家隆 |
| 910 | あさかほの あたにはかなき いのちをは つとめてのみそ しはしたもたむ | 源信 |
| 911 | うつせみの よのはかなさを おもふには なほあたならぬ あさかほのはな | 頓阿 |
| 912 | うつせみは むなしきからも のこりけり きえてあとなき あさかほのつゆ | 為定(御子左二条為道男) |
| 913 | なけくらむ こころをくみて かすかすに かくもかなしき みつくきのあと | 惟継 |
| 914 | かきなかす このみつくきの あとなくは したにそむせふ なけきならまし | 為藤 |
| 915 | とてもかく かりのよならは かりにたに なとなきひとの かへらさるらむ | 成光(祝部成国男) |
| 916 | はかなくも これをかたみと なくさめて みにそふものは なみたなりけり | 宗尊親王 |
| 917 | きみもけに これそかきりの かたみとは しらてやちよの あとをとめけむ | 順徳院 |
| 918 | おなしよの わかれはなほそ しのはるる そらゆくつきの よそのかたみに | 順徳院 |
| 919 | あさほらけ こきゆくあとに きゆるあわの あはれまことに うきよなりけり | 隆信 |
| 920 | いはしみつ いはぬものから こかくれて たきつこころを ひとはしらなむ | 伊勢 |
| 921 | そらにしる ひとはあらしな しらゆきの きえてものおもふ わかこころとは | 人麿 |
| 922 | つくまのに おふるむらさき きぬにそめ いまたきすして いろにいてにけり | 笠女郎 |
| 923 | おもひあまる けふりやたちて おのつから こころのそらの くもとなるらむ | 円融院 |
| 924 | ひとしれぬ しのふのうらの ゆふけふり おもひたつより みはこかれつつ | 邦世親王 |
| 925 | ひとしれぬ こころはかりに さそはれて まよふこひちは とふかたもなし | 公賢 |
| 926 | ゆふくれの そらにはかなく ゆくくもの あとなきみちに おもひたつらむ | 行能 |
| 927 | かつらきや たかまのやまに さすしめの よそにのみやは こひむとおもひし | 家隆 |
| 928 | のにもあらす やまにもあらぬ こひちにも いるよりそてそ つゆけかりける | 大輔(殷富門院) |
| 929 | かひかねに このはふきしく あきかせも こころのいろを えやはつたふる | 定家 |
| 930 | おのつから ふきかふかせの たよりにも おもふこころを つたへてしかな | 実明女 |
| 931 | このまより かけのみみゆる つきくさの うつしこころは そめてしものを | 読人不知 |
| 932 | つきくさの はつはなそめの したころも したにうつるを しるひとそなき | 経継 |
| 933 | かくとたに いはまにむせふ たにみつの もらさはかよふ こころともかな | 聖尊法親王 |
| 934 | たにかけや いはまをせはみ ゆくみつの わきかへるとも しるひとそなき | 定為 |
| 935 | もらすなよ このはにうつむ たにみつの そこのこころは わきかへるとも | 氏経 |
| 936 | わかそてに ありとやいはむ よしのかは たえすおつなる たきのみなかみ | 隆博 |
| 937 | あさきせそ なみはたつらむ よしのかは ふかきこころを きみはしらすや | 読人不知 |
| 938 | なみたかは いかなるみつか なかるらむ なとわかこひを けつひとのなき | 躬恒 |
| 939 | よしさらは もるにまかせむ なみたかは なかれのすゑに あふせありやと | 実直母 |
| 940 | やまかはの たきつこころも せきかねつ おもふにあまる そてのなみたに | 為氏 |
| 941 | そてにおつる たきのしらいと うちはへて くるしきなかに むすほほれつつ | 常顕 |
| 942 | せきかねて おつるはかりそ いまもなほ おとにはたてぬ そてのたきつせ | 兵衛督(達智門院) |
| 943 | もらすへき ひまこそなけれ しのふやま しのひてかよふ たにのしたみつ | 小宰相(土御門院) |
| 944 | しのふやま またことかたに みちもかな ふりぬるあとは ひともこそしれ | 兼好 |
| 945 | こひしなむ のちのよまての おもひては しのふこころの かよふはかりか | 忠度 |
| 946 | しはしこそ うのはなかきの ほとときす いつかたもとは さみたれのそら | 慈円 |
| 947 | ひとしれす おもひしのふの やまかせに ときそともなき つゆそこほるる | 俊成女 |
| 948 | いかにせむ しのふもちすり とにかくに おもひみたるる そてのなみたを | 実衡女 |
| 949 | からあゐの やしほのころも ふかけれと あらぬなみたの いろそまかはぬ | 知家 |
| 950 | うちつけに おもひそめける こころかな やかてちしほの そてのなみたは | 宣子(従二位) |
| 951 | せきかへす なみたをかねて おもふかな くちなむそての はてはいかにと | 公雄 |
| 952 | せきかへす たよりたになく かなしきは そてにもしのふ なみたなりけり | 為子(贈従三位) |
| 953 | つひにさて せくにくちぬる そてならは もらぬなみたの かひやなからむ | 常元 |
| 954 | いかにして なみたつつまむ かけやとす つきこそそての いろにいつとも | 為定(御子左二条為道男) |
| 955 | たれゆゑの なみたとひとの おもふらむ しらせぬさきに ぬるるたもとを | 英時 |
| 956 | たもとこそ なみたほすまも かたからめ こころをさへに さのみしほらし | 為嗣 |
| 957 | ゆふしくれ もるやまかけに たちぬれて うつろふそての いろやまかへむ | 覚為 |
| 958 | こかれゆく よそのもみちに くらへみよ たもとにかかる あきのむらさめ | 実氏 |
| 959 | つゆはまつ いろにやいてむ おもふとも いはてしのふの もりのしたくさ | 義詮 |
| 960 | しられしな しのふのもりの したくさに おきそふつゆは むすほるるとも | 源承 |
| 961 | つもりては そてにもふちと なりやせむ なみたはきくの つゆならねとも | 隆博 |
| 962 | かくしつつ としもへにけり ことのはの ひとつてならぬ たよりまつまに | 教定(飛鳥井雅経男) |
| 963 | いとせめて しのふるなかの たまつさは おもふかきりを かきもつくさす | 花園院 |
| 964 | ちらすなよ しのふのもりの ことのはに こころのおくの みえもこそすれ | 尊円法親王 |
| 965 | おもひつつ ここらのとしを しのふくさ しのふるほとに つみてけるかな | 輔親 |
| 966 | としをへて ちりのみつもる なみたかな とこうちはらふ ひとしなけれは | 深養父 |
| 967 | いひいてて つれなからすは としつきを しのひきつるや くやしからまし | 忠房親王 |
| 968 | ひとしれぬ なみたのたまの おのれのみ おもひくたけて としそへにける | 行氏(平胤行男) |
| 969 | もらさしと なにしのふらむ かすならぬ みをしらてこそ おもひそめしか | 則祐 |
| 970 | せきかへす そてのなみたの たまかつら かけてもしらし いろしみえねは | 師賢(藤原師信男) |
| 971 | つひにわか こころやいろに あらはれむ しはしはつつむ うきななりとも | 尊氏 |
| 972 | かくはかり しのはさりせは こひしさの ひとかたにのみ ものやおもはむ | 基任 |
| 973 | こひすてふ みをのそまひと あさゆふに たつなはかりの やむときもなし | 実兼 |
| 974 | あしかもの おりゐるいけの みつなみの たつことやすき わかななりけり | 実雄 |
| 975 | いかかせむ そらにかすみの たつなのみ はれぬこひちに まよひはてなは | 為道 |
| 976 | せめてなほ なくさむかたも ありなまし あふにしかふる うきななりせは | 瑒子内親王 |
| 977 | いつしかと わかなはたちぬ しきたへの まくらにたれか しらせそめけむ | 長秀 |
| 978 | もらさしと おさふるそてそ なかなかに ひとめにあまる なみたなりける | 行経 |
| 979 | あらはれて いつなにたたむ せきもりの うちぬるひまの かすもつもらは | 公宗母 |
| 980 | こえわふる あふさかやまの せきよりも よそにもるなそ くるしかりける | 光明 |
| 981 | うきひとの こころのせきと なりはてて なほこえかたき あふさかのやま | 重基(平) |
| 982 | ふしのねや もえつつとはに なけきても ならぬおもひの はてそかなしき | 為氏 |
| 983 | するかなる やまはふしのね わかことや たえぬけふりに むすほほるらむ | 実氏 |
| 984 | ふしのねや たえぬけふりの ゆくへたに しらぬおもひの としのへぬらむ | 道助法親王 |
| 985 | ふしのねの とはにもゆれは うきひとや めつらしけなく おもひけつらむ | 為明 |
| 986 | ことうらに なひかぬほとそ ゆふけふり わかしたもえの たのみなりける | 頓阿 |
| 987 | なひきける わかみあさまの こころから くゆるおもひに たつけふりかな | 小侍従(太皇太后宮) |
| 988 | うきなかは ちきりあさまの ゆふけふり わかためもゆと みやはとかめむ | 為定(御子左二条為道男) |
| 989 | かみよより けふりたえせぬ ふしのねは こひやつもりて やまとなるらむ | 素暹 |
| 990 | ひとりぬる まくらのちりの つもりてや むなしきとこの やまとなるらむ | 寛耀 |
| 991 | あひおもはぬ いもをなにせむ うはたまの こよひもゆめに みえもこなくに | 人麿 |
| 992 | ゆめにたに みるへきものを ねさめつつ こふるこころは ゆくかたもなし | 元良親王 |
| 993 | おもひねの ゆめのうきはし とたえして さむるまくらに きゆるおもかけ | 俊成女 |
| 994 | うつつには わすれやはする うきことの ゆめこそさむる ほとなかりけれ | 公雄 |
| 995 | ひとはよも こころかよはし よひよひの わかおもひねの ゆめのうきはし | 義詮 |
| 996 | うきひとの こころにはあらて おもひつつ ぬれはそみゆる ゆめはたのまし | 為定(御子左二条為道男) |
| 997 | まことなき ゆめのたたちの おもかけは たかいつはりに かよひそめけむ | 為信 |
| 998 | せめてなほ うつつにつらき なくさめと ぬるよのゆめを まつもはかなし | 為教 |
| 999 | ねぬるよの ゆめにこえける あふさかや ひともゆるさぬ せきちなるらむ | 成景 |
| 1000 | あきのよの とりのはつねは つれなくて なくなくみえし ゆめそみしかき | 定家 |
| 1001 | きえわふる しものころもを かへしても みしよまれなる ゆめのかよひち | 通光 |
| 1002 | なかきよに こほりかたしき ふしわひぬ まとろむほとの なみたならねは | 高倉(八条院) |
| 1003 | あはぬよの つらさかさなる さむしろに かたしくものは なみたなりけり | 隆教 |
| 1004 | あふまてと うきにたへたる つきひさへ せめてつれなく くるるとしかな | 四条(安嘉門院) |
| 1005 | あふまてと たのみしままに としくれて ちきりもしらす ゆくつきひかな | 為氏 |
| 1006 | あふまての ちきりもまたす なつひきの てひきのいとの こひのみたれは | 為家 |
| 1007 | あふことは なほかたいとに ぬくたまの こころよわくそ おもひみたるる | 内経 |
| 1008 | きえねたた なにそはあたの ことのはに かけてもつらき そてのしらたま | 高倉(八条院) |
| 1009 | いたつらに としはへにけり たまのをの なからへはとも ちきりやはせし | 隆祐 |
| 1010 | たまささの はわけのつゆの きえぬへく おもふとまては しるひとやなき | 法守法親王 |
| 1011 | あきはきに おくしらつゆの きえかへり ひとをこひしと おもふころかな | 読人不知 |
| 1012 | しもかれの のへにあさふく かせのおとの みにしむはかり ものをこそおもへ | 赤染衛門 |
| 1013 | わかこひは くさはにあまる つゆなれや おきところなく みをなけくらむ | 良教 |
| 1014 | わかそては かりにもひめや くれなゐの あさはののらに かかるゆふつゆ | 式子内親王 |
| 1015 | うしとのみ ひとのこころを みしまえの いりえのまこも さそみたるらむ | 公実 |
| 1016 | ますかかみ こひしきひとは みえなくに わかおもかけの なにうつるらむ | 土御門院 |
| 1017 | わかなかは とほやまとりの ますかかみ よそにもひとの かけをやはみる | 定為 |
| 1018 | やまとりの をろのかかみの よそなから みしおもかけに ねこそなかるれ | 実直母 |
| 1019 | いつまてか よそにのみして あまくもの へたつるなかに こひわたるへき | 祐夏(鴨祐雄男) |
| 1020 | あふまてと たのみをかけし たまのをの よわるはかりに としそへにける | 基嗣 |
| 1021 | ひとしれぬ おもひのたまの をたえなは なにしてあはぬ かすをとらまし | 伊勢大輔 |
| 1022 | こひしなぬ いのちはかりを おなしよの ちきりありとや なほたのままし | 寿成門院 |
| 1023 | みなといりの あしまをわけて こくふねも おもふなかには さはらさりけり | 但馬(藻璧門院) |
| 1024 | あしまより なにはのうらを ひくふねの つなてなかくも こひわたるかな | 読人不知 |
| 1025 | なそもかく あまのとわたる あまをふね かちとるまなく ものおもふらむ | 基俊 |
| 1026 | よさのうみの あまのしわさと みしものを さもわかやくと しほたるるかな | 和泉式部 |
| 1027 | あふことは かたたのうらの おきつなみ たつなはかりや ちきりなるらむ | 道暁 |
| 1028 | しほたるる みをはおもはす ことうらに たつなくるしき ゆふけふりかな | 少将内侍(後深草院) |
| 1029 | あふことも みにはなきさに よるなみの よそのみるめに ねこそなかるれ | 後伏見院 |
| 1030 | いつまてか おもひみたれむ いたつらに おきつたまもの みかくれにして | 時光 |
| 1031 | いかにせむ もろこしふねの よるかたも しらぬにさわく そてのみなとを | 為定(御子左二条為道男) |
| 1032 | あふことは なみちはるかに こくふねの ほのみしひとに こひやわたらむ | 一条(徽安門院) |
| 1033 | よるふねの たよりはなくて いたつらに わかみこかるる とこのうらなみ | 為秀女 |
| 1034 | はるたては そらのけしきの かはるかな つらきこころも かからましかは | 成助 |
| 1035 | へたてたる かすみのまより ちるはなは しのふにあまる こころとをしれ | 高遠 |
| 1036 | いかにして はなのしたひも とけにけむ ひとのこころは ありしなからに | 基俊 |
| 1037 | むらさきの こそめのおひの かたむすひ とけてぬるよの かきりしらせよ | 教実 |
