「風雅和歌集」一覧
2211件
| 1 | あしひきの やまのしらゆき けぬかうへに はるてふけふは かすみたなひく | 為兼 |
| 2 | ここのへや たましくにはに むらさきの そてをつらぬる ちよのはつはる | 俊成(藤原俊忠男) |
| 3 | たちそむる はるのひかりと みゆるかな ほしをつらぬる くものうへひと | 兼実 |
| 4 | あさひさす みもすそかはの はるのそら のとかなるへき よのけしきかな | 後鳥羽院 |
| 5 | やまのはを いつるあさひの かすむより はるのひかりは よにみちにけり | 実兼 |
| 6 | かすみたち こほりもとけぬ あめつちの こころもはるを おしてうくれは | 伏見院 |
| 7 | わかこころ はるにむかへる ゆふくれの なかめのすゑも やまそかすめる | 花園院 |
| 8 | のとかなる けしきをよもに おしこめて かすみそはるの すかたなりける | 進子内親王 |
| 9 | なにとなく こころそとまる やまのはに ことしみそむる みかつきのかけ | 定家 |
| 10 | みなひとの てことにひける まつのはの はかすをきみか よはひとはせむ | 能宣 |
| 11 | のへにいてて けふひきつれは ときわかぬ まつのすゑにも はるはきにけり | 中務(伊勢女) |
| 12 | けふもなほ はるともみえす わかしめし のへのわかなは ゆきやつむらむ | 小弁 |
| 13 | めもはるに ゆきまもあをく なりにけり けふこそのへに わかなつみてめ | 順 |
| 14 | はるやまの さきののすくろ かきわけて つめるわかなに あはゆきそふる | 基俊 |
| 15 | かすかのの ゆきのむらきえ かきわけて たかためつめる わかななるらむ | 俊頼(源経信男) |
| 16 | いさやこら わかなつみてむ ねせりおふる あささはをのは さととほくとも | 俊成(藤原俊忠男) |
| 17 | はるくれは ゆきけのさはに そてたれて またうらわかき わかなをそつむ | 崇徳院 |
| 18 | あさひやま のとけきはるの けしきより やそうちひとも わかなつむらし | 為家 |
| 19 | わかなつむ いくさとひとの あとならむ ゆきまあまたに のはなりにけり | 為定(御子左二条為道男) |
| 20 | あまのはら おほふかすみの のとけきに はるなるいろの こもるなりけり | 光厳院 |
| 21 | まつらかた もろこしかけて みわたせは さかひはやへの かすみなりけり | 後鳥羽院 |
| 22 | いせしまや しほひのかたの あさなきに かすみにまかふ わかのまつはら | 後鳥羽院 |
| 23 | ふかくたつ かすみのうちに ほのめきて あさひこもれる はるのやまのは | 道良女 |
| 24 | いつるひの うつろふみねは そらはれて まつよりしたの やまそかすめる | 為相 |
| 25 | ゆふつくひ かすむすゑのに ゆくひとの すけのをかさに はるかせそふく | 順徳院 |
| 26 | ゆふくれの かすみのきはに とふとりの つはさもはるの いろにのとけき | 伏見院 |
| 27 | しつみはつる いりひのきはに あらはれぬ かすめるやまの なほおくのみね | 為兼 |
| 28 | のとかなる かすみのそらの ゆふつくひ かたふくすゑに うすきやまのは | 為子(従二位) |
| 29 | なかめこし おとはのやまも いまさらに かすめはとほき あけほののそら | 実氏 |
| 30 | はつせやま かたふくつきも ほのほのと かすみにもるる かねのおとかな | 定家 |
| 31 | こらかてを まきもくやまに はるされは このはしのきて かすみたなひく | 人麿 |
| 32 | みよしのの よしののやまの はるかすみ たつをみるみる なほそゆきふる | 貫之 |
| 33 | たまらしと あらしのつてに ちるゆきに かすみかねたる まきのひとむら | 後伏見院 |
| 34 | かすみあへす なほふるゆきに そらとちて はるものふかき うつみひのもと | 定家 |
| 35 | はるかせに したゆくなみの かすみえて のこるともなき うすこほりかな | 家隆 |
| 36 | ちくまかは はるゆくみつは すみにけり きえていくかの みねのしらゆき | 順徳院 |
| 37 | はなやゆき かすみやけふり ときしらぬ ふしのたかねに さゆるはるかせ | 忠良 |
| 38 | はるへとは おもふものから かせませに みゆきちるひは いともさむけし | 伏見院 |
| 39 | あさあらしは そとものたけに ふきあれて やまのかすみも はるさむきころ | 永福門院 |
| 40 | かききゆる にはにはあとも みえわかて くさはにうすき はるのあはゆき | 基忠(鷹司兼平男) |
| 41 | はるもいまた あさるききすの あとみえて むらむらのこる のへのしらゆき | 土御門院 |
| 42 | ひかけさす やまのすそのの はるくさに かつかつましる したわらひかな | 四条(安嘉門院) |
| 43 | はるのいろは やなきのうへに みえそめて かすむものから そらそさむけき | 伏見院 |
| 44 | はなとりの なさけまてをそ おもひこむる ゆふやまふかき はるのかすみに | 後伏見院 |
| 45 | やまきはに うくひすなきて うちなひき はるとおもへは ゆきふりしきぬ | 人麿 |
| 46 | うちなひき はるさりくれは ささのはに をはうちふれて うくひすなくも | 読人不知 |
| 47 | つれつれと くらしわつらふ はるのひに なとうくひすの おとつれもせぬ | 道命 |
| 48 | うくひすの なくねをきけは やまふかみ われよりさきに はるはきにけり | 信明 |
| 49 | きりにむせふ やまのうくひす いてやらて ふもとのはるに まよふころかな | 土御門院 |
| 50 | たかためそ しつはたやまの なかきひに こゑのあやおる はるのうくひす | 知家 |
| 51 | うくひすの こゑものとかに なきなして かすむひかけは くれむともせす | 為兼 |
| 52 | つくつくと なかきはるひに うくひすの おなしねをのみ ききくらすかな | 徽安門院 |
| 53 | わかそのを やととはしめよ うくひすの ふるすははるの くもにつけてき | 俊成(藤原俊忠男) |
| 54 | かすみたつ のかみのかたに ゆきしかは うくひすなきつ はるになるらし | 読人不知 |
| 55 | うめのはな さけるをかへに いへゐせは ともしくもあらし うくひすのこゑ | 読人不知 |
| 56 | うめのはな ちらまくをしみ わかそのの たけのはやしに うくひすなくも | 読人不知 |
| 57 | ささたけの よはにやきつる ねやちかき あさけのまとに うくひすのなく | 実兼 |
| 58 | あけぬれと おのかねくらを いてやらて たけのはかくれ うくひすそなく | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 59 | のとかなる かすみのいろに はるみえて なひくやなきに うくひすのこゑ | 教良女 |
| 60 | はるのいろは はなともいはし かすみより こほれてにほふ うくひすのこゑ | 良経(九条兼実男) |
| 61 | はなならて みにしむものは うくひすの かをらぬこゑの にほひなりけり | 道因 |
| 62 | うめのはな にほふはるへの あさとあけに いつしかききつ うくひすのこゑ | 為基(京極為兼猶子) |
| 63 | みちのへや たけふくかせの さむけきに はるをませたる うめかかそする | 伏見院 |
| 64 | うめのはな さくとしらすや みよしのの やまにともまつ ゆきのみゆらむ | 貫之 |
| 65 | ゆきのいろを うはひてさける うめのはな いまさかりなり みむひともかな | 家持 |
| 66 | やまもとの さとのつつきに さくうめの ひとへによこそ はるになりぬれ | 永福門院 |
| 67 | きさらきや なほかせさむき そてのうへに ゆきませにちる うめのはつはな | 後宇多院 |
| 68 | さきそめて はるをおそしと まちけらし ゆきのうちより にほふうめかえ | 公蔭 |
| 69 | ふりつみし ゆきもけなくに みやまへも はるしきぬれや うめさきにけり | 光明院 |
| 70 | ひとむらの かすみのそこに にほひゆく うめのこすゑの はなになるころ | 徽安門院 |
| 71 | うめかえに まつさくはなそ はるのいろを みにしめそむる はしめなりける | 俊成(藤原俊忠男) |
| 72 | はるたちて さかはとおもひし うめのはな めつらしみにや ひとのをるらむ | 貫之 |
| 73 | うめのはな にほひをとめて をりつるに いろさへそてに うつりぬるかな | 具平親王 |
| 74 | やまかくれ にほへるはなの いろよりも をりけるひとの こころをそみる | 赤染衛門 |
| 75 | くれなゐの うめかえになく うくひすは こゑのいろさへ ことにそありける | 俊頼(源経信男) |
| 76 | さきぬれは おほみやひとも うちむれぬ うめこそはるの にほひなりけれ | 慈円 |
| 77 | ももちとり さへつるはるの あさみとり のへのかすみに にほふうめかえ | 後鳥羽院 |
| 78 | いもかため ほつえのうめを たをるとて しつえのつゆに ぬれにけるかも | 人麿 |
| 79 | ひとことに をりかさしつつ あそへとも いやめつらしき うめのはなかも | 読人不知 |
| 80 | かすめとも かくれぬものは うめのはな かせにあまれる にほひなりけり | 為家 |
| 81 | うめのはな にほふさかりは やまかつの しつのかきねも なつかしきかな | 成仲 |
| 82 | にほふかの しるへならすは うめのはな くらふのやまに をりまとはまし | 中務(伊勢女) |
| 83 | くもちゆく かりのはかせも にほふらむ うめさくやまの ありあけのそら | 定家 |
| 84 | うめかかは まくらにみちて うくひすの こゑよりあくる まとのしののめ | 為兼 |
| 85 | まとあけて つきのかけしく たまくらに うめかかあまる のきのはるかせ | 進子内親王 |
| 86 | のきのうめは たまくらちかく にほふなり まとのひまもる よはのあらしに | 尊氏 |
| 87 | たかさとそ かすみのしたの うめやなき おのれいろなる をちかたのはる | 花園院 |
| 88 | あめはるる かせはをりをり ふきいれて こすのまにほふ のきのうめかえ | 内侍(永福門院) |
| 89 | わかなかめ なににゆつりて うめのはな さくらもまたて ちらむとすらむ | 光厳院 |
| 90 | みるままに しつえのうめも ちりはてぬ さもまちとほに さくさくらかな | 和泉式部 |
| 91 | みとりこき かすみのしたの やまのはに うすきやなきの いろそこもれる | 花園院 |
| 92 | はるさめに めくむやなきの あさみとり かつみるうちも いろそそひゆく | 公蔭 |
| 93 | いつはとも こころにときは わかなくに をちのやなきの はるになるいろ | 伏見院 |
| 94 | ひとかたに ふきつるかせや よわるらむ なひきもはてぬ あをやきのいと | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 95 | かすみわたる おのかやなきの ひともとに のとかにすさふ はるのゆふかせ | 実衡女 |
| 96 | ふくとなき かせにやなきは なひきたちて をちこちかすむ ゆふくれのはる | 儀子内親王 |
| 97 | はつかなる やなきのいとの あさみとり みたれぬほとの はるかせそふく | 公宗母 |
| 98 | ふねつなく かけもみとりに なりにけり むつたのよとの たまのをやなき | 土御門院 |
| 99 | ひろさはの いけのつつみの やなきかけ みとりもふかく はるさめそふる | 為家 |
| 100 | よしのかは いはなみはらふ ふしやなき はやくそはるの いろはみえける | 定円(葉室光俊男) |
| 101 | はるはまつ なひくやなきの すかたより かせものとけく みゆるなりけり | 内侍(永福門院) |
| 102 | あめそそく やなきかすゑは のとかにて をちのかすみの いろそくれゆく | 公宗(西園寺実衡男) |
| 103 | このさとの むかひのむらの かきねより ゆふひをそむる たまのをやなき | 定家 |
| 104 | くりかへし としへてみれと あをやきの いとはふりせぬ みとりなりけり | 中務(伊勢女) |
| 105 | きしのうへの やなきはいたく おいにけり いくよのはるを すくしきぬらむ | 嘉言 |
| 106 | ももしきの おほみやひとの かさしたる したりやなきは みれとあかぬかも | 人麿 |
| 107 | うめのはな さきたるそのの あをやきは かつらにすへく なりにけらしも | 読人不知 |
| 108 | よるひとも なきあをやきの いとなれは ふきくるかせに かつみたれつつ | 貫之 |
| 109 | あさみとり やなきのいとの うちはへて けふもしきしき はるさめそふる | 為基(京極為兼猶子) |
| 110 | きのふけふ よはのとかにて ふるあめに やなきかえたそ したりまされる | 一条(徽安門院) |
| 111 | はるのいろを もよほすあめの ふるなへに かれののくさも しためくむなり | 為兼 |
| 112 | あさみとり はつしほそむる はるさめに のなるくさきそ いろまさりける | 土御門院 |
| 113 | かきくれて ふりたにまされ つくつくと しつくさひしき のきのはるさめ | 公蔭 |
| 114 | みるままに のきのしつくは まされとも おとにはたてぬ にはのはるさめ | 親子(従三位源) |
| 115 | はるさめは のきのいとみつ つくつくと こころほそくて ひをもふるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
| 116 | はるさめよ このはみたれし むらしくれ それはまきるる かたもありけり | 定家 |
| 117 | さひしさは はなよいつかの なかめして かすみにくるる はるさめのそら | 為兼 |
| 118 | なかめやる やまはかすみて ゆふくれの のきはのそらに そそくはるさめ | 兼行 |
| 119 | かすみくるる そらものとけき はるさめに とほきいりあひの こゑそさひしき | 教兼 |
| 120 | はれゆくか くもとかすみの ひまみえて あめふきはらふ はるのゆふかせ | 徽安門院 |
| 121 | はるかせは やなきのいとを ふきみたし にはよりはるる ゆふくれのあめ | 後伏見院 |
| 122 | うちわたす うちのわたりの よふかきに かはおとすみて つきそかすめる | 為兼 |
| 123 | かせになひく やなきのかけも そことなく かすみふけゆく はるのよのつき | 実明女 |
| 124 | なにとなく にはのこすゑは かすみふけて いるかたはるる やまのはのつき | 永福門院 |
| 125 | ねやまても はなのかふかき はるのよの まとにかすめる いりかたのつき | 内侍(永福門院) |
| 126 | かりひとの あさふむをのの くさわかみ かくろへかねて ききすなくなり | 俊恵 |
| 127 | あさきりに しののにぬれて よふことり みふねのやまを なきわたるみゆ | 人麿 |
| 128 | ひともなき みやまのおくの よふことり いくこゑなかは たれかこたへむ | 尊氏 |
| 129 | つはくらめ すたれのほかに あまたみえて はるひのとけみ ひとかけもせす | 光厳院 |
| 130 | はるひかけ よはのとかにて それとなく さへつりかはす とりのこゑこゑ | 儀子内親王 |
| 131 | ひはりあかる やまのすそのの ゆふくれに わかはのしはふ はるかせそふく | 後二条院 |
| 132 | なにとなき くさのはなさく のへのはる くもにひはりの こゑものとけき | 永福門院 |
| 133 | はるふかき のへのかすみの したかせに ふかれてあかる ゆふひはりかな | 慈円 |
| 134 | かへるかり はねうちかはす しらくもの みちゆきふりは さくらなりけり | 為家 |
| 135 | かへるかり あきこしかすは しらねとも ねさめのそらに こゑそすくなき | 家隆 |
| 136 | わかるらむ なこりならても はるのかり あはれなるへき あけほののこゑ | 為秀 |
| 137 | いりかたの つきはかすみの そこにふけて かへりおくるる かりのひとつら | 内侍(永福門院) |
| 138 | かりかねの はなのをりしも かへるらむ たつねてたにも ひとはをしむに | 康資王母 |
| 139 | なにとなく おもひそおくる かへるかり ことつてやらむ ひとはなけれと | 俊成(藤原俊忠男) |
| 140 | はるになる さくらのえたは なにとなく はななけれとも なつかしきかな | 西行 |
| 141 | めくむより けしきことなる はななれは かねてもえたの なつかしきかな | 俊頼(源経信男) |
| 142 | おもひやる こころやかねて なかむらむ またみぬはなの おもかけにたつ | 長明 |
| 143 | さかぬまの まちとほにのみ おほゆるは はなにこころの いそくなるらし | 師平母 |
| 144 | さきさかぬ こすゑのはなも おしなへて ひとつかをりに かすむゆふくれ | 朔平門院 |
| 145 | みるままに のきはのはなは さきそひて はるさめかすむ をちのゆふくれ | 右衛門督(永福門院) |
| 146 | やとからや はるのこころも いそくらむ ほかにまたみぬ はつさくらかな | 為兼 |
| 147 | うちなひき はるはきぬらし やまきはの とほきこすゑの さきゆくみれは | 読人不知 |
| 148 | みわたせは かすかののへに かすみたち ひらくるはなは さくらはなかも | 人麿 |
| 149 | うくひすの こつたふうめの うつろへは さくらのはなの ときかたまけぬ | 人麿 |
| 150 | はるさめに あらそひかねて わかやとの さくらのはなは さきそめにけり | 家持 |
| 151 | やまさくら またれまたれて さきしより はなにむかはぬ ときのまもなし | 下野(後鳥羽院) |
| 152 | みよしのの よしののさくら さきしより ひとひもくもの たたぬひそなき | 為定(御子左二条為道男) |
| 153 | すみすてし しかのはなその しかすかに さくさくらあれは はるはきにけり | 道家 |
| 154 | ゆくすゑの はなかかれとて よしのやま たれしらくもの たねをまきけむ | 家隆 |
| 155 | かへりみる やまははるかに かさなりて ふもとのはなも やへのしらくも | 良経(九条兼実男) |
| 156 | しらくもの やへたつみねと みえつるは たかまのやまの はなさかりかも | 匡房 |
| 157 | やまのかひ たなひきわたる しらくもは とほきさくらの みゆるなりけり | 貫之 |
| 158 | いつもみし はなのいろかは はつせやま さくらにもるる はるのひとしほ | 定家 |
| 159 | やまとほき かすみのにほひ くものいろ はなのほかまて かをるはるかな | 実兼 |
| 160 | はなかをる たかねのくもの ひとむらは なほあけのこる しののめのそら | 公宗女 |
| 161 | はなさかぬ やとのこすゑも なかりけり みやこのはるは いまさかりかも | 雅有 |
| 162 | はなみにと はるはむれつつ たまほこの みちゆくひとの おほくもあるかな | 直義 |
| 163 | やまさくら よそにみるとて すかのねの なかきはるひを たちくらしつる | 貫之 |
| 164 | またしらぬ ところまてかく きてみれと さくらはかりの はななかりけり | 貫之 |
| 165 | さくらはな あかぬこころの あやにくに みてもなほこそ みまくほしけれ | 行家(藤原知家男) |
| 166 | さきみちて ちるへくもあらぬ はなさかり かをるはかりの かせはいとはす | 為秀 |
| 167 | なかめのこす はなのこすゑも あらしやま かせよりさきに たつねつるかな | 右衛門督(永福門院) |
| 168 | みよしのの おほみやところ たつねみむ ふるきかさしの はなやのこると | 為相 |
| 169 | いそのかみ ふるさとにさく はななれと むかしなからに にほひけるかな | 中務(伊勢女) |
| 170 | ふるさとに さけるものから さくらはな いろはすこしも あせすそありける | 貫之 |
| 171 | きみかすむ やとのこすゑの はなさかり けしきことなる くもそたちける | 俊成(藤原俊忠男) |
| 172 | さくらはな いさやてことに たをりもて ともにちとせの はるにかささむ | 為氏 |
| 173 | すかのねの なかきひかけを あしひきの やまのさくらに あかてくれぬる | 良実 |
| 174 | さてもなほ あかすやあると やまさくら はなをときはに みるよしもかな | 家経(藤原広業男) |
| 175 | おなしくは つきのをりさけ やまさくら はなみるはるの たえまあらせし | 西行 |
| 176 | かをりにほひ のとけきいろを はなにもて はるにかなへる さくらなりけり | 光厳院 |
| 177 | のとかなる うくひすのねに ききそめて はなにそはるの さかりをはみる | 公賢 |
| 178 | たれにかも けふをさかりと つけやらむ ひとりみまうき やまさくらかな | 顕昭 |
| 179 | としことに なかめぬはるは なけれとも あかぬははなの いろやそふらむ | 成茂 |
| 180 | けさはなほ さきそふにはの はなさかり うつろはぬまを とふひともかな | 寿成門院 |
| 181 | やまふかく たつねにはこて さくらはな なにしこころを あくからすらむ | 白河院 |
| 182 | さそはれぬ こころのほとは つらけれと ひとりみるへき はなのいろかは | 小侍従(太皇太后宮) |
| 183 | かせをいとふ はなのあたりは いかかとて よそなからこそ おもひやりつれ | 右京大夫(建礼門院) |
| 184 | こまとめて みるにもあかす さくらはな をりてかささむ こころゆくまて | 道済 |
| 185 | たひひとの ゆききのをかは なのみして はなにととまる はるのこのもと | 為家 |
| 186 | あすかゐの はるのこころは しらねとも やとりしぬへき はなのかけかな | 為実(御子左藤原為氏男) |
| 187 | たちよらて すきぬとおもへと いとさくら こころにかかる はるのこのもと | 家基(近衛基平男) |
| 188 | みぬかたの こすゑいかにと このさとの はなにあかても はなをこそおもへ | 為子(従二位) |
| 189 | たつねゆく みちもさくらを みよしのの はなのさかりの おくそゆかしき | 為基(京極為兼猶子) |
| 190 | こえやらて あかすこそみれ はるのひの なからのやまの はなのしたみち | 公重(西園寺実衡男) |
| 191 | さくらさく とほちのむらの ゆふくれに はなをりかさし ひとかへるなり | 後伏見院 |
| 192 | くれぬとて たちこそかへれ さくらかり なほゆくさきに はなをのこして | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 193 | えたもなく さきかさなれる はなのいろに こすゑもおもき はるのあけほの | 伏見院 |
| 194 | さかりとは きのふもみえし はなのいろの なほさきかをる ききのあけほの | 兼行 |
| 195 | はななれや またあけやらぬ しののめの をちのかすみの おくふかきいろ | 親子(従三位源) |
| 196 | やまのはの つきはのこれる しののめに ふもとのはなの いろそあけゆく | 教良女 |
| 197 | はなのうへに さすやあさひの かけはれて さへつるとりの こゑものとけき | 後伏見院 |
| 198 | ひらけそふ こすゑのはなに つゆみえて おとせぬあめの そそくあさあけ | 進子内親王 |
| 199 | はなのうへに しはしうつろふ ゆふつくひ いるともなしに かけきえにけり | 永福門院 |
| 200 | つくつくと かすみてくもる はるのひの はなしつかなる やとのゆふくれ | 親子(従三位源) |
| 201 | ふくとなき かすみのしたの はるかせに はなのかふかき やとのゆふくれ | 家雅 |
| 202 | あしひきの やまにいりひの ときしもそ あまたのはなは てりまさりける | 花山院 |
| 203 | はなのうへの くれゆくそらに ひひききて こゑにいろある いりあひのかね | 伏見院 |
| 204 | そことなき かすみのいろに くれなりて ちかきこすゑの はなもわかれす | 徽安門院 |
| 205 | やまうすき かすみのそらは ややくれて はなののきはに にほふつきかけ | 進子内親王 |
| 206 | はなしろき こすゑのうへは のとかにて かすみのうちに つきそふけぬる | 為子(従二位) |
| 207 | みねしらむ こすゑのそらに かけおちて はなのくもまに ありあけのつき | 忠良 |
| 208 | あたらよの なこりをはなに ちきりおきて さくらわけいる ありあけのつき | 後鳥羽院 |
| 209 | よろつよの はるひをけふに なせりとも なほあかなくに はなやちりなむ | 後嵯峨院 |
| 210 | としふれと かへらぬいろは はることに はなにそめてし こころなりけり | 崇徳院 |
| 211 | けふもなほ ちらてこころに のこりけり なれしきのふの はなのおもかけ | 道平 |
| 212 | あちきなく あたなるはなの にほひゆゑ うきよのはるに そむこころかな | 隆博 |
| 213 | つねよりも のとけくにほへ さくらはな はるくははれる としのしるしに | 顕季 |
| 214 | はるのこころ のとけしとても なにかせむ たえてさくらの なきよなりせは | 慈円 |
| 215 | おいかみは のちのはるとも たのまねは はなもわかよも をしまさらめや | 実兼 |
| 216 | うゑわたす わかよのはなも はるはへぬ ましてふるきの むかしをそおもふ | 伏見院 |
| 217 | あめのうちに ちりもこそすれ はなさくら をりてかささむ そてはぬるとも | 定頼 |
| 218 | をらすとて ちらてもはてし さくらはな このひとえたは いへつとにせむ | 俊恵 |
| 219 | たつねくる はなもちりなは やまさとは いととひとめや かれむとすらむ | 忠盛 |
| 220 | ゆきてたに いかてとくみむ わかやとの さくらはけふの かせにのこらし | 元真 |
| 221 | たつたやま みつつこえこし さくらはな ちりかすきなむ わかかへるとき | 家持 |
| 222 | みるひとの をしむこころや まさるとて はなをはかせの ちらすなりけり | 三河内侍(二条院) |
| 223 | くもまよふ かせにあまきる ゆきかとて はらへはそてに はなのかそする | 但馬(藻壁門院) |
| 224 | そてのゆき そらふくかせも ひとつにて はなににほへる しかのやまこえ | 定家 |
| 225 | けさみれは やとのこすゑに かせすきて しられぬゆきの いくへともなく | 式子内親王 |
| 226 | たかさこの まつのみとりも まかふまて をのへのかせに はなそちりける | 俊成女 |
| 227 | あしからの やまのあらしの あととめて はなのゆきふむ たけのしたみち | 為相女 |
| 228 | ひとしきり ふきみたしつる かせはやみて さそはぬはなも のとかにそちる | 為兼 |
| 229 | はるかせの ややふきよわる こすゑより ちりおくれたる はなそのとけき | 法守法親王 |
| 230 | うらみはや たのめしほとの ひかすをも またてうつろふ はなのこころを | 顕親門院 |
| 231 | あたなれと さきちるほとは あるものを とはれぬはなや なほうらむらむ | 花園院 |
| 232 | たのめこし きのふのさくら ふりぬとも とははやあすの ゆきのこのもと | 伏見院 |
| 233 | はなのゆき あすをもまたす たのめおきし そのことのはの あともなけれは | 実兼 |
| 234 | こすゑより よこきるはなを ふきたてて やまもとわたる はるのゆふかせ | 為子(従二位) |
| 235 | ふきわたる はるのあらしの ひとはらひ あまきるはなに かすむやまもと | 徽安門院 |
| 236 | なからへむ ものともしらて おいかよに ことしもはなの ちるをみるらむ | 知家 |
| 237 | わかみよに ふるのやまへの やまさくら うつりにけりな なかめせしまに | 後鳥羽院 |
| 238 | しらくもの やへたつやまの さくらはな ちりくるときや はなとみゆらむ | 経信 |
| 239 | さくらはな うつろふいろは ゆきとのみ ふるのやまかせ ふかすもあらなむ | 尊円法親王 |
| 240 | いかにせむ はなもあらしも うきよかな さそふもつらし ちるもうらめし | 宣子(従三位藤原) |
| 241 | はるふかみ あらしのやまの さくらはな さくとみしまに ちりにけるかな | 実朝 |
| 242 | ちるはなを をしむはかりや よのなかの ひとのこころの かはらさるらむ | 顕輔 |
| 243 | ひとすちに かせもうらみし をしめとも うつろふいろは はなのこころを | 高倉(安嘉門院) |
| 244 | ちらさりし もとのこころは わすられて ふままくをしき はなのにはかな | 教長 |
| 245 | ちりぬとて なとてさくらを うらみけむ ちらすはみまし けふのにはかは | 定家 |
| 246 | すみれさく みちのしはふに はなちりて をちかたかすむ のへのゆふくれ | 親子(従三位源) |
| 247 | ちりのこる はなおちすさふ ゆふくれの やまのはうすき はるさめのそら | 内侍(永福門院) |
| 248 | つくつくと あめふるさとの にはたつみ ちりてなみよる はなのうたかた | 清雅 |
| 249 | ふきよする かせにまかせて いけみつの みきはにあまる はなのしらなみ | 為顕 |
| 250 | こすゑより おちくるはなも のとかにて かすみにおもき いりあひのこゑ | 花園院 |
| 251 | ふるさとの はなはまたてそ ちりにける はるよりさきに かへるとおもへと | 公任 |
| 252 | たつねくる ひとはみやこを わするれと ねにかへりゆく やまさくらかな | 俊成(藤原俊忠男) |
| 253 | ねにかへる はなとはきけと みるひとの こころのうちに とまるなりけり | 重家 |
| 254 | ちるはなは うきくさなから かたよりて いけのみさひに かはつなくなり | 為実(御子左藤原為氏男) |
| 255 | たきつせや いはもとしろく よるはなは なかるとすれと またかへるなり | 永福門院 |
| 256 | よしのかは いはせのなみに よるはなや あをねかみねに きゆるしらくも | 頼政 |
| 257 | こまとめて すきそやられぬ きよみかた ちりしくはなや なみのせきもり | 顕昭 |
| 258 | あめしをる やよひのやまの こかくれに のこるともなき はなのいろかな | 後伏見院 |
| 259 | うらみしな やまのはかけの さくらはな おそくさけとも おそくちりけり | 経信 |
| 260 | かせたにも さそひもはてぬ ひとえたの はなをはいかか をりてかへらむ | 道因 |
| 261 | おもたかや したはにましる かきつはた はなふみわけて あさるしらさき | 定家 |
| 262 | やふしわかぬ はるとやなれも はなのさく そのなもしらぬ やまのしたくさ | 花園院 |
| 263 | やまかはを なはしろみつに まかすれは たのもにうきて はなそなかるる | 四条(安嘉門院) |
| 264 | さくらちる やましたみつを せきわけて はなになかるる をたのなはしろ | 儀子内親王 |
| 265 | はるのたの あせのほそみち たえまおほみ みつせきわくる なはしろのころ | 道良女 |
| 266 | みなそこの かはつのこゑも ものふりて こふかきいけの はるのくれかた | 光厳院 |
| 267 | せきかくる をたのなはしろ みつすみて あせこすなみに かはつなくなり | 後鳥羽院 |
| 268 | ますけおふる あらたにみつを まかすれは うれしかほにも なくかはつかな | 西行 |