| 1038 | かりそめに むすひすてける したおひを なかきちきりと なほやたのまむ | 民部卿典侍(後堀河院) |
| 1039 | おもへとも えそいはしろの むすひまつ うちとけぬへき こころならねは | 祖月 |
| 1040 | すきたてる やともをしへす つらけれは みわのやまへを たれにとはまし | 伊尹 |
| 1041 | いのらすよ はつせのひはら しくれにも つゆにもそめぬ いろをみむとは | 行乗 |
| 1042 | みそきせし かみもうけすは たちかへり つらきひとをや またかこたまし | 公秀 |
| 1043 | かみたにも なひかぬなかの ゆふしては なににかくへき たのみなるらむ | 為連 |
| 1044 | こひしなぬ みのつれなさを いのるより おもひたえぬと かみやしるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
| 1045 | しくれする いくたのもりの はつもみち ひをへてまさる いろにこひつつ | 良基(二条道平男) |
| 1046 | しくれゆく くものたえまの みねのまつ みすはつれなき ほともしられし | 行尹 |
| 1047 | あふことを しはしはかけし おきつなみ よそのみるめの たえもこそすれ | 為理 |
| 1048 | いもせやま なかるるたきの おとにのみ きかぬはかりを なほやたのまむ | 為藤 |
| 1049 | あふことの なきさにひろふ いしなれや みれはなみたの まつかかるらむ | 輔相 |
| 1050 | あまのかる みるめはよその ちきりにて しほひもしらぬ そてのうらなみ | 為兼 |
| 1051 | あまのたく もにすむむしに あらねとも われからこひに みをこかすかな | 為清 |
| 1052 | わかなかは うらよりをちに おくあみの ひけともよらぬ ほとそくるしき | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1053 | うらみても としふるあまの つりのをの うけくにうかふ なみたとをしれ | 実氏 |
| 1054 | きよみかた あふことなみの せきもりは わかかよひちに うちもたゆます | 藤経(源) |
| 1055 | せきもりの こころもしらす あふさかを わかかよひちと おもひけるかな | 長舜 |
| 1056 | きくもうし たれをなこその せきのなそ ゆきあふみちを いそくこころに | 為子(従二位為子) |
| 1057 | いかにまた こころひとつの かよひちも すゑはなこその せきとなるらむ | 隆房 |
| 1058 | よとともに むねあひかたき わかこひの たくひもつらき けふのほそぬの | 伏見院 |
| 1059 | こひしきも つらきもおなし おもひにて やむときもなき わかこころかな | 読人不知 |
| 1060 | あはれてふ ことのはいかて みてしかな わひはつるみの なくさめにせむ | 実方 |
| 1061 | あたにおく つゆのなさけの ことのはに わかいのちさへ かかるはかなさ | 小少将 |
| 1062 | うきになほ たへけるとしを かそふれは わかつれなさの ほとそしらるる | 頼康 |
| 1063 | なからへて おなしうきよに ありとのみ きくやわかみの たのみなるらむ | 義詮 |
| 1064 | つれなさの かきりもしらす おなしよに いのちあらはと たのむはかなさ | 良憲 |
| 1065 | かひなしや うきになしても ひとかたに おもひもこりぬ こころよわさは | 為兼 |
| 1066 | あふまては むすはさりける さきのよの むくひしられて うきちきりかな | 隆長 |
| 1067 | よよかけて われさへつらし むくひありて うきにひかるる ちきりとおもへは | 公蔭 |
| 1068 | むくひある よともしらてや うきひとの こころのままに つれなかるらむ | 善源 |
| 1069 | あらましに なくさむほとの ちきりたに わかこころより おもひたえにき | 実教 |
| 1070 | あふにたに かへむいのちは かなしきに うきひとゆゑに みをやすつへき | 俊恵 |
| 1071 | こひしなむ のちのよとても いかならむ いきてつれなき ひとのこころは | 為氏 |
| 1072 | つれなしと よそにやみえむ あふことに ひとのかへねは いけるいのちを | 基任 |
| 1073 | あひみての のちのつらさを せめてなと なけくはかりの おもひてもなき | 家定 |
| 1074 | さりともと はかなくたのむ こころこそ つれなきなかの ちきりなりけれ | 定煕 |
| 1075 | あふことに かへもこそすれ をしからぬ わかいのちとは ひとにかたらし | 宗恵 |
| 1076 | とはれぬも うきみのとかと おもふこそ せめてもしたふ こころなりけれ | 信方 |
| 1077 | なにかおもふ しひてもいはし うきみをは いとふもさこそ くるしかるらめ | 大輔(殷富門院) |
| 1078 | いせのうみの しほせになひく はまをきの ほとなきふしに なにしをるらむ | 寂蓮 |
| 1079 | せきとむる やまゐのみつの かけにたに みすはたもとを しほらましやは | 公相 |
| 1080 | ひとこころ あさきにまさる おもひかは うきせにきえぬ みつからもうし | 永福門院 |
| 1081 | ひとしれぬ こころのうちの おもひかは なかれてすゑの たのみたになし | 頼清 |
| 1082 | としをへて こひわたるみの くるしさを あはれとおもへ うちのはしひめ | 実継 |
| 1083 | おもひかね うちのかはをさ こととはむ みのうきふねも よるへありやと | 頼康 |
| 1084 | もかみかは ひとのこころの いなふねも しはしはかりと きかはたのまむ | 有家(藤原重家男) |
| 1085 | みつのうへの あわときえなは こひせかは なかれてものは おもはさらまし | 御匣(式乾門院) |
| 1086 | そこひなき ふちとなりても なみたかは したにこころの さわきやはせぬ | 為秀 |
| 1087 | あふせなき なみたのかはの みをつくし つらきしるしに くちやはてなむ | 公守 |
| 1088 | いかなれは ひとにこころを そめかはの わたらぬせにも そてぬらすらむ | 信聡 |
| 1089 | けふりたつ むろのやしまに あらぬみは こかれしことそ くやしかりける | 匡房 |
| 1090 | うきよをは なけきなからも すくしきて こひにわかみや たへすなりなむ | 忠度 |
| 1091 | さてしもそ いのちはいとと をしからむ あふにはかへし こひはしぬとも | 村基 |
| 1092 | あふことに かへぬいのちそ よそなから なかなかなかき ちきりなりける | 周清 |
| 1093 | みのうさを おもひもしらぬ ものならは なにをかこひの なくさめにせむ | 小侍従(太皇太后宮) |
| 1094 | しきたへの まくらもうとく なるまてに さてもねぬよの つもりぬるかな | 帥(鷹司院) |
| 1095 | こひわふる そてのなみたを そのままに ほさてかたしく よはのさむしろ | 頼隆 |
| 1096 | あふことは かたしきころも さむしろに ねぬよかさねて ぬるるそてかな | 宗範 |
| 1097 | ひとりぬる なみたのとこの ぬれころも あふよもしらて くちやはてなむ | 雅冬 |
| 1098 | いくよわれ おしあけかたの つきかけに ことわりならぬ ものおもふらむ | 按察(鷹司院) |
| 1099 | おのつから なくさむやとて なかむれは つきみぬよりも ぬるるそてかな | 後醍醐院 |
| 1100 | ゆきあはむ ほとをはしらす すみよしの まつのたえまの ちきのかたそき | 土御門院 |
| 1101 | まつひとも こすゑにかかる うつせみの うきみからにや おとつれもせぬ | 新少将 |
| 1102 | はかなしや たかいつはりの なきよとて たのみしままの くれをまつらむ | 為家 |
| 1103 | さりともと こころひとつに たのむかな ひとのしるへき ゆふへならねは | 通成 |
| 1104 | わくらはに まてとたのむる ことのはの いつはりならぬ ゆふくれもかな | 道意(西園寺実兼男) |
| 1105 | あきのあめに きりのはおつる ゆふくれを おもひすつるそ まつにまされる | 基家 |
| 1106 | いたつらに くらせるよひの さむしろは ゆめをたのみて ねむかたもなし | 信実 |
| 1107 | なけきわひ あふとはかりを いかにして くらせるよひの ゆめにたにみむ | 光吉 |
| 1108 | わひぬれは こよひもひとり ぬるかうちに みえつるゆめや しひてたのまむ | 貞世 |
| 1109 | これもまた まつとやいはむ さよころも かへすゆめちの たのみはかりに | 長雅 |
| 1110 | よしさらは またしとおもふ ゆふへこそ わかこころさへ たのみかたけれ | 冬平 |
| 1111 | いかたおろす そまやまかはの はやきせに さはらぬくれと おもはましかは | 広秀 |
| 1112 | おほゐかは ひとめもらさぬ けふやさは そまのいかたし くれをまつらむ | 馬内侍 |
| 1113 | まちなれし ゆふくれことに ささかにの いともくるしく ものをこそおもへ | 法守法親王 |
| 1114 | たのめしも またしるひとは なきものを おとになたてそ まつのゆふかせ | 一条(徽安門院) |
| 1115 | このくれも おとになたてそ しのふやま こころひとつの みねのまつかせ | 宣明 |
| 1116 | なほさりの ことのはにのみ ききなれて たのむかはりの ゆふくれもなし | 雅久 |
| 1117 | いつはりの うきにもたへて またれけり みはならはしの ゆふくれのそら | 為冬 |
| 1118 | いつはりの ことのはまては たのむとも ちきらぬくれの またれすもかな | 藤子(従三位) |
| 1119 | まつひとは こよひもいさや いりひさす とよはたくもの ゆふくれのそら | 忠幸 |
| 1120 | このくれに おとろかさすは かはりける ちきりもしらて なほやまたまし | 邦省親王 |
| 1121 | たのめねは いつはりとたに かこたれす わかなくさめに しひてまつよは | 為子(従三位) |
| 1122 | ひとかたに まちもやせまし いつはりの うきにならはぬ ゆふへなりせは | 実兼 |
| 1123 | いつはりは またれしまての なさけにて なかなかつらく なるちきりかな | 国冬 |
| 1124 | いつはりの ちきりなりとも たのみてや かはらはかこつ ことのはにせむ | 万代(後醍醐院女蔵人) |
| 1125 | かくはかり またれすもかな いつはりと おもひしままの こころなりせは | 尊道法親王 |
| 1126 | たのめこし うきいつはりを つらしとも いはぬにみゆる はなのいろかな | 読人不知 |
| 1127 | いはてたた あたにうつろふ はなにこそ とへとおもはぬ いろもみえしか | 家基(近衛基平男) |
| 1128 | よのなかに たえていつはり なかりせは たのみぬへくも みゆるたまつさ | 読人不知 |
| 1129 | はかなしや くるるよことの いつはりに いつまてこりぬ こころなるらむ | 孝朝 |
| 1130 | はかなくて まつらむとこそ いつはりに ちきりしひとは おもひいつらめ | 為藤 |
| 1131 | いつはりの ちきりならすは おのつから ひともひとめの ひまやまつらむ | 浄弁 |
| 1132 | こぬまても なくさむものを いつはりの なきよなれとは たれかいひけむ | 宗尊親王 |
| 1133 | ちきれはと たのむもかなし いつはりの なきゆふくれに いつならひけむ | 為子(贈従三位) |
| 1134 | いくよまて まちあかせとて うきひとの なほいつはりの かすつもるらむ | 廉仁王 |
| 1135 | いつまてか こぬよあまたと うらみても さすかまたれし ゆふへなりけむ | 隆博 |
| 1136 | いつはりの むなしきかすの つもるより ゆふくれをさへ うらみつるかな | 如雄 |
| 1137 | いつはりと おもはてたのむ くれもかな まつほとをたに なくさめにせむ | 則祐 |
| 1138 | ささかにの いとかきたえし ゆふへより そてにかかるは なみたなりけり | 基成 |
| 1139 | さりともと ゆふけのうらの こよひさへ あはすはたのむ かひやなからむ | 瑒子内親王 |
| 1140 | たのめても いかかとおもふ よひのまの あめにそいとと まちよわりぬる | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1141 | おのつから ひとまありとも つけてまし まことにかよふ こころとおもはは | 花園院 |
| 1142 | いつはりも かきりあらはと たのむよの いくたひふけて ひとりねぬらむ | 為相 |
| 1143 | ふけぬるを うらみむとたに おもふまに こぬよしらるる とりのこゑかな | 頓阿 |
| 1144 | またしとは おもふものから ふくるよの つらきやなにの こころなるらむ | 一条(照慶門院) |
| 1145 | こよひさへ むなしくふくる ともしひの きえなてあすも あらむものかは | 光厳院 |
| 1146 | ふくるまて なほこそたのめ こよひそと いはぬをたにも まちしこころに | 良基(二条道平男) |
| 1147 | よひのまは いててはらはむと おもひしに さきたつそての つゆそあやしき | 土御門院 |
| 1148 | うきひとの おもかけそへて たのむよも こぬよもひとり つきをみるかな | 邦省親王 |
| 1149 | つれなさの かきりをそしる たのめつつ こぬよのつきの ありあけのそら | 在夏 |
| 1150 | こよひまた むなしきそてに ふけぬとは なみたにやとる つきそしるらむ | 冬定 |
| 1151 | よひのまの しけきひとめの やすらひに まつほとすきて つきそふけゆく | 基氏(足利尊氏男) |
| 1152 | たのめすは さてもねぬへき よひよひの つらさにかへて つきをみるかな | 顕実母 |
| 1153 | きみまつと ひとにはいはぬ いつはりも いくよになりぬ やまのはのつき | 是法 |
| 1154 | いつはりと おもひもしらす またるるや こころにたえぬ ちきりなるらむ | 信武 |
| 1155 | まてはこそ うらみもまされ いつはりに おもひなしてや うちもねなまし | 雅孝 |
| 1156 | まきのとを たたくくひなを それかとも おとろかぬまて とはぬきみかな | 師光(源師頼男) |
| 1157 | まきのとは さしてこよひも あけにけり さはるといはて なにまたるらむ | 重直 |
| 1158 | あしまゆく いりえのふねの つなてなは さはるやよそに こころひくらむ | 長綱(菅原茂長男) |
| 1159 | たのめつつ こぬよにかねて ならはすは けふやつらさの はしめならまし | 光行 |
| 1160 | たのめつつ こぬよのかすは つもれとも またしとおもふ こころたになし | 行広 |
| 1161 | おもひつつ ひるはかくても なくさめつ よるそわひしき ひとりぬるみは | 読人不知 |
| 1162 | いつはりと なにかかこたむ おもはねは とはぬそひとの まことなりける | 昌義 |
| 1163 | たちかへり なほこそたのめ いつはりも つもらはひとや おもひしるとて | 隆淵 |
| 1164 | せめてたた ふけゆくかねそ またれける わすれてこすは おとろかせとて | 国夏 |
| 1165 | たのめても こぬみのはまの おきつかせ なにいほさきの まつにふくらむ | 能誉 |
| 1166 | ゆめのこと なとかよるしも きみをみむ くるるまつまも さためなきよを | 忠見 |
| 1167 | ゆめとたに おもひもわかぬ ちきりかな やみのうつつの さたかならねは | 忠貞 |
| 1168 | うきなのみ たつあたなみの あさきせは かよふかひなき にほのしたみち | 寛耀 |
| 1169 | うきふしと なかなかなりぬ ささまくら むすふひとよの ゆめのちきりは | 読人不知 |
| 1170 | わすれしな ひとよのふしの ささまくら ひとこそかりに おもひなすとも | 良基(二条道平男) |
| 1171 | こひしなは くやしかるへき ちきりかな いのちそひとの なさけなりける | 後宇多院 |
| 1172 | さすかまた かきりありける ちきりとや いのちつれなく たのみきつらむ | 為子(贈従三位) |
| 1173 | かくてしも ありはつましき ちきりとや あふよをひとの なほしのふらむ | 経賢 |
| 1174 | あふさかの このしたかけの いはしみつ なかれてむすふ ちきりともかな | 為明 |
| 1175 | おのつから あふよまれなる ちきりをは しのはすとても たれかしるへき | 信実 |
| 1176 | さむしろの ちりははらはし あはぬよの つもれるかすも おもひしれとて | 宣子(従三位藤原) |
| 1177 | うらむへき ことのはそなき くすかつら くるよはひとの うさもわすれて | 頓宗 |
| 1178 | まれにくる ひとのなみたも おちそひて あふよそそては ぬれまさりける | 基世女 |
| 1179 | おのつから きてもたのます なみたせく はないろころも かへりやすさは | 隆教 |
| 1180 | まてしはし またゆふくれと ちきるとも なほなくさまし けさのわかれち | 道平 |
| 1181 | おもひしれ またゆふくれの たのみたに なくなくをしき けさのなこりを | 時秀 |
| 1182 | そのままに さてもきえなて しらつゆの おきてかなしき みちのしはくさ | 為家 |
| 1183 | なくさむる ことのはもなほ たのまれす さてもわかるる きぬきぬのそら | 行忠(藤原) |
| 1184 | きぬきぬの わかれをしたふ たまくらに なみたをそへて とりやなくらむ | 冬長 |
| 1185 | うしときく とりのねはかり のこりけり ひとはとまらぬ きぬきぬのそら | 成国 |
| 1186 | うつつとも ゆめともわかす とりのねに なきてわかるる しののめのそら | 基氏(足利尊氏男) |
| 1187 | あまのとの あくるもしらて わかれちを たたとりのねに かこちつるかな | 尊円法親王 |
| 1188 | あふさかの ゆふつけとりは こころせよ またもこゆへき せきちならぬに | 義詮 |
| 1189 | おのつから あひみるゆめも さめゆけは これもわかれと とりやなくらむ | 盛徳 |
| 1190 | つゆしけき のかみのさとの かりまくら しをれていつる そてのわかれち | 為秀 |
| 1191 | ほともなく あけてわかれし あかつきは いととつゆこそ おきうかりしか | 仲文 |
| 1192 | くれにもと ちきりおけとも そまかはの いかたのとこは おきそわひぬる | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1193 | あひみても なこりをしまの あまひとは けさのおきにそ そてぬらしける | 良平 |
| 1194 | たなはたの きのふわかれし そてよりも あくれはけさそ わひしかりける | 赤染衛門 |
| 1195 | ぬるよさへ なかにありつる からころも うらみかはらて おきわかれつつ | 為理 |
| 1196 | うらむるも したふもおなし なみたにて あふよはさへに ぬるるそてかな | 成藤(祝部) |
| 1197 | うつりかの のこるころもを かたしきて またねのとこも おきうかりけり | 読人不知 |
| 1198 | おもかけを のちしのへとや ありあけの つきにもひとの おきわかるらむ | 基隆(藤原基成男) |
| 1199 | わすれすよ いまはといひし きぬきぬの おもかけのこす ありあけのつき | 顕詮 |
| 1200 | いまはまた とりのねはかり かたみにて ありあけのつきを なみたにそみる | 頼重 |
| 1201 | うきものと みしわかれちの ありあけに またやつれなく かけしたふらむ | 万秋門院 |
| 1202 | わするなと いまひとたひは いひてまし ありしわかれを かきりとおもはは | 後宇多院 |
| 1203 | みをすてて そへしこころの かひもなく こひしきことの なとのこるらむ | 為継 |
| 1204 | たまくらの うつりかのこる あさねかみ こころみたるる かたみなりけり | 師継 |
| 1205 | あさなあさな けつれはいとと みたれつつ わかくろかみの とけぬころかな | 躬恒 |
| 1206 | いつまてか しつはたおひの なからへて こころもとけぬ ちきりまつらむ | 業清(藤原) |
| 1207 | なれそめし ちきりわするな したおひの またうちとくる ひとはありとも | 進子内親王 |
| 1208 | いかかせむ うへはつれなき したおひの わかれしみちに めくりあはすは | 定家 |
| 1209 | あひみても わするるほとに なりなまし ありしちきりの まことなりせは | 俊恵 |
| 1210 | あさからぬ ちきりのほとは としつきの つもるにつけて ひともしるらむ | 雅宗 |
| 1211 | つつむとて いそくけしきに あつさゆみ おしかへしても えこそちきらね | 行輔 |
| 1212 | ゆくすゑを たのめてもなほ ねをそなく しらぬいのちの こころよわさに | 真昭 |
| 1213 | ことのはも さためなきよと おもへとも ちきりしまての いのちともかな | 為秀女 |
| 1214 | ちきりおく こころのすゑも みるはかり こひにをしきは いのちなりけり | 実顕 |
| 1215 | あすしらぬ みにはたのます ゆくすゑを ちきるはひとの まことなりとも | 経清 |
| 1216 | うつろはぬ ちきりときくも たのまれす そのことのはの よにふりしより | 為定(御子左二条為道男) |
| 1217 | ちきりこそ なほたのまるれ さりともと おもふかたには こころひかれて | 直義 |
| 1218 | はかなくて たのむこころを たよりとや うきいつはりも あるよなるらむ | 深守法親王 |
| 1219 | ありしよの ちきりよせめて ゆめならは おもひねをたに またましものを | 花園院 |
| 1220 | うつつには おもひたえゆく あふことを いかにみえつる ゆめちなるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1221 | おもひいつる ちきりのほとも みしかよの はるのまくらに ゆめはさめにき | 定家 |
| 1222 | おもひつつ いかにねしよを かきりにて またもむすはぬ ゆめちなるらむ | 少将(藻璧門院) |
| 1223 | うしとみし ひとよのゆめの なこりより こころにさめぬ ものをこそおもへ | 花園院 |
| 1224 | あくるをも またぬちきりの かなしきは あふとみるよの ゆめのわかれち | 師賢(藤原師信男) |
| 1225 | うはたまの ゆめかあらぬか あふことも たたひとよにて やみのうつつは | 性威 |
| 1226 | うつつには とはてとしふる みわのやま いかにまちみむ ゆめのかよひち | 資平 |
| 1227 | うきみには こえてのちこそ あふさかの やまもへたつる せきとなりけれ | 為藤 |
| 1228 | こえてしも くやしかりける あふさかの せきちをなにに ゆるしそめけむ | 経定女 |
| 1229 | いまのみも いもをはこひす おくやまの いはねこけおひて ひさしきものを | 人麿 |
| 1230 | とにかくに ひとはいへとも わかさちの のちせのやまの のちもあはむきみ | 坂上大嬢 |
| 1231 | のちせやま のちもあはむと おもふにそ しぬへきものを けふまてもあれ | 家持 |
| 1232 | たきものの くゆるこころは ありしかと ひとりはたへて ねられさりけり | 定方女 |
| 1233 | あはてこそ こひをいのりと たのみしか いまはたなにか いのちなるへき | 政村 |
| 1234 | さらぬたに あふことかたき わかこひを としさへいたく へたてゆくかな | 康資王母 |
| 1235 | おのつから またあふちきり ありとても なれしなからの よにはかへらし | 伏見院 |
| 1236 | きみかこと おもはぬひとの つらからは われはこころも あくかれなまし | 馬内侍 |
| 1237 | つらかりし こころくらへの ひとかたも よわらぬすゑは とほさかりつつ | 顕実母 |
| 1238 | たのまれぬ なかとはかねて いひしかと たたひとよとは おもひやはせし | 国夏 |
| 1239 | うきになほ こりすそたのむ いつはりを かこちてたえむ こころならねは | 道嗣 |
| 1240 | つれなきを うらみしそても ぬれしかと なみたのいろは かはりやはせし | 別当(皇嘉門院) |
| 1241 | ことのはの かはるにつけて うきひとの こころのいろも まつしられつつ | 為秀 |
| 1242 | よしさらは しのふるほとに たえもせよ あらはれはうき なかのちきりは | 公宗母 |
| 1243 | よよかけて ちきりしまては かたくとも いのちのうちに かはらすもかな | 義詮 |
| 1244 | あふことは おもひたゆとも おなしよに ありとはかりを しらせてしかな | 恒明親王 |
| 1245 | おなしよに いけるはかりを ちきりにて またあふまては おもひたえにき | 聖承 |
| 1246 | あひみても へたつるなかに ゆくくもの なとたえたえに しくれそめけむ | 兼経 |
| 1247 | なかめやる そなたのそらの くもたにも あとなきはてそ きえてかなしき | 下野(後鳥羽院) |
| 1248 | あたひとの こころのはなに まかへはや うきたるくもの あともさためぬ | 信実 |
| 1249 | しらきくも うつろひにけり うきひとの こころはかりと なにおもひけむ | 忠通 |
| 1250 | かみなひの もりならねとも かねてより うつろふいろの みゆるなかかな | 公清 |
| 1251 | つるのゐる まつとてなにか たのむへき いまはこすゑに なみもこえなむ | 堀河(待賢門院) |
| 1252 | にほとりの したのかよひち たえさらは なみのうきすは うかれたりとも | 進子内親王 |
| 1253 | たのむそよ にほのうきすの うきなから したのかよひの たえぬはかりを | 為遠 |
| 1254 | にほとりの すむいけみつの たえもせは いかにしのへと かよひそめけむ | 兼氏 |
| 1255 | をやまたの なはしろみつに あらなくに なかれそめては たえむものかは | 実頼 |
| 1256 | わきもこか またもあふみの やすかはの やすきいもねす こひわたるかも | 読人不知 |
| 1257 | つひにまた いかなるせにか たえはてむ やましたみつの あさきちきりは | 公時(藤原実継男) |
| 1258 | たにかはの いはまにもれし やまみつの またはいかなる せによとむらむ | 為藤 |
| 1259 | みくさゐし のなかのしみつ いまさらに すむともいさや もとのこころは | 為藤 |
| 1260 | ゆくみつの はなのかかみの かけもうし あたなるいろの うつりやすさは | 定家 |
| 1261 | うつりゆく こころそつらき ますかかみ たれゆゑかけと なるみなるらむ | 賢俊 |
| 1262 | ますかかみ たえにしいもを あひみすは わかこひやまし としはへぬとも | 人麿 |
| 1263 | わすれくさ わかみにつむと おもひしを ひとのこころに おふるなりけり | 小町 |
| 1264 | きのくにの あくらのはまの わすれかひ われはわすれし としはふるとも | 読人不知 |
| 1265 | つらかれと するかのうみの はまつつら くるよはまれに ひとそなりゆく | 行家(藤原知家男) |
| 1266 | いかなれは なみたのあめは ひまなきを あふくまかはの せたえしぬらむ | 讃岐(二条院) |
| 1267 | はつせかは むすふみなわの うきみよに きえかへりても たえしとそおもふ | 定為 |
| 1268 | はつせかは またあひみむと たのめてし しるしやいつら ふたもとのすき | 公兼 |
| 1269 | わかことや くめちのはしも なかたえて わたしわふらむ かつらきのかみ | 実方 |
| 1270 | いははしの たえにしなかを かつらきの かみならぬみは なほもまつかな | 和義 |
| 1271 | いまはたた おもひたえにし おもかけの はかなくかよふ ゆめのうきはし | 基幸 |
| 1272 | ねぬるよに あふとみつるも ゆめちにて いやはかななる ちきりなりけり | 実直母 |
| 1273 | おもひいつる こころひとつの かひもなし おなしよとたに しらぬちきりは | 為氏 |
| 1274 | さらはまた おなしこころに わすれなて なににおもはぬ ひとをこふらむ | 月花門院 |
| 1275 | わすれえぬ わかこころこそ いとはるれ はてうかりける ひとのちきりに | 近衛(今出河院) |
| 1276 | おもひあまり むかしまてやは つらからぬ たかよにひとを わすれそめけむ | 家良 |
| 1277 | いかにして わすれむとおもふ こころにも なほかなはぬは なみたなりけり | 親清女 |
| 1278 | またもみぬ ゆめちなからは たえもせて つらきうつつに のこるたまのを | 行蓮 |
| 1279 | あふとみる ゆめもむなしく さめぬれは つらきうつつに またなりにけり | 行宗 |
| 1280 | おもひねに しはしなくさむ ゆめをたに ゆるさぬよはの かねのおとかな | 和氏 |
| 1281 | やかてなと むかしかたりに なりぬらむ みしはまちかき ゆめのかよひち | 実継 |
| 1282 | いかにせむ かよふゆめちも たのまれす おもひねならぬ よはしなけれは | 政元 |
| 1283 | あふことは ゆめになりにし とこのうへに なみたはかりそ うつつなりける | 惟明親王 |
| 1284 | しらさりき そのあかつきを かきりとも われにはつけの まくらならねは | 後光厳院 |
| 1285 | おもはしと おもふもものの くるしきを やすくやひとの わすれはつらむ | 御匣(式乾門院) |
| 1286 | いまはたた おもひたえたる つらさにて ちきりくやしき ゆふくれのそら | 為氏 |