| 269 | みかくれて すたくかはつの こゑなから まかせてけりな をたのなはしろ | 大輔(殷富門院) |
| 270 | はるのたの なはしろみつを まかすれは すたくかはつの こゑそなかるる | 慈円 |
| 271 | さよふかく つきはかすみて みつおつる こかけのいけに かはつなくなり | 伏見院 |
| 272 | やまふきの はなのさかりは かはつなく ゐてにやはるも たちとまるらむ | 中務(伊勢女) |
| 273 | むかしたれ うゑはしめたる やまふきの なをなかしけむ ゐてのたまみつ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 274 | よしのかは さくらなかれし いはまより うつれはかはる やまふきのいろ | 後鳥羽院 |
| 275 | すゑおもる はなはさなから みつにふして かはせにさける ゐてのやまふき | 公重(西園寺実衡男) |
| 276 | かはのせに あきをやのこす もみちはの うすきいろなる やまふきのはな | 順徳院 |
| 277 | をりてたに ゆくへきものを よそにのみ みてやかへらむ ゐてのやまふき | 忠見 |
| 278 | わかやとの やへやまふきは ちりぬへし はなのさかりを ひとのみにこぬ | 元真 |
| 279 | うくひすの きなくやまふき うたかたも きみかてふれす はなちらめやも | 読人不知 |
| 280 | ふくかせに とまりもあへす ちるときは やへやまふきの はなもかひなし | 興風 |
| 281 | やまふきの はなのつゆそふ たまかはの なかれてはやき はるのくれかな | 後鳥羽院 |
| 282 | はるふかき のてらたちこむる ゆふかすみ つつみのこせる かねのおとかな | 慈円 |
| 283 | かすみわたる とほつやまへの はるのくれ なにのもよほす あはれともなき | 伏見院 |
| 284 | としことに はるをもしらぬ やとなれと はなさきそむる ふちもありけり | 公任 |
| 285 | むらさきの ふちさくころの あさくもり つねよりはなの いろそまされる | 覚円 |
| 286 | ふくかせに ふちえのうらを みわたせは なみはこすゑの ものにそありける | 俊頼(源経信男) |
| 287 | ふちのはな おもへはつらき いろなれや さくとみしまに はるそくれぬる | 成実(藤原親実男) |
| 288 | ちりうける やまのいはねの ふちつつし いろになかるる たにかはのみつ | 永福門院 |
| 289 | つつしさく かたやまかけの はるのくれ それとはなしに とまるなかめを | 実明女 |
| 290 | やまひとの つまきにさせる いはつつし こころありてや たをりくしつる | 慈円 |
| 291 | なにとなく みるにもはるそ したはしき しはふにましる はなのいろいろ | 後伏見院 |
| 292 | はるのなこり なかむるうらの ゆふなきに こきわかれゆく ふねもうらめし | 為兼 |
| 293 | このころの ふちやまふきの はなさかり わかるるはるも おもひおくらむ | 光厳院 |
| 294 | はるもはや あらしのすゑに ふきよせて いはねのこけに はなそのこれる | 進子内親王 |
| 295 | はなののちも はるのなさけは のこりけり ありあけかすむ しののめのそら | 教兼 |
| 296 | みにかへて なになけくらむ おほかたは ことしのみやは はるにわかるる | 大輔(殷富門院) |
| 297 | ゆきてみむ みやまかくれの おそさくら あかすくれぬる はるのかたみに | 長能 |
| 298 | ととまらむ ことこそはるの かたからめ ゆくへをたにも しらせましかは | 俊頼(源経信男) |
| 299 | をしとおもふ ひとのこころし おくれねは ひとりしもやは はるのかへらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 300 | こむとしも くへきはるとは しりなから けふのくるるは をしくそありける | 貫之 |
| 301 | きのふまて かすみしものを つのくにの なにはわたりの なつのあけほの | 良経(九条兼実男) |
| 302 | はるくれし きのふもおなし あさみとり けふやはかはる なつやまのいろ | 後伏見院 |
| 303 | なつきては たたひとへなる ころもてに いかてかはるを たちへたつらむ | 為家 |
| 304 | さくらいろの ころもにもまた わかるるに はるをのこせる やとのふちなみ | 式子内親王 |
| 305 | さくらいろの ころもはうへに かふれとも こころにはるを わすれぬものを | 後二条院 |
| 306 | はなとりの はるにおくるる なくさめに まつまちすさふ やまほとときす | 花園院 |
| 307 | ほとときす まつとせしまに わかやとの いけのふちなみ うつろひにけり | 家隆 |
| 308 | ときしらぬ さとはたまかは いつとてか なつのかきねを うつむしらゆき | 定家 |
| 309 | あさまたき うのはなやまを みわたせは そらはくもらて つもるしらゆき | 経房(藤原光房男) |
| 310 | なつあさき みとりのこたち にはとほみ あめふりしむる ひくらしのやと | 為兼 |
| 311 | うすくもる あをはのやまの あさあけに ふるとしもなき あめそそくなり | 公宗(西園寺公衡男) |
| 312 | もろかつら またふたはより かけそめて いくよかへぬる かものみつかき | 実経 |
| 313 | あはれとや かみもみあれに あふひくさ ふたはよりこそ たのみそめしか | 兵衛督(花園院) |
| 314 | あふひくさ かさすうつきの ほとときす ひとのこころに まつかかりつつ | 為家 |
| 315 | わかための こゑにもあらし ほとときす かたらへとしも なとおもふらむ | 按察(鷹司院) |
| 316 | まちわひて ききやしつると ほとときす ひとにさへこそ とはまほしけれ | 頼実(源頼国男) |
| 317 | としをへて おなしこゑなる ほとときす きかまほしさも かはらさりけり | 頼輔 |
| 318 | としをへて おなしねをなく ほとときす なにかはしのふ なにかまたるる | 徽安門院 |
| 319 | いつとても またすはあらねと おなしくは やまほとときす つきになかなむ | 直義 |
| 320 | ほとときす さやかにをなけ ゆふつくよ くもまのかけは ほのかなりとも | 公蔭 |
| 321 | いしはしる たきつかはなみ をちかへり やまほとときす ここになかなむ | 資季 |
| 322 | をりはへて いまここになく ほとときす きよくすすしき こゑのいろかな | 為兼 |
| 323 | まちえても たとるはかりの ひとこゑは ききてかひなき ほとときすかな | 道嗣 |
| 324 | くれたけの ふしみのさとの ほとときす しのふふたよの ことかたらなむ | 尊円法親王 |
| 325 | ほとときす ひとのまとろむ ほととてや しのふるころは ふけてこそなけ | 為兼 |
| 326 | わかためと ききやなさまし ほとときす ぬしさたまらぬ おのかはつねを | 為相 |
| 327 | やまふかく たつねきつれは ほとときす しのふるこゑも かくれさりけり | 肥後(京極前関白家) |
| 328 | わすられぬ こそのふるこゑ こひこひて なほめつらしき ほとときすかな | 定家 |
| 329 | ほとときす まつよのかすは かさなれと こゑはつもらぬ ものにそありける | 俊頼(源経信男) |
| 330 | ほとときす あかぬなこりを なかめおくる こころもそらに したひてそゆく | 俊言 |
| 331 | なほそまつ やまほとときす ひとこゑの なこりをくもに しはしなかめて | 為基(京極為兼猶子) |
| 332 | あしひきの やまほとときす みやまいてて よふかきつきの かけになくなり | 実朝 |
| 333 | ほとときす よこくもかすむ やまのはの ありあけのつきに なほそかたらふ | 式子内親王 |
| 334 | ほとときす なこりしはしの なかめより なきつるみねは くもあけぬなり | 伏見院 |
| 335 | さとなるる やまほとときす いかなれは まつやとにしも おとせさるらむ | 成仲 |
| 336 | たつねつる かひはなけれと ほとときす かへるやまちに ひとこゑそなく | 季経 |
| 337 | たつねいる かへさはおくれ ほとときす たれゆゑくらす やまちとかしる | 後鳥羽院 |
| 338 | なほさりに やまほとときす なきすてて われしもとまる もりのしたかけ | 定家 |
| 339 | ゆふかけて いつちゆくらむ ほとときす かみなひやまに いまそなくなる | 仲実 |
| 340 | ことなつは いかかなきけむ ほとときす こよひはかりは あらしとそきく | 貫之 |
| 341 | ほとときす あかてすきぬる なこりをは つきなしとても なかめやはせぬ | 頼政 |
| 342 | とふひとも なきふるさとの たそかれに われのみなのる ほとときすかな | 堀河(待賢門院) |
| 343 | またれつつ としにまれなる ほとときす さつきはかりの こゑなをしみそ | 定家 |
| 344 | あやめをは ふきそふれとも さみたれの ふるやののきは もるにそありける | 尊氏 |
| 345 | あやめくさ ひくひともなし やましろの とはになみこす さみたれのころ | 経継 |
| 346 | あふちさく こすゑにあめは ややはれて のきのあやめに のこるたまみつ | 経親(平時継男) |
| 347 | あやめつたふ のきのしつくも たえたえに はれまにむかふ さみたれのそら | 冷泉(花園院) |
| 348 | ゆふつくよ かけろふまとは すすしくて のきのあやめに かせわたるみゆ | 忠季(藤原公蔭男) |
| 349 | くれかかる そとものをたの むらさめに すすしさそへて とるさなへかな | 公泰 |
| 350 | またとらぬ さなへのはすゑ なひくなり すたくかはつの こゑのひひきに | 慈円 |
| 351 | みわかはの みつせきいれて やまとなる ふるのわさたは さなへとるなり | 行家(藤原知家男) |
| 352 | いまよりは さつききぬとや いそくらむ やまたのさなへ とらぬひそなき | 公相 |
| 353 | さなへとる たのものみつの あさみとり すすしきいろに やまかせそふく | 忠定(藤原兼宗男) |
| 354 | ゆふひさす やまたのはらを みわたせは すきのこかけに さなへとるなり | 為忠(御子左二条為藤男) |
| 355 | をやまたや さなへのすゑに かせみえて ゆくてすすしき すきのしたみち | 後伏見院 |
| 356 | かせわたる たのものさなへ いろさめて いりひのこれる をかのまつはら | 光厳院 |
| 357 | さなへとる やまもとをたに あめはれて ゆふひのみねを わたるうきくも | 進子内親王 |
| 358 | あめはるる をたのさなへの やまもとに くもおりかかる すきのむらたち | 一条(花園院) |
| 359 | やまかけや たによりのほる さみたれの くもはのきまて たちみちにけり | 為子(従二位) |
| 360 | かはつなく ぬまのいはかき なみこえて みくさうかるる さみたれのころ | 実泰 |
| 361 | さみたれに こえゆくなみは かつしかや かつみかくるる ままのつきはし | 雅経 |
| 362 | あすかかは ひとつふちとや なりぬらむ ななせのよとの さみたれのころ | 公雄 |
| 363 | さみたれに きしのあをやき えたひちて こすゑをわくる よとのかはふね | 隆教 |
| 364 | なかれそふ やまのしつくの さみたれに あさせもふかき たにかはのみつ | 俊平(源泰光男) |
| 365 | たこのうらの もしほもやかぬ さみたれに たえぬはふしの けふりなりけり | 清輔 |
| 366 | かはやしろ しのになみこす さみたれに ころもほすてふ ひまやなからむ | 成実(藤原親実男) |
| 367 | さみたれの はれままちいつる つきかけに のきのあやめの つゆそすすしき | 定為 |
| 368 | さみたれの くもをへたてて ゆくつきの ひかりはもらて のきのたまみつ | 良経(九条兼実男) |
| 369 | さみたれに あたらつきよを すくしきて はるるかひなき ゆふやみのそら | 承覚法親王 |
| 370 | わかやとの はなたちはなや にほふらむ やまほとときす すきかてになく | 顕季 |
| 371 | つきかけに うふねのかかり さしかへて あかつきやみの よかはこくなり | 為藤 |
| 372 | おほゐかは うふねはそれと みえわかて やまもとめくる かかりひのかけ | 宗尊親王 |
| 373 | をしかまつ さつをのほくし ほのみえて よそにあけゆく はやましけやま | 為氏 |
| 374 | さつきやみ そこともしらぬ ともしすと はやまかすそに あかしつるかな | 義孝(藤原敦舒男) |
| 375 | ますらをや はやまわくらむ ともしけち ほたるにまかふ ゆふやみのそら | 俊成(藤原俊忠男) |
| 376 | かけしけき このしたやみの くらきよに みつのおとして くひななくなり | 永福門院 |
| 377 | こころある なつのけしきの こよひかな このまのつきに くひなこゑして | 後伏見院 |
| 378 | くひななく もりひとむらは こくらくて つきにはれたる のへのをちかた | 実明女 |
| 379 | まきのとを しひてもたたく くひなかな つきのひかりの さすとみるみる | 安芸(郁芳門院) |
| 380 | まつのうへに つきのすかたも みえそめて すすしくむかふ ゆふくれのやま | 祝子内親王 |
| 381 | あめはるる のきのしつくに かけみえて あやめにすかる なつのよのつき | 良経(九条兼実男) |
| 382 | しけりあふ にはのこすゑを ふきわけて かせにもりくる つきのすすしさ | 師平 |
| 383 | うたたねに すすしきかけを かたしきて すたれはつきの へたてともなし | 重資 |
| 384 | はしちかみ うたたねなから ふくるよの つきのかけしく とこそすすしき | 盛親 |
| 385 | あきよりも つきにそなるる すすむとて うたたねなから あかすよなよな | 新宰相(伏見院) |
| 386 | やまみつの いはもるおとも さよふけて このまのつきの かけそすすしき | 道意(西園寺実兼男) |
| 387 | よひのまに しはしたたよふ くもまより まちいててみれは あくるつきかけ | 隆祐 |
| 388 | なつのよは いはかきしみつ つきさえて むすへはとくる こほりなりけり | 重保 |
| 389 | ゆふたちの かせにわかれて ゆくくもに おくれてのほる やまのはのつき | 良経(九条兼実男) |
| 390 | またよひの つきまつとても あけにけり みしかきゆめの むすふともなく | 後鳥羽院 |
| 391 | つきやいつる ほしのひかりの かはるかな すすしきかせの ゆふやみのそら | 伏見院 |
| 392 | すすみつる あまたのやとも しつまりて よふけてしろき みちのへのつき | 伏見院 |
| 393 | ほしおほみ はれたるそらは いろこくて ふくとしもなき かせそすすしき | 為子(従二位) |
| 394 | なつのよの わひしきことは ゆめをたに みるほともなく あくるなりけり | 小町 |
| 395 | いにしへの のもりのかかみ あとたえて とふひはよはの ほたるなりけり | 寂蓮 |
| 396 | そこきよき たまえのみつに とふほたる もゆるかけさへ すすしかりけり | 基嗣 |
| 397 | つきうすき にはのましみつ おとすみて みきはのほたる かけみたるなり | 恒明親王 |
| 398 | いけみつは かせもおとせて はちすはの うへこすたまは ほたるなりけり | 順徳院 |
| 399 | ほたるとふ かたやまかけの ゆふやみは あきよりさきに かねてすすしも | 実経 |
| 400 | あきちかし くもゐまてとや ゆくほたる さはへのみつに かけのみたるる | 俊成女 |
| 401 | あきかせを かりにやつくる ゆふくれの くもちかきまて ゆくほたるかな | 式子内親王 |
| 402 | すすしやと かせのたよりを たつぬれは しけみになひく のへのさゆりは | 式子内親王 |
| 403 | やまふかみ ゆききえなはと おもひしに またみちたゆる やとのなつくさ | 秀能(藤原秀宗男) |
| 404 | かたをかの あふちなみより ふくかせに かつかつそそく ゆふたちのあめ | 後鳥羽院 |
| 405 | ころもてに すすしきかせを さきたてて くもりはしむる ゆふたちのそら | 宮内卿(後鳥羽院) |
| 406 | やまもとの をちのひかけは さたかにて かたへすすしき ゆふたちのくも | 為家 |
| 407 | とやまには ゆふたちすらし たちのほる くもよりあまる いなつまのかけ | 経顕(藤原定資男) |
| 408 | まつをはらふ かせはすそのの くさにおちて ゆふたつくもに あめきほふなり | 為兼 |
| 409 | ゆきなやみ てるひくるしき やまみちに ぬるともよしや ゆふたちのあめ | 徽安門院 |
| 410 | にしのたつ ふもとのすきは くもにきえて みねよりはるる ゆふたちのあめ | 俊兼 |
| 411 | ふりよわる あめをのこして かせはやみ よそになりゆく ゆふたちのくも | 小宰相(徽安門院) |
| 412 | ゆふたちの くもふきおくる おひかせに こすゑのつゆそ またあめとふる | 新右衛門督(宣光門院) |
| 413 | ゆふたちの くもとひわくる しらさきの つはさにかけて はるるひのかけ | 花園院 |
| 414 | つきうつる まさこのうへの にはたつみ あとまてすすし ゆふたちのあめ | 実兼 |
| 415 | さらにまた ひかけうつろふ たけのはに すすしさみゆる ゆふたちのあと | 実泰 |
| 416 | ふるほとは しはしとたえて むらさめの すくるこすゑの せみのもろこゑ | 為守女 |
| 417 | かせたかき まつのこかけに たちよれは きくもすすしき ひくらしのこゑ | 光明院 |
| 418 | あめはれて つゆふきはらふ こすゑより かせにみたるる せみのもろこゑ | 進子内親王 |
| 419 | せみのこゑは かせにみたれて ふきかへす ならのひろはに あめかかるなり | 尊胤法親王 |
| 420 | くれはつる こすゑにせみは こゑやみて ややかけみゆる つきそすすしき | 恒明親王 |
| 421 | そらはれて こすゑいろこき つきのよの かせにおとろく せみのひとこゑ | 花園院 |
| 422 | なきすさふ ひまかときけは をちこちに やかてまちとる せみのもろこゑ | 隆信 |
| 423 | なくせみの こゑやむもりに ふくかせの すすしきなへに ひもくれぬなり | 新宰相(伏見院) |
| 424 | ゆふつくひ こすゑによわく なくせみの はやまのかけは いまそすすしき | 為秀 |
| 425 | あめはれて くもふくかせに なくせみの こゑもみたるる もりのしたつゆ | 俊成女 |
| 426 | あしのはに かくれてすめは なにはなる こやのなつこそ すすしかりけれ | 好忠 |
| 427 | なつやまの しけみかしたに たきおちて ふもとすすしき みつのおとかな | 政村 |
| 428 | ふきわくる こすゑのつきは かけふけて すたれにすさふ かせそすすしき | 覚誉法親王 |
| 429 | みたれあしの したはなみより ゆくみつの おとせぬなみの いろそすすしき | 後鳥羽院 |
| 430 | かせかよふ やままつかねの ゆふすすみ みつのこころも くみてこそしれ | 兼季 |
| 431 | なつのひの ゆふかけおそき みちのへに くもひとむらの したそすすしき | 兼行 |
| 432 | ひのかけは たけよりにしに へたたりて ゆふかせすすし にはのくさむら | 祝子内親王 |
| 433 | やまかはの みなそこきよき ゆふなみに なひくたまもそ みるもすすしき | 慈成 |
| 434 | やまもとや このしためくる をくるまの すたれうこかす かせそすすしき | 公蔭 |
| 435 | もりかぬる つきはすくなき このもとに よふかきみつの おとそすすしき | 進子内親王 |
| 436 | こけあをき やまのいはねの まつかけに すすしくすめる みつのいろかな | 兼行 |
| 437 | なつふかき みねのまつかえ かせこえて つきかけすすし ありあけのやま | 慈円 |
| 438 | あさちふに あきまつほとや しのふらむ ききもわかれぬ むしのこゑこゑ | 寂蓮 |
| 439 | くさのすゑに はなこそみえね くもかせも のわきににたる ゆふくれのあめ | 永福門院 |
| 440 | むすふてに つきをやとして やまのゐの そこのこころに あきやみゆらむ | 通方 |
| 441 | まつにふく かせもすすしき やまかけに あきおほえたる ひくらしのこゑ | 公賢 |
| 442 | なくこゑも たかきこすゑの せみのはの うすきひかけに あきそちかつく | 伏見院 |
| 443 | みそきする かはせのなみの しらゆふは あきをかけてそ すすしかりける | 公雄 |
| 444 | みそきする ゆくせのなみも さよふけて あきかせちかし かものかはみつ | 基忠(鷹司兼平男) |
| 445 | みなとかは なつのゆくては しらねとも なかれてはやき せせのゆふして | 順徳院 |
| 446 | あききても なほゆふかせを まつかねに なつをわすれし かけそたちうき | 定家 |
| 447 | かせのおとの にはかにかはる くれはとり あやしとおもへは あきはきにけり | 後嵯峨院 |
| 448 | しらつゆは またおきあへぬ うたたねの そてにおとろく あきのはつかせ | 但馬(藻壁門院) |
| 449 | つゆならぬ なみたももろく なりにけり をきのはむけの あきのはつかせ | 隆教 |
| 450 | おちそむる きりのひとはの こゑのうちに あきのあはれを ききはしめぬる | 法守法親王 |
| 451 | ゆふくれの くもにほのめく みかつきの はつかなるより あきそかなしき | 公宗(西園寺公衡男) |
| 452 | ゆふまくれ あきくるかたの やまのはに かけめつらしく いつるみかつき | 為家 |
| 453 | あききては けふそくもまに みかつきの ひかりまちとる はきのうはつゆ | 公蔭 |
| 454 | なかむれは このまうつろふ ゆふつくよ ややけしきたつ あきのそらかな | 式子内親王 |
| 455 | あきのいろは またこもりえの はつせやま なにをかことに つゆもおくらむ | 家隆 |
| 456 | やまさとは せみのもろこゑ あきかけて そとものきりの したはおつなり | 定家 |
| 457 | いろうすき ゆふひのやまに あきみえて こすゑによわる ひくらしのこゑ | 客子(従三位) |
| 458 | かけよわき このまのゆふひ うつろひて あきすさましき ひくらしのこゑ | 俊実(藤原定資男) |
| 459 | むらすすめ こゑするたけに うつるひの かけこそあきの いろになりぬれ | 永福門院 |
| 460 | けふははや とくくれななむ ひさかたの あまのかはきり たちわたるへく | 躬恒 |
| 461 | こころをは かすともなしに あまのかは よそのあふせに くれそまたるる | 実泰 |
| 462 | あふことを まとほにたのむ たなはたの ちきりやうすき あまのはころも | 隆康 |
| 463 | おもひやる こころもすすし ひこほしの つままつよひの あまのかはかせ | 清輔 |
| 464 | あまのはら ふりさけみれは あまのかは きりたちわたる きみはきぬらし | 読人不知 |
| 465 | めつらしく あふたなはたは よそひとも かけみまほしき よるにそありける | 伊勢 |
| 466 | おほかたを おもへはゆゆし あまのかは けふのあふせは うらやまれけり | 紫式部 |
| 467 | あまのかは あふせによする しらなみは いくよをへても かへらさらなむ | 匡房 |
| 468 | たなはたの あふせはかたき あまのかは やすのわたりも なのみなりけり | 重家 |
| 469 | たなはたの ちきりはあきの なのみして またみしかよは あふほとやなき | 道平 |
| 470 | としをへて かはらぬものは たなはたの あきをかさぬる ちきりなりけり | 義詮 |
| 471 | ふけぬなり ほしあひのそらに つきはいりて あきかせうこく にはのともしひ | 光厳院 |
| 472 | たなはたに こころをかして なけくかな あけかたちかき あまのかはかせ | 後嵯峨院 |
| 473 | いくとせか さかののあきの をみなへし つかふるみちに なれてみつらむ | 実教 |
| 474 | あきくれは はきもふるえに さくものを ひとこそかはれ もとのこころは | 惟方 |
| 475 | わかこころ またかはらすよ はつはきの したはにすかる つゆはかりたに | 顕昭 |
| 476 | あたしのの はきのすゑこす あきかせに こほるるつゆや たまかはのみつ | 俊頼(源経信男) |
| 477 | さこそわれ はきのふるえの あきならめ もとのこころを ひとのとへかし | 四条(安嘉門院) |
| 478 | まはきちる にはのあきかせ みにしみて ゆふひのかけそ かへにきえゆく | 永福門院 |
| 479 | かせふけは えたもとををに おくつゆの ちるさへをしき あきはきのはな | 定家 |
| 480 | しをれふす えたふきかへす あきかせに とまらすおつる はきのうはつゆ | 道良女 |
| 481 | ひとしをり あめはすきぬる にはのおもに ちりてうつろふ はきかはなすり | 公直母 |
| 482 | あきふかみ はなちるはきは もとすきて のこるすゑはの いろそさひしき | 盛親 |
| 483 | つゆにふす まかきのはきは いろくれて をはなそしろき あきかせのには | 尊氏 |
| 484 | にはのおもに ゆふへのかせは ふきみちて たかきすすきの すゑそみたるる | 伏見院 |
| 485 | みわたせは すそののをはな ふきしきて ゆふくれはけし やまおろしのかせ | 伏見院 |
| 486 | あきさむき ゆふひはみねに かけろひて をかのをはなに かせすさふなり | 進子内親王 |
| 487 | まねきやむ をはなかすゑも しつかにて かせふきとまる くれそさひしき | 親子(従三位源) |
| 488 | ふきうつり なひくすすきの すゑすゑを のとかにわたる のへのゆふかせ | 花園院 |
| 489 | ゆふひさす とほやまもとの さとみえて すすきふきしく のへのあきかせ | 隆祐 |
| 490 | みをかくす やとにはうゑし はなすすき まねくたよりに ひともこそとへ | 慈道法親王 |
| 491 | あはれさも そのいろとなき ゆふくれの をはなかすゑに あきそうかへる | 為兼 |
| 492 | まねくとも たのむへしやは はなすすき かせにしたかふ こころなりけり | 重之女 |
| 493 | ふくかせの たよりならては はなすすき こころとひとを まねかさりけり | 季経 |
| 494 | うちしめり すすきのうれは おもりつつ にしふくかせに なひくむらさめ | 定家 |
| 495 | ここにのみ あはれやとまる あきかせの をきのうへこす ゆふくれのやと | 伏見院 |
| 496 | ふきすてて すきぬるかせの なこりまて おとせぬをきも あきそかなしき | 為兼 |
| 497 | にはしろき いさこにつきは うつろひて あきかせよわき はなのすゑすゑ | 法守法親王 |
| 498 | うすきりの そらはほのかに あけそめて のきのしのふに つゆそみえゆく | 俊兼 |
| 499 | あきそかし いかにあはれの とはかりに やすくもおける そてのつゆかな | 為守女 |
| 500 | ひかりそふ くさはのうへに かすみえて つきをまちける つゆのいろかな | 重顕(藤原頼重男) |
| 501 | ふみわけて たれかはとはむ よもきふの にはもまかきも あきのしらつゆ | 秀能(藤原秀宗男) |
| 502 | あはれむかし いかなるのへの くさはより かかるあきかせ ふきはしめけむ | 後鳥羽院 |
| 503 | むらくもに かけさたまらぬ あきのひの うつりやすくも くるるころかな | 覚円 |
| 504 | あさちはら あきかせふきぬ あはれまた いかにこころの ならむとすらむ | 家隆 |
| 505 | あきかせは とほきくさはを わたるなり ゆふひのかけは のへはるかにて | 伏見院 |
| 506 | さきのゐる あたりのくさは うらかれて のさはのみつも あきそさひしき | 為基(京極為兼猶子) |
| 507 | むらさめの なかははれゆく くもきりに あきのひきよき まつはらのやま | 花園院 |
| 508 | ゆふつくひ いはねのこけに かけきえて をかのやなきは あきかせそふく | 永福門院 |
| 509 | あきかせに うきくもたかく そらすみて ゆふひになひく きしのあをやき | 為兼 |
| 510 | にはふかき やなきのかれは ちりみちて かきほあれたる あきかせのやと | 伏見院 |
| 511 | かはとほき ゆふひのやなき きしはれて さきのつはさに あきかせそふく | 光厳院 |
| 512 | かけよわき やなきかうれの ゆふつくひ さひしくうつる あきのいろかな | 重資 |
| 513 | たましまや おちくるあゆの かはやなき したはうちちり あきかせそふく | 家隆 |
| 514 | うすきりの やまもととほく しかなきて ゆふひかけろふ をかのへのまつ | 儀子内親王 |
| 515 | たひねする さやのなかやま さよなかに しかもなくなり つまやこひしき | 為仲(橘義通男) |
| 516 | くれうつる まかきのはなは みえわかて きりにへたてぬ さをしかのこゑ | 為秀 |
| 517 | へたたらぬ をしかのこゑは まちかくて きりのいろより くるるやまもと | 一条(徽安門院) |
| 518 | こからしに つきすむみねの しかのねを われのみきくは をしくもあるかな | 寂然 |
| 519 | ものおもへと するわさならし このまより おちたるつきに さをしかのこゑ | 良経(九条兼実男) |
| 520 | いくあきの なみたさそひつ かすかのや ききてなれぬる さをしかのこゑ | 範憲 |
| 521 | あきはきの みたるるたまは なくしかの こゑよりおつる なみたなりけり | 貫之 |
| 522 | かせさむみ はたれしもふる あきのよは やましたとよみ しかそなくなる | 基俊 |
| 523 | よもすから つまとふしかを きくからに われさへあやな いこそねられね | 成通 |
| 524 | やまさとは みねのこのはに きほひつつ くもよりおろす さをしかのこゑ | 式子内親王 |
| 525 | をやまたの いほもるとこも よさむにて いなはのかせに しかそなくなる | 為藤 |
| 526 | はつかりは くもゐのよそに すきぬれと こゑはこころに とまるなりけり | 俊頼(源経信男) |
| 527 | いろかはる やなきかうれに かせすきて あきのひさむき はつかりのこゑ | 為基(京極為兼猶子) |
| 528 | ふきしをる ちくさのはなは にはにふして かせにみたるる はつかりのこゑ | 儀子内親王 |
| 529 | このねぬる あさかせさむみ はつかりの なくそらみれは こさめふりつつ | 道玄 |
| 530 | むらくもに よこきるかりの かすみえて あさひにきゆる みねのあききり | 実兼 |
| 531 | あさほらけ きりのはれまの たえたえに いくつらすきぬ あまつかりかね | 伏見院 |
| 532 | きりうすき あきのひかけの やまのはに ほのほのみゆる かりのひとつら | 為信 |
| 533 | ゆふひかけ さひしくみゆる やまもとの たのもにくたる かりのひとつら | 中納言典侍(後伏見院) |
| 534 | ゆふきりの むらむらはるる やまきはに ひかけをわたる かりのひとつら | 覚誉法親王 |
| 535 | しをれきて みやこもおなし あききりに つはさやほさぬ あまつかりかね | 公重(西園寺実衡男) |
| 536 | をくらやま ふもとのてらの いりあひに あらぬねなから まかふかりかね | 俊成(藤原俊忠男) |
| 537 | はれそむる をちのとやまの ゆふきりに あらしをわくる はつかりのこゑ | 家隆 |
| 538 | うちむれて あまとふかりの つはさまて ゆふへにむかふ いろそかなしき | 伏見院 |
| 539 | くもとほき ゆふひのあとの やまきはに ゆくともみえぬ かりのひとつら | 花園院 |
| 540 | くもまもる いりひのかけに かすみえて とほちのそらを わたるかりかね | 良基(二条道平男) |
| 541 | かりのなく とほちのやまは ゆふひにて のきはしくるる あきのむらくも | 徽安門院 |
| 542 | ゆふひうつる やなきのすゑの あきかせに そなたのかりの こゑもさひしき | 為兼 |
| 543 | あきかせに うすきりはるる やまのはを こえてちかつく かりのひとつら | 宗秀(大江時秀男) |
| 544 | かりのなく ゆふへのそらの うすくもに またかけみえぬ つきそほのめく | 内侍(永福門院) |
| 545 | あきかせの たかきみそらは くもはれて つきのあたりに かりのひとつら | 尊胤法親王 |
| 546 | つれてとふ あまたのつはさ よこきりて つきのしたゆく よはのかりかね | 伏見院 |
| 547 | はきのうへに かりのなみたの おくつゆは こほりにけりな つきにむすひて | 式子内親王 |
| 548 | まとしろき ねさめのつきの いりかたに こゑもさやかに わたるかりかね | 一条(徽安門院) |
| 549 | あきのよの ねさめのほとを かりかねの そらにしれはや なきわたるらむ | 保憲女 |
| 550 | かりかねの きこゆるなへに みわたせは よものこすゑも いろつきにけり | 和泉式部 |
| 551 | くものうへに なきつるかりの さむきなへに ききのしたはは うつろはむかも | 読人不知 |
| 552 | けさのあさけ かりかねききつ かすかやま もみちにけらし わかこころいたし | 穂積皇子 |
| 553 | あさきりの おほつかなきに あきのたの ほにいててかりそ なきわたりける | 貫之 |
| 554 | いろかはる こすゑをみれは さほやまの あさきりかくれ かりはきにけり | 為家 |
| 555 | あまつかり きりのあなたに こゑはして かとたのすゑそ しもにあけゆく | 後伏見院 |
| 556 | きりきりす こゑはいつくそ くさもなき しらすのにはの あきのよのつき | 永福門院 |
| 557 | きりきりす つきをやしたふ にはとほく かたふくかたの かけになくなり | 定成(藤原経朝男) |
| 558 | よひのまは まれにききつる むしのねも ふけてそしけき よもきふのには | 公賢 |
| 559 | わきてなと よるしもまさる うれへにて あくるをきはに むしのなくらむ | 章義門院 |
| 560 | のへのいろも かれのみまさる あさちふに のこるともなき まつむしのこゑ | 内実 |
| 561 | きりきりす おのかなくねも たえたえに かへのひまもる つきそかなしき | 公蔭 |
| 562 | むしのねは ならのおちはに うつもれて きりのまかきに むらさめのふる | 良経(九条兼実男) |
| 563 | きりきりす なくよをさむみ おくつゆに あさちかうへそ いろかれてゆく | 兼行 |
| 564 | にはのむしは なきとまりぬる あめのよの かへにおとする きりきりすかな | 為兼 |
| 565 | よさむなる まくらのしたの きりきりす あはれにこゑの なほのこりける | 公顕 |
| 566 | なにとなく ものかなしくそ みえわたる とはたのおもの あきのゆふくれ | 西行 |
| 567 | つゆしけき とはたのおもの あきかせに たまゆらやとる よひのいなつま | 後鳥羽院 |
| 568 | あきのたの またはつかなる ほのうへを はるかにみする よひのいなつま | 公重(西園寺実衡男) |
| 569 | ゆふひさす とやまのこすゑ あきさひて ふもとのをたも いろつきにけり | 公蔭 |
| 570 | をやまたの つゆのおくての いなむしろ つきをかたしく とこのひとりね | 実忠 |
| 571 | なにとなく やまたのいほの かなしきに あきかせさむみ うつらなくなり | 経房(藤原光房男) |
| 572 | うちはらひ をののあさちに かるくさの しけみかすゑに うつらたつなり | 式子内親王 |
| 573 | いなつまの しはしもとめぬ ひかりにも くさはのつゆの かすはみえけり | 為秀 |
| 574 | あきのあめの はれゆくあとの くもまより しはしほのめく よひのいなつま | 実名(藤原公脩男) |
| 575 | ゆふやみに みえぬくもまも あらはれて ときときてらす よひのいなつま | 為家 |
| 576 | にほひしらみ つきのちかつく やまのはの ひかりによわる いなつまのかけ | 伏見院 |
| 577 | つきをまつ くらきまかきの はなのうへに つゆをあらはす よひのいなつま | 徽安門院 |
| 578 | こゑたつる のきのまつかせ にはのむし ゆふくれかけて つきやもよほす | 後伏見院 |
| 579 | くさむらの むしのこゑより くれそめて まさこのうへそ つきになりぬる | 光厳院 |
| 580 | くさかくれ むしなきそめて ゆふきりの はれまののきに つきそみえゆく | 一条(花園院) |
| 581 | かけうすき つきみえそめて にはのおもの くさにむしなく やとのゆふくれ | 新宰相(伏見院) |
| 582 | ふきわくる たけのあなたに つきみえて まかきはくらき あきかせのおと | 祝子内親王 |
| 583 | たちならふ まつのこのまに みえそめて やまのはつかに つきそほのめく | 経顕(藤原定資男) |
| 584 | いましはや またるるつきそ にほふらし むらくもしろき やまのはのそら | 良基(二条道平男) |
| 585 | くまもなく ねやのおくまて さしいりぬ むかひのやまを のほるつきかけ | 徽安門院 |
| 586 | つきのほる ゆふへのやまに くもはれて みとりのそらを はらふあきかせ | 俊兼 |
| 587 | くれもあへす いまさしのほる やまのはの つきのこなたの まつのひともと | 花園院 |
| 588 | やまのはを いてぬとみゆる のちまても ふもとのさとは つきそまたるる | 媋子内親王 |
| 589 | ほともなく まつよりうへに なりにけり このまもりつる ゆふくれのつき | 尊氏 |
| 590 | いつるより くももかからぬ やまのはを しつかにのほる あきのよのつき | 定宗(藤原家親男) |
| 591 | のきちかき まつはらやまの あきかせに ゆふくれきよく つきいてにけり | 伏見院 |
| 592 | つきかけを むくらのかとに さしそへて あきこそきたれ とふひとはなし | 定家 |
| 593 | さよふけて ひとはしつまる まきのとに ひとりさしいる つきそさひしき | 経通(一条内経男) |
| 594 | なかしてふ あきのももよを かさねても なかめあくへき つきのかけかは | 家親 |
| 595 | こころこそ あくかれやすく なりにけれ なかめうかるる つきのしるへに | 隆博 |
| 596 | ひたすらに いとひもはてし むらくもの はれまそつきは てりまさりける | 清輔 |
| 597 | うすくもの たたよふそらの つきかけは さやけきよりも あはれなりけり | 後鳥羽院 |
| 598 | つきかけの すみのほるあとの やまきはに たたひとなひき くもののこれる | 為子(従二位) |
| 599 | あきはたた をきのはすくる かせのおとに よふかくいつる やまのはのつき | 通光 |
| 600 | まはきはら よふかきつきに みかかれて おきそふつゆの かすそかくれぬ | 実尹 |
| 601 | うちそよき たけのはのほる つゆならて つきふくるよの またおともなし | 実明女 |
| 602 | つきのゆく はれまのそらは みとりにて むらむらしろき あきのうきくも | 為基(京極為兼猶子) |
| 603 | たえたえの くもまにつたふ かけにこそ ゆくともみゆれ あきのよのつき | 宗宣(北条宣時男) |
| 604 | むらくもに かくれあらはれ ゆくつきの はれもくもりも あきそかなしき | 永福門院 |
| 605 | ふきしをる かせにしかるる くれたけの ふしなからみる にはのつきかけ | 永福門院 |
| 606 | つきのいろも あきにそめなす かせのよの あはれうけとる まつのおとかな | 為兼 |
| 607 | まつかせも そらにひひきて ふくるよの こすゑにたかき みやまへのつき | 内侍(永福門院) |
| 608 | みるひとに もののあはれを しらすれは つきやこのよの かかみなるらむ | 崇徳院 |
| 609 | こころすむ あきのつきたに なかりせは なにをうきよの なくさめにせむ | 選子内親王 |
| 610 | あきをへて なみたおちそふ そてのつき いつをはれまと みるよはもなし | 為定(御子左二条為道男) |
| 611 | わかこころ すめるはかりに ふけはてて つきをわすれて むかふよのつき | 花園院 |
| 612 | くもはれて すめはすみけり みるひとの こころやつきの こころなるらむ | 忠良 |
| 613 | わかそての つゆもなみたも あまりある あきのうれへは つきのみそとふ | 覚助法親王 |
| 614 | ふかきやまに すみけるつきを みさりせは おもひてもなき わかみならまし | 西行 |
| 615 | こころこそ ややすみまされ よのなかを のかれてつきは みるへかりけり | 道玄 |
| 616 | やまさとは つきもこころや とまるらむ みやこにすきて すみまさるかな | 崇徳院 |
| 617 | いつことて あはれならすは なけれとも あれたるやとそ つきはさやけき | 西行 |
| 618 | いほにもる つきのかけこそ さひしけれ やまたはひたの おとはかりして | 西行 |
| 619 | きりはるる をちのやまもと あらはれて つきかけみかく うちのかはなみ | 為秀 |
| 620 | かけははや とほきうらわに さきたちて いそやまいつる あきのよのつき | 定資 |
| 621 | きよみかた なみをかたしく たひころも またやはかかる つきをきてみむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 622 | きよみかた ふしのけふりや きえぬらむ つきかけみかく みほのうらなみ | 後鳥羽院 |
| 623 | あれにける やととてつきは かはらねと むかしのかけは なほそゆかしき | 忠度 |
| 624 | ときはやま かはるこすゑは みえねとも つきこそあきの いろにいてけれ | 為氏 |
| 625 | くれのあき つきのすかたは たえねとも ひかりはそらに みちにけるかな | 顕輔 |
| 626 | みやまいてし あきのたひねの よころへて やともるつきや あるしまつらむ | 花園院 |
| 627 | すみよしの かみのおまへの はまきよみ ことうらよりも つきやさやけき | 俊言 |
| 628 | しはしみむ かたふくかたは そらはれて ふけはとたのむ むらくものつき | 宣子(従三位藤原) |
| 629 | つゆふかき まかきのはなは うすきりて をかへのすきに つきそかたふく | 内侍(永福門院) |
| 630 | かせにおつる くさはのつゆも かくれなく まかきにきよき いりかたのつき | 儀子内親王 |
| 631 | いるつきを かへすあらしは なかりけり いつるみねには まつのあきかせ | 慈円 |
| 632 | なかめやる あきのやまかせ こころあらは かたふくつきを ふきやかへさぬ | 重家 |
| 633 | つきはなほ なかそらたかく のこれとも かけうすくなる ありあけのには | 経顕(藤原定資男) |
| 634 | かせになひく をはなかすゑに かけろひて つきとほくなる ありあけのには | 花園院 |
| 635 | かけきよき ありあけのつきは そらすみて しかのねたかき あかつきのやま | 新右衛門督(宣光門院) |
| 636 | ありあけの つきはかたふく やまのはに しかのねたかき よはのあきかせ | 万秋門院 |
| 637 | つきならぬ ほしのひかりも さやけきは あきてふそらや なへてすむらむ | 実衡女 |
| 638 | ありあけの つきはたえたえ かけみえて きりふきわくる あきのやまかせ | 季雄 |
| 639 | むらくもの ひまゆくつきの かけはやみ かたふくおいの あきそかなしき | 実兼 |
| 640 | やまさとに ありあけのそらを なかめても なほやしられぬ あきのあはれは | 中務(選子内親王家) |
| 641 | やまかせも しくれになれる あきのひに ころもやうすき をちのたひひと | 伏見院 |
| 642 | さすとなき ひかけはのきに うつろひて このはにかかる にはのむらさめ | 永福門院 |
| 643 | もろくなる やなきのしたは かつちりて あきものさむき ゆふくれのあめ | 新右衛門督(宣光門院) |
| 644 | むらさめの くもふきすさふ ゆふかせに ひとはつつちる たまのをやなき | 順徳院 |
| 645 | ひとしきり あらしはすきて きりのはの しつかにおつる ゆふくれのには | 大納言(昭訓門院) |
| 646 | ぬれておつる きりのかれはは おとおもみ あらしはかろき あきのむらさめ | 光厳院 |
| 647 | おちすさふ まきのしたつゆ なほふかし あめのなこりの きりのあさあけ | 公重(西園寺実衡男) |
| 648 | たちそむる きりかとみれは あきのあめの こまかにそそく ゆふくれのそら | 為秀 |
| 649 | しをりつる のわきはやみて しののめの くもにしたかふ あきのむらさめ | 徽安門院 |
| 650 | ふきみたし のわきにあるる あさあけの いろこきくもに あめこほるなり | 一条(花園院) |
| 651 | のわきたつ ゆふへのくもの あしはやみ しくれににたる あきのむらさめ | 為兼 |
| 652 | くさもきも のわきにしをる ゆふくれは そらにもくもの みたれてそゆく | 為名 |
| 653 | はとのなく すきのこすゑの うすきりに あきのひよわき ゆふくれのやま | 一条(花園院) |
| 654 | やまかけや よのまのきりの しめりより またおちやまぬ ききのしたつゆ | 永福門院 |
| 655 | うすきりの あさけのこすゑ いろさひて むしのねのこる もりのしたくさ | 永福門院 |
| 656 | つのくにの ゐなののきりの たえたえに あらはれやらぬ こやのまつはら | 邦省親王 |
| 657 | あさひやま またかけくらき あけほのに きりのしたゆく うちのしはふね | 資明 |
| 658 | うちわたす はまなのはしの あけほのに ひとむらくもる まつのうすきり | 広秀 |
| 659 | あさひかけ うつるこすゑは つゆおちて そとものたけに のこるうすきり | 俊兼 |
| 660 | ひかけさす いなはかうへは くれやらて まつはらうすき きりのやまもと | 忠季(藤原公蔭男) |
| 661 | おくみえぬ はやまのきりの あけほのに ちかきまつのみ のこるひとむら | 為相 |
| 662 | いりかかる をちのゆふひは かけきえて すそよりくるる うすきりのやま | 実兼 |
| 663 | きりふかき つまきのみちの かへるさに こゑはかりして くたるやまひと | 俊実(藤原定資男) |
| 664 | いりあひは ひはらのおくに ひひきそめて きりにこもれる やまそくれゆく | 尊氏 |
| 665 | たちこめて をのへもみえぬ きりのうへに こすゑはかりの まつのむらたち | 為基(京極為兼猶子) |
| 666 | あさあらしの みねよりおろす おほゐかは うきたるきりも なかれてそゆく | 為兼 |
| 667 | ふしみやま ふもとのいなは くもはれて たのもにのこる うちのかはきり | 実超 |
| 668 | いりうみの まつのひとむら くもりそめて しほよりのほる あきのゆふきり | 為成(冷泉為相男) |
| 669 | なにはかた うらさひしさは あききりの たえまにみゆる あまのつりふね | 三河内侍(二条院) |
| 670 | さえのほる ひひきやそらに ふけぬらむ つきのみやこも ころもうつなり | 家隆 |
| 671 | よをさむみ ねさめてきけは なかつきの ありあけのつきに ころもうつなり | 実朝 |
| 672 | ころもうつ よそのさとひと なれをしそ あはれとはおもふ あきのよさむに | 為定(御子左二条為道男) |
| 673 | いまははや あけぬとおもふ かねのおとの のちしもなかき あきのよはかな | 道良女 |
| 674 | そめやらぬ こすゑのひかけ うつりさめて ややかれわたる やまのしたくさ | 内侍(永福門院) |
| 675 | をかへなる はしのもみちは いろこくて よものこすゑは つゆのひとしほ | 御匣(新室町院) |
| 676 | おのれとや いろつきそむる うすもみち またこのころは しくれぬものを | 直義 |
| 677 | みるままに もみちいろつく あしひきの やまのあきかせ さむくふくらし | 具定 |
| 678 | まなくふる しくれにいろや つくはやま しけきこすゑも もみちしにけり | 通成 |
| 679 | いろいろに ならひのをかの はつもみち あきのさかのの ゆききにそみる | 後宇多院 |
| 680 | あさきりの はれゆくをちの やまもとに もみちましれる たけのひとむら | 実明女 |
| 681 | しかのやま こえてみやれは はつしくれ ふるきみやこは もみちしにけり | 道玄 |
| 682 | あきされは おくつゆしもに あへすして みやこのやまは いろつきぬらむ | 読人不知 |
| 683 | おほゐかは やまのもみちを うつしもて からくれなゐの なみそたちける | 長家 |
| 684 | しくれつる とやまのくもは はれにけり ゆふひにそむる みねのもみちは | 良経(九条兼実男) |
| 685 | ひかけさへ いまひとしほを そめてけり しくれのあとの みねのもみちは | 公清 |
| 686 | はれわたる ひかけにみれは やまもとの こすゑむらむら もみちしにけり | 清雅 |
| 687 | きりはるる たのものすゑに やまみえて いなはにつつく ききのもみちは | 花園院 |
| 688 | くれたけの めくれるさとを ふもとにて けふりにましる やまのもみちは | 花園院 |
| 689 | ゆふひうつる そとものもりの うすもみち さひしきいろに あきそくれゆく | 光明院 |
| 690 | もろこしも おなしそらこそ しくるらめ からくれなゐに もみちするころ | 後嵯峨院 |
| 691 | いろふかき やとのもみちの ひとえたに をりしるひとの なさけをそみる | 伏見院 |
| 692 | いろそへて みるへききみの ためとてそ わかやまさとの もみちをもをる | 覚助法親王 |
| 693 | とけてねぬ そてさへいろに いてねとや つゆふきむすふ みねのこからし | 式子内親王 |
| 694 | したもみち いろいろになる すすかやま しくれのいたく ふれはなるへし | 能宣 |
| 695 | よろつよを つむともつきし きくのはな なかつきのけふ あらむかきりは | 花山院 |
| 696 | なかつきの きくのさかつき ここのへに いくめくりとも あきはかきらし | 実雄 |
| 697 | ここのへに ちよをかさねて かさすかな けにをりえたる しらきくのはな | 公相 |
| 698 | めくりあふ つきひもおなし ここのへに かさねてみゆる ちよのしらきく | 隆祐 |
| 699 | ももしきや わかここのへの あきのきく こころのままに をりてかささむ | 後醍醐院 |
| 700 | よもすから ひかりはしもを かさぬれと つきにはきくの うつろはぬかな | 光行 |
| 701 | しもかれむ ことをこそおもへ わかやとの まかきににほふ しらきくのはな | 師時 |
| 702 | おくしもの そめまかはせる きくのはな いつれかもとの いろにはあるらむ | 貫之 |
| 703 | もすのゐる まさきのすゑは あきたけて わらやはけしき みねのまつかせ | 定家 |
| 704 | みるままに かへにきえゆく あきのひの しくれにむかふ うきくものそら | 進子内親王 |
| 705 | はつしもに かれゆくくさの きりきりす あきはくれぬと きくそかなしき | 匡房 |
| 706 | ほにいてて まねくとならは はなすすき すきゆくあきを えやはととめぬ | 教長 |
| 707 | まとふかき あきのこのはを ふきたてて またしくれゆく やまおろしのかせ | 後鳥羽院 |
| 708 | あきのあめの まとうつおとに ききわひて ねさむるかへに ともしひのかけ | 公宗女 |
| 709 | にはのおもに はきのかれはは ちりしきて おとすさましき ゆふくれのあめ | 覚円 |
| 710 | あきのあめに しをれておつる きりのはは おとするしもそ さひしかりける | 実衡女 |
| 711 | もろくなる きりのかれはは にはにおちて あらしにましる むらさめのおと | 永福門院 |
| 712 | としへたる みやまのおくの あきのそら ねさめしくれぬ あかつきそなき | 慶政 |
| 713 | なにとなく にはのよもきも したをれて さひゆくあきの いろそかなしき | 後鳥羽院 |
| 714 | ゆふひうすき かれはのあさち したすきて それかとよわき むしのひとこゑ | 伏見院 |
| 715 | うらかるる あさちかにはの きりきりす よわるをしたふ われもいつまて | 左京大夫(後伏見院) |
| 716 | しるきかな あさちいろつく にはのおもに ひとめかるへき ふゆのちかさは | 式子内親王 |
| 717 | いとはやも おしねいろつく はつしもの さむきあさけに やまかせそふく | 隆朝 |
| 718 | ゆふしもの ふるえのはきの したはより かれゆくあきの いろはみえけり | 後伏見院 |
| 719 | なかつきや よさむのころの ありあけの ひかりにまかふ あさちふのしも | 為子(従二位) |
| 720 | かせわたる まくすかはらに あきくれて かへらぬものは ひかすなりけり | 長雅 |
| 721 | としことに かはらぬけふの なけきかな をしみとめたる あきはなけれと | 登蓮 |
| 722 | やまをこえ みつをわたりて したふとも しらはそけふの あきのわかれち | 為相 |
| 723 | ゆくあきの なこりをけふに かきるとも ゆふへはあすの そらもかはらし | 実氏 |
| 724 | つきもみす かせもおとせぬ まとのうちに あきをおくりて むかふともしひ | 後伏見院 |
| 725 | おちつもる もみちはみれは おほゐかは ゐせきにとまる あきにそありける | 公任 |
| 726 | ふゆのきて しものふりはも あはれなり われもおいその もりのしたくさ | 基忠(鷹司兼平男) |
| 727 | もみちはの みやまにふかく ちりしくは あきのかへりし みちにやあるらむ | 後二条院 |
| 728 | くさかれて さひしかるへき にはのおもに もみちちりしき きくもさきけり | 新宰相(伏見院) |
| 729 | うきくもの あきよりふゆに かかるまて しくれすさへる とほやまのまつ | 実兼 |
| 730 | ゆふひさす おちはかうへに しくれすきて にはにみたるる うきくものかけ | 光厳院 |
| 731 | やまあらしに うきゆくくもの ひととほり ひかけさなから しくれふるなり | 儀子内親王 |
| 732 | ふりすさふ しくれのそらの うきくもに みえぬゆふひの かけそうつろふ | 盛親 |
| 733 | しくるとも よそにはみえす たえたえに とやまをめくる みねのうきくも | 為定(御子左二条為道男) |
| 734 | しくれゆく くもまによわき ふゆのひの かけろひあへす くるるそらかな | 為相 |
| 735 | うきてゆく くものたえたえ かけみえて しくるるやまに ゆふひさすなり | 家雅 |
| 736 | しくれのあめ なにとふるらむ ははそはら ちりてののちは いろもまさらし | 教長 |
| 737 | やまあらしに このはふりそふ むらしくれ はるるくもまに みかつきのかけ | 進子内親王 |
| 738 | かみなつき くもままつまに ふけにけり しくるるころの やまのはのつき | 後鳥羽院 |
| 739 | つきのすかた なほありあけの むらくもに ひとそそきする しくれをそみる | 永福門院 |
| 740 | かみなつき くものゆくての むらしくれ はれもくもりも かせのまにまに | 公蔭 |
| 741 | をりをりに しくれおとして なかきよの ねやのいたまは まてとしらます | 新宰相(伏見院) |
| 742 | とやまより しくれてわたる うきくもに このはふきませ ゆくあらしかな | 為仲(藤原為顕男) |
| 743 | さそひはてし あらしののちの ゆふしくれ にはのおちはを なほやそむらむ | 左京大夫(永陽門院) |
| 744 | かさとりの やまをたのみし かひもなく しくれにそてを ぬらしてそゆく | 頼基(大中臣輔道男) |
| 745 | しくれゆく たたひとむらは はやくして なへてのそらは くもそのとけき | 為子(従二位) |
| 746 | むらむらに こまつましれる ふゆかれの のへすさましき ゆふくれのあめ | 永福門院 |
| 747 | かれつもる ならのおちはに おとすなり かせふきまする ゆふくれのあめ | 進子内親王 |
| 748 | ふきわくる このはのしたも このはにて にはみせかぬる やまおろしのかせ | 伏見院 |
| 749 | しくるとも しられぬにはは このはぬれて さむきゆふひは かけおちにけり | 後伏見院 |
| 750 | こころして かせののこせる もみちはを たつぬるやまの かひにみるかな | 下野(四条太皇太后宮) |
| 751 | もみちはの ちりしくときは ゆきかよふ あとたにみえぬ やまちなりけり | 貫之 |
| 752 | みなかみに しくれふるらし やまかはの せにももみちの いろふかくみゆ | 順 |
| 753 | わかやとの ものなりなから おほゐかは せきもととめす ゆくこのはかな | 後嵯峨院 |
| 754 | かみなひの やましたかせの さむけくに ちりかひくもる よものもみちは | 後二条院 |
| 755 | かみかきの もりのこのはは ちりしきて をはなのこれる かすかののはら | 兵衛督(花園院) |
| 756 | ふくかせの さそふともなき こすゑより おつるかれはの おとそさひしき | 内経 |
| 757 | いりあひの ひひきをおくる やまかせに もろきこのはの おとそましれる | 公宗(西園寺実衡男) |
| 758 | いつのまに こけさへいろの かはるらむ けさはつしもの ふるさとのには | 実経 |
| 759 | あきみしは それとはかりの はきかえに しものくちはそ ひとはのこれる | 一条(徽安門院) |
| 760 | ふゆかれの しはふのいろの ひととほり みちふみわくる のへのあさしも | 資明 |
| 761 | しもさむき あさけのやまは うすきりて こほれるくもに もるひかけかな | 祝子内親王 |
| 762 | しもこほる たけのはわけに つきさえて にはしつかなる ふゆのさよなか | 光明院 |
| 763 | ふきとほす こすゑのかせは みにしみて さゆるしもよの ほしきよきそら | 公蔭 |
| 764 | おくしもは ねやまてとほる あけかたの まくらにちかき かりのひとこゑ | 為基(京極為兼猶子) |
| 765 | のこりつる みねのひかけも くれはてて ゆふしもさむし をかのへのさと | 淑文 |
| 766 | くれかかる ひかけはよそに なりにけり ゆふしもこほる もりのしたくさ | 源恵 |
| 767 | そらたかく すみとほるつきは かけさえて しはふにしろき しものあけかた | 実明女 |
| 768 | もみちせし をかへもいまは しろたへの しものくちはに つきそこほれる | 成茂 |
| 769 | くさはこそ おきそふしもに たへさらめ なににかれゆく やとのひとめそ | 実重(三条公親男) |
| 770 | ふりはつる われをもすつな かすかのや おとろかみちの しものしたくさ | 実教 |
| 771 | あさちふや のこるはすゑの ふゆのしも おきところなく ふくあらしかな | 定家 |
| 772 | しもしろき かみのとりゐの あさからす なくねもさひし ふゆのやまもと | 家隆 |
| 773 | しもとくる ひかけのにはは このはぬれて くちにしいろそ またかはりぬる | 中納言典侍(後伏見院) |
| 774 | そめかふる まかきのきくの むらさきは ふゆにうつろふ いろにそありける | 経家(六条重家男) |
| 775 | にはのおもに おいのともなる しらきくは むそちのしもや なほかさぬへき | 後宇多院 |
| 776 | こむらさき のこれるきくは しらつゆの あきのかたみに おけるなりけり | 道信 |
| 777 | ふゆされは さゆるあらしの やまのはに こほりをかけて いつるつきかけ | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 778 | おほろなる ひかりもさむし しもくもり さえたるそらに ふくるよのつき | 隆教 |
| 779 | ふくとたに しられぬかせは みにしみて かせさえとほる しものうへのつき | 儀子内親王 |
| 780 | なかきよの しものまくらは ゆめたえて あらしのまとに こほるつきかけ | 覚助法親王 |
| 781 | こほるかと そらさへみえて つきのあたり むらむらしろき くももさむけし | 徽安門院 |
| 782 | もののふの やそうちかはの ふゆのつき いるてふなをは ならはさらなむ | 公相 |
| 783 | せたえする ふるかはみつの うすこほり ところところに みかくつきかけ | 為秀 |
| 784 | かねのおとに あくるかそらと おきてみれは しもよのつきそ にはしつかなる | 後伏見院 |
| 785 | ありあけの つきとしもとの いろのうちに おほえすそらも しらみそめぬる | 忠季(藤原公蔭男) |
| 786 | ふきさゆる あらしのつての ふたこゑに またはきこえぬ あかつきのかね | 為兼 |
| 787 | あかつきや ちかくなるらむ もろともに かならすもなく かはちとりかな | 増基 |
| 788 | あふみちや のしまかさきの はまかせに ゆふなみちとり たちさわくなり | 顕輔 |
| 789 | ゆふくれの しほかせあらく なるみかた かたもさためす なくちとりかな | 経朝 |
| 790 | はるかなる おきのひかたの さよちとり みちくるしほに こゑそちかつく | 宣時(北条) |
| 791 | なにはかた いりえにさむき ゆふひかけ のこるのさひし あしのむらたち | 通相 |
| 792 | みなといりの たななしをふね あとみえて あしのはむすふ うすこほりかな | 秀能(藤原秀宗男) |
| 793 | ゆきなやむ たにのこほりの したむせひ すゑにみなきる みつそすくなき | 実兼 |
| 794 | ふゆふかき たにのしたみつ おとたえて こほりのうへを はらふこからし | 恵助法親王 |
| 795 | わきてなほ こほりやすらむ おほゐかは さゆるあらしの やまかけにして | 基嗣 |
| 796 | かせさむき やまかけなれは なつみかは むすふこほりの とくるひもなし | 為忠(御子左二条為藤男) |
| 797 | さむきあめは かれののはらに ふりしめて やままつかせの おとたにもせす | 永福門院 |
| 798 | こすゑには ゆふあらしふきて さむきひの ゆきけのくもに かりなきわたる | 伏見院 |
| 799 | むれてたつ そらもゆきけに さえくれて こほりのとこに をしそなくなる | 式子内親王 |
| 800 | そらさむみ ゆきけもよほす やまかせの くものゆききに あられちるなり | 為相女 |
| 801 | かせのおとも さむきゆふひは みえなから くもひとむらに あられおつなり | 重資 |
| 802 | しもこほる のへのささはら かせさえて たまりもあへす ふるあられかな | 通顕 |
| 803 | しくれつつ よものもみちは ふりはてて あられそおつる にはのこのはに | 式子内親王 |