| 1287 | いまははや たえにしままの うつつにて みるなくさめの ゆめたにもなし | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1288 | はかなくも おもひいつやと たのむかな わかならはしの こころよわさに | 高秀 |
| 1289 | はかなくて たえにしなかの なこりしも こころにとまる はてそかなしき | 内侍(永福門院) |
| 1290 | まちしよに またたちかへる ゆふへかな いりあひのかねに ものわすれせて | 良基(二条道平男) |
| 1291 | わかれちに ききしもいまは むかしにて いとはぬかねの ねをのみそなく | 道嗣 |
| 1292 | ひとりぬる しもよのかねの ひひきより あきにふけゆく ちきりをそしる | 為重 |
| 1293 | ならしはの なれしおもひや いまさらに かりはのをのの よそのあきかせ | 教実 |
| 1294 | いつまてか あふことかたき あらたかの たなれぬなかに こころおくらむ | 仲教 |
| 1295 | かはりゆく ひとのこころの あきかせに あふたのみたに なきちきりかな | 定宗(藤原家親男) |
| 1296 | あさちはら なひくもおなし あきかせの うつろふいろに ふきかはるらむ | 杲守 |
| 1297 | かよひこし さとはふしみの あきかせに ひとのこころの あれまくもをし | 知家 |
| 1298 | つらきかな まちしにかはる ゆふくれを みはうきときと あきかせそふく | 亀山院 |
| 1299 | しらつゆの おきふしたれを こひつらむ われはききおはす いそのかみにて | 閑院 |
| 1300 | みしままの かたみなるへき つきたにも うきよりほかの おもかけそなき | 季雄 |
| 1301 | むらくもの そらゆくつきも あるものを たえたえにたに みえぬきみかな | 公忠(藤原実忠男) |
| 1302 | おのつから おもひもいては わすれしと ちきりしままの つきやみるらむ | 栄子内親王 |
| 1303 | みをさらぬ おもかけはかり さやかにて つきのためうき わかなみたかな | 公雄 |
| 1304 | いかなれは たちもはなれぬ おもかけの みにそひなから こひしかるらむ | 寿暁 |
| 1305 | みるままに おつるなみたの たまつさは やるかたもなく かなしかりけり | 江侍従 |
| 1306 | きみかため われこそはひと なりはてめ しらたまつさは やけてかひなし | 貫之 |
| 1307 | たまもかる おきへはゆかし しろたへの まくらせしひと わすれかねつも | 宇合 |
| 1308 | いかにせむ うらのはつしま はつかなる うつつののちは ゆめをたにみす | 定家 |
| 1309 | あまをふね われをはよそに みくまのの うらよりをちに とほさかりつつ | 但馬(藻璧門院) |
| 1310 | あしたゆく くるてふあまに こととはむ かれなてのこる みるめありやと | 経宣 |
| 1311 | おひかせに まかちしけぬき ゆくふねの はやくそひとは とほさかりぬる | 貞世 |
| 1312 | からあゐの やしほのころも ふりぬとも そめしこころの いろはかはらし | 為家 |
| 1313 | さよころも かけはなれても いととなほ ほさぬはそての なみたなりけり | 為量 |
| 1314 | つきくさに すれるころもの いろよりも うつるはやすき こころとそみる | 昭覚 |
| 1315 | しをるれは これをもあまの ころもとや ちきりしなかの まとほなるらむ | 師教(九条忠教男) |
| 1316 | かさねても なれにしなかの さよころも へたつるものと いつなりにけむ | 達智門院 |
| 1317 | ねをそなく とほやまとりの ひとりねに なかきへたての なかのちきりは | 為実(御子左藤原為氏男) |
| 1318 | よとともに みたれてそおもふ やまとりの をろのなかをの なかきつらさに | 後鳥羽院 |
| 1319 | よそにして みすはありとも ひとこころ わすれかたみに なほやしのはむ | 小町 |
| 1320 | ひとやりに あらぬものから うらむるは みのことわりも おもひしらすや | 高明 |
| 1321 | ものおもへは いもねられぬを あやしくも わするることを ゆめにみるかな | 深養父 |
| 1322 | みしやゆめ わかみやあらぬ ちきりしに かはるつらさそ さむるかたなき | 実家女 |
| 1323 | ゆめならて またもむすはぬ ちきりかな とけしひとよの なかのしたひも | 読人不知 |
| 1324 | すまのあまの しほなれころも なれきてそ まとほになるも うらみなりける | 実兼 |
| 1325 | はてはまた あまのすむてふ さとといへは しるへたになき みをうらみつつ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1326 | おくあみの ひくてあまたに そてぬれて さてもうらみぬ なみのまそなき | 知家 |
| 1327 | ことかたに ひくひとなくは たくなはの まとほにくるも よしやうらみし | 只帰 |
| 1328 | かれはてむ のちしのへとや なつくさの ふかくはひとの たのめおきけむ | 実朝 |
| 1329 | ともしする なつののしかの ねにたてぬ おもひもかくや くるしかるらむ | 氏兼 |
| 1330 | なひくとも ほにはいてしと しのすすき しのひしなかは しもかれにけり | 四条(安嘉門院) |
| 1331 | たつぬへき しるしもいまは あとたえぬ ゆきのふるのの もすのくさくき | 基氏(足利尊氏男) |
| 1332 | おのれのみ あまのさかてを うつたへに ふりしくこのは あとたにもなし | 定家 |
| 1333 | いまそうき かはるちきりの しらまゆみ なひきそめてし こころよわさは | 後光厳院 |
| 1334 | われにひく ちきりなりとも たのまれし あたちのまゆみ あたしこころは | 公賢 |
| 1335 | ひとはいさ あたちのまゆみ おしかへし こころのすゑを いかかたのまむ | 民部卿典侍(後堀河院) |
| 1336 | なほいかに こひしなぬみの つらからむ のちのよちきる ひともありせは | 実教 |
| 1337 | こひしなは やすかりぬへき いのちさへ あふをかきりに としそへにける | 弁内侍(後深草院) |
| 1338 | かはらしと おもへはこそは ちきるらめ わかかねことに いかかうらみむ | 少将内侍(後醍醐院) |
| 1339 | いかはかり なほうからまし いつはりの なきよにかはる ちきりなりせは | 読人不知 |
| 1340 | いつはりに かはるもしらて いくとせか ちきりしままの みをたのむらむ | 公脩 |
| 1341 | ことのはの かよはすなれは いつはりと うらみしころを またしのふかな | 尊氏 |
| 1342 | うらむへき ひとめのひまも いくたひか かすならぬみに すくしきつらむ | 空暁 |
| 1343 | いへはけに わかみのみこそ うかりけれ つらきひとには ことのはもなし | 信実 |
| 1344 | しはしたた いかてやみまし つらさをも うきをもしらぬ みとはなるとも | 為親 |
| 1345 | なにとたた うらむるかひも なきなかに ことのはをのみ つくしきぬらむ | 寛尊法親王 |
| 1346 | ことのはの うつろふたにも うきなかに いまはこすゑの あきかせそふく | 長秀 |
| 1347 | ははそはら うつろふいろを つらしとも たれにいはたの もりのしたつゆ | 良尹 |
| 1348 | ことのはに さきたつそての なみたにそ たへぬうらみの ほとはしるらむ | 道嗣 |
| 1349 | おもかけは わかみにそへる つらさにて うらみぬつきに ぬるるそてかな | 経継 |
| 1350 | みてもなほ ものおもへとや うきひとの わかおもかけを つきにそへけむ | 為定(御子左二条為道男) |
| 1351 | すむつきの なみたにくもる かけまても おもへはひとの つらさなりけり | 実前 |
| 1352 | ひとをこそ うらみはつとも おもかけの わすれぬつきを えやはいとはむ | 為藤 |
| 1353 | うらみわひ たへぬなみたに そほちつつ いろかはりゆく そてをみせはや | 肥後(京極前関白家) |
| 1354 | ことのはを たのまさりせは としふとも ひとをつらしと おもはさらまし | 顕季 |
| 1355 | うらみても なほしたふかな こひしさの つらさにまくる ならひなけれは | 近衛(今出河院) |
| 1356 | さてもまた あやしきまての ちきりかな うらみはかりを おもひてにして | 光厳院 |
| 1357 | ありはてぬ ならひはさそと なくさめて かはるちきりを なけかすもかな | 公賢 |
| 1358 | かつしたふ こころよわさは なかなかに うらみてなにの かひかあるへき | 公蔭 |
| 1359 | かすならぬ みのことわりに なくさめて うきをうらみぬ ほとそへにける | 実雄 |
| 1360 | かはらしと ちきりしすゑを たのみける わかはかなさそ いまはくやしき | 公信(源) |
| 1361 | いととなほ うきにつけても おもふにも いふにもあまる ひとのつらさは | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1362 | うきことも いくよかあらむ よしのかは よしやひとをも いまはうらみし | 親清女 |
| 1363 | わかそてに なみたのたきそ おちまさる ひとのうきせを みなかみにして | 中将(陽徳門院) |
| 1364 | よしさらは なみたにくちね なかなかに かたみもつらし つけのをまくら | 禅助 |
| 1365 | いつはりの なくてすきにし むかしたに ひとのちきりを たのみやはせし | 少将内侍(後深草院) |
| 1366 | うかるへき みをしるうへの こひしさは なににかしはし おもひしつめむ | 伏見院 |
| 1367 | みやまきの したはふくすの したもみち うらむるいろを しるひとそなき | 覚助法親王 |
| 1368 | しらせはや たけのまかきに はふくすの したにうらむる ふしのしけさを | 基隆(藤原基綱男) |
| 1369 | あきかせに たままくくすの したつゆや うらみにたへぬ なみたなるらむ | 親清女妹 |
| 1370 | いまそしる まくすかはらに ふくかせの うらみもこひに かへるものとは | 道智 |
| 1371 | いかにせむ しきのはねかき かきたえて とはれぬかすの つもるうらみを | 覚空 |
| 1372 | まれにたに あふよもあらは うらみまし まくらのちりの つもるつらさを | 忠兼(藤原隆忠男) |
| 1373 | たまかつら いかにねしよの たまくらに つらきちきりの かけはなれけむ | 為家 |
| 1374 | おのつから みしもちきりの かりころも うらむるかひや つひになからむ | 義詮 |
| 1375 | いまはたた うらむるまては みえすとも つらさをいかて おもひしらせむ | 帥(鷹司院) |
| 1376 | そのかみは いかにしりてか うらみけむ うきこそなかき いのちなりけれ | 和泉式部 |
| 1377 | つらかりし ことのはをなと うらみけむ それをたにこそ きかすなりぬれ | 師光(源師頼男) |
| 1378 | つらしとて うらみははてし まれにたに ひとのちきりの あらむかきりは | 読人不知 |
| 1379 | つらしとも うらみしほとは さてもなほ ひとのなこりの あるよなりけり | 全仁親王 |
| 1380 | わすれしの ことのはなくは なかなかに とはぬつきひを うらみさらまし | 後嵯峨院 |
| 1381 | さかきはの えたにやとかる ますかかみ くもりあらせて かへるみちかな | 春日明神 |
| 1382 | のちのよの くるしきことを おもへかし あはれこのよは ゆめとしらすや | 日吉地主権現 |
| 1383 | たのめつつ こぬとしつきを かさぬれは くちせぬちきり いかかたのまむ | 日吉 |
| 1384 | あれはつる わかやととはぬ うらみをは かくれてこそは ひとにしられめ | 熱田明神 |
| 1385 | くれなゐに ぬれつつけふや にほふらむ このはうつりて おつるしくれは | 道真 |
| 1386 | おもひかね たはかりことを せさりせは あまのいはとは ひらけさらまし | 経覧 |
| 1387 | みぬよまて こころそすめる かみかせや みもすそかはの あかつきのこゑ | 家隆 |
| 1388 | かみよより いくとせふりぬ すすかかは やそせのなみの あきのよのつき | 兼氏 |
| 1389 | くもりなき きみかやちよを てらすらし かみちのやまに いつるつかきけ | 達智門院 |
| 1390 | あはれとや かみのかかみも てらしみる いまはとおもふ きみかなこりを | 冷泉(花園院) |
| 1391 | くもりなき やたのかかみや いはとあけし あまてるかみの みかけなるらむ | 広秀 |
| 1392 | いにしへに かみのみかけの うつりしや いまもくもらぬ かかみなるらむ | 成国 |
| 1393 | あめつちの ひらけしよりや ちはやふる かみのみくにと いひはしめけむ | 智行 |
| 1394 | あめつちの むかしをとへは あしはらや なほそのかみの よよそひさしき | 読人不知 |
| 1395 | かみもさそ あかすみるらむ さくらちる しめのみやもり あさきよめすな | 延季 |
| 1396 | ちるときや さかきのえたに かかるらむ かみのいかきの はなのしらゆふ | 国夏 |
| 1397 | さかきはに さきそふはなの しらゆふは かみもこころに かけてみるらむ | 脩久 |
| 1398 | かみかきや かけものとかに いはしみつ すまむちとせの すゑそひさしき | 為家 |
| 1399 | いはしみつ なかれのすゑを うけつきて たえすそすまむ よろつよまてに | 伏見院 |
| 1400 | のほるへき あとをそいのる をとこやま うつもれはつる みねのしらゆき | 有光 |
| 1401 | いはしみつ かみのこころに まかせてや わかゆくすゑを さためおきけむ | 亀山院 |
| 1402 | あとたれて いくよへぬらむ はこさきの しるしのまつも かみさひにけり | 顕朝 |
| 1403 | いはしみつ かみよのつきや にこりなき ひとのこころの そこにすむらむ | 光吉 |
| 1404 | のとかなる はるのまつりの はなしつめ かせをさまれと なほいのるらし | 良基(二条道平男) |
| 1405 | ここのへの さくらかさして けふはまた かみにつかふる くものうへひと | 後醍醐院 |
| 1406 | みよのあとに なかれをうけて いはしみつ すめるをときと なほそつかふる | 親光 |
| 1407 | いはしみつ ふるきなかれの あとはあれと わかみひとつの せによとむかな | 幸清 |
| 1408 | あめのした みよをさまれと まもるらし くもをわけてし かみのちかひに | 遠久 |
| 1409 | ちはやふる かものみつかき きみかよを ひさしかれとそ いのりそめてし | 経久 |
| 1410 | のちのよも このよもかみに まかするや おろかなるみの たのみなるらむ | 深源 |
| 1411 | としへぬる わかかみやまの さかきはに いくへみしめを ひきかさねけむ | 教久 |
| 1412 | みつかきの ひさしきよより すむつきの かみさひまさる かけやそふらむ | 行氏(平胤行男) |
| 1413 | いかはかり かみもうれしと みたらしや そこまてすめる きみかこころを | 和氏 |
| 1414 | よろつよと きみをいのりて ふるそては かけみたらしに かみやうくらむ | 氏久 |
| 1415 | みかさやま ふもとをめくる さほかはの さしていのりし みをたのむかな | 長能 |
| 1416 | かすかのの まつもわかみも おいにけり ふたはよりこそ つかへそめしか | 祐殖 |
| 1417 | ことわりの たかはぬみちを かすかやま かみのこころに きくもたのもし | 経顕(藤原定資男) |
| 1418 | みかさやま さすかにいかか すてはてむ かさなるいへの ふちのすゑはを | 公親 |
| 1419 | くもりなく てらすひよしの かみかきに またひかりそふ あきのよのつき | 成繁 |
| 1420 | あとたるる かみよをとへは おほひえや をひえのすきに かかるしらくも | 成運 |
| 1421 | あひにあひて まもるひよしの かすかすに ななつのみちの くにさかゆらし | 行親 |
| 1422 | かみよより かはらぬまつも としふりて みゆきひさしき しかのからさき | 延全 |
| 1423 | おのつから つかへぬひまも こころこそ なほおこたらぬ ななのかみかき | 成豊 |
| 1424 | たのもしな いのるにつけて くもりなき ひよしのかけに みちそまよはぬ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1425 | かみかきや ちりにましはる ひかりこそ あまねくてらす ちかひなりけれ | 読人不知 |
| 1426 | さりともと ねてもさめても たのむかな おろかなるみを かみにまかせて | 雅朝 |
| 1427 | つかへつつ おもひしよりも みくまのの かみのめくみそ みにあまりぬる | 良瑜 |
| 1428 | かみかきに みよをさまれと いのるこそ きみにつかふる まことなりけれ | 行氏(祝部) |
| 1429 | ちはやふる ゆきのしらやま わきてなほ ふかきたのみは かみそしるらむ | 読人不知 |
| 1430 | わかのうらに たまひろふへき みことのり みちをまもらは かみもうくらむ | 実兼 |
| 1431 | ためしなき ひかりをそふる たまつしま よよにもこえて かみやうくらむ | 国道(津守国助男) |
| 1432 | しきしまや みちはたかへすと おもへとも ひとこそわかね かみはしるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1433 | かみやしる よのためとてそ みをもおもふ みのためにして よをはいのらす | 伏見院 |
| 1434 | みちのへの すきのしたはに ひくしめは みわすゑまつる しるしなるらし | 為家 |
| 1435 | きみかよを いのるこころの まことをは いつはりなしと かみはうくらむ | 常良 |
| 1436 | あきらけき あらひとかみの しるしあらは くもらぬみよを さそまもるらむ | 実俊(西園寺公宗男) |
| 1437 | あはれとや あらひとかみも みつはさす おいきのまつの としへぬるみを | 実重(三条公親男) |
| 1438 | わかきみの ちよのためとや みやゐして ひとよのまつも としをへぬらむ | 直氏 |
| 1439 | なからへむ よにもわすれし すみよしの きしになみたつ まつのあきかせ | 伊勢大輔 |
| 1440 | すみのえに やそしまかけて くるひとや まつをときはの ともとみるらむ | 隆季 |
| 1441 | うきことも なくさむみちの しるへにや よをすみよしと あまくたりけむ | 定家 |
| 1442 | すみよしの まつにましれる たまかきの あけもみとりも としはへにけり | 政村 |
| 1443 | いくよにか かみのみやゐの なりぬらむ ふりてひさしき すみよしのまつ | 為家 |
| 1444 | あらましの こころのうちの たむけくさ まつとしらすや すみよしのかみ | 為相 |
| 1445 | しきしまの みちをはみちと まもらなむ よにすみよしの かみならはかみ | 雲禅 |
| 1446 | きみかため たまてのきしに やはらくる ひかりのすゑは ちよもくもらし | 国平 |
| 1447 | ふきたつる にはひのまへの ふえのねを こころすみてや かみもきくらむ | 小弁 |
| 1448 | さよふけて しもはおくとも やまひとの をれるさかきは いろもかはらし | 中務 |
| 1449 | もろともに いちみのあめは かかれとも まつはみとりに ふちはむらさき | 普賢菩薩 |
| 1450 | あきらけく のちのほとけの みよまても ひかりつたへよ のりのともしひ | 伝教 |
| 1451 | むかしより かせにしられぬ ともしひの ひかりにはるる のちのよのやみ | 花山院 |
| 1452 | きえかたき むかしのひとの ともしひに おもふこころは おとりしもせし | 大弐三位 |
| 1453 | さむかいを ひとつこころと しりぬれは しふのきやうこそ すくにみちなれ | 慈覚 |
| 1454 | しろたへの ひかりにまかふ いろみてや ひもとくはなを かねてしるらむ | 清少納言女 |
| 1455 | いくたひか またよにいてし あきのつき あまねきかけは ひとももらさす | 通雅 |
| 1456 | めくりきて なほふるさとの いてかてを さそふもうれし みつのをくるま | 師継 |
| 1457 | かねてわか おもひしよりも よしのやま なほたちまさる はなのしらくも | 房観 |
| 1458 | さつきやみ このしたみちは くらきより くらきにまよふ ほとそくるしき | 尊円法親王 |
| 1459 | つまきとる やまのあきかせ いかはかり ならはぬそてに つゆこほるらむ | 忠良 |
| 1460 | わたつうみの そこまててらす つきかけに もれたるあまは さそうらみけむ | 行家(藤原知家男) |
| 1461 | のりのはな ひらくるにはの ときのまに おくしらつゆの かすそそひける | 資名 |
| 1462 | いまもなほ すむなるものを わしのやま ひとのこころの くもそへたつる | 通成 |
| 1463 | にこりなき こころのみつに かけとめて ふたたひやとれ やまのはのつき | 良信 |
| 1464 | みなかみを おもひこそやれ たにかはの なかれもにほふ きくのしたみつ | 源承 |
| 1465 | たにのみつ みねのあらしを しのひきて のりのたききに あふそうれしき | 寂蓮 |
| 1466 | なきひとの わかれををしの ねにたつる おもひよいけの みつとたになれ | 為藤 |
| 1467 | このみちを しるへとたのむ あとしあらは まよひしやみも けふははるけよ | 定家 |
| 1468 | かつまたの いけのこころは むなしくて こほりもみつも なのみなりけり | 寂然 |
| 1469 | よにふれは きみにひかれて ありかたき いちみのあめに ちたひぬれぬる | 周防内侍 |
| 1470 | のりのみつ たえすはなとか くさもきも うるほふほとの しるしなからむ | 覚誉法親王 |
| 1471 | うつもれぬ のりのみなかみ あとしあれは よよのなかれは きみそしるらむ | 覚助法親王 |
| 1472 | のりのみつ くみてやみまし やまのゐの にこりやすきは こころなれとも | 宗成 |
| 1473 | やまかはの おなしなかれを むすひても なほあさからぬ ちきりをそしる | 宗明 |
| 1474 | たえぬへき みゐのなかれの のりのみつ みをはやなから いかてくままし | 静仁法親王 |
| 1475 | みなそこに しつむもおなし ひかりそと そらにしらるる あきのよのつき | 憲実 |
| 1476 | いまそみる よそちあまりの ことのはに あらはれさりし つゆのひかりを | 蘊賢 |
| 1477 | やまのはの くもにいりひは のこれとも すすしくなりぬ まつのしたかせ | 源忠 |
| 1478 | さまさまに とけともとかぬ ことのはを きかすしてきく ひとそすくなき | 夢窓 |
| 1479 | かりにこそ ときおくのりの ことわりに とまりてひとや なほまよふらむ | 直義 |
| 1480 | きえなはと つゆのいのちに たのむかな ふかきよもきの もとのちかひを | 円胤 |
| 1481 | きえぬへき のりのすゑには なりぬとも みをともしてそ きくへかりける | 赤染衛門 |
| 1482 | おろかなる こころのやみを てらせとや かかけおきけむ のりのともしひ | 尊道法親王 |
| 1483 | さのみなと くるしきうみに めくるらむ つりするあまの うけかたきみを | 慈勝 |
| 1484 | こころなき はるのあらしも やまさとの ぬしあるはなは よきてふかなむ | 宗尊親王 |
| 1485 | のりのみち むかしにかへる ときにあひて いまもかはらぬ をしへをそきく | 源全 |
| 1486 | よしあしの おもひをやめて さとりいる こころのおくも こころなりけり | 顕遍 |
| 1487 | うめのはな みよのほとけの ためにとて をりつるそてそ ひとなとかめそ | 後宇多院 |
| 1488 | いろもかも まことののりと ききしより はなにこころの なほうつるかな | 慈能 |
| 1489 | よしあしは ひとついりえの みをつくし ふかきみのりの しるしなりけり | 公澄 |
| 1490 | よのなかの つねとはみれと あきののの うつろひかはる ときそわひしき | 素性 |
| 1491 | いたつらに またこのたひも こゆるきの いそかてのりの ふねにおくるな | 欣子内親王 |
| 1492 | いつかけし ころものうらの たまとたに しらていくよか まよひきぬらむ | 性厳 |
| 1493 | おろかなる なみたをかけて なけくかな ころものうらの たまをしらねは | 読人不知 |
| 1494 | さらにまた たつねきぬれと すみなれし むかしのはなの みやこなりけり | 双救 |
| 1495 | にこらしな こころのみつの そこきよみ やへにはなさく むねのはちすは | 円伊 |
| 1496 | よしあしの ひとをわかしと はなはちす ここのしなまて さきかはるなり | 兼空 |
| 1497 | たのむそよ さきたつひとに ちきりてし おなしはちすの はなのなかはを | 顕詮 |
| 1498 | こころをも なほやみかかむ はちすはの つゆのたまたま のりにあひつつ | 読人不知 |
| 1499 | いつのまに いとふこころを かつみつつ はちすにおるは わかみなるらむ | 仁明天皇 |
| 1500 | なつころも ひとへににしを おもふかな うらなくみたを たのむみなれは | 源信 |
| 1501 | とほさかる こゑもをしまし ほとときす ききのこすへき よものそらかは | 雅経 |
| 1502 | なかきよの あかつきをまつ つきかけは いくへのくもの うへにすむらむ | 隆弁 |
| 1503 | さすかなほ わかやまのはに のこるかな やみちをてらす のりのつきかけ | 桓守 |
| 1504 | あともなき むろのやしまの ゆふけふり なひくとみしや まよひなるらむ | 守遍 |
| 1505 | ことのはを ちらさすもかな くもゐまて ふきつたへたる をののやまかせ | 栄海 |
| 1506 | おのつから のりのさかひに いるひとは それこそやかて さとりなりけれ | 兼実 |
| 1507 | こすゑさへ たのむかけなく かれにけり はなのすかたの ねにしかへれは | 崇徳院 |
| 1508 | いにしへの つるのはやしの みゆきかと おもひとくにそ あはれなりける | 瞻西 |
| 1509 | こころをは こころのそこに をさめおきて ちりもうこかぬ とこのうへかな | 良経(九条兼実男) |
| 1510 | ゆめならは むそちのおいも すきにけり さめぬねふりそ ひさしかりける | 慈威 |
| 1511 | ほむかくの やまのたかねの かねのおとに なかきねふりを おとろかすかな | 心海 |
| 1512 | すかはらや たえぬるのりの あととめて またおとろかす かねのおとかな | 良信 |
| 1513 | まよひゆく ふかきやみちの わたりかは まことのせには きみのみそたつ | 慶政 |
| 1514 | ちきりあれは うきみなからそ たのもしき すくはむよよの かすにもれしと | 為道 |
| 1515 | にしへゆく つきにこころの すみぬれは うきよのなかは ねられさりけり | 院源 |
| 1516 | にしへとや みのりのかとを をしふらむ さきたちてゆく あきのよのつき | 土御門院 |
| 1517 | くもまより いさよふつきに あくかれて いととにしにも ゆくこころかな | 後嵯峨院 |
| 1518 | ふかきよの ひかりもこゑも しつかにて つきのみかほを さやかにそみる | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1519 | ひとむらは なほしくれつる くもはれて さはるかたなく すめるつきかけ | 慈慶 |
| 1520 | みをさらぬ こころのつきの わくらはに すむそさとりの はしめなりける | 良覚 |
| 1521 | よそにみる かけとはいはし こころにも そらにもおなし つきそいてぬる | 惟賢 |
| 1522 | たのむそよ みのりのこまを すすめても あとにまよふな をののふるみち | 寛伊 |
| 1523 | つたへおく おなしなかれの ふかけれは またせきいれつ たにかはのみつ | 尊道法親王 |
| 1524 | たにかはの よよにせきいれし あととてや たえぬなかれを いまもうくらむ | 桓豪 |
| 1525 | いまきくも なみたなりけり いにしへの すきたつほらの ふかきみのりは | 家平 |
| 1526 | いかはかり つとむることも なきものを こはたかために ひろふこのみそ | 和泉式部 |
| 1527 | あまのとの あくるほとなく くるはるに たちもおくれぬ あさかすみかな | 実経 |
| 1528 | あふさかの せきにはゆきも きえなくに いつくをはるの みちときぬらむ | 読人不知 |
| 1529 | うくひすの なくねをきけは やまふかみ われよりさきに はるはきにけり | 忠見 |
| 1530 | ふかくさや うつらのとこは あとたえて はるのさととふ うくひすのこゑ | 良経(九条兼実男) |
| 1531 | はるきても かすみのみをは さゆるひに ふりくるゆきの あわときゆらむ | 為明 |
| 1532 | かせふけは みねのときはき つゆおちて そらよりきゆる はるのあはゆき | 順徳院 |
| 1533 | のへはまた こそみしままの ふゆかれに きゆるをはると あはゆきそふる | 覚誉法親王 |
| 1534 | やまかけは なほはるさむき しらゆきの きえぬかうへに けふもふりつつ | 時秀 |
| 1535 | あさあけの まとふきいるる はるかせに いつくともなき うめかかそする | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1536 | くれなゐの いろにいてにけり うめのはな こむとたのめし ひとのとふまて | 親子(典侍親子朝臣) |