| 804 | ふりはるる にはのあられは かたよりて いろなるくもに そらそくれゆく | 為兼 |
| 805 | ゆふへより あれつるかせの さえさえて よふかきままに あられをそきく | 新宰相(伏見院) |
| 806 | ふゆのよの ねさめにきけは かたをかの ならのかれはに あられふるなり | 永縁 |
| 807 | おとたつる そとものならの ひろはにも あまりてよそに ちるあられかな | 為定(御子左二条為道男) |
| 808 | なかめやる をかのやなきは えたさひて ゆきまつそらの くれそさむけき | 章義門院 |
| 809 | うきくもの しくれくらして はるるあとに なかはゆきなる のきのやまのは | 為基(京極為兼猶子) |
| 810 | まきもくの ひはらのあらし さえさえて ゆつきかたけに ゆきふりにけり | 実朝 |
| 811 | ゆきやこれ はらふたかまの やまかせに つれなきくもの みねにのこれる | 後鳥羽院 |
| 812 | はつゆきの まとのくれたけ ふしなから おもるうははの ほとそきこゆる | 定家 |
| 813 | ふりけるも まさこのうへは みえわかて おちはにしろき にはのうすゆき | 雅孝 |
| 814 | にははたた しもかとみれは をかのへの まつのはしろき けさのはつゆき | 道命/道全 |
| 815 | ささのはの うへはかりには ふりおけと みちもかくれぬ のへのうすゆき | 朝定 |
| 816 | あとたえて うつまぬしもそ すさましき しはふかうへの のへのうすゆき | 冷泉(花園院) |
| 817 | あさひかけ さすやくもまの たえたえに うつるもこほる みねのしらゆき | 寂恵 |
| 818 | いつくとも つもるたかねは みえねとも くものたえたえ ふれるしらゆき | 道嗣 |
| 819 | たかねには けぬかうへにや つもるらむ ふしのすそのの けさのはつゆき | 公清 |
| 820 | たひひとの さきたつみちは あまたにて あとなきよりも まよふゆきかな | 為守 |
| 821 | なみかかる しつえはきえて いそのまつ こすゑはかりに つもるしらゆき | 重能 |
| 822 | ゆくさきは ゆきのふふきに とちこめて くもにわけいる しかのやまこえ | 為兼 |
| 823 | みやまには しらゆきふれり しからきの まきのそまひと みちたとるらし | 実朝 |
| 824 | ゆきのうちに けふもくらしつ やまさとは つまきのけふり こころほそくて | 基俊 |
| 825 | ふるままに ひはらもいとと こもりえの はつせのやまは ゆきつもるらし | 為定(御子左二条為道男) |
| 826 | とりのこゑ まつのあらしの おともせす やましつかなる ゆきのゆふくれ | 永福門院 |
| 827 | みよしのや すすふくおとは うつもれて まきのははらふ ゆきのあさかせ | 国基/国守/国夏 |
| 828 | つまきこる やまちはゆきの ふかけれは よにふるみちも たえやしぬらむ | 俊恵 |
| 829 | いかはかり ふりつもるらむ おもひやる こころもふかき みねのしらゆき | 道家 |
| 830 | たつねいりし まことのみちの ふかきやまは つもれるゆきの ほともしられす | 慶政 |
| 831 | みやこへも みゆらむものを あはれとも とはぬそつらき みねのしらゆき | 道玄 |
| 832 | なかむへき そなたのやまも かきくれて みやこもゆきの はるるまもなし | 為顕 |
| 833 | とふひとの あとこそあらめ まつかせの おとさへたゆる やまのしらゆき | 宗経(平経親男) |
| 834 | ふりつもる こすゑのゆきや こほるらし あさひももらぬ にはのまつかえ | 頼氏(藤原頼広男) |
| 835 | やまのはの ゆきのひかりに くれやらて ふゆのひなかし をかのへのさと | 公経(藤原実宗男) |
| 836 | ふりおもる のきはのまつは おともせて よそなるたにに ゆきをれのこゑ | 兼行 |
| 837 | やまおろしの こすゑのゆきを ふくたひに ひとくもりする まつのしたかけ | 為兼 |
| 838 | よもすから ふるほとよりも つもらぬは あらしやはらふ まつのしらゆき | 定資 |
| 839 | ゆふくれの みそれのにはや こほるらむ ほとなくつもる よはのしらゆき | 盛親 |
| 840 | はなよたた またうすくもる そらのいろに こすゑかをれる ゆきのあさあけ | 為子(従二位) |
| 841 | ふれはかつ こほるあさけの ふるやなき なひくともなき ゆきのしらいと | 内侍(永福門院) |
| 842 | あさひさす のきはのゆきは かつきえて たるひのすゑに おつるたまみつ | 道意(西園寺実兼男) |
| 843 | をかのへや さむきあさひの さしそめて おのれとおつる まつのしらゆき | 後伏見院 |
| 844 | のもやまも ひとつにしらむ ゆきのいろに うすくもくらき あさあけのそら | 実兼 |
| 845 | うすくもり またはれやらぬ あさあけの くもにまかへる ゆきのとほやま | 徽安門院 |
| 846 | みゆきふる かれきのすゑの さむけきに つはさをたれて からすなくなり | 一条(花園院) |
| 847 | とりかへる たにのとほそに ゆきふかし つまきこるをの みちやたえなむ | 後鳥羽院 |
| 848 | うすくもり をりをりさむく ちるゆきに いつるともなき つきもすさまし | 儀子内親王 |
| 849 | ふりすさふ ゆふへのゆきの そらはれて たけのはしろき のきのつきかけ | 覚実 |
| 850 | ふきかくる すたれもしろく なりにけり かせによこきる ゆふくれのゆき | 親行(藤原) |
| 851 | うつもるる くさきにかせの おとはやみて ゆきしつかなる ゆふくれのには | 重資 |
| 852 | やまもとの たけはむらむら うつもれて けふりもさむき ゆきのあさあけ | 一条(花園院) |
| 853 | みわたせは やまもととほき ゆきのうちに けふりさひしき さとのひとむら | 直義 |
| 854 | ふりつもる いろよりつきの かけになりて ゆふくれみえぬ にはのしらゆき | 伏見院 |
| 855 | くるるまて しはしははらふ たけのはに かせはよわりて ゆきそふりしく | 為兼 |
| 856 | みよしのの やまよりゆきは ふりくれと いつともわかぬ わかやとのたけ | 貫之 |
| 857 | いけのへの まつのすゑはに ふるゆきは いほへふりしけ あすさへもみむ | 読人不知 |
| 858 | うはたまの こよひのゆきに いさぬれむ あけむあしたに けなはをしけむ | 読人不知 |
| 859 | ものことに ふりのみかくす ゆきなれと みつにはいろも のこらさりけり | 貫之 |
| 860 | もろともに はかなきものは みつのおもに きゆれはきゆる あわのうへのゆき | 仲正 |
| 861 | ふりつもる ゆきまにおつる たきかはの いはねにほそき みつのしらなみ | 覚助法親王 |
| 862 | かつむすふ こほりのほとも あらはれて ゆきになりゆく にはのいけみつ | 行家(藤原知家男) |
| 863 | ゆきふりて ふままくをしき にはのおもは たつねぬひとも うれしかりけり | 顕季 |
| 864 | わかこころ ゆきけのそらに かよふとも しらさりけりな あとしなけれは | 俊頼(源経信男) |
| 865 | めくりあふ おなしつきひは おもひいつや よとせふりにし ゆきのあけほの | 伏見院 |
| 866 | つもれとも つかへしままの こころのみ ふりてもふりぬ ゆきのあけほの | 家基(近衛基衡男) |
| 867 | ふりはれて こほれるゆきの こすゑより あかつきふかき とりのはつこゑ | 進子内親王 |
| 868 | ふりはるる あさけのそらは のとかにて ひかけにおつる ききのしらゆき | 覚誉法親王 |
| 869 | ひかけさす そなたのゆきの むらきえに かつかつおつる のきのたまみつ | 隆博 |
| 870 | みかりのに くさをもとめて たつとりの しはしかくるる ゆきのしたしは | 為相 |
| 871 | みかりする かたやまかけの おちくさに かくれもあへす たつききすかな | 公泰 |
| 872 | たにこしに くさとるたかを めにかけて ゆくほとおそき しはのしたみち | 為兼 |
| 873 | かせさゆる うちのあしろき せをはやみ こほりもなみも くたけてそよる | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 874 | やまふかき ゆきよりたつる ゆふけふり たかすみかまの しるへなるらむ | 雅孝 |
| 875 | をのやまは やくすみかまの したもえて けふりのうへに つもるしらゆき | 四条(安嘉門院) |
| 876 | すみかまの けふりにはるを たちこめて よそめかすめる をののやまもと | 為家 |
| 877 | すみかまの けふりはかりを それとみて なほみちとほし をののやまさと | 貞時 |
| 878 | くれやらぬ にはのひかりは ゆきにして おくくらくなる うつみひのもと | 花園院 |
| 879 | うつみひに すこしはるある ここちして よふかきふゆを なくさむるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
| 880 | さむからし たみのわらやを おもふには ふすまのうちの われもはつかし | 光厳院 |
| 881 | くものうへの とよのあかりに たちいてて みはしのめしに つきをみしかな | 少将内侍(後深草院) |
| 882 | をとめこか くものかよひち ふくかせに めくらすゆきそ そてにみたるる | 為藤 |
| 883 | おもかけも みるここちする むかしかな けふをとめこか そてのしらゆき | 亀山院 |
| 884 | しのふらし をとめかそての しらゆきも ふりにしあとの けふのおもかけ | 伏見院 |
| 885 | わすれすよ とよのあかりの をみころも きつつなれしは むかしなれとも | 公雄 |
| 886 | やまあゐの そてのつきかけ さよふけて しもふきかへす かものかはかせ | 為成(冷泉為相男) |
| 887 | ことわりや あまのいはとも あけぬらむ くもゐのにはの あさくらのこゑ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 888 | のこりなく ことしもはやく くれたけの あらしにましる ゆきもすさまし | 右衛門督(永福門院) |
| 889 | けふまては ゆきふるとしの そらなから ゆふくれかたは うちかすみつつ | 後鳥羽院 |
| 890 | いりかたの かけこそやかて かすみけれ はるにかかれる ありあけのつき | 宗尊親王 |
| 891 | おのつから かきねのくさも あをむなり しものしたにも はるやちかつく | 伏見院 |
| 892 | ひととせに ふたたひにほふ うめのはな はるのこころに あかぬなるへし | 貫之 |
| 893 | をしみこし はなやもみちの なこりさへ さらにおほゆる としのくれかな | 後鳥羽院 |
| 894 | あれぬひの ゆふへのそらは のとかにて やなきのすゑも はるちかくみゆ | 永福門院 |
| 895 | みのうさも かはりやすると よしさらは ことしはとしの くれもをしまし | 兼直 |
| 896 | ことしまた くれぬとおもへは いまさらに すきしつきひの をしくもあるかな | 良基(二条道平男) |
| 897 | いたつらに けふさへくれは あすかかは またとしなみの かすやかさねむ | 為明 |
| 898 | くれぬとて なにかはいそく としをへて ひとのためなる はるとみなから | 知家 |
| 899 | とほくゆく きみをおくると おもひやる こころもともに たひねをやせむ | 貫之 |
| 900 | ひさかたの あめもこころに かなはなむ ふるとてひとの たちとまるへく | 貫之 |
| 901 | たひころも はるかにたては あききりの おほつかなさを いかになかめむ | 康資王母 |
| 902 | めにみえぬ こころをひとに たくへても やるかたなきは こころなりけり | 為定(御子左二条為道男) |
| 903 | いつかたに ありあけのつきの さそふらむ そらにうかるる たひのこころを | 四条(安嘉門院) |
| 904 | たひころも あさたつひとは たゆむなり きりにくもれる あけくれのそら | 順徳院 |
| 905 | あつさゆみ いるののくさの ふかけれは あさゆくひとの そてそつゆけき | 顕季 |
| 906 | あふさかの せきはあけぬと いてぬれと なほみちくらし すきのしたかけ | 定宗(藤原家親男) |
| 907 | ふかきよに せきのといてて あしからの やまもとくらき たけのしたみち | 頼成(藤原頼重男) |
| 908 | ふしのねを やまよりうへに かへりみて いまこえかかる あしからのせき | 行朝 |
| 909 | われのみと よふかくこゆる みやまちに さきたつひとの こゑそきこゆる | 朝定 |
| 910 | いはたたみ のほりわつらふ みねつつき くもにはつれて みゆるかけはし | 道全 |
| 911 | ゆくすゑは なほいくへとも しらくもの かさなるみねに またむかひぬる | 慈成 |
| 912 | くもきりに わけいるたには すゑくれて ゆふひのこれる みねのかけはし | 花園院 |
| 913 | わけきつる やままたやまは ふもとにて みねよりみねの おくそはるけき | 道昭 |
| 914 | やまたかみ いつれをわきて こえゆかむ あまたあとある いはのかけみち | 新大納言(延政門院) |
| 915 | めにかけて くれぬといそく やまもとの まつのゆふひの いろそすくなき | 為兼 |
| 916 | ひとむらの さとのしるへに たつけふり ゆけともとほみ くるるそらかな | 行能 |
| 917 | ゆきくれて やととふすゑの さとのいぬ とかむるこゑを しるへにそする | 仲成 |
| 918 | ゆふまくれ まよふやまちは こえすきて やととふさとに いつるつきかけ | 本如 |
| 919 | こえなやみ わかゆきとまる ゆふやまの をのへのつきは いまそいつなる | 為子(従二位) |
| 920 | ゆきとまる くさのまくらの つゆにしも われまちかほに やとるつきかな | 維貞 |
| 921 | あたらよの つきをひとりそ なかめつる おもはぬいそに なみまくらして | 公重(藤原通季男) |
| 922 | よもすから とまもるつきを まくらにて うちもねられぬ なみのおとかな | 基輔(坊門清親男) |
| 923 | とまりふね いりぬるいその なみのおとに こよひもゆめは みらくすくなし | 頼氏(藤原頼広男) |
| 924 | よをこめて たひのやとりを たつひとは くまなきつきを あけぬとやおもふ | 公重(藤原通季男) |
| 925 | ふきおろす ふしのたかねの あさあらしに そてしをれそふ うきしまかはら | 俊言 |
| 926 | やすかはと いかてかなには なかれけむ くるしきせのみ あるよとおもふに | 為兼 |
| 927 | みねのくも うらわのなみを めにかけて あらしをわくる さやのなかやま | 為兼 |
| 928 | ささのはの さやのなかやま なかきよも かりねのゆめは むすひやはする | 道家 |
| 929 | たかせやま まつのしたみち わけゆけは ゆふあらしふきて あふひともなし | 為兼 |
| 930 | あすもまた おなしみちにと ちきるかな とまりかはらぬ よはのたひひと | 聖尊法親王 |
| 931 | あまのはら やそしまかけて てるつきの みちたるしほに よふねこくなり | 公泰 |
| 932 | あしのはに あめふりかかる くらきよの いりえのふねに みやこをそおもふ | 俊兼 |
| 933 | いまむかふ かたはあかしの うらなから またはれやらぬ わかおもひかな | 尊氏 |
| 934 | うらやまし やまたのくろに みちもあれや みやこへかよふ をちのたひひと | 内侍(永福門院) |
| 935 | うみやまの おもひやられし はるけさも こゆれはやすき ものにそありける | 道全 |
| 936 | なくさめに みつつもゆかむ きみかすむ そなたのやまを ゆきなへたてそ | 寂然 |
| 937 | おもひやれ みやこはるかに おきつなみ たちへたてたる こころほそさを | 崇徳院 |
| 938 | すききつる たひのあはれを かすかすに いかてみやこの ひとにかたらむ | 後鳥羽院 |
| 939 | ゆきうつる ところところの おもかけを こころにとむる たひのみちかな | 定忠 |
| 940 | つゆにふし あらしにそてを かさねきて のやまのたひも ひかすへにけり | 公蔭 |
| 941 | とふとりの なかめのすゑも みえぬまて みやこのそらを おもひこそやれ | 後伏見院 |
| 942 | わけきつる つゆのたもとは ほしわひぬ またさととほき のへのゆふくれ | 隆親(藤原隆衡男) |
| 943 | ゆきすりの ころもにうつれ はきかはな たひのしるしと ひとにかたらむ | 経家(六条重家男) |
| 944 | いさやこら やまとへはやく しらすけの まののはきはら たをりてゆかむ | 人麿 |
| 945 | しほつやま うちこえくれは わかのれる こまそつまつく いへこふらしも | 金村 |
| 946 | さとはなれ とほからなくに くさまくら たひとしおもへは なほこひにけり | 読人不知 |
| 947 | はるはると ゆくもとまるも おいぬれは またあふことを いかかとそおもふ | 頼政 |
| 948 | はかなくも かへらむほとを ちきるかな さらぬわかれに なりもこそすれ | 道因 |
| 949 | かへるまて えそまつましき きみかゆく すゑはるかなる わかみならねは | 頼政 |
| 950 | かへるとも のちにはまたと たのむへき このみのうたて あたにもあるかな | 寂然 |
| 951 | ふるさとを こふるなみたの なかりせは なにをかたひの みにはそへまし | 登蓮 |
| 952 | ふるさとに かよふこころの みちはあれと こえてあとなき みねのしらくも | 為定(御子左二条為道男) |
| 953 | やまひめの もみちのにしき われにかせ ふるさとひとに きてもみゆへく | 有範 |
| 954 | あはれなと あひもおもはぬ ふるさとに たひねとなれは こひしかるらむ | 為家 |
| 955 | つゆなから むすふをささの かりまくら かりそめふしの いくよへぬらむ | 実雄 |
| 956 | いはしろの をかのかやねを むすふよも ゆめはみやこに かはらさりけり | 行能 |
| 957 | ふるさとに ちきりしひとも ねさめせは わかたひねをも おもひやるらむ | 為兼 |
| 958 | むすひすてて よなよなかはる たひまくら かりねのゆめの あともはかなし | 為兼 |
| 959 | たまかつま あへしまやまの ゆふつゆに たひねしかねつ なかきこのよを | 読人不知 |
| 960 | ちきりありて かかるおもひや つくはねの みねともひとの やかてこひしき | 公蔭 |
| 961 | しられしな おさふるそての なみたかは したにははやき みつのこころを | 良基(二条道平男) |
| 962 | しはしこそ そてにもつつめ なみたかは たきつこころを いかてせかまし | 教長 |
| 963 | わかこひは はつもとゆひの こむらさき いつしかふかき いろにみえつつ | 後醍醐院 |
| 964 | きのふけふ くものはたてに なかむとて みもせぬひとの おもひやはしる | 定家 |
| 965 | ものおもふと われたにしらぬ このころの あやしくつねは なかめかちなる | 光明院 |
| 966 | ひとしれぬ こころのうちの おもひゆゑ つねはなかめの ひころにもにぬ | 冷泉(花園院) |
| 967 | いはかねの こりしくやまに あらなくに いもかこころの われにうこかぬ | 公蔭 |
| 968 | ふかきえの あしのしたねよ よしさらは たたくちはてね みこもりにして | 親子(従三位源) |
| 969 | うつもるる ゆきのしたくさ いかにして つまこもれりと ひとにしらせむ | 大弐三位 |
| 970 | よそにては はなのたよりと みえなから こころのうちに こころあるものを | 貫之 |
| 971 | あをやきの かつらきやまの よそなから きみにこころを かけぬひはなし | 家隆 |
| 972 | はつしくれ おもひそめても いたつらに まきのしたはの いろそつれなき | 為兼 |
| 973 | ひとしれす おもふこころは としへても なにのかひなく なりぬへきかな | 敦忠 |
| 974 | うちたえて なかめたにせす こひすてふ けしきをひとに みせしとおもへは | 国信 |
| 975 | つらからむ ときこそあらめ あちきなく いはてこころを くたくへしやは | 重家 |
| 976 | いひいてむ ことのはもなほ しのはれて こころにこむる わかおもひかな | 後二条院 |
| 977 | いつとなく すすりにむかふ てならひよ ひとにいふへき おもひならねは | 徽安門院 |
| 978 | なみたをは もらさすとても ものおもふ こころのいろの えやはかくれむ | 直義 |
| 979 | しのひかね こころにあまる おもひなれは いはてもいろに いてぬへきかな | 新右衛門督(宣光門院) |
| 980 | しらせねは あはれもうさも またみぬに なみたまてには なにかこほるる | 公蔭 |
| 981 | ほのかなる おもかけはかり みかつきの われておもふと しらせてしかな | 師継 |
| 982 | わかそてに おほえすつきそ やとりける とふひとあらは いかかこたへむ | 実朝 |
| 983 | つきはたた むかふはかりの なかめかな こころのうちの あらぬおもひに | 祝子内親王 |
| 984 | かれねたた そのなもよしや しのふくさ おもふにまけは ひともこそしれ | 為氏 |
| 985 | ほとときす いまはさつきと なのるなり わかしのひねそ ときそともなき | 為家 |
| 986 | しのふれは ねにこそたてね さをしかの いるののつゆの けぬへきものを | 長明 |
| 987 | こえてまた こひしきひとに あふさかの せきならはこそ なをもたのまめ | 俊成女 |
| 988 | こひしなむ のちのあはれの ためはかり かくともせめて しらせてしかな | 公顕 |
| 989 | さてもわか おもふおもひよ つひにいかに なにのかひなき なかめのみして | 永福門院 |
| 990 | つらくとも つひのたのみは ありなまし あはぬためしの なきよなりせは | 頼輔 |
| 991 | しのふれと おもふおもひの あまりには いろにいてぬる ものにそありける | 嘉言 |
| 992 | わするやと しはしはかりは しのふるに こころよわきは なみたなりけり | 元真 |
| 993 | わひつつは たのめたにせよ こひしなむ のちのよまても なくさめにせむ | 俊頼(源経信男) |
| 994 | みをかへて みるみちもかな つれなさの ひとにもかかる ひとのこころか | 進子内親王 |
| 995 | おのつから わかおもひねに みるゆめや ひとはゆるさぬ ちきりなるらむ | 公重(西園寺実衡男) |
| 996 | わすられむ なをたにせめて なけかはや それもなれての のちそとおもへは | 定忠母 |
| 997 | つれもなき ひとのこころの せきもりは ゆめちまてこそ ゆるささりけれ | 少将内侍(後醍醐院) |
| 998 | つれもなき うつつをゆめに ひきかへて うれしきゆめを うつつともかな | 惟方 |
| 999 | しらせねは つれなきいろも みえぬまの うからぬひとに ものをこそおもへ | 公宗(西園寺実衡男) |
| 1000 | おもひあまり しられむとおもふ ことのはも なほひとつての なかそかなしき | 順徳院 |
| 1001 | つゆはかり たのむこころは なけれとも たれにかかれる われならなくに | 高明 |
| 1002 | とふことの はしめはけふに みゆらめと おもふこころは としそへにける | 輔親 |
| 1003 | おとにのみ きけはかひなし ほとときす ことかたらはむと おもふこころあり | 兼家 |
| 1004 | かたらはむ ひとなきさとに ほとときす かひなかるへき こゑなふるしそ | 道綱母 |
| 1005 | かくれなき にほのかよひち いまさらに あさきこころの みつからそうき | 兼氏 |
| 1006 | うめかかは しるへかほなる はるかせの たかゆくへとも なとやふきこぬ | 隆信 |
| 1007 | しらるへき ゆくへならねと うめかかに さそはれてこは いかかいとはむ | 読人不知 |
| 1008 | いろふかく そめしこころそ わすられぬ みやまのさとの うめのにほひに | 隆信 |
| 1009 | かへりにし こころのいろの あさけれは あたにそめける はなとこそみれ | 読人不知 |
| 1010 | あやしくも こころのうちそ みたれゆく ものおもふみとは なさしとおもふに | 永福門院 |
| 1011 | くやしくそ しはしひとまを ゆるしつる ととめかねける そてのなみたを | 実衡女 |
| 1012 | おほかたに なれしひころも うときかな かかるこころを おもひけるよと | 徽安門院 |
| 1013 | おもふかたに ききしひとまの ひとことよ さてもいかにと いふみちもなし | 永福門院 |
| 1014 | あちきなや ひとのうきなを たてしゆゑ わかおもひをは なきになしつる | 後伏見院 |
| 1015 | うちつけに あはれなるこそ あはれなれ ちきりならては かくやとおもへは | 花園院 |
| 1016 | おもふてふ ことはかくこそ おほえけれ またしらさりし ひとのあはれの | 徽安門院 |
| 1017 | あひおもふ こころとまては たのまねと うきなはひとも さそしのふらむ | 為忠(御子左二条為藤男) |
| 1018 | なきなそと わかこころにも こたへはや そのよのゆめの かことはかりは | 新宰相(伏見院) |
| 1019 | さてもとも とはれぬいまは またつらし ゆめなれとこそ いひしものから | 実明女 |
| 1020 | ゆめにたに みつとはいはし おのつから おもひあはする ひともこそあれ | 俊定(藤原経俊男) |
| 1021 | なきなとも ひとにはいはし それをたに つらきかなかの おもひてにして | 宗宣(北条宣時男) |
| 1022 | ゆめかなほ みたれそめぬる あさねかみ またかきやらむ すゑもしらねは | 右衛門督(永福門院) |
| 1023 | けさよなほ あやしくかはる なかめかな いかなるゆめの いかかみえつる | 進子内親王 |
| 1024 | とにかくに はれぬおもひに むきそめて うきよりさきに もののかなしき | 永福門院 |
| 1025 | われはおもひ ひとにはしひて いとはるる これをこのよの ちきりなれとや | 光厳院 |
| 1026 | ねられねは ゆめにはあらし おもかけの こころにそひて みゆるなりけり | 進子内親王 |
| 1027 | さすかいかに ひとのおもはは やすからむ つつむかうへの ゆめのあふせも | 一条(徽安門院) |
| 1028 | ことかよふ みちもさすかに なからめや たたうきなかそ しのふにはなる | 右衛門督(永福門院) |
| 1029 | をりをりに ききみることの それもみな こひしきことの すさひにそなる | 為秀 |
| 1030 | こひしさに みのうきことも わするれは つらきもひとは うれしかりけり | 俊頼(源経信男) |
| 1031 | おもはしと こころをもとく こころしも まとひまさりて こひしかるらむ | 保憲女 |
| 1032 | うつせみの ひとめをしけみ あはすして としのへぬれは いけりともなし | 読人不知 |
| 1033 | こころには もえておもへと うつせみの ひとめをしけみ いもにあはぬかも | 読人不知 |
| 1034 | ひとことを しけしといもに あはすして こころのうちに こふるこのころ | 読人不知 |
| 1035 | うつつには さらにもいはす ゆめにたに いもかたもとを まきぬとしみは | 家持 |
| 1036 | いかならむ ひのときにかも わきもこか もひきのすかた あさにけにみむ | 読人不知 |
| 1037 | かくはかり こひむとかねて しらませは いもをはみすそ あるへかりける | 読人不知 |
| 1038 | つつむなかの かさねてきかぬ ちきりこそ まつものからに たのみかたけれ | 永福門院 |
| 1039 | うれしとも ひとかたにやは なかめらるる まつよにむかふ ゆふくれのそら | 永福門院 |
| 1040 | たのましと おもふこころは こころにて くれゆくそらの またいそかるる | 冷泉(花園院) |
| 1041 | かならすと さしもたのめぬ ゆふくれを われまちかねて われそかなしき | 親子(従三位源) |
| 1042 | とはすとも さはるとせめて きかすなよ まつをたのみの ゆふくれのそら | 重能 |
| 1043 | とへかしと おもふこころの あらましに たのめぬくれそ そらにまたるる | 新宰相(伏見院) |
| 1044 | たのまねと たのめしくれは まつといはむ あはれとおもふ かたもありやと | 新宰相(伏見院) |
| 1045 | よしさらは またしとおもふ ゆふくれを またおとろかす いりあひのかね | 尊氏 |
| 1046 | くれにけり あまとふくもの ゆききにも こよひいかにと つたへてしかな | 永福門院 |
| 1047 | おのつから おもひもいては とはかりの わかあらましに まつそはかなき | 実衡女 |
| 1048 | たのまねは またぬになして みるよはの ふけゆくままに なとかかなしき | 為兼 |
| 1049 | よひのまは たれもひとめを つつめはと ふくるつらさを わすれてそまつ | 円伊 |
| 1050 | つつむなかは ひとめにさはる かたやあると ふけてしもこそ なほまたれけれ | 冬氏女 |
| 1051 | たのめすてて とはぬはさこそ やすくとも まつこころをは おもひやらなむ | 永福門院 |
| 1052 | いくゆふへ むなしきそらに とふとりの あすかならすと またやたのまむ | 後伏見院 |
| 1053 | みるもうし さすかさこそと まつくれに あすかならすの ひとのたまつさ | 進子内親王 |
| 1054 | おもかけは こころのうちに さきたちて ちきりしつきの かけそふけぬる | 冬平 |
| 1055 | ちきらぬに ひとまつなこそ をしからめ つきはかりをは みぬよはそなき | 下野(四条太皇太后宮) |
| 1056 | ふけにける まきのいたとの やすらひに つきこそいつれ ひとはつれなし | 隆祐 |
| 1057 | わすれすは よよしとひとに つけすとも つきみるたひに まつとしらなむ | 和氏 |
| 1058 | ふけぬとも たれにかいはむ ひとしれす まつよのつきの よひすくるかけ | 公宗(西園寺実衡男) |
| 1059 | まきのとを かせのならすも あちきなし ひとしれぬよの ややふくるほと | 永福門院 |
| 1060 | ひとはいさ あたしちきりの ことのはを まことかほにや まちふけぬらむ | 客子(従三位) |
| 1061 | おもひとり うらみはてても かひそなき たのむれはまた またれのみして | 伏見院 |
| 1062 | われもひとも あはれつれなき よなよなよ たのめもやます まちもよわらす | 永福門院 |
| 1063 | ふけぬれと さはるときかぬ こよひをは たのみのうちに まつもはかなし | 新右衛門督(宣光門院) |
| 1064 | ふけにけり またとはれてと むかふよの なみたににほふ ともしひのかけ | 花園院 |
| 1065 | いもまつと やまのしつくに たちぬれて そほちにけらし わかこひころも | 土御門院 |
| 1066 | ふけはてぬ たのめしをさへ わすれてや さはるとたにも おとつれもなき | 新宰相(伏見院) |
| 1067 | さらにこそ あすのちきりも たのまれね すすまぬかたの さはりとおもへは | 尊胤法親王 |
| 1068 | さのみやと われさへはては つれなきに こよひはひとに まつとしられし | 春日(進子内親王家) |