| 1537 | はなのいろを よそにみすてて ゆくかりも おくるるつらは こころあるらし | 寂蓮 |
| 1538 | なれてうき のちのわかれを おもへはや はなよりさきに かりのゆくらむ | 成国 |
| 1539 | かすみゆく よものこのめも はるはると はなまつやまに かへるかりかね | 雅経 |
| 1540 | おいらくの なみたにくもる はるのよは つきもむかしや おもひいつらむ | 宗信 |
| 1541 | よこくもは みねにわかるる やまひめの かすみのそてに のこるつきかけ | 知家 |
| 1542 | のへにしく くさのみとりの すゑとほみ かすみをわけて ひはりおつなり | 花園院 |
| 1543 | もえいつる はるもあさのの わかくさに かくれもはてす ききすなくなり | 基氏(足利尊氏男) |
| 1544 | はるやまの かすみのおくの よふことり よのかくれかに たれさそふらむ | 光厳院 |
| 1545 | あさほらけ つもれるゆきと みるまてに よしののやまは はなさきにけり | 有光 |
| 1546 | うゑおきし はるをみしかは やへさくら かさなるとしそ みにしられける | 円嘉 |
| 1547 | したひわひ あまたのはるを おくりても はなにおいぬる みこそをしけれ | 読人不知 |
| 1548 | ななそちの のちのはるまて なからへて こころにまたぬ はなをみるかな | 夢窓 |
| 1549 | たのまれぬ はなのこころと おもへはや ちらぬさきより うくひすのなく | 興風 |
| 1550 | たつねきて ちるをこそみれ やまさくら なにをたをりて いへつとにせむ | 兼舜 |
| 1551 | はるかせの さそふはおなし こすゑにも まつさくかたの はなやちるらむ | 尊胤法親王 |
| 1552 | ねにかへる はなかとみれは このもとを またふきたつる にはのはるかせ | 公蔭 |
| 1553 | やまさとは はなよりほかの とももなし ちりなむのちを いかにしのはむ | 基名 |
| 1554 | にはのおもは あとみえぬまて うつもれぬ かせよりつもる はなのしらゆき | 為兼 |
| 1555 | くらゐやま おとろのみちも ほととほし はなのほかなる みねのしひしは | 資明 |
| 1556 | いへのかせ ふきそつたへむ かすかやま すゑはのふちも かけなひくまて | 公秀 |
| 1557 | いたつらに なをのみとめて あつまちの かすみのせきも はるそくれぬる | 読人不知 |
| 1558 | みにつもる としのくれにも まさりけり けふはかりなる はるのをしさは | 小侍従(太皇太后宮) |
| 1559 | かきりありて くれゆくはるは はなとりの いろにもねにも のこらさりけり | 和義 |
| 1560 | ほとときす まつにこころそ うつりぬる はないろころも ぬきかへしより | 少将(弾正尹邦省親王家) |
| 1561 | しのふとも たたひとこゑは ほとときす さのみつれなき よはなかさねそ | 経忠(藤原家平男) |
| 1562 | みしかよを いくよあかしつ ほとときす たたひとこゑの はつねまつとて | 崇光院 |
| 1563 | いたつらに またたつねまし ほとときす なかなくさとの さためなれけは | 桓覚 |
| 1564 | ゆめちかと たとるねさめの ほとときす たかまくらにか ききさたむらむ | 資連 |
| 1565 | ひとこゑの きかまほしさに ほとときす おもはぬやまに たひねをそする | 基俊 |
| 1566 | さらてたに さたかならぬを ほとときす いまひとこゑは とほさかりつつ | 為藤 |
| 1567 | ほとときす いつくにいまは やまかつの ききもとかめぬ はつねなくらむ | 家隆 |
| 1568 | いまもなほ つれなかりけり ほとときす おのかさつきの そらたのめして | 定宗(法印円宗男) |
| 1569 | ほとときす さとなれぬへき さつきたに なほふかきよの しのひねそなく | 一条(徽安門院) |
| 1570 | たまみつも しとろののきの あやめくさ さみたれなから あくるいくよそ | 定家 |
| 1571 | やまふかみ はれぬなかめの いととしく くもとちそふる さみたれのそら | 崇光院 |
| 1572 | おのつから はるるくもまの つきかけも またかきくらす さみたれのそら | 基冬母 |
| 1573 | なつやまの みねとひこゆる かささきの つはさにかかる ありあけのつき | 後鳥羽院 |
| 1574 | こもまくら たかせのよとの うかひふね ねなくにいくよ かかりさすらむ | 国冬 |
| 1575 | いかにせむ しけるにつけて いにしへの あとともみえぬ にはのなつくさ | 嗣定 |
| 1576 | なつくさの みちあるかたは しりなから ことしけきよに なほまよふらむ | 後光厳院 |
| 1577 | なつかりの あしやのさとの ゆふくれに ほたるやまかふ あまのいさりひ | 実氏 |
| 1578 | せきいるる いはまつたひの みつのおとに ゆふくれかけて かせそふきそふ | 雅孝 |
| 1579 | やまかせに たきのよとみも おとたてて むらさめそそく よはそすすしき | 帥(鷹司院) |
| 1580 | くみてしる ひとやなからむ なつくさの しけみにしつむ ゐてのたまみつ | 伊平 |
| 1581 | なくせみの こゑよりほかは なつそなき みやまのおくの すきのしたかけ | 道平 |
| 1582 | いりひさす もりのしたはに つゆみえて ゆふたちすくる そらそすすしき | 行家(藤原知家男) |
| 1583 | ゆふたちの はれぬるあとの やまのはに いさよふつきの かけそすすしき | 覚信 |
| 1584 | ひくらしの なくやまかけの すすしきに かせもあきなる ならのはかしは | 時朝(源) |
| 1585 | まつかせの ゆふひかくれに ふくほとは なつすきにける そらかとそみる | 範永 |
| 1586 | あききぬと またしらつゆの おきもあへす まくらすすしき あかつきのとこ | 光厳院 |
| 1587 | あききても つゆおくそての せはけれは たなはたつめに なにをかさまし | 弁内侍(後深草院) |
| 1588 | あきかせは すすしくふきぬ ひこほしの むすひしひもは いまやとくらむ | 仙覚 |
| 1589 | よそにたに まちこそわたれ あまのかは さそいそくらむ つまむかへふね | 経顕(藤原定資男) |
| 1590 | つゆけさは さこそみやまの いほならめ こけのそてさへ あきやしるらむ | 安法 |
| 1591 | ふきまよふ かせのやとりの をきのはに むすひもとめぬ あきのしらつゆ | 師良(二条良基男) |
| 1592 | のきちかき やましたをきの こゑたてて ゆふひかくれに あきかせそふく | 家隆 |
| 1593 | うゑおきし のきはのをきを ふくかせに たかとかならぬ ものそかなしき | 覚誉法親王 |
| 1594 | ねやちかき をきのはそよく かせのおとは ききなれてたに ゆめそおとろく | 乗基 |
| 1595 | むらさめの はるるゆふひの かけもりて このしたきよき つゆのいろかな | 永福門院 |
| 1596 | くさきにも あらぬそてさへ しをれけり うへやまかせの あきのゆふくれ | 成任 |
| 1597 | すみわふる ときこそありけれ しらくもの たなひくみねの あきのゆふくれ | 深守法親王 |
| 1598 | うきことも なにかはなけく しかりとて そむかれぬよの あきのゆふくれ | 読人不知 |
| 1599 | よのうきめ みえぬやまちの おくまても あきのあはれは のかれさりけり | 兼空 |
| 1600 | あきふかき やまのかけのの しはのとに ころもてうすし ゆふくれのそら | 伊勢 |
| 1601 | つねよりも ものおもふことの まさるかな うへもいひけり あきのゆふくれ | 元真 |
| 1602 | かすかなる たにのほらをそ おもひやる あきかせのみや ふきてとふらむ | 伊勢大輔 |
| 1603 | あさちふの をののあきかせ はらへとも あまりてつゆや なほむすふらむ | 宗時 |
| 1604 | ものおもはて いつれのとしの あきまてか つゆにたもとの しられさりけむ | 澄覚法親王 |
| 1605 | わきもこに ゆきあひのわせを かるときに なりにけらしも はきのはなさく | 人麿 |
| 1606 | さきかくす のもりかいほの ささのとも あらはにおける はきのあさつゆ | 家隆 |
| 1607 | はきかはな うつりにけりな しらつゆに ぬれにしそての いろかはるまて | 浄弁 |
| 1608 | いろかはる したはをかけて あきはきの はなのにしきは おりかさねつつ | 常顕 |
| 1609 | うゑしそて またもひまなく あきのたの かりかねさへそ なきわたりける | 貫之 |
| 1610 | ふるさとを くもゐのかりに こととはむ さらてこしちの おとつれもなし | 氏経 |
| 1611 | よそになほ つまをへたてて しらくもの ゆふゐるやまに しかそなくなる | 邦省親王 |
| 1612 | ふかきよの とはたのおもの しかのねを はるかにおくる あきのやまかせ | 尚長(祝部) |
| 1613 | をくらやま もみちふきおろす こからしに またさそはるる さをしかのこゑ | 円照 |
| 1614 | ひとしれす をきのしたなる さをしかも ほにいつるあきや ねにはたつらむ | 中務 |
| 1615 | こりすなほ をしかなくなり つれもなき つまとしりても としはへぬらむ | 忠成(祝部親成男) |
| 1616 | あきのよは ねさめののちも なかつきの ありあけのつきに しかそなくなる | 行能 |
| 1617 | きりきりす こゑかすかなる あかつきの かへにすくなき ありあけのかけ | 花園院 |
| 1618 | やへむくら しけれるにはに なくむしの つゆのやとりや なみたなるらむ | 俊定(藤原経俊男) |
| 1619 | しもむすふ ひとよのほとに よわるなり をささかしたの まつむしのこゑ | 読人不知 |
| 1620 | あきさむき ころとやよわる あさちふの つゆのやとりの まつむしのこゑ | 高嗣 |
| 1621 | こぬひとは こころつくしの あきかせに あふたのみなき まつむしのこゑ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1622 | ゆふひかけ くものはたてに うつろひて つきまつほとの そらそさひしき | 経顕(藤原定資男) |
| 1623 | あきかせの ふきそめしより あまのはら そらゆくつきの くもるよもなし | 家良 |
| 1624 | あきかせに よわたるつきの たかしやま ふもとのなみの おとそふけぬる | 寂恵 |
| 1625 | あきなから かけこそこほれ ふしのねの ゆきにうつろふ よなよなのつき | 基氏(足利尊氏男) |
| 1626 | ふけゆけは くももあらしも をさまりて よわたるつきの かけそのとけき | 公豊 |
| 1627 | いたつらに わかよふけぬと なけきつる こころもはれて つきをみるかな | 為明 |
| 1628 | くまもなき つきみるほとや わひひとの こころのうちの はれまなるらむ | 登蓮 |
| 1629 | うたたねも つきにはをしき よはなれは なかなかあきは ゆめそみしかき | 尊氏 |
| 1630 | むしのねの よわるもさひし あけかたの つきかけうすき きりのまかきに | 小宰相(徽安門院) |
| 1631 | あきさむく なりにけらしも やまさとの にはしろたへに てらすつきかけ | 道済 |
| 1632 | ありあけの つきまちいてて しろたへの ゆふつけとりも ときやしるらむ | 為明 |
| 1633 | くもゐより てりやまさると みつきよみ うらにてもみむ あきのよのつき | 定文 |
| 1634 | たにかはの なかれはあめと きこゆれと ほかよりはるる ありあけのつき | 孝標女 |
| 1635 | つきのうちの かつらのひとを おもふとて あめになみたの そひてふるらむ | 七条后 |
| 1636 | ひさかたの つきのかつらの もみちはは しくれぬときそ いろまさりける | 重茂 |
| 1637 | あきのよの しくれてわたる むらくもに たえたえはるる やまのはのつき | 経親(大江基親男) |
| 1638 | おとはかり しくるとそきく つきかけの くもらぬよはの みねのまつかせ | 尊氏 |
| 1639 | まつにふく あらしのおとを ききわかて しくれにはるる つきかとそみる | 宗氏 |
| 1640 | いとふらむ くめちのかみの けしきまて おもかけにたつ よはのつきかな | 小侍従(太皇太后宮) |
| 1641 | かすかのや くもらぬつきの かけなれは おとろのみちの あともまよはす | 定資 |
| 1642 | よもすから つゆのひかりを みかくなり たまのよこのの あきのつきかけ | 読人不知 |
| 1643 | みやきのの このしたつゆや おちぬらむ くさはにあまる あきのよのつき | 雅成親王 |
| 1644 | なにはかた しほひもつきは やとりけり あしのすゑはに つゆをのこして | 真昭 |
| 1645 | しきたへの とこのうらわの あまをふね うきねさためぬ つきやみるらむ | 頼遠 |
| 1646 | わたのはら つきもはてなき なみのうへに さてしもあけむ よこそをしけれ | 為秀 |
| 1647 | しかのうらや こほりくたけて あきかせの ふきしくなみに うかふつきかけ | 後二条院 |
| 1648 | そらにのみ たつかはきりも ひまみえて もりくるつきに あきかせそふく | 為冬 |
| 1649 | きりはらふ ひらのやまかせ ふくるよに ささなみはれて いつるつきかけ | 尊氏 |
| 1650 | あけぬとや つりするふねも いてぬらむ つきにさをさす しほかまのうら | 隆信 |
| 1651 | なかきよも あけなはつらし みつのえの うらしまかけて すめるつきかけ | 高宗 |
| 1652 | さやかなる つきさへうとく なりぬへし なみたのほかに みるよなけれは | 永福門院 |
| 1653 | わかやとの まかきにこむる あきのいろを さなからしもに しらせすもかな | 式子内親王 |
| 1654 | あけかたに よはなりぬらし すかはらや ふしみのたゐに しきそたつなる | 季経 |
| 1655 | うきことの かきりしられぬ ねさめかな しきのはねかき かすはかけとも | 為藤 |
| 1656 | おもへたた むなしきはしに あめをききて あけかたきよの あきのこころを | 伏見院 |
| 1657 | みたれてそ おともきこゆる よもすから しのふのころも つきにうつらし | 隆朝 |
| 1658 | つきくさの はなすりころも あきのよは やかてうつろふ かけにうつなり | 為定(御子左二条為道男) |
| 1659 | とこのしも まくらのつきの さむきよに たへすやひとの ころもうつらむ | 仲顕 |
| 1660 | やまひこの おとはのさとの さよころも こなたかなたに うつかとそきく | 読人不知 |
| 1661 | うつりゆく まかきのきくの いろにこそ あきのひかすの ほともみえけれ | 寛尊法親王 |