| 1069 | さはりあれは のちかならすの なくさめよ いくたひききて いくよまつらむ | 為子(従二位) |
| 1070 | しひてなほ たのみやせまし いつはりの ちきりもさすか かきりありやと | 経顕(藤原定資男) |
| 1071 | いつはりの あるよとたれも しりなから ちきりしままを たのむはかなさ | 資明 |
| 1072 | たまさかの ひとめのひまを まちえても おもふはかりは ちきりやはする | 経教 |
| 1073 | つもりける ほとをもひとに みゆはかり まつよのとこの ちりははらはし | 公宗母 |
| 1074 | おもひやる ねさめもいかか やすからむ たのめしよはの あらぬちきりは | 進子内親王 |
| 1075 | とはすなり いまよりかくや へたてゆかむ こよひはかりは さてあかすとも | 伏見院 |
| 1076 | いひしままの こよひたかはぬ こよひにて またあすならは うれしからまし | 永福門院 |
| 1077 | このくれの こころもしらて いたつらに よそにもあるか わかおもふひと | 永福門院 |
| 1078 | けふのあめよ はるるもわひし ふるもうし さはりならひし ひとをまつとて | 内侍(永福門院) |
| 1079 | わかかたの さはりをしひて うらみねは あさかりけりと つらくこそなれ | 親子(従三位源) |
| 1080 | たのめねは こぬをうしとは かこたねと かかるつきよを ひとりみよとや | 俊兼 |
| 1081 | なかなかに たのめさりせは さよころも かへすしるしは みえもしなまし | 資盛 |
| 1082 | よかれそむる ねまちのつきの つらさより はつかのかけも またやへたてむ | 為兼 |
| 1083 | むなしくて またあけぬるよ ひとよこそ けにもさはりの あるかともおもへ | 為子(従二位) |
| 1084 | さりともと けふをはまちし きのふこそ よかれになれぬ こころなりけれ | 実衡女 |
| 1085 | さりともと なほまつものを いまはとて こころよわくそ とりはなくなる | 重保 |
| 1086 | むなしくて あけつるよはの おこたりを けふやとまつに またおともなし | 進子内親王 |
| 1087 | なにとなく こよひさへこそ またれけれ あかぬきのふの こころならひに | 永福門院 |
| 1088 | とはぬかな とふへきものを いかにあれは きのふもけふも またすきぬらむ | 永福門院 |
| 1089 | はりまかた うらみてのみそ すきしかと こよひとまりぬ あふのまつはら | 顕季 |
| 1090 | いまさらに くるしさまさる あふさかを せきこえなはと なにおもひけむ | 兼氏 |
| 1091 | あひもせす あはすもあらぬ けふやさは ことありかほに なかめくらさむ | 頼政 |
| 1092 | こころをは くもゐのつきに とめなから ゆくへもしらす あくかれよとや | 隆信 |
| 1093 | ゆくへなき つきもこころし かよひなは くものよそにも あはれとやみむ | 読人不知 |
| 1094 | あふことに みをはかへむと いひしかと さてしもをしき いのちなりけり | 重家 |
| 1095 | うきなかの それをなさけに ありしよの ゆめよみきとも ひとにかたるな | 為子(従二位) |
| 1096 | いきてよの わすれかたみと なりやせむ ゆめはかりたに ぬともなきよは | 為家 |
| 1097 | あかさりし やみのうつつを かきりにて またもみさらむ ゆめそはかなき | 四条(安嘉門院) |
| 1098 | あひみつる こよひのあはれ ゆめなれな さめてはものを おもはさるへく | 内侍(永福門院) |
| 1099 | ゆめとてや かたりもせまし ひとしれす おもふもあかぬ よはのなこりを | 為子(従二位) |
| 1100 | うつつにも あははかくこそと おもひねの ゆめはさめても うれしかりけり | 為基(京極為兼猶子) |
| 1101 | まとろまぬ ときさへゆめの みえつるは こころにあまる ゆききなりけり | 為家 |
| 1102 | たましひは うつつのゆめに あくかれて みしもみえしも おもひわかれす | 四条(安嘉門院) |
| 1103 | ぬるかうちに あふとみつるも たのまれす こころのかよふ ゆめちならねは | 長舜 |
| 1104 | ききてたに みこそこかるれ かよふなる ゆめのたたちの ちかのしほかま | 為家 |
| 1105 | みをこかす ちきりはかりか いたつらに おもはぬなかの ちかのしほかま | 四条(安嘉門院) |
| 1106 | つつむなかは まれのあふよも ふけはてぬ ひとのしつまる ほとをまつまに | 一条(徽安門院) |
| 1107 | かきみたす ねくたれかみの まゆすみも うつりにけりな さよのたまくら | 実兼 |
| 1108 | あひかたき きみにあへるよ ほとときす ことときよりは いまこそなかめ | 読人不知 |
| 1109 | からあゐの やしほのころも あさなあさな なれはすれとも いやめつらしみ | 読人不知 |
| 1110 | むかふなかの つらくしもなき けしきにそ ひころのうさも いはすなりぬる | 章義門院 |
| 1111 | わかために ふかきかたには いひなせと たかさはるよの すさひなるらむ | 一条(徽安門院) |
| 1112 | あはれなり かかるひとまの ときのまも またいかならむ よにかとおもへは | 御匣(新室町院) |
| 1113 | ひとにたに しのふるなかの あかつきを たれしらせてか とりのなくらむ | 四条(安嘉門院) |
| 1114 | たまたまの こよひひとよは ゆめにして またいくつきひ こひむとすらむ | 徽安門院 |
| 1115 | わかれちを いそかすとりの こゑよりも またそらたかき つきそうれしき | 後伏見院 |
| 1116 | うかりける ひとこそあらめ あかつきの くもさへみねに なとわかるらむ | 公宗(西園寺実衡男) |
| 1117 | ふけてとふ よはののこりは すくなきを またかへるさに なほいそくらむ | 法守法親王 |
| 1118 | さてもまた いつそとたにも いひかねて むせふなみたに おきわかれぬる | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1119 | きぬきぬを いそくわかれは よふかくて またねひさしき あかつきのとこ | 永福門院 |
| 1120 | あかつきを うきものとたに しらさりき まくらさためぬ ゆめのちきりは | 客子(従三位) |
| 1121 | たまさかの よをさへわくる かたのあれや とりのねをたに きかぬわかれち | 光厳院 |
| 1122 | いてかてに またたちかへり をしむまに わかれのとくち あけすきぬなり | 進子内親王 |
| 1123 | あけぬるか またはいつかの とりのねに ひとのたのめを きくまてもなし | 親子(従三位源) |
| 1124 | てにむすふ ほとたにあかぬ やまのゐの かけはなれゆく そてのしらたま | 定家 |
| 1125 | あけぬとて なくなくかへる みちしはの つゆはわかおく ものにそありける | 頼政 |
| 1126 | またやみむ またやみさらむ とはかりに おもかけくるる けさのわかれち | 後伏見院 |
| 1127 | われならぬ ひともやしのふ かへるさの よふかきみちに あへるをくるま | 実明女 |
| 1128 | やこゑなく かけのたれをの おのれのみ なかくやひとに おもひみたれむ | 為家 |
| 1129 | なこりをは さすかにかくる たまつさに またこのくれと なとかたのめぬ | 進子内親王 |
| 1130 | そのままの ゆめのなこりの さめぬまに またおなしくは あひみてしかな | 永福門院 |
| 1131 | いつとまつ ひかすはしはし なくさむを けさわかれぬる けふそわひしき | 親子(従三位源) |
| 1132 | まれにみる ゆめのなこりは さめかたみ けさしもまさる ものをこそおもへ | 内侍(永福門院) |
| 1133 | ひとはゆき きりはまかきに たちとまり さもなかそらに なかめつるかな | 和泉式部 |
| 1134 | たまゆらに きのふのゆふへ みしものを けふのあしたは こふへきものか | 読人不知 |
| 1135 | けさこそは わかれてきつれ いつのまに おほつかなくも おもふなるらむ | 元真 |
| 1136 | いかにせむ よにいつはりの あるままに わかかねことを ひとのたのまぬ | 後二条院 |
| 1137 | よしいまは たのますとても ことのはの かはるかすゑに おもひあはせは | 道平 |
| 1138 | かきりなく ふかきちきりを きくなかに ひとにもさその なからましかは | 徽安門院 |
| 1139 | なほゆかし おもふそといふ そのうちの ふかきかきりは われはかりかと | 実明女 |
| 1140 | ひとよまして こころのそこの あはれをは われにてしらぬ おくものこるを | 花園院 |
| 1141 | なるるまの あはれにつひに ひかれきて いとひかたくそ いまはなりぬる | 永福門院 |
| 1142 | かよひけりと おもひしられし ひとつまに こころのいろの そひまさるころ | 親子(従三位源) |
| 1143 | こひうらみ きみにこころは なりはてて あらぬおもひも ませぬころかな | 宣子(従三位藤原) |
| 1144 | あはれさらは わすれてみはや あやにくに わかしたへはそ ひとはおもはぬ | 進子内親王 |
| 1145 | まさるかたの ひとにいかなる ことのはの わかきかさりし きはをいふらむ | 実明女 |
| 1146 | さのみたた あはれなるしも たのまれす かくてはひとの はてしとおもへは | 別当(花園院) |
| 1147 | うらみても おもひしらねは なかなかに なにかこころの いろをみえけむ | 高広 |
| 1148 | もらすより あたなるほとの しらるれは いひしちきりの すゑもたのます | 為理 |
| 1149 | ひとたひの あふせにかへし いのちなれは すてもをしみも きみにのみこそ | 冷泉(花園院) |
| 1150 | なにかいふ のちのよまての かねことよ ひともおもはし われもたのます | 為名 |
| 1151 | はしめより たのましすへて たのむより つらきうらみは そふとおもへは | 兵衛督(花園院) |
| 1152 | うきなから さすかにたえぬ ちきりをは なほもあはれに なしこそはせめ | 花園院 |
| 1153 | おもひけつ かきりこそあれ うきみそと しのふかうへも あまるつらさを | 儀子内親王 |
| 1154 | つらさをは うきみのとかと かこちつつ あはれをなほも さましかねぬる | 光明院 |
| 1155 | さはかりも こころととめて おもふかと うらむるにしも そふあはれかな | 冷泉(花園院) |
| 1156 | おもひけりと たのみなりての のちしもそ はかなきことも ひとよりはうき | 為兼 |
| 1157 | おもひとりし きのふのうさは よわれはや けふはまつそと またいはれぬる | 為兼 |
| 1158 | ならひあらは けにもしやとも たのままし いつはりとしも みえぬことのは | 永福門院 |
| 1159 | さらはとて たのむになれは ひとこころ およはぬきはの おほくもあるかな | 花園院 |
| 1160 | ひとよされは たれかよかるる よかれとて あはぬたえまを うしといふらむ | 一条(徽安門院) |
| 1161 | けにおもふ こころのうちは ことのはの およはぬうへも みゆらむものを | 法守法親王 |
| 1162 | かはかりも おもひけるよの あはれより われもこころを ゆるしたちぬる | 新右衛門督(宣光門院) |
| 1163 | おもふかたに よしたたすへて おしこめて さのみはひとの こころをはみし | 永福門院 |
| 1164 | うきもちきり つらきもちきり よしさらは みなあはれにや おもひなさまし | 永福門院 |
| 1165 | うきにそふ あはれにわれも みたされて ひとかたにしも えこそさためね | 進子内親王 |
| 1166 | ひとはしらし いまはとおもひ とるきはは うらみのしたに よわきあはれも | 公宗女 |
| 1167 | さきのよを おもふさへこそ うれしけれ ちきりもけふの ちきりのみかは | 有家(藤原重家男) |
| 1168 | ちきりしを たのめはつらし おもはねは なにをいのちの なくさめそなき | 為家 |
| 1169 | おしかへし あはれなるかな むくひありて うきもふたよの ちきりとおもへは | 公蔭 |
| 1170 | うきにしも あはれのそふよ これそこの のかれさりける ちきりとおもふに | 一条(花園院) |
| 1171 | おもひとけは こころつからに かへれとも たたなほひとの うきにおほゆる | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1172 | みをしらぬ おもひとひとや おもふらむ うきをはおける うへのおもひを | 教良女 |
| 1173 | われもいひき つらくはいのち あらしとは うきひとのみや いつはりはする | 為子(従二位) |
| 1174 | かきりなく うきものからに あはれなるは いつれわかみの こころなるらむ | 新宰相(伏見院) |
| 1175 | いはねとも つらしとおもふ いろやみゆる なくさめかほに ひとのうらむる | 一条(徽安門院) |
| 1176 | わひぬれは かくこそものは あはれなれ たえぬはかりの たまたまのよを | 公重(西園寺実衡男) |
| 1177 | うからぬも ましてうきにも あはれあはれ よしなかりける ひとにちきるを | 徽安門院 |
| 1178 | あはれなる ふしもさすかに ありけるよ おもひいてなき ちきりとおもへと | 徽安門院 |
| 1179 | それまては おもひいれすやと おもふひとの うらむるふしそ さてはうれしき | 光厳院 |
| 1180 | われとひと あはれこころの かはるとて なとかはつらき なにかこひしき | 儀子内親王 |
| 1181 | かねてより うらみおかはや うきにならむ こころののちは かひもあらしを | 道平 |
| 1182 | つらけれと なほこひしきよ みのほとの うきをはしらぬ ひとのならひに | 公守女 |
| 1183 | あはれしらし つねのうらみに おもなれて これをまことの かきりなりとも | 公宗女 |
| 1184 | ひとのかよふ あはれになして あはれなるよ ゆめはわかみる おもひねなれと | 一条(徽安門院) |
| 1185 | さめかたみ しはしうつつに なしかねぬ あはれなりつる ゆめのなこりを | 一条(花園院) |
| 1186 | おもかけは のこるかたみの うつつにて またみぬゆめの さむるまもなし | 公雄 |
| 1187 | おのつから ゆめちはかりの あふことを かよふこころと たのむはかなさ | 懐世 |
| 1188 | おもひつくす こころよゆきて ゆめにみゆな そをたにひとの いとひもそする | 為子(従二位) |
| 1189 | つらきをは よよのむくひと おもふにも ひとはうからて なほそこひしき | 俊兼 |
| 1190 | よよのちきり いかかむすひしと おもふたひに はしめてさらに ひとのかなしき | 光厳院 |
| 1191 | おほかたは たのむへくしも なきひとの うからぬにこそ おもひわひぬれ | 永福門院 |
| 1192 | それしもや うきみはひとに いとはれむ ふかきおもひの きはをみすとも | 兵衛督(花園院) |
| 1193 | かはりゆく きのふのあはれ けふのうらみ ひとにこころの さためなのよや | 伏見院 |
| 1194 | おちけりな われたにしらぬ なみたかな まくらぬれゆく よはのひとりね | 徽安門院 |
| 1195 | そのゆくへ きけはなみたそ まつおつる うさこひしさも おもひわかねと | 右衛門督(永福門院) |
| 1196 | おもはぬに なすこころしも いかなれや つねはなかめて なみたのみうく | 兵衛督(花園院) |
| 1197 | あはれにも うさにもおつる わかなみた さものこりある ものにそありける | 兼季 |
| 1198 | つらけれと おもひしらぬに なすものを なにとなみたの さのみおつらむ | 家親 |
| 1199 | うきふしも おもひいれしと おもふみに なにゆゑさのみ おつるなみたそ | 公直母 |
| 1200 | なみたたに おもふかほとは こほれぬよ あまりくたくる いまのこころに | 伏見院 |
| 1201 | おもひおもひ なみたとまてに なりぬるを あさくもひとの なくさむるかな | 伏見院 |
| 1202 | せめてたた おもふあたりの ことをたに おなしこころに いふひともかな | 為子(従二位) |
| 1203 | わたるせの さもさためなき なかかはよ しほのみちひる うらならなくに | 小宰相(徽安門院) |
| 1204 | ひとこころ おもひみたるる かくなはの とにもかくにも むすほほれつつ | 覚助法親王 |
| 1205 | ゆふくれは おもひみたれて くもとりの あやにこひしき ひとのおもかけ | 為成(冷泉為相男) |
| 1206 | くれなゐに そてそうつろふ こひしきや なみたのかはの いろにはあるらむ | 貫之 |
| 1207 | うらふれて ものなおもひそ あまくもの たゆたふこころ わかおもはなくに | 読人不知 |
| 1208 | こひしさの あまつみそらに みちぬれは なみたのあめは ふるにそありける | 実家(藤原公能男) |
| 1209 | あまくもの たえまたえまを ゆくつきの みらくすくなき いもにこひつつ | 公蔭 |
| 1210 | そのままに おもひあはする かたそなき あたにみしよの うたたねのゆめ | 隆教 |
| 1211 | しらさりし よふかきかせの おともせす たまくらうとき あきのこなたは | 定家 |
| 1212 | きみゆゑに おもふおもひは おほうみの なみをはそてに かけぬまもなし | 公蔭 |
| 1213 | いせのうみ なきさにひろふ たまたまも そてほすまなき ものをこそおもへ | 伏見院 |
| 1214 | こひしさに なりたつなかの なかめには おもかけならぬ くさもきもなし | 伏見院 |
| 1215 | なにとなく うちもおかれぬ たまつさよ あはれなるへき ふしはなけれと | 公宗女 |
| 1216 | おもふほとは かかしとおもふ たまつさに なほともすれは すすむことのは | 儀子内親王 |
| 1217 | なほさりに ひとはみるらむ たまつさに おもふこころの おくはのこさむ | 新右衛門督(宣光門院) |
| 1218 | かよふとて いかかたのまむ いたつらに すゑもとほらぬ みつくきのあと | 実性 |
| 1219 | ときはやま つゆももらさぬ ことのはの いろなるさまに いかてちりけむ | 読人不知 |
| 1220 | いろかへぬ ときはなりせは ことのはを かせにつけても ちらさましやは | 相模 |
| 1221 | これやさは あたちのまゆみ いまこそは おもひためたる こともかたらめ | 左近(三条院女蔵人) |
| 1222 | かさしけむ ぬしはしらたま しらねとも てにとるからに あはれとそおもふ | 師継 |
| 1223 | しらたまか なにそとたとる ひともあらは なみたのつゆを いかかこたへむ | 公相 |
| 1224 | つれつれと なかめのみする このころは そらもひとこそ こひしかるらし | 定頼 |
| 1225 | ほとふれは わすれやしぬる はるさめの ふることのみそ われはこひしき | 朝光 |
| 1226 | いととしく ぬれのみまさる ころもてに あめふることを なににかくらむ | 馬内侍 |
| 1227 | かへるかり わかことつてよ くさまくら たひはいもこそ こひしかりけれ | 貫之 |
| 1228 | くひなたに たたくおとせは まきのとを こころやりにも あけてみてまし | 和泉式部 |
| 1229 | いかにして わするるものそ わきもこに こひはまされと わすられなくに | 読人不知 |
| 1230 | おほはらの ふりにしさとに いもをおきて われいねかねつ ゆめにみえつつ | 読人不知 |
| 1231 | わきもこに あふよしもなみ するかなる ふしのたかねの もえつつかあらむ | 読人不知 |
| 1232 | よのなかは あすかかはにも ならはなれ きみとわれとか なかしたえすは | 小町 |
| 1233 | けふはもし ひともやわれを おもひいつる われもつねより ひとのこひしき | 永福門院 |
| 1234 | そらのいろ くさきをみるも またかなし いのちにかくる ものをおもへは | 進子内親王 |
| 1235 | ものおもふ こころのいろに そめられて めにみるくもも ひとやこひしき | 為兼 |
| 1236 | こひあまる なかめをひとは しりもせし われとそめなす くものゆふくれ | 花園院 |
| 1237 | いましもあれ ひとのなかめも かからしを きゆるもをしき くものひとむら | 永福門院 |
| 1238 | それをたに おもひさまさし こひしさの すすむままなる ゆふくれのそら | 伏見院 |
| 1239 | ねられねは たたつくつくと ものをおもふ こころにかはる ともしひのいろ | 新宰相(伏見院) |
| 1240 | まちすくす つきひのほとを あちきなみ たえなむとても たけからしみを | 光厳院 |
| 1241 | かくやはと おほえしきはも おほえけり すへてひとには なれてそあらまし | 教良女 |
| 1242 | いまはとて つらきになして みるひとの さてもいかにと いふしもそうき | 俊兼 |
| 1243 | こひしさも ひとのつらさも しらさりし むかしなからの わかみともかな | 為子(従二位) |
| 1244 | ききそふる きのふにけふの うきふしに さめぬあはれも あやにくにして | 花園院 |
| 1245 | うらみたらは さこそあらめと おもふかたに おもひむせひて すくるころかな | 公蔭 |
| 1246 | いととこそ たのみところも なくならめ うきにはしはし おもひさためし | 伏見院 |
| 1247 | したふかたの すすむにつけて いとひまさる ひととわれとの なかそはるけき | 後伏見院 |
| 1248 | さためなき ひとのこころの いかなれは うきひとかたに かはりゆくらむ | 寛尊法親王 |
| 1249 | すへてこの なみたのひまや いつならむ あはれはあはれ うきはうしとて | 儀子内親王 |
| 1250 | おもひとれは さすかあはれも そふものを つねのうらみの なみたとやみる | 公蔭 |
| 1251 | つねはたた ひとりなかめて おほかたの ひとにさへこそ うとくなりゆけ | 花園院 |
| 1252 | いふきはは およはぬうさの そこふかみ あまるなみたを ことのはにして | 光厳院 |
| 1253 | おほかたの よはやすけなし ひとはうし わかみいつくに しはしおかまし | 永福門院 |
| 1254 | そことなき うらみそつねに おもほゆる いかにそひとの あらすなるころ | 花園院 |
| 1255 | かはりたつ ひとのこころの いろやなに うらみむとすれは そのふしとなき | 永福門院 |
| 1256 | これやさは かはるなるらむ そのふしと みえぬものから ありしにもにぬ | 儀子内親王 |
| 1257 | かはりたつ すへてうらみの そのうへに うさあはれさは かりのふしふし | 花園院 |
| 1258 | とはぬまを わすれすなから ほとふるや とほさかるへき はしめなるらむ | 恒明親王 |
| 1259 | くれなはと たのむるよはの ふけしより むなしくあくる うさそかさなる | 大納言(昭訓門院) |
| 1260 | かはりゆく こころとみゆる そのうへの なけのなさけよ よしやいつまて | 覚誉法親王 |
| 1261 | かはるかと ひとにこころを とめてみれは はかなきふしも ありしにそにぬ | 内侍(永福門院) |
| 1262 | うさはまして あはれとおもふ なかにしも かはるこころの いろはみゆるを | 実明女 |
| 1263 | ひとすちに うきよりもなほ うかりけり ありしにかはる ひとのなさけは | 右衛門督(永福門院) |
| 1264 | かはるてふ ひとよけにこそ かかりけれ きのふみさりし けふのつらさは | 儀子内親王 |
| 1265 | うらみはてむ いまはよしやと おもふより こころよわくそ またあはれなる | 中納言典侍(後伏見院) |
| 1266 | ひとはうく われのみさめぬ あはれにて つひのちきりの はてそゆかしき | 新右衛門督(宣光門院) |
| 1267 | せめてわか おもふほとこそ かたくとも かけよやつねの なさけはかりは | 実煕 |
| 1268 | いかにせむ つねのつらさは つらさにて いまひとしほの さらにそふころ | 俊冬 |
| 1269 | つらしとも なほよのつねの うらみかは いつくにのこる こころよわさそ | 公宗母 |
| 1270 | つらしとも なかなかなれは いひもせて うらみけりとは いかてしらせむ | 進子内親王 |
| 1271 | おもひとる たたこのままの つらさにて またはあはれに かへらすもかな | 儀子内親王 |
| 1272 | あははやの たたひとかたを おもひにて わひぬるはては うさもしられす | 俊兼 |
| 1273 | あはれみせし ひとやはあらぬ うきやたれ われはかはらぬ もとのみにして | 冷泉(花園院) |
| 1274 | ひとこそあれ われさへしひて わすれなは なこりなからむ それもかなしき | 花園院 |
| 1275 | ひとしれす われのみよわき こころかな このひとふしそ かきりとおもふに | 花園院 |
| 1276 | われのみは うさをもしひて しのふとも かはるかうへの ひとはいつまて | 右衛門督(永福門院) |
| 1277 | うきにいとふ またおなしよを をしむとて いのちひとつを さためかねぬる | 徽安門院 |
| 1278 | いかにせむ くものゆくかた かせのおと まちなれしよに にたるゆふへを | 新大納言(延政門院) |
| 1279 | たなはたの ちきれるあきも きにけるよ いつとさためぬ われそわひしき | 高明 |
| 1280 | まれにあふと いふたなはたも あまのかは わたらぬとしは あらしとそおもふ | 貫之 |
| 1281 | さらにこそ わすれしことの おもほゆれ けふほしあひの そらになかめて | 後伏見院 |
| 1282 | はれすのみ こころにものを おもふまに はきのはなさく あきもきにけり | 永福門院 |
| 1283 | あきなれは はきののもせに おくつゆの ひるまにさへも こひしきやなそ | 光孝天皇 |
| 1284 | はきのはの いろつくあきを いたつらに あまたかそへて すくしつるかな | 貫之 |
| 1285 | わかやとの あきのはきさく ゆふかけに いまもみてしか きみかすかたを | 読人不知 |
| 1286 | きみにこひ うらふれをれは あきかせに なひくあさちの つゆそけぬへき | 実朝 |
| 1287 | ものおもふに あはれなるかと われならぬ ひとにこよひの つきをとははや | 和泉式部 |
| 1288 | なかむらむ おなしつきをは みるものを かはすにかよふ こころなりせは | 小侍従(太皇太后宮) |
| 1289 | こよひわか とはれましやは つきをみて かよふこころの そらにしるくは | 雅通(源雅定男) |
| 1290 | おもふひと こよひのつきを いかにみるや つねにしもあらぬ いろにかなしき | 伏見院 |
| 1291 | さらさりし そのよはつきを いかかみし むかへはひとの うさになりゆく | 新宰相(伏見院) |
| 1292 | あはれいかに おもふこころの あらさらむ なかめはつきに いまかよふとも | 公蔭 |
| 1293 | みるからに こひしさをのみ もよほして ひとをさそはぬ つきもうらめし | 為相 |
| 1294 | かはらぬも なかなかつらし もろともに みしよのつきは おなしおもかけ | 隆清 |
| 1295 | おもひいつる こころやきみは なかるらむ おなしありあけの つきをみるとも | 行尊 |
| 1296 | うきものと うらみてもなほ かなしきは おもかけさらぬ ありあけのつき | 通雄 |
| 1297 | われとこそ なかめなれにし やまのはに それもかたみの ありあけのつき | 良経(九条兼実男) |
| 1298 | きみこふと しなえうらふれ わかをれは あきかせふきて つきかたふきぬ | 読人不知 |
| 1299 | いもをおもひ いのねられぬに あかつきの あさきりかくれ かりそなくなる | 読人不知 |
| 1300 | このくれに わかこひをれは さむきかり なきつつゆけは いもかりかゆく | 伏見院 |
| 1301 | あはれまた ゆめたにみえて あけやせむ ねぬよのとこは おもかけにして | 内侍(永福門院) |
| 1302 | わすれむと おもふはおのか こころにて たかおとろかす なみたなるらむ | 順徳院 |
| 1303 | うしとても たれにかとはむ つれなくて かはるこころを さらはをしへよ | 定家 |
| 1304 | ひとにうつる こころをたにも をしへおけ さらはなくさむ かたもありやと | 兵衛督(花園院) |
| 1305 | われなから われにかなはぬ こころなれや わすれむとすれは しひてこひしき | 定宗(藤原家親男) |
| 1306 | うきにならふ こころかあはれ たまさかの ひとのなさけの いまはうれしき | 親行(藤原家親男) |
| 1307 | わかこころ うらみにむきて うらみはてよ あはれになれは しのひかたきを | 為子(従二位) |
| 1308 | かくてしも おもひやよわる とはかりに うきかうれしき かたもありけり | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1309 | うきかうへの なほもなさけの うちにこそ きみにいのちを すててきかれめ | 実明女 |
| 1310 | うきことを いかになへてに おもひなさむ うれしくとても いくほとのよに | 伏見院 |
| 1311 | うきもよし むくひなるらむと おもへとも みえぬよよには なくさまはこそ | 儀子内親王 |
| 1312 | ひとよりは みこそうけれと おもひなすに それしもものの かなしきものを | 新宰相(伏見院) |
| 1313 | おなしよに いくたひものを おもへとて つらきにかへる こころなるらむ | 為定(御子左二条為道男) |
| 1314 | うきゆゑも かくやはとおもふ ふしふしよ われこそひとを なほたのみけれ | 祝子内親王 |
| 1315 | つらさをも おもふはかりは えそいはぬ かこともとむる ひとのけしきに | 公蔭 |
| 1316 | ひきかへて かはるしもうし おもふいろを さのみはひとの なにかみせけむ | 直義 |
| 1317 | かはかりの うさならさりし ころたにも をりをりませし そこのうらみを | 兵衛督(花園院) |
| 1318 | たえねはと おもふもかなし ささかにの いとはれなから かかるちきりは | 為家 |
| 1319 | ひとをひとの おもふかきりを みるにしも くらふとなしに みそあはれなる | 徽安門院 |
| 1320 | すへてたた ひとになれしと こりぬるも いつのためそと あはれなるかな | 永福門院 |
| 1321 | わひつつは ひとにまかせて うらみぬを うきをもしらぬ こころとやおもふ | 公宗(西園寺実衡男) |
| 1322 | なほしはし うきをはうきに なしはてし かはるこころの かはりもそする | 宗秀(藤原宗泰男) |
| 1323 | うきなかよ うらみのかすは つもれとも なさけとおもふ ひとふしもなし | 尊氏 |
| 1324 | いまははやと おもひしことも いくへたて へたつるはては ことのはもなし | 永福門院 |
| 1325 | なほしはし このひとふしは うらみはてし なしかとおもふ なさけもそみる | 永福門院 |
| 1326 | うきふしは かすにもあらす しつたまき くりかへしては なほそこひしき | 後嵯峨院 |
| 1327 | つらかりし きみにまさりて うきものは おのかいのちの なかきなりけり | 伊尹 |
| 1328 | こひしとも なにかいまはと おもへとも たたこのくれを しらせてしかな | 光厳院 |
| 1329 | まよひそめし ちきりおもふか つらきしも ひとにあはれの よよにかへるよ | 徽安門院 |
| 1330 | たちかへり これもゆめにて またたえは ありしにまさる ものやおもはむ | 永福門院 |
| 1331 | おのつから あふよありやと まつほとに おもひしよりも なからへにける | 公清室 |
| 1332 | なからへは おもひいててや とはるると いけるかひなき みををしむかな | 師直 |
| 1333 | なからへて あらはとたのむ いのちさへ こひよわるみは あすもしられす | 雅孝 |
| 1334 | なかなかに おもひたえなむと おもふこそ こひしきよりも くるしかりけれ | 清輔 |
| 1335 | しなはやと おもふさへこそ はかなけれ ひとのつらさは このよのみかは | 大輔(殷富門院) |
| 1336 | ひとこころ うきにたへたる いのちこそ つれなきよりも つれなかりけれ | 実家(藤原公能男) |
| 1337 | たまのをを かたをによりて ををよわみ みたるるときに こひさらめやも | 読人不知 |
| 1338 | たまかつら かけぬときなく こふれとも いかにかいもに あふときもなき | 読人不知 |
| 1339 | ますらをの うつしこころも いまはなし よるひるいはす こひしわたれは | 読人不知 |
| 1340 | つゆにたに こころおかるな なつはきの したはのいろよ それならすとも | 道信 |
| 1341 | すむとしも なくてたえにし わすれみつ なにゆゑさても おもひいてけむ | 読人不知 |
| 1342 | ひともみな むすふなれとも わすれみつ われのみあかぬ ここちこそすれ | 頼政 |
| 1343 | いかてわれ ひとをわすれむ わすれゆく ひとこそかくは こひしかりけれ | 二条院 |
| 1344 | ほとなくそ のこるかたえに うつしける ちりにしはなに そめしこころを | 為子(従二位) |
| 1345 | さらはとて うらみをやめて みるなかの うきつまつまに たのみかねぬる | 永福門院 |
| 1346 | みるひとも ものをおもはぬ さまなれは こころのうちを たれにうれへむ | 永福門院 |
| 1347 | なけくらむ こふらむとたに おもひいてよ ひとにはひとの うつりはつとも | 公宗母 |
| 1348 | うしとのみ われさへすつる みのはては なほたれゆゑと かこたすもなし | 実衡女 |
| 1349 | いとふしも かこちかほにや おもひなさむ つれなしとたに かけしいのちを | 伏見院 |
| 1350 | なににかかる いのちそされは つれもなく われやはをしむ ひともいとふを | 重資 |
| 1351 | ひともさそ つれなきかたに おもふらむ したふににたる いのちなかさを | 公宗母 |
| 1352 | わすらるる わかみもひとも あらぬよに たかおもかけの なほのこるらむ | 資名 |
| 1353 | われさへに こころにうとき あはれさよ なれしちきりの なこりともなく | 祝子内親王 |
| 1354 | うきなから おもひいてける をりをりや ゆめにもひとの みえしなるらむ | 公宗母 |
| 1355 | またかよふ おなしゆめちも あるものを ありしうつつそ うたてはかなき | 為秀 |
| 1356 | おもひさます みをしるかたの ことわりも あまりうきには またわすれぬる | 為子(従二位) |
| 1357 | おもひつらね さもうかりけると おもふのちに またこひしきそ ことわりもなき | 伏見院 |
| 1358 | ためしなく つらきかきりや このきはと おもひしうへの うさもありけり | 伏見院 |
| 1359 | おのつから おもひいつとも いまはたた うきかたのみや わすれさるらむ | 小宰相(徽安門院) |
| 1360 | なみたこそ おのかものから あはれなれ そをたにひとの ゆくへとおもへは | 良基(二条道平男) |
| 1361 | あふことは たえぬるなかに おなしよの ちきりはかりそ ありてかひなき | 直義 |
| 1362 | ひとこころ うきあまりには おほかたの よをさへかけて いとひたちぬる | 盛親 |
| 1363 | こひしなむ みをもあはれと たれかいはむ いふへきひとは つらきよなれは | 実衡女 |
| 1364 | おもふかたへ せめてはなひけ こひしなむ わかよののちの けふりなりとも | 恒明親王 |
| 1365 | いとひをしみ われのみみをは うれふれと こふなるはてを しるひともなし | 永福門院 |
| 1366 | さまさまの わかなくさめも ことつきて いまはとよわる ほとそかなしき | 永福門院 |
| 1367 | いくほとと おもふあはれも またかなし ひとのうきよを われもおもへは | 右衛門督(永福門院) |
| 1368 | まちなれし むかしににたる くものいろよ あらぬなかめの くれそかなしき | 朔平門院 |
| 1369 | つきのよは くものゆふへも みなかなし そのよにあはぬ ときしなけれは | 永福門院 |
| 1370 | わすらるる そてにはくもれ よはのつき みしよににたる かけもうらめし | 邦省親王 |
| 1371 | とひこかし またおなしよの つきをみて かかるいのちに のこるちきりを | 定家 |
| 1372 | そなたより ふきくるかせの つてにたに なさけをかくる おとつれそなき | 顕氏(六条顕家男) |
| 1373 | あふことは くちきのはしの たえたえに かよふはかりの みちたにもなし | 朝定 |
| 1374 | わひはつる のちはかたみと しのふかな うかりしままの ありあけのつき | 隆朝 |
| 1375 | おもひたえ またみるましき ゆめにしも のこるなこりの さめかたきかな | 家親 |
| 1376 | しらさりし ふかきかきりは うつりはつる ひとにてひとの みえけるものを | 光厳院 |
| 1377 | おとせすは おともやすると まつほとに たえはたえよと おもひけるかな | 惟方 |
| 1378 | つらからむ ひとをもなにか うらむへき みつからたにも いとはしきみを | 相摸 |
| 1379 | われなから われからそとは しりなから いまひとたひは ひとをうらみむ | 読人不知 |
| 1380 | わすれぬと きかはそわれも わするへき おなしこころに ちきりこしかは | 相如(藤原相信男) |
| 1381 | ゆめにたに みえはこそあらめ かくはかり みえすてあるは こひてしねとか | 家持 |
| 1382 | きみにあはて ひさしくなりぬ たまのをの なかきいのちの をしけくもなし | 読人不知 |
| 1383 | しきたへの まくらせしひと こととへや そのまくらには こけおひにけり | 人麿 |
| 1384 | いまよりは あひもおもはし すきにける としつきさへに ねたくもあるかな | 花山院 |
| 1385 | おもふといふ すきにしみたに うかりしを そふるつらさを おもひこそやれ | 読人不知 |
| 1386 | うらむとも こふともよしや わすらるる みをあるものと ひとにきかれし | 実衡女 |
| 1387 | つひにさても うらみのうちに すきにしを おもひいつるそ おもひいてもなき | 永福門院 |
| 1388 | とりのゆく ゆふへのそらよ そのよには われもいそきし かたはさためき | 伏見院 |
| 1389 | なほもよに あるやとかくる ひとつてよ うきみのうさを さらにしれとや | 伏見院 |
| 1390 | はかなくて たえにしひとの うきよりも ものわすれせぬ みをそうらむる | 肥後(京極前関白家) |
| 1391 | あかさりし にほひのこれる さむしろは ひとりぬるよも おきうかりけり | 大輔(殷富門院) |
| 1392 | しられしな うきみかくれの あやめくさ われのみなかき ねにはなくとも | 左京大夫(永陽門院) |
| 1393 | おもかけの とまるなこりよ それたにも ひとのゆるせる かたみならぬを | 伏見院 |
| 1394 | よそなりし そのよにひとは かへれとも みはあらためぬ ものをこそおもへ | 永福門院 |
| 1395 | うらみすは ひともなさけや のこさまし みをしりけりと おもふあはれに | 善成 |
| 1396 | うらみしを わかうきふしに なしやはつる それよりたえし なかそとおもへは | 宗光 |
| 1397 | かくそありし そのよまてはの あはれより さらになみたも ふるきたまつさ | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1398 | ひとのすてし あはれをひとり みにとめて なけきのこれる はてそひさしき | 永福門院 |
| 1399 | おのつから とひもとはれも ひとつての ことのはのみを きくまてにして | 新宰相(伏見院) |
| 1400 | おもひくたす うさもあはれも いくうつり よはあらぬよの みはもとのみに | 伏見院 |
| 1401 | いまはたた みすしらさりし いにしへに ひとをもみをも おもひなさはや | 公顕室 |
| 1402 | うきなから みをもいとはし よのなかに あれはそひとを よそにてもみる | 隆信 |
| 1403 | たかちきり たかうらみにか かはるらむ みはあらぬよの ふるきゆふくれ | 為相 |
| 1404 | たのみありて まちしよまての こひしさよ それもむかしの いまのゆふくれ | 為子(従二位) |
| 1405 | つねよりも あはれなりしを かきりにて このよなからは けにさてそかし | 永福門院 |
| 1406 | わひつつは おなしよにたにと おもふみの さらぬわかれに なりやはてなむ | 家長(源時長男) |
| 1407 | なほさりの あはれもひとの かくはかり あひみしときに きえなましかは | 崇徳院 |
| 1408 | おのつから おもひやいつる とはかりの わかなくさめも よそのとしつき | 宣子(従三位藤原) |
| 1409 | わすれしの ひとのたのめは かひなくて いけるはかりの としつきそうき | 為氏 |
| 1410 | あたらしき としのはしめの うれしきは ふるきひととち あへるなりけり | 兼輔 |
| 1411 | はるきぬと おもふはかりの しるしには こころのうちそ のとかなりける | 顕輔 |
| 1412 | かすますは はるともえやは しらとりの とはやままつに ゆきはふりつつ | 頼重 |
| 1413 | みるままに のきはのやまそ かすみゆく こころにしらぬ はるやきぬらむ | 内侍(永福門院) |
| 1414 | としことに はるのわするる やとなれは うくひすのねも よきてきこえす | 元輔(清原治光男) |
| 1415 | わかやとを とふとはなしに はるのきて にはにあとある ゆきのむらきえ | 夢窓 |
| 1416 | おのつから なほゆふかけて かみやまの たまくしのはに のこるしらゆき | 為家 |
| 1417 | はつくさは したにもゆれと かたをかの おとろかうへの ゆきはけなくに | 重時 |
| 1418 | くらゐやま むすほほれつる たにみつは このはるかせに とけにけらしな | 清輔 |
| 1419 | くらゐやま はるまちえたる たにみつの とくるこころは くみてしらなむ | 隆信 |
| 1420 | ゆきかかる そとものうめは おそけれと まつはるつくる うくひすのこゑ | 直宣 |
| 1421 | よよへても あかぬいろかは のこりけり はるやむかしの やとのうめかえ | 範憲 |
| 1422 | わすれしな やとはむかしに あとふりて かはらぬのきに にほふうめかえ | 内侍(永福門院) |
| 1423 | くちのこる ふるきのきはの うめかえも またとはるへき はるをまつらし | 為世(御子左藤原為氏男) |
| 1424 | はるかせの こころのままに さそへとも つきぬはうめの にほひなりけり | 教兼 |
| 1425 | のきちかき うめのにほひも ふかきよの ねやもるつきに かをるはるかせ | 久時 |
| 1426 | うめのはな うつるにほひは かはらねと あらぬうきよに すみそめのそて | 家親 |
| 1427 | あはれにも おのれうけてや かすむらむ たかなすときの はるならなくに | 伏見院 |
| 1428 | かすみにほふ ゆふひのかけは のとかにて くもにいろある やまのはのまつ | 花園院 |
| 1429 | たちかへり むかしのはるの こひしきは かすみをわけし かものあけほの | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1430 | よさのうみ かすみわたれる あけかたに おきこくふねの ゆくへしらすも | 長方 |
| 1431 | こころありて みるとしもなき なにはえの はるのけしきは をしくもあるかな | 寂然 |
| 1432 | しらみゆく かすみのうへの よこくもに ありあけほそき やまのはのそら | 道良女 |
| 1433 | しののめの かすみもふかき やまのはに のこるともなき ありあけのつき | 頼春 |
| 1434 | しののめの ややあけすくる やまのはに かすみのこりて くもそわかるる | 為子(従二位) |
| 1435 | みぬよまて おもひのこさぬ なかめより むかしにかすむ はるのあけほの | 良経(九条兼実男) |
| 1436 | おもひいては おなしなかめに かへるまて こころにのこれ はるのあけほの | 慈円 |
| 1437 | おもふこと たれにのこして なかめおかむ こころにあまる はるのあけほの | 定家 |
| 1438 | くれぬとて なかめすつへき なこりかは かすめるすゑの はるのやまのは | 為兼 |
| 1439 | ふしみやま あらたのおもの すゑはれて かすまぬしもそ はるのゆふくれ | 伏見院 |
| 1440 | ふみわくる ゆきまにいろは みえそめて もえこそやらね みちのしはくさ | 為藤 |
| 1441 | いまはよに ありてものうき みのほとを のへのわらひの をりをりそしる | 四条(安嘉門院) |
| 1442 | かすみたつ みねのさわらひ これはかり をりしりかほの やともはかなし | 定家 |
| 1443 | たらちねの あとやむかしに あれなまし おとろのみちの はるにあはすは | 家隆 |
| 1444 | はるくさは またうらわかき をかのへの をささかくれに ききすなくなり | 慈成 |
| 1445 | おもひたつ みちのしるへか よふことり ふかきやまへに ひとさそふなり | 定家 |
| 1446 | うつしうゑし いろかもしるき うめのはな きみにそわきて みすへかりける | 読人不知 |
| 1447 | うつしうゑし やとのうめとも みえぬかな あるしからにそ はなもさきける | 経盛 |
| 1448 | おもふこと はるともみには おもはぬに ときしりかほに さけるはなかな | 赤染衛門 |
| 1449 | かくこそは はるまつうめは さきにけれ たとへむかたも なきわかみかな | 行宗 |
| 1450 | やへさくら ひらくるほとを たのまなむ おいきもはるに あはぬものかは | 崇徳院 |
| 1451 | ときわかぬ きみかはるとや たちはなの かけもさくらに なほうつるらむ | 為兼 |
| 1452 | おもひやれ きみかめくみの ときにあひて みにあまりぬる はなのひかりを | 実泰 |
| 1453 | はなにあかて つひにきえなは やまさくら あたりをさらぬ かすみとならむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1454 | たつねつる はなはかきりも なかりけり なほやまふかく かかるしらくも | 公朝 |
| 1455 | よしのやま はなのためにも たつねはや またわけそめぬ すすのしたみち | 覚誉法親王 |
| 1456 | はなとりの なさけはうへの すさひにて こころのうちの はるそものうき | 伏見院 |
| 1457 | はなとりに なほあくかるる こころかな おいのはるとも みをはおもはて | 為相 |
| 1458 | ときしあれは はなうくひすの なさけをも ほかにたつねぬ はるのやまさと | 憲淳 |
| 1459 | はなのいろの むかしなからに みえつれは ひとのやととも おもほえぬかな | 伊勢 |
| 1460 | はなゆゑに みゆきふりにし わたりとは おもひやいつる しらかはのみつ | 惟規 |
| 1461 | しめのうちは みをもくたかす さくらはな をしむこころを かみにまかせて | 中将(式子内親王家) |
| 1462 | しめのほかも はなとしいはむ はなはみな かみにまかせて ちらさすもかな | 右京大夫(建礼門院) |
| 1463 | はるかせの いはねのさくら ふくたひに なみのはなちる あさくまのみや | 定忠 |
| 1464 | よそにのみ おもふくもゐの はななれは おもかけならて みえはこそあらめ | 頼政 |
| 1465 | おもはさりし みこそくもゐの よそならめ なれにしはなは わすれしもせし | 読人不知 |
| 1466 | おもひいつや なれしくもゐの さくらはな みしひとかすに われをありきと | 三河内侍(二条院) |
| 1467 | わすれめや むかしみはしの さくらはな いまはくもゐの よそのおもかけ | 公雄 |
| 1468 | めつらしき みとりのそても くものうへの はなにいろそふ はるのひとしほ | 為兼 |
| 1469 | うもれきと なりはてぬれと やまさくら をしむこころは くちすもあるかな | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1470 | そてふれし はるはむかしに へたてきて はなにそうとき こけのころもて | 兼行 |
| 1471 | たつぬとも おもはていりし おくやまの いほもるはなを ひとりこそみれ | 俊成女 |
| 1472 | よのうさは いつくもはなに なくさめは よしやよしのの おくもたつねし | 長舜 |
| 1473 | このもとに すみけるあとを みつるかな なちのたかねの はなをたつねて | 西行 |
| 1474 | ここのそち あまりおいぬる みにもなほ はなにあかぬは こころなりけり | 氏成 |
| 1475 | またはよも みはななそちの はるふりて はなもことしや かきりとそみる | 内侍(永福門院) |
| 1476 | ひともみも またこむはるも しらぬよに かすむくもちを へたてすもかな | 花園院 |
| 1477 | ときすきし ふるきのさくら いまはよに まつへきはなの はるもたのます | 伏見院 |
| 1478 | ときしらぬ やとののきはの はなさかり きみたにとへな またたれをかは | 永福門院 |
| 1479 | はるうとき みやまかくれの なかめゆゑ とふへきはなの ころもわすれて | 花園院 |
| 1480 | あちきなく はるはいのちの をしきかな はなそこのよの ほたしなりける | 和泉式部 |
| 1481 | かせふけは まさらぬみつも いはこえて たきつかはせは はなのしらなみ | 如浄 |
| 1482 | やまふかく なほわけいりて たつぬれは かせにしられぬ はなもありけり | 貞行(源) |
| 1483 | ちるはなを せめてたもとに ふきとめよ そをたにかせの なさけとおもはむ | 貞世 |
| 1484 | ちるまてに ひともとひこぬ このもとは うらみやつもる はなのしらゆき | 親清女 |
| 1485 | たまつさも ことつててまし はるのかり わかふるさとに かへるとおもはは | 和義 |
| 1486 | さひしさは むかしよりなほ まさりけり わかみふりぬる やとのはるさめ | 貞泰 |
| 1487 | はるといへは むかしたにこそ かすみしか おいのたもとに やとるつきかけ | 高国 |
| 1488 | おほろにも むかしのかけは なかりけり としたけてみる はるのよのつき | 家隆 |
| 1489 | ときわかぬ なみたにそては おもなれて かすむもしらぬ はるのよのつき | 土御門院 |
| 1490 | かくしつつ つもれはをしき はるのひを のとけきものと なにおもふらむ | 隆信 |
| 1491 | こころうつす なさけよこれも ゆめなれや はなうくひすの ひとときのはる | 徽安門院 |
| 1492 | かけうつす まつもこたかき はるのいけに みなそこかけて にほふふちなみ | 公守 |
| 1493 | そこきよき いけのみきはの まつかえに かけまてなひく はるのふちなみ | 実超 |
| 1494 | やまふきの はなのしからみ かくれとも はるはとまらぬ ゐてのたまかは | 長通女 |
| 1495 | なほさりの ことはのはなの あらましを まつとせしまに はるもくれぬる | 左京大夫(永陽門院) |
| 1496 | さらぬたに こころほそきを ささかにの のきにいとひく ゆふくれのそら | 慈円 |
| 1497 | あつまやの まやののきはに あめすきて つゆぬきとむる ささかにのいと | 基平(近衛兼経男) |
| 1498 | みあれきに ゆふしてかけし かみやまの すそののあふひ いつかわすれむ | 氏久 |
| 1499 | みやこには またしきほとの ほとときす ふかきやまちを たつねてそきく | 重成 |
| 1500 | たかためも つれなかりけり ほとときす ききつとかたる ひとしなけれは | 為連 |
| 1501 | ほとときす なくへきころと おもふより くもになかめぬ ゆふくれそなき | 朝元 |
| 1502 | まちえても おいはかひなし ほとときす おなしはつねも かすかにそきく | 忠源 |
| 1503 | さこそけに しのひねならめ ほとときす くらきあまよの くもになくらむ | 行信 |
| 1504 | あまくもの ゆふゐるみねの ほとときす よそになくねは きくかひもなし | 景綱 |
| 1505 | たつねいる みやまかくれの ほとときす うきよのほかの ことかたらなむ | 宗経(平経親男) |
| 1506 | あつさゆみ ためらふほとに つきかけの いるをのみみて かへりぬるかな | 読人不知 |
| 1507 | けふとても あやめわくへき みならぬに なににかけてか ねのなかるらむ | 客子(従三位) |
| 1508 | たちはなの かをりすすしく かせたちて のきはにはるる ゆふくれのあめ | 兼行女 |
| 1509 | ゆふかけて けふこそいそけ さなへとる みとしろをたの かみのみやひと | 成実(祝部成村男) |
| 1510 | まつかけの みつせきいれて すみよしの きしのうへたに さなへとるなり | 宗長(安倍) |
| 1511 | はれまなき こころのうちの たくひとや そらもかきくらす さみたれのころ | 教兼 |
| 1512 | みかくれて しけみはみえぬ さみたれに うきてのこれる よとのかりこも | 国夏 |
| 1513 | ほさてけふ いくかになりぬ あまころも たみののしまの さみたれのころ | 重茂 |
| 1514 | いましかも ゆふたちすらし あしひきの やまのはかくす くものひとむら | 顕氏(細川頼貞男) |
| 1515 | ふしのねは はれゆくそらに あらはれて すそのにくたる ゆふたちのくも | 光吉 |
| 1516 | なつくさの ことしけきよに みたされて こころのすゑは みちもとほらす | 伏見院 |
| 1517 | あめそそく そとものましは かせすきて なつをわするる やまのゆふかけ | 雅有 |
| 1518 | むらさめは はれゆくあとの やまかけに つゆふきおとす かせのすすしさ | 読人不知 |
| 1519 | やまもとに ひかけおよはぬ こかくれの みつのあたりそ なつにしられぬ | 貞頼 |
| 1520 | ふけにけり またうたたねに みるつきの かけもすたれに とほくなりゆく | 儀子内親王 |
| 1521 | ますらをは しかまつことの あれはこそ しけきなけきも たへしのふらめ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1522 | さつきやみ ともしにむかふ しかはかり あふもあはぬも あはれよのなか | 為家 |
| 1523 | あきちかき くさのしけみに かせたちて ゆふひすすしき もりのしたかけ | 基輔(坊門清親男) |
| 1524 | こかけゆく いはねのしみつ そこきよみ うつるみとりの いろそすすしき | 貞懐 |
| 1525 | ひとむらの くもふきおくる やまかせに はれてもすすし ゆふたちのあと | 秀治 |
| 1526 | こころあらは まとのほたるも みをてらせ あつむるひとの かすならすとも | 光吉 |
| 1527 | いはまつたふ いつみのこゑも さよふけて こころをあらふ とこのすすしさ | 貞空 |
| 1528 | うゑてみし まかきはのへと あれはてて あさちにましる とこなつのはな | 隆信 |
| 1529 | こけころも そてのしつくを おきなから ことしもとりつ くさのうへのつゆ | 実兼 |
| 1530 | あまのかは とわたるふねの みなれさを さしてひとよと なとちきりけむ | 秀行 |
| 1531 | はつあきは またなかからぬ よはなれは あくるやをしき ほしあひのそら | 師冬 |
| 1532 | もちわふる みをもこころの あきかせに おきところなき そてのしらつゆ | 慶政 |
| 1533 | しられすも ゆふへのつゆの おきやそふ にはのこはきの すゑそかたふく | 只帰 |
| 1534 | おほかたの あきのなかめも わきてなほ やまとみつとの ゆふくれのいろ | 久明親王 |
| 1535 | ものにふれて なせるあはれは かすならす たたそのままの あきのゆふくれ | 貞広 |
| 1536 | ひかけのこる まかきのくさに なきそめて くるるをいそく きりきりすかな | 全成 |
| 1537 | なれてきく おいのまくらの きりきりす なからむあとの あはれをもとへ | 円伊 |
| 1538 | ゆふまくれ すかるなくのの かせのおとに ことそともなく ものそかなしき | 重保 |
| 1539 | かすかのに あきなくしかも しるへせよ をしへしみちの うつもるるみを | 為相 |
| 1540 | しかのねを いりあひのかねに ふきませて おのれこゑなき みねのまつかせ | 順徳院 |
| 1541 | はるかなる かとたのすゑは やまたえて いなはにかかる いりひをそみる | 伏見院 |
| 1542 | まつのおとを ことにしらふる あきかせは たきのいとをや すけてひくらむ | 貫之 |
| 1543 | みつあをき ふもとのいりえ きりはれて やまちあきなる くものかけはし | 良経(九条兼実男) |
| 1544 | いりひさす うらよりをちの まつはらに きりふきかくる あきのしほかせ | 潤為 |
| 1545 | あきかせに うきたつくもは まとへとも のとかにわたる かりのひとつら | 尊氏 |
| 1546 | はれそむる みねのあさきり ひまみえて やまのはわたる かりのひとつら | 頼清 |
| 1547 | ほにいつる あきのいなはの くもまより やまもとみえて わたるかりかね | 宗行 |
| 1548 | あらしふく たかねのそらは くもはれて ふもとをめくる あきのむらさめ | 祐夏(中臣) |
| 1549 | さひしさは のきはのをきの おとよりも きりのはおつる にはのあきかせ | 英時 |
| 1550 | そらはまた のこるひかけの うすきりに つゆみえそめて にはそくれゆく | 明通 |
| 1551 | すまのうらや なみちのすゑは きりはれて ゆふひにのこる あはちしまやま | 宗泰(藤原時宗男) |
| 1552 | まつかせに つきのをのへは そらはれて きりのふもとに さをしかのこゑ | 尊氏 |
| 1553 | いまもかも たえせぬものか としことの あきのなかはの もちつきのこま | 公雄 |
| 1554 | ささなみや にほてるうらの あきかせに うきくもはれて つきそさやけき | 為親 |
| 1555 | はつせやま ひはらにつきは かたふきて とよらのかねの こゑそふけゆく | 尊氏 |
| 1556 | いねかてに なかめよとてや あきのつき ふけてはかけの さえわたるらむ | 国実(津守国夏男) |
| 1557 | ふるさとは のきはふつたの すゑたれて さしいるつきの かけたにもなし | 経久 |
| 1558 | このころは つきにもなほそ なれまさる ねられぬままの おいのすさひに | 為守女 |
| 1559 | くものうへに なれみしつきそ しのはるる わかよふけゆく あきのなみたに | 懐通 |
| 1560 | おもひいつる むかしににたる つきかけそ ふるきをうつす かかみなりける | 種成 |
| 1561 | みのうれへ なくさむかとて みるつきや あきをかさねて おいとなるらむ | 長典 |
| 1562 | としことに あひみることは いのちにて おいのかすそふ あきのよのつき | 源全 |
| 1563 | せきいるる いしまのみつの あかてのみ やとかるつきを そてにみるかな | 道家 |
| 1564 | たちかへる そてにはつきの したふとも いしまのみつは あかぬたひかな | 民部卿典侍(後堀河院) |
| 1565 | いのりきて つかふるよゐの あきもはや なれてみとせの くものうへのつき | 尊胤法親王 |
| 1566 | かくてこそ みるへかりけれ おくやまの むろのとほそに すめるつきかけ | 尊円法親王 |
| 1567 | そらきよく ありあけのつきは かけすみて こたかきすきに ましらなくなり | 儀子内親王 |
| 1568 | あきさむき ありあけのそらの ひとしくれ くもるもつきの なさけなりけり | 忠守 |
| 1569 | いとひこし うきよのほかの やまさとに つきはいつより すみなれにけむ | 恵助法親王 |
| 1570 | すみわひて いてしかたとは おもへとも つきにこひしき ふるさとのあき | 為守 |
| 1571 | なれてみる つきそしるらむ としをへて なくさめかたき あきのこころは | 隆淵 |
| 1572 | やまのはに いりなむとおもふ つきみつつ われはとなから あらむとやする | 貫之 |
| 1573 | ひさかたの つきのたよりに くるひとは いたらぬところ あらしとそおもふ | 貫之 |
| 1574 | つくつくと ことそともなき なかめして こよひのつきも かたふきにけり | 寂然 |
| 1575 | つきかけの くまなしとても わひひとの こころのやみの はれはこそあらめ | 重家 |
| 1576 | なかむれは みのうきことの おほゆるを うれへかほにや つきもみるらむ | 俊恵 |
| 1577 | なけくとて そてのつゆをは たれかとふ おもへはうれし あきのよのつき | 土御門院 |
| 1578 | むかしには ありしにもあらぬ そてのうへに たれとてつきの なみたとふらむ | 家隆 |
| 1579 | あはれさても なにのすさひの なかめして わかよのつきの かけたけぬらむ | 伏見院 |
| 1580 | くもふかき みとりのほらに すむつきの うきよのなかに かけはたえにき | 花園院 |
| 1581 | のこりなく おもひすててし よのなかに またをしまるる やまのはのつき | 主殿(四条太皇太后宮) |
| 1582 | をちこちの きぬたのおとに いくさとも おなしよさむの あはれをそしる | 雅久 |
| 1583 | あれにける にはのかきほの こけのうへに つたはひかかる ふるさとのあき | 慈勝 |
| 1584 | ひとしほは たをりてのちも そめてけり しくれにかさす やまのもみちは | 成国(祝部) |
| 1585 | うらかるる をはなかすゑの ゆふつくひ うつるもよわき あきのくれかた | 兼空 |
| 1586 | やまさむし あきもくれぬと つくるかも まきのはことに おけるあさしも | 千里 |
| 1587 | けふはなほ ひまこそなけれ かきくもる しくれここちは いつもせしかと | 和泉式部 |
| 1588 | ゆふつくひ くもひとむらに かけろひて しくれにかすむ をかのまつはら | 冬頼 |
| 1589 | おとはかり いたやののきの しくれにて くもらぬつきに ふるこのはかな | 成国(祝部) |