| 1662 | いろそへむ みゆきをそまつ もみちはも ふりぬるやとの にはのけしきに | 伏見院 |
| 1663 | たつぬへき ほとこそいとと いそかるれ かつかつみする にはのもみちは | 花園院 |
| 1664 | つゆしもの いろともみえぬ くれなゐに いかてそめける このはなるらむ | 覚誉法親王 |
| 1665 | やまひめの てそめにいそく もみちはや しくれぬさきの にしきなるらむ | 玄勝 |
| 1666 | やまひめの いそくころもの あきのいろを そめはしめたる みねのもみちは | 為経(甘露寺藤原資経男) |
| 1667 | ゆふつくひ しくれてのこる やまのはの うつろふくもに あきかせそふく | 後醍醐院 |
| 1668 | いまはたた よそにそみつる をくらやま みねのもみちの あきのさかりを | 実名(藤原公脩男) |
| 1669 | いかにして ありしこころを なくさめむ もみちみにとも さそはれぬみは | 頼宗 |
| 1670 | なみのうへを こきつつゆけは やまちかみ あらしにちれる このはとやみむ | 貫之 |
| 1671 | をしとみる ありあけのつきの なこりをも おもひすててや あきはゆくらむ | 実教 |
| 1672 | うらかるる のへのをはなの そてのつゆ むすひすてても くるるあきかな | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1673 | はれくもり しくれふりおける かたをかの ならのはさやき ふゆはきにけり | 公相 |
| 1674 | やまかせに すきゆくくもの あとまても なほなこりある むらしくれかな | 俊平(源泰光男) |
| 1675 | ねさめして あくるまつまの たまくらに いくたひすくる しくれなるらむ | 俊顕 |
| 1676 | ぬれてなほ いろこそまされ おちはをも かさねてそむる しくれなりけり | 経顕(藤原定資男) |
| 1677 | かみなつき しくれのあめの おりかけし にしきふきおろす さほのやまかせ | 大輔(殷富門院) |
| 1678 | おほゐかは かけみしみつに なかるめり さそふあらしの やまのもみちは | 公忠(藤原実忠男) |
| 1679 | もみちはの なかるるときは しらなみの たちにしなこそ かはるへらなれ | 貫之 |
| 1680 | とくきても みてましものを やましろの たかつきむらの ちりにけるかも | 黒人 |
| 1681 | のもやまも このはまれなる ふゆかれに あらしをのこす みねのまつはら | 時常 |
| 1682 | いせしまや うらかせそよく はまをきの しものかれはも かみさひにけり | 実兼 |
| 1683 | なにはえや しもにくちぬる あしのはは そよくともなき うらかせそふく | 聖尊法親王 |
| 1684 | ふゆかれの まののかやはら ほにいてし おもかけみせて おけるしもかな | 忠広 |
| 1685 | かせさゆる しものまかきの はなすすき かれしひとめに たれまねくらむ | 覚誉法親王 |
| 1686 | しもむすふ かれののをささ うちさやき あらしもつきも さえまさりつつ | 尊氏 |
| 1687 | ふゆふかみ さひしきいろは なほそひぬ かりたのおもの しものあけかた | 崇光院 |
| 1688 | ふゆのよの つきかけさむき たにのとに こほりをたたく やまおろしのかせ | 経継 |
| 1689 | なかきよの ねさめのなみた ほしやらて そてよりこほる ありあけのつき | 為藤 |
| 1690 | けさみれは たけのかけひを ゆくみつの あまるしつくそ かつこほりぬる | 宗久 |
| 1691 | さえまさる やまかせはかり おとたてて こほりにむせふ たにかはのみつ | 実俊(西園寺公宗男) |
| 1692 | よしのかは たきつなかれも こほるなり やましたかせや さえまさるらむ | 長秀 |
| 1693 | ふゆのよの さむけきつきに かすみえて ふしみのさはに わたるみつとり | 乗功 |
| 1694 | むれてたつ かものうきねの あとはかり しはしこほらぬ にはのいけみつ | 実継 |
| 1695 | いつのまに むすふこほりそ あしかもの あしのいとなく さわくいけみつ | 公蔭 |
| 1696 | やましなの おとはのかはの さよちとり およはぬあとに ねをのみそなく | 公雄 |
| 1697 | ひとなみに なをやかくると わかのうらに なほあとしたふ ともちとりかな | 尊胤法親王 |
| 1698 | ひとしれぬ ねをのみなきて はまちとり あとをそかこつ わかのうらなみ | 信快 |
| 1699 | わかのうらに こころをとめて はまちとり あとまておもふ ねこそなかるれ | 通藤女 |
| 1700 | なにはかた つきのてしほの うらかせに よるへさためす なくちとりかな | 万代(後醍醐院女蔵人) |
| 1701 | みたりあしの かれはのしもや おきつかせ ふけゆくつきに ちとりなくなり | 基氏(足利尊氏男) |
| 1702 | とけてねぬ すまのせきもり よやさむき ともよふちとり つきになくなり | 義詮 |
| 1703 | たちかへり ちとりなくなる はまゆふの こころへたてて おもふものかは | 宇多天皇 |
| 1704 | うらつたふ しもよのちとり こゑさえて しほひのかたに ともさそふなり | 新大納言(延政門院) |
| 1705 | あしろへと ちきりしひとの またこぬは いつこによりて ひをくらすらむ | 道因 |
| 1706 | ふるゆきに とたちたつねて けふいくか かたののみのを かりくらすらむ | 氏頼 |
| 1707 | おとにのみ ふるとはきけと たまささの うへにたまらす ちるあられかな | 顕氏(細川頼貞男) |
| 1708 | かれのこる まかきのをきの ひとむらに またおとたてて ふるあられかな | 則祐 |
| 1709 | ぬきとめぬ をすてのやまの こけのうへに みたるるたまは あられなりけり | 敦有 |
| 1710 | しからきの とやまにふれる はつゆきに みやこのそらそ なほしくれける | 頼隆 |
| 1711 | とふひとの なさけのふかき ほとまては つもりもやらぬ にはのしらゆき | 夢窓 |
| 1712 | ふるゆきの ふみわけぬへき やとならは とはれぬみをや なほもうらみむ | 宗氏 |
| 1713 | ふみわけて たれかはとはむ くさのはら そこともしらす つもるしらゆき | 万代(後醍醐院女蔵人) |
| 1714 | ささなみや うちいててみれは しろたへの ゆきをかけたる せたのなかはし | 惟賢 |
| 1715 | なにはかた まさこちとほく ひくしほの なかれひるまに つもるしらゆき | 盛徳 |
| 1716 | くもかかる かつらきやまに ふりそめて よそにつもらぬ けさのしらゆき | 道嗣 |
| 1717 | かさこしの みねのふふきも さえくれて きそのみさかを うつむしらゆき | 為重 |
| 1718 | いととなほ ゆききもたえて よをいとふ やまのかひある にはのしらゆき | 範空 |
| 1719 | あはれなり ふりつもりたる ゆきよりも わかみはまつや きえむとすらむ | 加賀左衛門 |
| 1720 | ふしのねに ふりつむゆきの としをへて きえぬためしと きみをこそみめ | 経信 |
| 1721 | ゆきはなほ うつみもはてぬ すみかまの けふりふきしく をののやまかせ | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1722 | すみかまに かよふゆききの あとはかり ゆきにそみゆる おほはらのやま | 尊氏 |
| 1723 | ほしうたふ こゑやくもゐに すみぬらむ そらにもやかて かけのさやけき | 伏見院 |
| 1724 | みしやいつそ とよのあかりの そのかみも おもかけとほき くものうへのつき | 後伏見院 |
| 1725 | ゆくとしも たちくるはるも あふさかの せきちのとりの ねをやまつらむ | 公継 |
| 1726 | ことしけき わかならはしに おきなれて きけはよふかき とりのこゑかな | 後光厳院 |
| 1727 | ほのかなる こゑそきこゆる ここのへの みやのほかにや とりはなくらむ | 後醍醐院 |
| 1728 | のとかなる おいのねさめの さひしきに とりのやこゑを かそへてそきく | 為世(御子左二条為氏男) |
| 1729 | をさまれる ときをそつくる わかきみの よにあふさかの せきのとりのね | 氏経 |
| 1730 | こととひし みゆきのあとは よよふりて のこるかはへの まつそこたかき | 覚助法親王 |
| 1731 | まちこひし むかしはいまも しのはれて かたみひさしき みつのはままつ | 定家 |
| 1732 | うちつけに なきさのをかの まつかせを そらにもなみの たつかとそきく | 信明 |
| 1733 | よさのうら いりうみかけて みわたせは まつはらとほき あまのはしたて | 孝覚 |
| 1734 | きよみかた おきつしほせの ゆふなきに いりひうつろふ みほのまつはら | 行尹 |
| 1735 | なにはかた なみちはれゆく ゆふなきに いりひまちかき あはちしまやま | 花園院 |
| 1736 | まつらかた もろこしかけて みわたせは なみちもやへの すゑのしらくも | 後光厳院 |
| 1737 | なみまより ほのかにみゆる あまをふね くもとともにも きえわたるかな | 公通 |
| 1738 | あはれなり あまのまてかた いとまなみ たれもさてこそ よはつくせとも | 泰時 |
| 1739 | ふしのねを たこのうらより みわたせは けふりもそらに たたぬひそなき | 定為 |
| 1740 | よるのあめの くもふきはらふ あさあらしに はれてまちかき をちのやまのは | 光厳院 |
| 1741 | いたつらに みののをやまの まつことも なきわれなから としふりにけり | 亀山院 |
| 1742 | いまはわれ くるしきおいの さかこえて またわけわふる すすのしたみち | 道昭 |
| 1743 | くもかかる あをねかみねの こけむしろ いくよへぬらむ しるひとそなき | 顕季 |
| 1744 | いくよしも へたてぬものを くらゐやま のほりしあとに なとまよふらむ | 実教 |
| 1745 | ひにそへて くらゐのたかく なりゆけは やまのかひある きみとこそみれ | 成仲 |
| 1746 | くらゐやま またしゐしはの かけにゐて わかのほるへき みちはいそかす | 為邦 |
| 1747 | むさしのの わかむらさきの ころもては ゆかりまてこそ うれしかりけれ | 重家 |
| 1748 | おなしくは あけのころもの いろなから いかてくもゐに たちかへらまし | 朝尹 |
| 1749 | たくひなく あはれとそきく さよふけて くもゐにわたる たつのひとこゑ | 月花門院 |
| 1750 | あしへより しほみちくらし あまつかせ ふけひのうらに たつそなくなる | 順徳院 |
| 1751 | みしかとも たれともしらす なにはかた なみのよるにて かへりにしかは | 村上天皇 |
| 1752 | すみよしの まつとほのかに ききしかは みちにししほの よるかへりけむ | 忠見 |
| 1753 | たこのうらの なみはのとけし わかそてに たとへむかたの なきそかなしき | 読人不知 |
| 1754 | たちかへり わかのうらなみ このみよに おいてふたたひ なをそかけつる | 為世(御子左藤原為氏) |
| 1755 | おきつなみ たかしのはまの しほかせに よやさむからし たつそなくなる | 善源 |
| 1756 | かくしつつ つもれはおいの みなせかは さのみやありて そてぬらすへき | 公宗母 |
| 1757 | かめやまの みねたちこえて みわたせは きよたきかはを おとすいかたし | 後嵯峨院 |
| 1758 | わたりする かはせのふねに さすさをの そのなはかりは とるもくるしな | 公賢 |
| 1759 | おほゐかは みなわさかまく いはふちに たたむいかたの すきかたのよや | 俊頼(源経信男) |
| 1760 | よのなかに いひなかしてし たつたかは みるになみたそ あめとふりける | 宇多天皇 |
| 1761 | よよたえぬ せきのふちかは いかなれは しつむうきせに なをなかすらむ | 公忠(藤原実忠男) |
| 1762 | いしまより いつるいつみそ むせふなる むかしをしのふ こゑにやあるらむ | 兼盛 |
| 1763 | みやこひと きかぬはなきを おとなしの たきとはたれか いひはしめけむ | 能因 |
| 1764 | いまたにも かかりといひし たきつせの そのをりまては むかしなりけむ | 西行 |
| 1765 | またよにも たちかへるかな すすきえぬ うきみわかはの みつのしらなみ | 定円(葉室光俊男) |
| 1766 | またれつる このせもすきぬ きみかよに あふくまかはの なをたのめとも | 成久 |
| 1767 | さとのなを わかみにしれは やましろの うちのわたりそ いととすみうき | 紫式部 |
| 1768 | つくつくと うきよにむせふ かはたけの つれなきいろは よるかたもなし | 三条院 |
| 1769 | いへのかせ なほふきたえす とよあまり またかけなひく にはのくれたけ | 通相 |
| 1770 | くれたけの よよのきみには つかへきぬ おもひてのこす ひとふしもかな | 有範 |
| 1771 | むなしきを ともとはすれと くれたけの うきふしはかり みにそかすそふ | 為相 |
| 1772 | なからへて あれはそあへる きみかよに かすならすとも みをはいとはし | 家隆 |
| 1773 | おろかなる わかみにむけて おもふには きみかめくみの なほあまりぬる | 実泰 |
| 1774 | おいらくの しらかみまてに つかへきて けふのみゆきに あふかうれしさ | 有房(六条通有男) |
| 1775 | つたへくる にはのをしへの かたはかり あとあるにたに なほまよひつつ | 為家 |
| 1776 | しきしまの みちはたたしき みちにしも こころつからや ふみまよふらむ | 崇光院 |
| 1777 | ちりのみに つもれるにはの をしへまて いともかしこく きこえあけてき | 為明 |
| 1778 | わかのうらに としふるたつの くもゐまて きこえあけける みちそかしこき | 実継 |
| 1779 | しきしまの みちのひかりと まきまきの うちにみかける たまをみるかな | 行家(藤原知家男) |
| 1780 | いにしへの よよにかはらす つたへきて いまもあつむる やまとことのは | 為氏 |
| 1781 | いにしへの かしこきみちを まなへとも こころをかふる ひとそすくなき | 尊氏 |
| 1782 | みかさやま そのなをかけて みしあきも はるかになりぬ みねのつきかけ | 為藤 |
| 1783 | めくりあふ くもゐのつきに いくたひか いててつかへし あきをこふらむ | 為氏 |
| 1784 | こよひしも ひかりそへける くらゐやま かひあるあきの つきをみるかな | 道嗣 |
| 1785 | くらゐやま のほるわかみの いかなれは くもゐのつきに とほさかるらむ | 高範 |
| 1786 | よはひこそ いつよをこえめ くらゐやま たえにしあとに またのほるかな | 雅孝 |