| 1590 | かみなつき しくれにましる もみちはは ちりかふほとも いろやそふらむ | 賢俊 |
| 1591 | おちはにも あきのなこりを とめしとや またさそひゆく こからしのかせ | 尊胤法親王 |
| 1592 | さひしさよ きりのおちはは かせになりて ひとはおとせぬ やとのゆふくれ | 為子(従二位) |
| 1593 | やまあらしに もろくおちゆく もみちはの ととまらぬよは かくこそありけれ | 後伏見院 |
| 1594 | なかめやる まさきのかつら ちりはてて めにかかるへき ものたにもなし | 慶政 |
| 1595 | かけよわき ゆふひうつろふ かたをかに のこるもすこき むらすすきかな | 守子内親王 |
| 1596 | かせかよふ まかきのをきの ふゆかれも いろこそかはれ おとはかはらす | 高範 |
| 1597 | むさしのは みなふゆくさの しをれはに しもはおくとも ねさへかれめや | 四条(安嘉門院) |
| 1598 | みなとえの こほりにたてる あしのはに ゆふしもさやき うらかせそふく | 読人不知 |
| 1599 | さえとほる しもよのそらの ふくるままに こほりしつまる つきのいろかな | 尊什 |
| 1600 | かきくらし しくるとみれは かせさえて みそれになりぬ うきくものそら | 宰承 |
| 1601 | そらにのみ ちるはかりにて けふいくか ひをふるゆきの つもらさるらむ | 清子(贈従二位) |
| 1602 | なにはかた みきはのゆきは あともなし たまれはかてに なみやかくらむ | 忠貞(惟宗) |
| 1603 | いほむすふ やまちのゆきも としふりて うつもるるみは とふひともなし | 公雄 |
| 1604 | かそふれは まちもまたれも きみかため つかへふりぬる ゆきのやまさと | 兼季 |
| 1605 | たまほこの みちあるみよに ふるゆきは むかしのあとそ なほのこりける | 覚懐 |
| 1606 | はるきても はなをまつへき こすゑかは ゆきたにのこれ たにのうもれき | 為量 |
| 1607 | ふりにける あとをしよよに たつぬれは みちこそたえね せきのしらゆき | 冬平 |
| 1608 | ふりうつむ ゆきにひかすは すきのいほ たるひそしけき やまかけののき | 光厳院 |
| 1609 | ちとりなく さほのやまかせ こゑさえて かはきりしろく あけぬこのよは | 順徳院 |
| 1610 | さゆるよの いりうみかけて ともちとり つきにとわたる あまのはしたて | 隆勝 |
| 1611 | つかへこし あとにのこりて うらちとり あるかひもなき ねをのみそなく | 有忠 |
| 1612 | あとつけむ かたそしられぬ はまちとり わかのうらわの ともなしにして | 行春(紀) |
| 1613 | こほりても おとはのこれる みなせかは したにやみつの ありてゆくらむ | 成藤(藤原時藤男) |
| 1614 | やまかはの いはまにのこる もみちはの したにはすける うすこほりかな | 基雄 |
| 1615 | すみかまの けふりならねと よのなかを こころほそくも おもひたつかな | 俊頼(源経信男) |
| 1616 | いかにせむ はひのしたなる うつみひの うつもれてのみ きえぬへきみを | 俊頼(源経信男) |
| 1617 | おいとなる かすはわかみに ととまりて はやくもすくる としのくれかな | 静伊 |
| 1618 | みのうへに つもるつきひも いたつらに おいのかすそふ としのくれかな | 雲雅 |
| 1619 | ゆくすゑを おもふにつけて おいらくの みにはいまさら をしきとしかな | 煕明親王 |
| 1620 | いまはたた したふはかりの としのくれ あはれいつまて はるをまちけむ | 為相 |
| 1621 | やまひとの のきはのみちに いそかすは しらてやとしの くれをすきまし | 為基(京極為兼猶子) |
| 1622 | こそもさそ またはかけしの おいのなみ こゆへきあすの はるもつれなし | 内侍(永福門院) |
| 1623 | あかつきや またふかからし まつのうれに わかるともなき みねのしらくも | 為基(京極為兼猶子) |
| 1624 | みるままに あまきるほしそ うきしつむ あかつきやみの むらくものそら | 実兼 |
| 1625 | ときははや あかつきちかく なりぬなり まれなるほしの そらそしつけき | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1626 | にしのそらは またほしみえて ありあけの かけよりしらむ をちのやまのは | 光明院 |
| 1627 | しらみまさる そらのみとりは うすくみえて あけのこるほしの かすそきえゆく | 一条(花園院) |
| 1628 | やまふかみ おりゐるくもは あけやらて ふもとにとほき あかつきのかね | 祝子内親王 |
| 1629 | よからすは たかきこすゑに なきおちて つきしつかなる あかつきのやま | 光厳院 |
| 1630 | かねのおとに ゆめはさめぬる のちにしも さらにさひしき あかつきのとこ | 光厳院 |
| 1631 | まとちかき のきはのみねは あけそめて たによりのほる あかつきのくも | 親子(従三位源) |
| 1632 | きききかす おなしひひきも みたるなり あらしのうちの あかつきのかね | 進子内親王 |
| 1633 | あけぬるか ねさめのまとの ひまみえて のこるともなき よはのともしひ | 冬通 |
| 1634 | はおとして わたるからすの ひとこゑに のきはのそらは くもあけぬなり | 花園院 |
| 1635 | たちそむる からすひとこゑ なきすきて はやししつかに あくるしののめ | 一条(徽安門院) |
| 1636 | あさからす こゑするもりの こすゑしも つきはよふかき ありあけのかけ | 実明女 |
| 1637 | あふさかや あかつきかけて なくとりの こゑしろくなる せきのすきむら | 伏見院 |
| 1638 | さとさとの あけゆくおとは いそけとも のとかにしらむ やまのはのそら | 花園院 |
| 1639 | いてやらて あさひこもれる やまのはの あたりのくもそ まつにほひぬる | 為基(京極為兼猶子) |
| 1640 | やとやとに たつるけふりの すゑあひて ひとむらかすむ さとのあさあけ | 為子(従二位) |
| 1641 | をちかたの さとはあさひに あらはれて けふりにうすき たけのひとむら | 一条(徽安門院) |
| 1642 | かせすさふ たけのさえたの ゆふつくひ うつりさためぬ かけそさひしき | 実明女 |
| 1643 | もりうつる たににひとすち ひかけみえて みねもふもとも まつのゆふかせ | 為兼 |
| 1644 | いりひさす みねのうきくも たなひきて はるかにかへる とりのひとこゑ | 順徳院 |
| 1645 | ゆふひかけ たのもはるかに とふさきの つはさのほかに やまそくれぬる | 光厳院 |
| 1646 | やまもとは まつくれそめて みねたかき こすゑにのこる ゆふひかけかな | 栄子内親王 |
| 1647 | ゆふやまや ふもとのひはら いろさめて のこるひかけそ みねにすくなき | 後伏見院 |
| 1648 | みわたせは くもまのひかけ うつろひて むらむらかはる やまのいろかな | 宗尊親王 |
| 1649 | ゆふひさす みねはみとりの うすくみえて かけなるやまそ わきていろこき | 徽安門院 |
| 1650 | ゆふつくひ いりぬるみねの いろこきに ひともとたてる まつそさひしき | 忠季(藤原公蔭男) |
| 1651 | ゆふつくひ やまのあなたに なるままに くものはたてそ いろかはりゆく | 順徳院 |
| 1652 | やまのはの いろあるくもに まつすきて いりひのあとの そらそしつけき | 一条(花園院) |
| 1653 | にしのそらの ゆふひのあとは さめやらて つきよりかはる くものいろかな | 一条(徽安門院) |
| 1654 | つきはあれと またくれやらぬ そらなれや うつるもうすき にはのかけかな | 義詮 |
| 1655 | ひととはぬ たにのとほその しつけきに くもこそかへれ ゆふくれのやま | 行家(藤原知家男) |
| 1656 | やまかせは たかねのまつに こゑやみて ゆふへのくもそ たににしつまる | 尊氏 |
| 1657 | こもりえの はつせのひはら ふきわけて あらしにもるる いりあひのかね | 為定(御子左二条為道男) |
| 1658 | あめそそく まきのしつくは おちそひて くもふかくなる ゆふくれのやま | 重資 |
| 1659 | とりのゆく ゆふへのそらの はるはると なかめのすゑに やまそいろこき | 後伏見院 |
| 1660 | とひつれて とほさかりゆく からすはに くるるいろそふ をちかたのそら | 為基(京極為兼猶子) |
| 1661 | かねのおとを ひとつあらしに ふきこめて ゆふくれしをる のきのまつかせ | 伏見院 |
| 1662 | ならひたつ まつのおもては しつかにて あらしのおくに かねひひくなり | 伏見院 |
| 1663 | やまのはの なかめにあたる ゆふくれに きかてきこゆる いりあひのおと | 伏見院 |
| 1664 | つれつれと なかめなかめて くるるひの いりあひのかねの こゑそさひしき | 祝子内親王 |
| 1665 | たつねいる やまちのすゑは ひともあはす いりあひのかねに あらしこそふけ | 後伏見院 |
| 1666 | かくしてそ きのふもくれし やまのはの いりひののちに かねのこゑこゑ | 永福門院 |
| 1667 | なにとなく ゆふへのそらを みるままに あやしきまては なそやわひしき | 為子(従二位) |
| 1668 | なにとなく すきこしかたの なかめまて こころにうかふ ゆふくれのそら | 後鳥羽院 |
| 1669 | てらふかき ねさめのやまは あけもせて あまよのかねの こゑそしめれる | 伏見院 |
| 1670 | つくつくと ひとりきくよの あめのおとは ふりをやむさへ さひしかりけり | 儀子内親王 |
| 1671 | みなひとの いをぬるなへに うはたまの よるてふときそ よはしつかなる | 儀子内親王 |
| 1672 | おもひつくす こころにときは うつれとも おなしかけなる ねやのともしひ | 教良女 |
| 1673 | あはれにそ つきにそむくる ともしひの ありとはなしに わかよふけぬる | 為家 |
| 1674 | まきのやの ひまふくかせも こころせよ まとふかきよに のこるともしひ | 長雅 |
| 1675 | ともしひは あまよのまとに かすかにて のきのしつくを まくらにそきく | 徽安門院 |
| 1676 | ひとすちに おもひもはてし なほもこの うきよのともは つきこそありけれ | 後伏見院 |
| 1677 | よのなかは むなしきものと あらむとそ このてるつきは みちかけしける | 読人不知 |
| 1678 | ありしよに めくるみとしも おもはねと つきはむかしの ここちこそすれ | 行尊 |
| 1679 | むかしのみ なかむるままに こひしきは なれしくもゐの つきにやあるらむ | 敦経 |
| 1680 | いまはわれ またみるましき あはれさよ なれてつかへし くものうへのつき | 家親 |
| 1681 | そてのうへに かはらぬつきの かはるかな ありしむかしの かけをこひつつ | 秀能(藤原秀宗男) |
| 1682 | なにとなく むかしこひしき わかそての ぬれたるうへに やとるつきかけ | 秀能(藤原秀宗男) |
| 1683 | ときありて はなももみちも ひとさかり あはれにつきの いつもかはらぬ | 為子(従二位) |
| 1684 | うきてたつ くもふきはらふ やまかせの をささにすくる おとのはけしさ | 覚助法親王 |
| 1685 | やまあひに おりしつまれる しらくもの しはしとみれは はやきえにけり | 永福門院 |
| 1686 | うすくこき やまのいろかと みるほとに そらゆくくもの かけそうつろふ | 基顕 |
| 1687 | おほそらに あまねくおほふ くものこころ くにつちうるふ あめくたすなり | 為兼 |
| 1688 | あらきあめの をやまぬほとの にはたつみ せきいれぬみつそ しはしなかるる | 為子(従二位) |
| 1689 | えたくらき こすゑにあめの おとはして またつゆおちぬ まきのしたみち | 法守法親王 |
| 1690 | くもかかる とほやままつは みえすなりて まかきのたけに あめこほるなり | 光厳院 |
| 1691 | なかめつる くさのうへより ふりそめて やまのはきゆる ゆふくれのあめ | 内侍(永福門院) |
| 1692 | ひとりあかす よものおもひは ききこめぬ たたつくつくと ふくるよのあめ | 後伏見院 |
| 1693 | よるのあめに こころはなりて おもひやる ちさとのねさめ ここにかなしも | 伏見院 |
| 1694 | みぬよまて おもふもさひし いそのかみ ふるのやまへの あめのゆふくれ | 有家(藤原重家男) |
| 1695 | やままつは みるみるくもに きえはてて さひしさのみの ゆふくれのあめ | 儀子内親王 |
| 1696 | にしのたつ みねよりあめは はれそめて ふもとのまつを のほるしらくも | 親行(藤原) |
| 1697 | あめはいま はれぬとみつる とほやまの まつにみたれて かかるしらくも | 公直母 |
| 1698 | あめはれて いろこきやまの すそのより はなれてのほる くもそまちかき | 内侍(永福門院) |
| 1699 | やまもとや あめはれのほる くものあとに けふりのこれる さとのひとむら | 為基(京極為兼猶子) |
| 1700 | たにかけや ましはのけふり こくみえて いりあひくらき やまのしたみち | 親子(従三位源) |
| 1701 | たちのほる けふりさひしき やまもとの さとのこなたに もりのひとむら | 進子内親王 |
| 1702 | しらくもの やへたつみねも ちりひちの つもりてなれる やまにしあらすや | 実泰 |
| 1703 | みつのみね ふたつのみちを ならへおきて わかたつそまの なこそたかけれ | 慈順 |
| 1704 | うらかせは みなとのあしに ふきしをり ゆふくれしろき なみのうへのあめ | 伏見院 |
| 1705 | うらのまつ このまにみえて しつむひの なこりのなみそ しはしうつろふ | 後二条院 |
| 1706 | しつみはてぬ いりひはなみの うへにして しほひにきよき いそのまつはら | 永福門院 |
| 1707 | いそやまの かけなるうみは みとりにて ゆふひにみかく おきつしらなみ | 為基(京極為兼猶子) |
| 1708 | しらなみの たかしのやまの ふもとより まさこふきまき うらかせそふく | 成茂 |
| 1709 | かつしかの ままのうらかせ ふきにけり ゆふなみこゆる よとのつきはし | 朝村 |
| 1710 | うちよする あらいそなみの あとなれや しほひのかたに のこるもくつは | 兵衛督(花園院) |
| 1711 | わたのはら なみとそらとは ひとつにて いりひをうくる やまのはもなし | 定家 |
| 1712 | きよみかた いそやまもとは くれそめて いりひのこれる みほのまつはら | 冬隆 |
| 1713 | かせをいたみ よせくるなみに いさりする あまをとめこか ものすそぬれぬ | 読人不知 |
| 1714 | たまつしま みれともあかす いかにして つつみもたらむ みぬひとのため | 読人不知 |
| 1715 | いへつとに かひをひろふと おきへより よせくるなみに ころもてぬれぬ | 読人不知 |
| 1716 | ありかよふ なにはのみやは うみちかみ あまをとめこか のれるふねみゆ | 読人不知 |
| 1717 | なにはえに ゆふしほとほく みちぬらし みらくすくなき あしのむらたち | 実雄 |
| 1718 | つのくにの なにはよりそと いはすとも あしてをみても それとしらなむ | 国基 |
| 1719 | つのくにの なにはのさとの うらちかみ まかきをいつる あまのつりふね | 道家 |
| 1720 | あらいその まつのかけなる あまをふね つなきなからそ なみにたたよふ | 為相女 |
| 1721 | こきいてて むこのうらより みわたせは なみまにうかふ すみよしのまつ | 行尹 |
| 1722 | からさきや かすかにみゆる まさこちに まかふいろなき ひともとのまつ | 為子(従二位) |
| 1723 | にほのうみや かすみてとほき あさあけに ゆくかたみえぬ あまのつりふね | 有光 |
| 1724 | あけわたる をしまのまつの このまより くもにはなるる あまのつりふね | 家隆 |
| 1725 | うらうらの くるるなみまに かすみえて おきにいてそふ あまのいさりひ | 基成 |
| 1726 | こきいつる ほともなみちに かすきえぬ おひかせはやき うらのつりふね | 為子(従二位) |
| 1727 | ものとして はかりかたしな よわきみつに おもきふねしも うかふとおもへは | 為兼 |
| 1728 | かはむかひ またみつくらき あけほのに いつるかふねの おとそきこゆる | 兼行 |
| 1729 | こけむして ひとのゆききの あともなし わたらてとしや ふるのたかはし | 実忠 |
| 1730 | おほゐかは はるかにみゆる はしのうへに ゆくひとすこし あめのゆふくれ | 為兼 |
| 1731 | をかのへや なひかぬまつは こゑをなして したくさしをる やまおろしのかせ | 為兼 |
| 1732 | たにふかき まつのしつえに ふきとめて みやまのあらし こゑしつむなり | 為守女 |
| 1733 | やまひとの おへるましはの えたにさへ なほおとつれて ゆくあらしかな | 宣子(従三位藤原) |
| 1734 | つれつれと やまかせすこき ゆふくれの こころにむかふ まつのひともと | 親子(従三位源) |
| 1735 | みるとなき こころにもなほ あたりけり むかふみきりの まつのひともと | 為兼 |
| 1736 | いましもは あらしにまさる あはれかな おとせぬまつの ゆふくれのやま | 伏見院 |
| 1737 | としふかき すきのこすゑも かみさひて こくらきもりは みやゐなりけり | 公蔭 |
| 1738 | くれぬるか まかきのたけの むらすすめ ねくらあらそふ こゑさわくなり | 経平(藤原家基男) |
| 1739 | みとりこき ひかけのやまの はるはると おのれまかはす わたるしらさき | 徽安門院 |
| 1740 | やまもとの たのもよりたつ しらさきの ゆくかたみれは もりのひとむら | 伏見院 |
| 1741 | たにかけや こふかきかたに かくろへて あめをもよほす やまはとのこゑ | 為相 |
| 1742 | かねのおと とりのねきかぬ おくやまの あかつきしるは ねさめなりけり | 忠嗣 |
| 1743 | ふきおろす のきはのやまの まつかせに たえてみしかき ゆめのかよひち | 隆教 |
| 1744 | しのはれむ ものともなしに をくらやま のきはのまつそ なれてひさしき | 定家 |
| 1745 | まつのかせ かけひのみつに ききかへて みやこのひとの おとつれはなし | 基忠(鷹司兼平男) |
| 1746 | ちりのみそ おきところなき しらくもの たなひくやまの おくはあれとも | 慶運 |
| 1747 | やまふかき すまひはかりは かひもなし こころにそむく うきよならねは | 基任 |
| 1748 | やまふかき やとにはひとの おともせて たにしつかなる とりのひとこゑ | 慈成 |
| 1749 | やまもとの まつのかこひの あれまくに あらしよしはし こころしてふけ | 為氏 |
| 1750 | たたひとへ あたにかこへる しはのかき いとふこころに よをはへたてて | 俊実(藤原定資男) |
| 1751 | わかやとは つまきこりゆく やまかつの しはしはかよふ あとはかりして | 式子内親王 |
| 1752 | ここにさへ あらしふけとは おもはすよ みのかくれかの のきのやままつ | 実衡女 |
| 1753 | やまのおく しつかにとこそ おもひしに あらしそさわく ひはらまきはら | 法守法親王 |
| 1754 | またひとの いほりならへぬ やまかけは おとするかせを ともときくかな | 公守女 |
| 1755 | ひともとと おもひてうゑし くれたけの にはみえぬまて しけるふるさと | 良海 |
| 1756 | つくろはぬ いはきをにはの すかたにて やとめつらしき やまのおくかな | 伏見院 |
| 1757 | われたにも せはしとおもふ くさのいほに なかはさしいる みねのしらくも | 仏国 |
| 1758 | やまかけや ちかきいりあひの こゑくれて そとものたにに しつむしらくも | 伏見院 |
| 1759 | あとたえて へたつるやまの くもふかし ゆききはちかき みやこなれとも | 花園院 |
| 1760 | やまさとを たれすみうしと いとひけむ こころのすめは さひしさもなし | 道玄 |
| 1761 | とふひとも またれぬほとに すみなれて みやまのおくは さひしさもなし | 宗秀(藤原宗泰男) |
| 1762 | おくやまの いはほのまくら こけむしろ かくてもへなむ あはれよのなか | 家雅 |
| 1763 | ひとめこそ かれなはかれめ やまさとに かけひのみつの おとをたにせよ | 高倉(安嘉門院) |
| 1764 | とはるやと またましいかに さひしからむ ひとめをいとふ おくやまのいほ | 儀子内親王 |
| 1765 | くちのこる のきのかけひを つたひきて にはにしたたる こけのしたみつ | 承覚法親王 |
| 1766 | をちかたの やまはゆふひの かけはれて のきはのくもは あめおとすなり | 伏見院 |
| 1767 | くもしつむ たにののきはの あめのくれ ききなれぬとりの こゑもさひしき | 進子内親王 |
| 1768 | ますらをか やまかたつきて すむいほの そともにわたす すきのまろはし | 順徳院 |
| 1769 | やまふかき くさのいほりの あめのよに おとせてふるは なみたなりけり | 忠良 |
| 1770 | やまさとは さひしとはかり いひすてて こころととめて みるひとやなき | 実明女 |
| 1771 | やまもとや いほののきはに くもおりて たのもさひしき あめのゆふくれ | 尊氏 |
| 1772 | おもひいる みやまのさとの しるしとて うきよへたつる まとのくれたけ | 後嵯峨院 |
| 1773 | このさとは そとものましは しけけれは ほかにもとめぬ つまきこるなり | 慈道法親王 |
| 1774 | あともなき しつかいへゐの たけのかき いぬのこゑのみ おくふかくして | 花園院 |
| 1775 | みをかくす みやまのおくの かよひちを ありとなつけそ たにのしたみつ | 実雄 |
| 1776 | いほむすふ やましたみつの こかくれに すますこころを しるひとそなき | 師信 |
| 1777 | あかたなの はなのかれはも うちしめり あさきりふかし みねのやまてら | 為家 |
| 1778 | つきはまた みねこえやらぬ やまかけに かつかつみゆる まつのしたみち | 為基(京極為兼猶子) |
| 1779 | いなりやま にしにやつきの なりぬらむ すきのいほりの まとのしらめる | 頼政 |
| 1780 | やまかけや たけのあなたに いりひおちて はやしのとりの こゑそあらそふ | 伏見院 |
| 1781 | やまひとの わけいるほかの あともなし みねよりおくの しはのしたみち | 為子(従二位) |
| 1782 | みわたせは つまきのみちの まつかけに しはよせかけて やすむやまひと | 宗尊親王 |
| 1783 | しはしなほ ふもとのみちの くらけれは つきまちいてて かへるやまひと | 公泰 |
| 1784 | ひとはいはし とりもこゑせぬ やまちにも あれはあらるる みにこそありけれ | 惟方 |
| 1785 | いかにして のなかのしみつ おもひいてて わするはかりに またなりぬらむ | 惟方 |
| 1786 | くるとあくと つゆけきこけの たもとかな もらぬいはやの なをはたのまし | 静仁法親王 |
| 1787 | われならぬ ひとにくますな ゆきすりに むすひおきつる たまのゐのみつ | 道信 |
| 1788 | わすれても くみやしつらむ たひひとの たかののおくの たまかはのみつ | 弘法 |
| 1789 | これそこの もろこしふねに のりをえて しるしをのこす まつのひともと | 阿一 |
| 1790 | ふるさとは あさちかしたに うつもれて くさのいほりと なりにけるかな | 惟方 |
| 1791 | としをへて あれこそまされ さかのやま きみかすみこし あとはあれとも | 寛尊法親王 |
| 1792 | いのちまつ かりのやとりの うちにたに すみさためたる かくれかもなし | 為守女 |
| 1793 | いくたひか かくすみすてて いてつらむ さためなきよに むすふかりいほ | 夢窓 |
| 1794 | さきのゐる いけのみきはに まつふりて みやこのほかの ここちこそすれ | 定家 |
| 1795 | やへむくら しけれるやとに つれつれと とふひともなき なかめをそする | 定頼 |
| 1796 | あまつそら てるひのしたに ありなから くもるこころの くまをもためや | 伏見院 |
| 1797 | てりくもり さむきあつきも ときとして たみにこころの やすむまもなし | 光厳院 |
| 1798 | たれもみな こころをみかけ ひとをしる きみかかかみの くもりなきよに | 資明 |
| 1799 | しつかなる よはのねさめに よのなかの ひとのうれへを おもふくるしさ | 直義 |
| 1800 | かみよより みちあるくにに つかへける ちきりもたえぬ せきのふちかは | 道家 |
| 1801 | いままては よよへてすみし しらかはの にこらしみつの こころはかりは | 経顕(藤原定資男) |
| 1802 | あふきみて わかみをとへは あまのかは すめるみとりの いふこともなし | 後伏見院 |
| 1803 | さりともと あふきてそらを たのむかな つきひのいまた おちぬよなれは | 道玄 |
| 1804 | ゆくすゑの みちはまよはし かすかやま いつるあさひの かけにまかせて | 基平(近衛兼経男) |
| 1805 | くもらしと おもふこころを みかさやま いつるあさひも そらにしるらむ | 内経 |
| 1806 | をさまれる あとをそしたふ おしなへて たかむかしとは おもひわかねと | 後醍醐院 |
| 1807 | をさまらぬ よのためのみそ うれはしき みのためのよは さもあらはあれ | 光厳院 |
| 1808 | くらゐやま かさなるゆきに あととめて まよはぬみちは なほそかしこき | 為継 |
| 1809 | みちしあらは いまもまよはて くらゐやま むかしのあとに なをのこさはや | 秀経 |
| 1810 | おいのみに いまひとさかの くらゐやま のほらぬしもそ くるしかりける | 実教 |
| 1811 | うれへなく たのしみもなし わかこころ いとなまぬよは あるにまかせて | 伏見院 |
| 1812 | なきにのみ みをなしはてし こころより あるにまかする よこそやすけれ | 為守女 |
| 1813 | いにしへは なけきしことも なけかれす うきにならひて としのへぬれは | 顕範 |
| 1814 | ひとはしらし かたやまかけの うもれみつ こころのそこは いかにすむとも | 重能 |
| 1815 | うきなから あるにまかする わかみこそ かくてもすつる このよなりけれ | 為明 |
| 1816 | みこそあらめ こころをちりの ほかになして うきよのいろに そましとそおもふ | 徽安門院 |
| 1817 | たにかはの みつのみなかみ よよをへて いまそかしこき なをなかすらむ | 尊円法親王 |
| 1818 | みなかみの すめるをうけて ゆくかはの すゑにもにこる なをはなかさし | 広秀 |
| 1819 | たかきやま ふかきうみにも まさるらし わかみにうくる きみかめくみは | 直義 |
| 1820 | のほるせの ありけるものを ひくひとの なきにもよらぬ よとのかはふね | 為相 |
| 1821 | しつむみと なになけきけむ さほかはの ふかきめくみの かかりけるよに | 内経 |
| 1822 | おなしくは おとろへさりし もとのみを いまにかへして よにつかへはや | 時藤(藤原行藤男) |
| 1823 | いのちをは かろきになして もののふの みちよりおもき みちあらめやは | 致雄 |
| 1824 | ももしきや みきりのたけの ふしておもひ おきていのるも わかきみのため | 尊円法親王 |
| 1825 | すみわふる われこそつねに いそかるれ つきはなにゆゑ やまにいるらむ | 実衡女 |
| 1826 | なにことを おもひつつくと なけれとも あめのねさめは ものそかなしき | 慶政 |
| 1827 | いるたひに またはいてしと おもふみの なにゆゑいそく みやこなるらむ | 道玄 |
| 1828 | みのうさを こころひとつに なくさめて わかあらましを まつそはかなき | 邦省親王 |
| 1829 | いつまてと おもふはかりそ あたしよの うきになくさむ たのみなりける | 守誉 |
| 1830 | よのなかの うきはうれしき ものそとも いつすてはてて おもひあはせむ | 有淳 |
| 1831 | なれぬれは おもひもわかぬ みのうさを わすれぬものは なみたなりけり | 如円 |
| 1832 | なけくへき ことをあまたの みのうさに まつはなみたの なににおつらむ | 宗満 |
| 1833 | もしほくさ かきあつめたる わかのうらの そのひとなみに おもひいてすや | 惟方 |
| 1834 | いまもなほ なれしむかしは わすれぬを かけさらめやは わかのうらなみ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1835 | かきつもる もくつのみして あるかひも なきさによする わかのうらなみ | 久時 |
| 1836 | わかのうらに こころをよせて としふれと もくつそつもる たまはひろはす | 宗秀(大江時秀男) |
| 1837 | わかのうらの なみのかすには もれにけり かくかひもなき もしほくさかな | 実定 |
| 1838 | いへのかせ ふくともみえぬ このもとに かきおくことの はをちらすかな | 経盛 |
| 1839 | ことのはの むくさのうちに さまさまの こころそみゆる しきしまのみち | 直義 |
| 1840 | きみなくは いかにしてかは はるけまし いにしへいまの おほつかなさを | 俊成(藤原俊忠男) |
| 1841 | かきたむる いにしへいまの ことのはを のこさすきみに つたへつるかな | 基俊 |
| 1842 | むすひなす すゑをこころに たたふれは ふかくみゆるを やまかはのみつ | 西行 |
| 1843 | しきしまの みちにわかなは たつのいちや いさまたしらぬ やまとことのは | 定家 |
| 1844 | わかのうらに みそうきなみの あまをふね さすかかさなる あとなわすれそ | 為家 |
| 1845 | わかのうらに たちのほるなる なみのおとは こさるるみにも うれしとそきく | 隆信 |
| 1846 | いかにして たちのほるらむ こゆへしと おもひもよらぬ わかのうらなみ | 頼政 |
| 1847 | たちかへる くもゐのたつに ことつてむ ひとりさはへに なくとつけなむ | 清輔 |
| 1848 | あしはらに はねやすむめる あしたつは もとのくもゐに かへらさらめや | 大弐三位 |
| 1849 | このうちを いつとしならは あしたつの なれしくもゐに なとやかへらぬ | 重家 |
| 1850 | またもこむ はるとはえこそ いはしみつ たちまふことも ありかたきよに | 定長(藤原通成男) |
| 1851 | むかしみし くものかけはし かはらねと わかみひとつの とたえなりけり | 清輔 |
| 1852 | くもれよし なかはのつきの おもかけも とめてみるへき たもとならねは | 欣子内親王 |
| 1853 | いまさらに のほりそやらぬ くらゐやま くるしかるへき よよのあとかは | 為定(御子左二条為道男) |