| 1787 | ふたよまて うけつくきみを わかきみと あふくやそちの みこそふりぬれ | 公秀 |
| 1788 | ななそちの そてのなみたに やとりきて おいをはつきそ いとはさりける | 長通 |
| 1789 | むそちあまり おなしそらゆく つきをみて つもれるおいの ほとそしらるる | 長舜 |
| 1790 | みのうさの なくさむとしは なけれとも よるはすからに つきをみるかな | 邦省親王 |
| 1791 | おのつから ものおもふひとも なくさめと うきよにあきの つきやすむらむ | 為氏 |
| 1792 | わかやとの ものとたにみは あきのよの つきよよしとも ひとにつけまし | 恵慶 |
| 1793 | わかのうらに しつみはてにし すてふねも いまひとなみの よにひかれつつ | 為顕 |
| 1794 | もしほくさ かきおくかすは つもれとも またあらはるる ことのはそなき | 成実 |
| 1795 | かきとむる このみつくきの かはらすは なからむあとの かたみともみよ | 伏見院 |
| 1796 | わかみよに なからむのちに あはれとは たれかいはまの みつくきのあと | 後二条院 |
| 1797 | みるたひに おもひそいつる みつくきの あとはわすれぬ よよのかたみを | 行忠(藤原) |
| 1798 | たれかすむ やとのつまとも しらなくに はかなくかける ささかにのあと | 経信 |
| 1799 | こころひく やとにくらして あつさゆみ かへらむほとを わすれぬるかな | 読人不知 |
| 1800 | あつさゆみ いてもかひなき みにしあれは けふのまとゐに はつれぬるかな | 慈応 |
| 1801 | あつさゆみ きみしまとゐに たくはねは ともはなれたる ここちこそすれ | 道命 |
| 1802 | いつよまて きみにつかへて としさむき まつのこころは ならひきにけり | 公賢 |
| 1803 | たかさこの をのへにみゆる まつのとは たかよをつくす すみかなるらむ | 実伊 |
| 1804 | まちいてて みるもつれなき わかみかな すむへきやまの ありあけのつき | 貞秀 |
| 1805 | あらましの こころはゆきて すみなから よそにみやまの くもそへたつる | 公賢 |
| 1806 | くもならて こたかきみねに ゐるものは うきよをそむく わかみなりけり | 戒仙 |
| 1807 | しのひねも おとなかりけり ほとときす こやしつかなる はやしなるらむ | 永観 |
| 1808 | たつねいる かひやなからむ やまふかく すむともすまぬ こころなりせは | 行冬 |
| 1809 | しはのとの しはしはかりの すまひそと なくさめてきく のきのまつかせ | 慈快 |
| 1810 | ともときく まつのあらしも おとせすは なほやまさとや さひしからまし | 頓阿 |
| 1811 | さひしさを おもひこそしれ やまさとの ともとききける まつのあらしに | 光厳院 |
| 1812 | たらちねの むかしのあとと おもはすは まつのあらしや すみうからまし | 為家 |
| 1813 | みやこひと とはぬほとをも おもひしれ みしよりのちの にはのまつかせ | 後鳥羽院 |
| 1814 | うきことを きかしとてすむ やまさとに またやいとはむ みねのまつかせ | 冬隆 |
| 1815 | あすしらぬ みはかくてもや やまふかみ みやこはやへの くもにへたてて | 光厳院 |
| 1816 | やまふかみ このはのつゆを うちはらひ いつまてされは きえのこるらむ | 高光 |
| 1817 | わひぬれは まつのあらしの さひしさも たへてすまるる やまのおくかな | 読人不知 |
| 1818 | たつねいる みやまのおくの かくれかは よのうきことや しるへなるらむ | 梁清 |
| 1819 | つねにすむ こころのうちの かくれかそ ひとのとひくる みちなかりける | 只帰 |
| 1820 | とふひとの あらはとまちし やまさとは なほよをすてぬ こころなりけり | 公敏 |
| 1821 | ひととはぬ ほともしられて やまさとは こけのみふかき にはのかよひち | 顕氏(細川頼貞男) |
| 1822 | しをりせて いりにしみちの かひありて ひともとひこぬ やまのおくかな | 頼仲 |
| 1823 | さらぬたに ゆふくれつらき やまさとに とふひとかへる いはのかけはし | 少将(藻璧門院) |
| 1824 | このままに たちもかへらし やまさとは おもひしよりも すみよかりけり | 尊什 |
| 1825 | やまふかみ またすむひとの あるにこそ みひとつならぬ うきよとはしれ | 禅守 |
| 1826 | かりそめに むすひししはの いほりにも すめはすまれて としそへにける | 禅隆 |
| 1827 | かりそめと おもひしほとに つくはねの すそわのたゐも すみなれにけり | 朝村 |
| 1828 | つくはねの すそわのたゐの あきのいほ このもかのもに けふりたつなり | 桓覚 |
| 1829 | もりあかす かとたのおもの いなむしろ ふきしくかせを まくらにそきく | 尊胤法親王 |
| 1830 | よのなかは あきのやまたの かりのいほ すみうしとても よしやいつまて | 顕実母 |
| 1831 | なへてよの うきにこえたる おいのなみ いつまてかかる みをなけかまし | 是法 |
| 1832 | のこりなき すゑをおもへは ななそちの あまりにもろき わかなみたかな | 頼仲 |
| 1833 | いたつらに おいにけるかな かすかのに ひくひともなき もりのしたくさ | 良冬 |
| 1834 | いつまてと おもふにつけて おいかみは なくさむほとの あらましもなし | 忠性 |
| 1835 | かきりあれは みのうきことも なけかれす おいをそひとは まつへかりける | 頓阿 |
| 1836 | いかにせむ うしとおもひし よのなかの おもかはりせて みこそおいぬれ | 長舜 |
| 1837 | いつまてと よをおもふにも そてぬれて おいのしるしそ なみたなりける | 邦省親王 |
| 1838 | かひなしや わかよはふけて いたつらに かかけもやらぬ のりのともしひ | 覚空 |
| 1839 | のちのよの やみをはるけよ あつめても みをはてらさぬ ほたるなりとも | 経深 |
| 1840 | つひにゆく みちはありとも しはしたに おいをととむる せきもりもかな | 成藤(藤原時藤男) |
| 1841 | わひつつも なほすてやらぬ こころかな けにうきよとや おもはさるらむ | 光正 |
| 1842 | いくたひか うきよのほかに すてしみを またたちかへり なけきわふらむ | 宗祐 |
| 1843 | なへてよの うきはならひと おもひこし ことわりすきて みをなけくかな | 実遠(藤原公冬男) |
| 1844 | あすかかは あすのふちせを しらぬこそ さためなきよの たのみなりけれ | 実家女 |
| 1845 | かくはかり うきはいかなる むくひそと みをこそかこて よをはうらみす | 直信 |
| 1846 | をりをりに ことこそかはれ みのうさを おもふこころの やすけなのよや | 法守法親王 |
| 1847 | あつまちの とつなのはしの くるしとも おもひしらてや よをわたるらむ | 宗遠 |
| 1848 | あふきつつ たのみしかけは かれはてぬ のこるくちきの みをいかにせむ | 内侍(永福門院) |
| 1849 | かすならて なからへきつる うきみをも きみかためにと なほをしむかな | 直氏 |
| 1850 | そむかれぬ わかみのほとの つれなさも よのうきにこそ おもひしりぬれ | 雅朝 |
| 1851 | いきてよに すむとはいはし かすならぬ みとたにわれを しるひとそなき | 真俊 |
| 1852 | ありはつる よとしおもはは いかはかり かすならぬみの なほうからまし | 宗尋 |
| 1853 | よのなかの うきをもうしと なけくみに いとふこころの なとなかるらむ | 忠景 |
| 1854 | うきよとは おもひもしらて すきにけり かすならぬみを あるにまかせて | 通定 |
| 1855 | けふまては うきもつらきも しのひきぬ なほよをしたふ こころよわさに | 政村 |
| 1856 | うきよをも いとひそはてぬ をりをりに かはるこころの さためなけれは | 公寛 |
| 1857 | ささかにの いとひしかひも なきよかな かくてもなとか くるしかるらむ | 信生 |
| 1858 | なにをして くらすともなき つきひかな つもるはかりを みにかそへつつ | 国助 |
| 1859 | おもひつつ なほおとろかぬ うきよこそ ゆめとしりても かひなかりけれ | 行顕 |
| 1860 | うはたまの よるみるゆめを ゆめとのみ おもふこころそ いやはかななる | 和義 |
| 1861 | たれもみな またさめぬまの ゆめのよに こころをとむる ほとのはかなさ | 義高 |
| 1862 | たちかへり なほそかなしき よのなかの うきはゆめそと おもひなせとも | 経尹(藤原懐経男) |
| 1863 | なにかおもふ なにかはなけく さめやらぬ ゆめのうちなる ゆめのうきよを | 後鳥羽院 |
| 1864 | うきもゆめ うからぬもまた まほろしの よをなくさむる われもはかなし | 光厳院 |
| 1865 | ゆめのこと すきしつきひの つもりきて しのふむかしと なりにけるかな | 読人不知 |
| 1866 | ゆめならは さむるうつつも あるへきを うつつなからの ゆめそはかなき | 雲雅 |
| 1867 | あはれなり きえはてぬとも うきならて なにをこのよの おもひてにせむ | 山田 |
| 1868 | よしあしを こころにたにも すてぬれは おなしうきよも すみよかりけり | 基久 |
| 1869 | すてはてぬ わかこころもて いくたひか よをうしとのみ うらみきぬらむ | 高広 |
| 1870 | あらましに いとふはいまも やすきよを まことにならは すてやかねまし | 普誥 |
| 1871 | うつつには またもかへらぬ いにしへを ふたたひみるは ゆめちなりけり | 彦良 |
| 1872 | くりかへし なにしのふらむ かすならて むかしもすきし しつのをたまき | 宣子(従三位) |
| 1873 | うきよには さむるうつつの あらはこそ みしをゆめとも ひとにかたらめ | 円空 |
| 1874 | こひわたる よよのむかしも おもひつつ ぬれはやみゆる ゆめのうきはし | 源意(藤原源守男) |
| 1875 | われなから こころやかはる うしといひて すきしむかしを またしのふかな | 義春 |
| 1876 | いにしへを きくにつけてそ しのはるる わかみしのちや うきよなるらむ | 道昌 |
| 1877 | しらさりき こころつくしの いにしへを みのおもひてと しのふへしとは | 守時女 |
| 1878 | なにしかも うさはかはらぬ おなしよの むかしになれは こひしかるらむ | 法守法親王 |
| 1879 | みをしらて いふはかひなき ことなれと たのめはひとをと おもふはかりそ | 顕輔 |
| 1880 | うらむとは しらてやしかの しきりには はきのはひえを しからみにする | 俊頼(源経信男) |
| 1881 | うらめしと しかをないひそ はきかえも かるもにしつつ すくすとそみる | 仲実 |
| 1882 | ひとことに えてうれしきは のりのはな みよのほとけの やとのものとて | 慈円 |
| 1883 | なほちれと やまかせかよひ さそふらし くもはのこれと はなそとまらぬ | 読人不知 |
| 1884 | をかのへの ならのおちはに しくれふり ほのほのいつる とほやまのつき | 後鳥羽院 |
| 1885 | ささのはの つゆはしはしも きえのこる やよやはかなき みをいかにせむ | 俊頼(源経信男) |
| 1886 | ちはやふる いつしのみやの かみのこま ひとなのりそや たたりもそする | 重之 |
| 1887 | あきののを わけつつゆけは はなもみな ちりかかるかや そてにしむらむ | 貫之 |
| 1888 | かみやまに いくよへぬらむ さかきはの ひさしくしめを ゆひかけてけり | 定家 |
| 1889 | くりかへし いのるこころを しひてなほ かみはもちひよ もりのしめなは | 具氏 |
| 1890 | ゆくつきも かけふけにけり かちまくら したうつなみの よるのとまりに | 読人不知 |
| 1891 | うしやうし はなにほふえたに かせかよひ ちりきてひとの こととひはせす | 読人不知 |
| 1892 | みつひたり まきのふちふち おちたきり ひをけさいかに よりまさるらむ | 頼政 |
| 1893 | うらみかね たえにしとこは むかしはや ふさすなりにき よはのさむしろ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1894 | やまさとは あきをまつかせ ことしらふ のたかるしつは ちようたふなり | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1895 | すまのうら あまのとまやの あくるより やくしほとけさ たつけふりかな | 性助法親王 |
| 1896 | さひしくて ひとくともなき やまさとに いつはりしける うくひすのこゑ | 宗尊親王 |
| 1897 | たまやなき みとりのえたの よわけれは うくひすとむる ちからたになし | 千里 |
| 1898 | よしさらは しるへにもせむ けふはかり はなもてむかへ はるのやまかせ | 俊恵 |
| 1899 | あきことに かりくるいねは つみつれと おいにけるみそ おきところなき | 忠見 |
| 1900 | しらゆきの ふれるあしたの しらかゆは いとよくにたる ものにそありける | 仲文 |
| 1901 | おしはりて ゆみのふくろと しるしるや おもはぬやまの ものをいるらむ | 実方 |
| 1902 | たまたれの みすのうちより いてしかは そらたきものと たれもしりにき | 清輔 |
| 1903 | ゆふなきに ほつつしめなは くりさけて とまりけすらひ よするふなひと | 光俊(葉室光親男) |
| 1904 | わかこひは めさへいつかは あふみなる やすきいをたに ぬるよしそなき | 行家(藤原知家男) |
| 1905 | かせあらき やまたのいほの こもすたれ しくれをかけて もるこのはかな | 実兼 |
| 1906 | けふのひは くるるとやまの かきわらひ あけはまたみむ をりすきぬまに | 知家 |
| 1907 | あくるまを なほたたくこそ なつのよの こころみしかき くひななりけれ | 読人不知 |
| 1908 | ゆふかけし かみのきたのの ひとよまつ いまはほとけの みそきなりけり | 読人不知 |
| 1909 | たきつかはに みたれしたまの をたえして みつのいとすち こほりしにけり | 行家(藤原知家男) |
| 1910 | みわたせは さほのかはらに くりかけて かせによらるる あをやきのいと | 西行 |
| 1911 | つらきかな やまのそまきの われなから うつすみなはに ひかぬこころは | 為家 |
| 1912 | おほゐかは かへらぬみつの うかひふね つかふとおもひし みよそこひしき | 公雄 |