| 1854 | むかしたれ ひとのこころを しらいとの そむれはそまる いろになきけむ | 高弁 |
| 1855 | おもひたつ きそのあさぬの あさくのみ そめてやむへき そてのいろかは | 兼好 |
| 1856 | なにとなく はなやもみちを みるほとに はるとあきとは いくめくりしつ | 惟規 |
| 1857 | はなちらて つきはくもらぬ よなりせは ものをおもはぬ わかみならまし | 西行 |
| 1858 | ここのつの さはになくなる あしたつの こをおもふこゑは そらにきこゆや | 基俊 |
| 1859 | よそにても こをおもふたつの なくこゑを あはれとひとの きかさらめやは | 忠通 |
| 1860 | なからへて とはるへしとは おもひきや ひとのなさけも いのちなりけり | 高弁 |
| 1861 | うしとても いくほとのよと おもふおもふ なほそのうちも もののわひしき | 祝子内親王 |
| 1862 | うしとても うからすとても よしやたた いそちののちの いくほとのよは | 為相 |
| 1863 | おもひても なくてすきこし としつきの かすにまさるは なみたなりけり | 実教 |
| 1864 | ななそちの としなみこえて いまはみの なにをかすゑの まつことにせむ | 延全 |
| 1865 | あさゆふの こころのうちの ものうさを さてもあるみと ひとやしるらむ | 為相女 |
| 1866 | おもひしらは そむきもすへき みをおきて たかなにたてし うきよなるらむ | 小宰相(徽安門院) |
| 1867 | いまさらに うしといふこそ おろかなれ かかるへきよの すゑとしらすや | 道玄 |
| 1868 | すてかぬる こころもわかみ そのうへに たかおもはせて いとはしきよそ | 新右衛門督(宣光門院) |
| 1869 | おもふこと なくはいつまて すまむとて たためのまへの よをなけくらむ | 儀子内親王 |
| 1870 | はかなしと おもひなからも あらましに みをなくさめて としをふるかな | 雅孝 |
| 1871 | さこそはと おもひやられし そのをりの たひのあはれを さなからそみる | 公蔭 |
| 1872 | ことのはに いろはなけれと おもひやる こころをそへて あはれとやみる | 花園院 |
| 1873 | こころとは すみはてられぬ おくやまに わかあとうつめ やへのしらくも | 為基(京極為兼猶子) |
| 1874 | ゆくすゑを たのむとひとや おもふらむ こころにもあらて よをすくすみを | 新宰相(光厳院) |
| 1875 | うきよとは おもひなからに すてやらて あらましにのみ すくしつるかな | 秀能/秀信 |
| 1876 | うきよとは なへていふなる ことわりを わかみひとつに なしてこそおもへ | 仲教 |
| 1877 | うきことを おもはしとても いかかせむ さすかこころの なきみならねは | 浄道 |
| 1878 | をりをりの みのあらましも かはりけり わかこころさへ さためなのよや | 宣子(従三位藤原) |
| 1879 | よのうさに おもひたちぬる やまさとは いさいつまてと ほともさためす | 道玄 |
| 1880 | あはれにそ よもきかにはの あともなき もとよりたれを まつみならねと | 実衡女 |
| 1881 | つくつくと おもへはかなし かすならぬ みをしるあめよ をやみたにせよ | 俊頼(源経信男) |
| 1882 | なみたのみ ふるやののきの いたひさし もりくるつきそ そてにくもれる | 道昭 |
| 1883 | やまふかく みをかくしても よのなかを のかれはてぬは こころなりけり | 宗秀(藤原宗泰男) |
| 1884 | かくはかり とりあつめたる みのうさに こころつよくも なかきいのちか | 山田 |
| 1885 | みはかくて のかれはてぬる よのなかを ひとのうへまて なほいとふかな | 読人不知 |
| 1886 | よをうしと おもひたつとも わかやまの ほかにはいかか すみそめのそて | 忠性 |
| 1887 | よをうみの あみのうけなは ひとすちに ひくへきひとも なきみなりけり | 公什 |
| 1888 | わかこころ たれにかいはむ いせのあまの つりのうけひく ひとしなけれは | 崇徳院 |
| 1889 | いかにせむ そむかはとこそ おもひしに すててもうきは このよなりけり | 道意(西園寺実兼男) |
| 1890 | なけきをも とはぬつらさは つらけれと うれしきことは うれしとそきく | 読人不知 |
| 1891 | いふよりも いはておもふは まさるとて とはぬもとふに おとりやはせし | 惟方 |
| 1892 | こころたに わかおもふにも かなはぬに ひとをうらみむ ことわりそなき | 為子(従二位) |
| 1893 | ものことに こころをとめは なににかは うきよのなかの しられさるへき | 儀子内親王 |
| 1894 | こころこそ みのせきもりと なりにけれ やすくいつへき このよなれとも | 四条(安嘉門院) |
| 1895 | よのなかの うきたひことに なくさむる よしいくほとの なからましかは | 徽安門院 |
| 1896 | あらましの こころのままに みるゆめを おもひあはする うつつともかな | 寿成門院 |
| 1897 | あはれにも うつつにおもふ あらましの たたそのままに みつるゆめかな | 小宰相(徽安門院) |
| 1898 | うたたねの はかなきゆめの うちにたに ちちのおもひの ありけるものを | 良経(九条兼実男) |
| 1899 | ゆめにても うれしきことの みえつるは たたにうれふる みにはまされり | 千里 |
| 1900 | おほかたの うつつはゆめに なしはてつ ぬるかうちには なにをかもみむ | 後鳥羽院 |
| 1901 | なかきよの ゆめのうちにて みるゆめは いつれうつつと いかかさためむ | 永縁 |
| 1902 | ゆめそかし おもふままなる みなりとも うれしかるへき このよとやみる | 慈円 |
| 1903 | いつかたに おもひさためむ ゆめといひて おもふもみえす おもはぬもみゆ | 実泰 |
| 1904 | あたしよに ねてもさめても みることは いつれをゆめと こころにかわく | 公賢 |
| 1905 | もとよりの さなからゆめと みるうへは よしやかならす さめもさめすも | 花園院 |
| 1906 | おとろくも さこそとかなし うきゆめの さめぬまよひに よをやすてけむ | 左京大夫(永陽門院) |
| 1907 | さめやらぬ うきよのゆめの なこりこそ すてぬるみにも なほのこりけれ | 為基(京極為兼猶子) |
| 1908 | あかつきの かねはまくらに おとすれと うきよのゆめは さめむともせす | 公清室 |
| 1909 | なかきよに まよふやみちの いつさめて ゆめをゆめとも おもひあはせむ | 為子(従二位) |
| 1910 | ぬるかうちに みるよりほかの うつつさへ いやはかななる ゆめになりぬる | 為基(京極為兼猶子) |
| 1911 | おとろかぬ きのふのゆめの よをしらて またあらましの あすもはかなし | 為相女 |
| 1912 | みしひとも のこりすくなき おいかよに たれとむかしを かたりあはせむ | 基忠(鷹司兼平男) |
| 1913 | あはれとて わかねさめとふ ひともかな おもふこころを いひもつくさむ | 頼貞 |
| 1914 | いまになり むかしにかへり おもふまに ねさめのかねも こゑつきぬなり | 内侍(永福門院) |
| 1915 | いまやゆめ むかしやゆめと たとられて いかにおもへと うつつとそなき | 右京大夫(建礼門院) |
| 1916 | きみもさは わたりかねける なみたかは わかみひとつの ふちとおもふに | 信成 |
| 1917 | ふたたひと かへるかたなき むかしにも ゆめちはかよふ ものにそありける | 隆信 |
| 1918 | うはたまの よるのころもを いにしへに かへすたのみの ゆめもはかなし | 忠房親王 |
| 1919 | さめてのち くやしきものは またもこぬ むかしをみつる ゆめにそありける | 儀子内親王 |
| 1920 | つくつくと すきにしかたを おもひねの ゆめそむかしの なこりなりける | 経通(一条内経男) |
| 1921 | かへりこぬ むかしにかよふ ゆめちをは しはしもいかて さまさてをみむ | 恒明親王 |
| 1922 | おもひねの ゆめよりほかは たのまれす さらてはかへる むかしならねは | 宗親 |
| 1923 | みてもなほ おもひそまさる ふてのあと なかなかつらき かたみなりけり | 冬信 |
| 1924 | かたかたに なきてわかれし むらとりの ふるすにたにも かへりやはする | 成範 |
| 1925 | いにしへの いまみるはかり おほゆるは わかおいらくの ねさめなりけり | 基氏(藤原基家男) |
| 1926 | いにしへに なせはこそあれ おもひいつる こころはいまの ものにそありける | 宗成 |
| 1927 | しつたまき かすにもあらぬ みなれとも つかへしみちは わすれしもせす | 秀能(藤原秀宗男) |
| 1928 | こしかたの わすれかたきも またひとに かたるはかりの おもひいてはなし | 宰相典侍(後宇多院) |
| 1929 | ことにいてて あはれむかしと いはるるも さらにみのうき ときにそありける | 頼氏(藤原頼広男) |
| 1930 | をりをりに むかしをしのふ なみたこそ こけのたもとに いまもかわかね | 遠衡 |
| 1931 | うつつにて いまみることは まきるれと むかしのゆめそ わすれさりける | 為嗣 |
| 1932 | おいぬれは かつみることは わすられて とほきむかしの しのはるるかな | 宰相典侍(後宇多院) |
| 1933 | おもひいての なきみなれとも いにしへを こふるはおいを いとふなりけり | 為継 |
| 1934 | へたたらぬ わかみのほとの いにしへも すきにしかたは なほそこひしき | 基嗣 |
| 1935 | すきぬれは けふをきのふと いひなして とほさかるこそ むかしなりけれ | 読人不知 |
| 1936 | あやにくに しのはるるみの むかしかな ものわすれする おいのこころに | 公雄 |
| 1937 | みしともは あるかすくなき おなしよに おいのいのちの なにのこるらむ | 範秀 |
| 1938 | そむかはや よしやよのなか とはかりの あらましにてや つひにすきなむ | 為子(従二位) |
| 1939 | あさことに あはれをいとと ますかかみ しらぬおきなを いつまてかみむ | 資隆 |
| 1940 | はかなさは けふともしらぬ よのなかに さりともとのみ いつをまつらむ | 読人不知 |
| 1941 | おもひしる こころとならは いたつらに あたらこのよを すくささらなむ | 寂然 |
| 1942 | そむくとも なほやこころの のこらまし よにわすられぬ わかみなりせは | 宗尊親王 |
| 1943 | こをおもふ やみにそまよふ くはのかと うきよにかへる みちはとちても | 有忠 |
| 1944 | あきをまたて おもひたちにし こけころも いまよりつゆを いかてほさまし | 後伏見院 |
| 1945 | おもひやる こけのころもの つゆかけて もとのなみたの そてやくちなむ | 永福門院 |
| 1946 | かたかたに をしむへきよを おもひすてて まことのみちに いるそかしこき | 為兼 |
| 1947 | きえぬへき つゆのいのちを をしむとて すてかたきよを けふそむきぬる | 公衡(西園寺実兼男) |
| 1948 | なからへて われもすむへき やとならは しはしとひとを いはましものを | 成範 |
| 1949 | あらましは さなからかはる みのはてに そむくはかりそ すゑとほりける | 為守女 |
| 1950 | わすられぬ むかしかたりも おしこめて つひにさてやの それそかなしき | 永福門院 |
| 1951 | はるけすて さてやとおもふ うらみのみ ふかきなけきに そへてかなしき | 内侍(永福門院) |
| 1952 | あはれその うきはてきかて ときのまも きみにさきたつ いのちともかな | 内侍(永福門院) |
| 1953 | なにことを まつことにてか すくさまし うきよをそむく みちなかりせは | 寂然 |
| 1954 | いまはわれ うきよをよそに すみそめの ゆふへのいろの あはれなるかな | 盛親 |
| 1955 | それとなき ゆふへのくもに ましりなは あはれたれかは わきてなかめむ | 堀河(待賢門院) |
| 1956 | いなつまの ひかりのほとか あきのたの なひくすゑはの つゆのいのちは | 寂然 |
| 1957 | のちのよと いへははるかに きこゆるを いているいきの たゆるまつほと | 俊恵 |
| 1958 | いへはうし しぬるわかれの のかれぬを おもひもいれぬ よのならひこそ | 慈円 |
| 1959 | けふといへは わかれしひとの なこりより あやめもつらき ものをこそおもへ | 後二条院 |
| 1960 | けふはなほ あやめのくさの うきねにも いととみとせの つゆそかわかぬ | 為世(御子左二条為氏男) |
| 1961 | あはれいつか それはむかしに なりにきと はかなきかすに ひとにいはれむ | 実重(三条公親男) |
| 1962 | いとへとも みはあやにくに つれなくて よそのあはれを ききつもるかな | 冷泉(花園院) |
| 1963 | つゆのみの きえはてぬとも ことのはに かけてもたれか おもひいつへき | 宣旨(郁芳門院) |
| 1964 | なにことも むかしかたりに なりゆけは はなもみしよの いろやかはれる | 兵衛(上西門院) |
| 1965 | かくはかり うつりゆくよの はななれと さくやとからは いろもかはらす | 堀河(二条太皇太后宮) |
| 1966 | ふるさとの のきはににほふ はなたにも ものうきいろに さきすさひつつ | 遊義門院 |
| 1967 | はなはなほ はるをもわくや ときしらぬ みのみものうき ころのなかめを | 伏見院 |
| 1968 | かなしさは わかまたしらぬ わかれにて こころもまとふ しののめのみち | 宗尊親王 |
| 1969 | おのつから こけのしたにも みるやとて こころをとめし はなををりつる | 祐任 |
| 1970 | けふみれは みやまのはなは さきにけり なけきそはるも かはらさりける | 全玄 |
| 1971 | つゆけさは きのふのままの なみたにて あきをかけたる そてのはるさめ | 伏見院 |
| 1972 | かきくれし あきのなみたの そのままに なほそてしをる けふのはるさめ | 覚助法親王 |
| 1973 | つゆきえむ いつのゆふへも たれかしらむ とふひとなしの よもきふのには | 実衡女 |
| 1974 | おもへかし さらてももろき そてのうへに つゆおきあまる あきのこころを | 隆博 |
| 1975 | まこととも おほえぬほとの はかなさは ゆめかとたにも とはれやはする | 光俊(葉室光親男) |
| 1976 | いまもなほ ゆめかとおもふ かなしさを たかまこととて おとろかすらむ | 宗成 |
| 1977 | つねならぬ うきよのさかの のへのつゆ きえにしあとを たつねてそとふ | 欣子内親王 |
| 1978 | ここのへに みしよのはるは おもひいつや かはらぬはなの いろにつけても | 実国 |
| 1979 | はるきても とはれさりける やまさとを はなさきなはと なにおもひけむ | 寂念 |
| 1980 | もろともに みしひともなき やまさとの はなさへうくて とはぬとをしれ | 仲正 |
| 1981 | ことししも あらぬかたにや したひまさる つらきわかれの はなとりのはる | 内侍(永福門院) |
| 1982 | はなのちり はるのくるらむ ゆくへたに しらぬなけきの もとそかなしき | 花園院 |
| 1983 | ゆめならて あふよもいまは しらつゆの おくとはわかれ ぬとはまたれて | 定家 |
| 1984 | むそちあまり よとせのふゆの なかきよに うきよのゆめを みはてつるかな | 為守 |
| 1985 | ひとのよは ひさしといふも ひとときの ゆめのうちにて さもほともなき | 為子(従二位) |
| 1986 | けふくれぬ あすありとても いくほとの あたなるよにそ うきもなくさむ | 右衛門督(永福門院) |
| 1987 | きくたひに よそのあはれと おもふこそ なきひとよりも はかなかりけれ | 慈快 |
| 1988 | ひこほしの あふてふあきは うたてわれ ひとにわかるる ときにそありける | 伏見院 |
| 1989 | わすられぬ なみたはおなし たもとにて はやななとせの あきもきにけり | 久良親王 |
| 1990 | あまのかは ほしあひのそらは かはらねと なれしくもゐの あきそこひしき | 備前(近衛院) |
| 1991 | すむとても たのみなきよと おもへとや くもかくれぬる ありあけのつき | 季経 |
| 1992 | あとしたふ かたみのひかす それたにも きのふのゆめに またうつりぬる | 為相 |
| 1993 | そのきはは たたゆめとのみ まとはれて さむるひかすに そふなこりかな | 頼氏(藤原頼広男) |
| 1994 | さくはなの はるをちきりし はかなさよ かせのこのはの ととまらぬよに | 為相 |
| 1995 | めにちかき ひとのあはれに おとろけは よのことわりそ さらにかなしき | 花園院 |
| 1996 | みしひとの きのふのけふり けふのくも たちもとまらぬ よにこそありけれ | 宗尊親王 |
| 1997 | のこりゐて おもふもかなし あはれなと もえしけふりに たちおくれけむ | 左京大夫(永陽門院) |
| 1998 | とほさかる なこりこそなほ かなしけれ うさはへたたる ひかすならねは | 為信 |
| 1999 | こひしさに しなはやとさへ おもふかな わたりかはにも あふせありやと | 長家 |
| 2000 | とほさかる ひかすにつけて かなしきは またもかへらぬ わかれなりけり | 範憲 |
| 2001 | うかりつる ふちのころもの かたみさへ わかるとなれは またそかなしき | 道意(西園寺実兼男) |
| 2002 | いかかせむ あとのあはれは とはすとも わかれしひとの ゆくへたつねよ | 寂然 |
| 2003 | なきひとを しのふおもひの なくさまは あとをもちたひ とひこそはせめ | 西行 |
| 2004 | あきかせの みにしむはかり かなしきは つまなきとこの ねさめなりけり | 成仲 |
| 2005 | おくつゆも ひとつはちすに むすへとや けふりもおなし のへにきゆらむ | 清空 |
| 2006 | かなしくも かかるうきめを みくまのの うらわのなみに みをしつめける | 右京大夫(建礼門院) |
| 2007 | おなしよと なほおもふこそ かなしけれ あるかあるにも あらぬこのよを | 右京大夫(建礼門院) |
| 2008 | さもこそは あらすなりぬる よにしあらめ みやこもたひの ここちさへする | 全性 |
| 2009 | わかれこし ひともこころや かよふらむ ゆめのたたちは いまもへたてす | 公賢 |
| 2010 | いかにしのひ いかにかなけく うしとみし ゆめはみとせの けふのなこりを | 隆教 |
| 2011 | さめかたき おなしつらさの ゆめなから みとせのけふも なほそおとろく | 邦長 |
| 2012 | これやさは かさねしそての うつりかを くゆるおもひの けふりなるらむ | 澄憲 |
| 2013 | はかなくて きえにしあきの なみたをも たまとそみかく はちすはのつゆ | 後宇多院 |
| 2014 | みかきなす ひかりもうれし はちすはの にこりにしまぬ つゆのしらたま | 公賢 |
| 2015 | ゆめにさへ たちもはなれす つゆきえし くさのかけより かよふおもかけ | 四条(安嘉門院) |
| 2016 | くやしくそ さらぬわかれに さきたちて しはしもひとに とほさかりぬる | 四条(安嘉門院) |
| 2017 | ますかかみ てにとりもちて みれとあかぬ きみにおくれて いけりともなし | 読人不知 |
| 2018 | わかために きよとおもひし ふちころも みにかへてこそ かなしかりけれ | 赤染衛門 |
| 2019 | わかために うすかりしかと すみそめの いろをはふかく あはれとそおもふ | 能宣 |
| 2020 | かへるへき ほととたのめし わかれこそ いまはかきりの たひにはありけれ | 赤染衛門 |
| 2021 | さやかなる つきもなみたに くもりつつ むかしみしよの ここちやはする | 五節(上東門院) |
| 2022 | きみにわか おくるるみちの かなしきは すくるつきひも はやきなりけり | 寂然/寂念 |
| 2023 | こをおもふ こころやゆきに まよふらむ やまのおくのみ ゆめにみえつつ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 2024 | うちもねす あらしのうへの たひまくら みやこのゆめに わくるこころは | 定家 |
| 2025 | おもひやる こけのしたたに かなしきに ふかくもゆきの なほうつむかな | 頓阿 |
| 2026 | このもとを むかしのかけと たのめとも なみたのあめに ぬれぬまそなき | 兵衛(上西門院) |
| 2027 | やまさとの なきかけしたふ いけみつに むなしきふねそ さしてものうき | 後伏見院 |
| 2028 | きえつつき おくれぬあきの あはれしらは さきたつこけの したやつゆけき | 伏見院 |
| 2029 | おくれても かついつまてと みをそおもふ つらにわかるる あきのかりかね | 伏見院 |
| 2030 | こころとめし かたみのいろも あはれなり ひとはふりにし やとのもみちは | 伏見院 |
| 2031 | おもへたた つゆのあきより しをれきて しくれにかかる そてのなみたを | 伏見院 |
| 2032 | おもひやる おいのなみたの おちそひて つゆもしくれも ほすひまそなき | 基忠(鷹司兼平男) |
| 2033 | ふかくさの つゆにかさねて しをれそふ うきよのさかの あきそかなしき | 為子(従二位) |
| 2034 | あたしいろに こころはそめし やまかせに おつるもみちの ほともなきよに | 伏見院 |
| 2035 | おもひやれ ふかきなみたの ひとしほも いろにいてたる すみそめのそて | 慈道法親王 |
| 2036 | いろかはる そてのなみたの かきくらし よそもしくるる かみなつきかな | 尊円法親王 |
| 2037 | わかれにし そのちりちりの このもとに のこるひとはも あらしふくなり | 右衛門督(永福門院) |
| 2038 | うらみても いまはかたみの あきのそら なみたにくれし みかつきのかけ | 顕親門院 |
| 2039 | ここのめくり はるはむかしに かはりきて おもかけかすむ けふのゆふくれ | 高弁 |
| 2040 | まちかねて なけくとつけよ みなひとに いつをいつとて いそかさるらむ | 善光寺阿弥陀如来 |
| 2041 | いそけひと みたのみふねの かよふよに のりおくれなは いつかわたらむ | 聖徳太子 |
| 2042 | ふたらくの うみをわたれる ものなれは みるめもさらに をしからぬかな | 粉川観音 |
| 2043 | ちりまかふ はなのにほひを さきたてて ひかりをのりの むしろにそしく | 西行 |
| 2044 | めうほふの たたひとつのみ ありけれは またふたつなし またみつもなし | 源信 |
| 2045 | こころをは みつのくるまに かけしかと ひとつそのりの ためしにはひく | 永縁 |
| 2046 | おとろかて けふもむなしく くれぬなり あはれうきみの いりあひのかね | 慶政 |
| 2047 | としふれと ゆくへもしらぬ たらちねよ こはいかにして たつねあひけむ | 経盛 |
| 2048 | いそちまて まよひきにける はかなさよ たたかりそめの くさのいほりに | 尊氏 |
| 2049 | われそうき いそちあまりの としふとも めくりあふへき わかれならねは | 尊円法親王 |
| 2050 | のりのあめは あまねくそそく ものなれと うるふくさきは おのかしなしな | 道長 |
| 2051 | くさくさの くさきのたねと おもひしを うるほすあめは ひとつなりけり | 行成 |
| 2052 | くさもきも たねはひとつを いかなれは ふたはみつはに めくみそめけむ | 行尊 |
| 2053 | なにめてて まよひもそする をみなへし にほふやとをは よきてゆかなむ | 為明 |
| 2054 | このよにて いりぬとみえし つきなれと わしのやまには すむとこそきけ | 輔親 |
| 2055 | みなひとを わたさむとおもふ ともつなの なかくもかなや よとのかはふね | 隆教 |
| 2056 | つはめなく のきはのゆふひ かけきえて やなきにあをき にはのはるかせ | 花園院 |
| 2057 | ここにのみ ありとやはみる いつくにも たへなるこゑに のりをこそきけ | 赤染衛門 |
| 2058 | おりたちて たのむとなれは あすかかは ふちもせになる ものとこそきけ | 忠度 |
| 2059 | のりまもる ちかひをふかく たてつれは すゑのよまても あせしとそおもふ | 赤染衛門 |
| 2060 | のりのため わかみをかへは をくるまの うきよにめくる みちやたえなむ | 覚実 |
| 2061 | たれもみな あたらいろかを なかむらし きのふもおなし はなとりのはる | 花園院 |
| 2062 | かりのとふ たかねのくもの ひとなひき つきいりかかる やまのはのまつ | 花園院 |
| 2063 | ふるさとと さたむるかたの なきときは いつくにゆくも いへちなりけり | 夢窓 |
| 2064 | すみなれし やとをははなに うかれきて かへるさしらぬ はるのたひひと | 実澄 |
| 2065 | くちのこる のりのことのは ふくかせは はかなきこけの したまてそゆく | 忠良 |
| 2066 | すすめこし ゑひのまくらの はるのゆめ みしよはやかて うつつなりけり | 慶政 |
| 2067 | まとのほかに したたるあめを きくなへに かへにそむける よはのともしひ | 花園院 |
| 2068 | なかきよの やみのうつつに まよふかな ゆめをゆめとも しらぬこころに | 寛胤法親王 |
| 2069 | さむるをも まつたのみたに なからまし なかきねふりの うちときかすは | 覚懐 |
| 2070 | むらくもの たえまのかけは いそけとも ふくるはおそき あきのよのつき | 覚実 |
| 2071 | そのままに たえまをしるは まことある みくにつたはる ことはなりけり | 後宇多院 |
| 2072 | わかうくる みのりはつねの ことのはの およはぬうへに とけるなるへし | 法守法親王 |
| 2073 | たつたかは もみちはなかる みよしのの よしののやまに さくらはなさく | 花園院 |
| 2074 | みるやいかに やまのこのはは おちつきて みちにあたれる とらのまたらを | 為基(京極為兼猶子) |
| 2075 | よもすから こころのゆくへ たつぬれは きのふのそらに とふとりのあと | 仏国 |
| 2076 | いつるとも いるともつきを おもはねは こころにかかる やまのはもなし | 夢窓 |
| 2077 | さゆるよの そらたかくすむ つきよりも おきそふしもの いろはすさまし | 花園院 |
| 2078 | さきそむる やとのさくらの ひともとよ はるのけしきに あきそしらるる | 内侍(永福門院) |
| 2079 | うきよかな よしののはなに はるのかせ しくるるそらに ありあけのつき | 慈円 |
| 2080 | こころさし ふかくくみてし ひろさはの なかれはすゑも たえしとそおもふ | 後宇多院 |
| 2081 | むかしより わしのたかねに すむつきの いらぬにまよふ ひとそかなしき | 慈円 |
| 2082 | みなひとの こころのうちは わしのやま たかねのつきの すみかなりけり | 道玄 |
| 2083 | よをてらす ひかりをいかて かかけまし けなはけぬへき のりのともしひ | 花園院 |
| 2084 | いたつらに おいをまつにそ なりぬへき ことしもかくて またくらしつつ | 慶政 |
| 2085 | さりともな ひかりはのこる よなりけり そらゆくつきひ のりのともしひ | 慈円 |
| 2086 | いにしへの なかれのすゑを うつしてや よかはのすきの しるしをもみる | 為家 |
| 2087 | そのままに なかれのすゑを うつしても なほいにしへの あとそゆかしき | 良覚 |
| 2088 | ありなから きえぬとみえて かなしきは けふのたむけの はなのしらゆき | 公守女 |
| 2089 | しつみこし うきみはいつか うかふへき ちかひのふねの のりにあはすは | 示証 |
| 2090 | のりのにはに ちらすもみちは やまひめの そむるもふかき えとやなるらむ | 為子(従二位) |
| 2091 | のりのには そらにかくこそ きこえけれ くものあなたに はなやちるらむ | 慶政 |
| 2092 | あさまたき つゆけきはなを をるほとは たましくにはに たまそちりける | 俊成(藤原俊忠男) |
| 2093 | ことうらに くちてすてたる あまをふね わかかたにひく なみもありけり | 道平 |
| 2094 | わたつうみを みなかたふけて あらふとも わかみのうちを いかてきよめむ | 教長 |
| 2095 | ふりにける ゆきのみやまは あともなし たれふみわけて みちをしるらむ | 法源 |
| 2096 | しるへする ゆきのみやまの けふにあひて ふるきあはれの いろをそへぬる | 為兼 |
| 2097 | にしをおもふ こころもおなし ゆめなれと なかきねふりは さめぬへきかな | 如空 |
| 2098 | こころをは かねてにしにそ おくりぬる わかみをさそへ やまのはのつき | 親子(従三位源) |
| 2099 | にほへとも しるひともなき さくらはな たたひとりみて あはれとそおもふ | 慶政 |
| 2100 | ふかくそめし こころのにほひ すてかねぬ まとひのまへの いろとみなから | 伏見院 |
| 2101 | くもりなく みかけるたまの うてなには ちりもゐかたき ものにそありける | 片野尼 |
| 2102 | はむにやたいに をさめおきてし ほけきやうも ゆめとのよりそ うつつにはこし | 慈円 |
| 2103 | よのなかに ものおもふひとの あるといふは われをたのまぬ ひとにそありける | 鴨御祖明神 |
| 2104 | みかさやま くもゐはるかに みゆれとも しむによのつきは ここにすむかな | 春日明神 |
| 2105 | よのなかに ひとのあらそひ なかりせは いかにこころの うれしからまし | 春日明神 |
| 2106 | われかくて みかさのやまを うかれなは あめのしたには たれかすむへき | 春日明神 |
| 2107 | はもやまや をひえのすきの みやまゐは あらしもさむし とふひともなし | 日吉地主権現 |
| 2108 | うろよりも むろにいりぬる みちなれは これそほとけの みもとなるへき | 熊野神 |
| 2109 | もとよりも ちりにましはる かみなれは つきのさはりも なにかくるしき | 熊野神 |
| 2110 | かみちやま うちとのみやの みやはしら みはくちぬとも すゑをはたてよ | 後伏見院 |
| 2111 | うこきなき くにつまもりの みやはしら たてしちかひは きみかためかも | 実兼 |
| 2112 | よとみしも またたちかへる いすすかは なかれのすゑは かみのまにまに | 光厳院 |
| 2113 | やはらくる ひかりをみつの たまかきに ほかよりもすむ あきのよのつき | 公賢 |
| 2114 | かみかせに みたれしちりも をさまりぬ あまてらすひの あきらけきよは | 花園院 |
| 2115 | とこやみを てらすみかけの かはらぬは いまもかしこき つきよみのかみ | 後宇多院 |
| 2116 | すむつきも いくとせふりぬ いすすかは とこよのなみの きよきなかれに | 氏之 |
| 2117 | をしほゐを けふわかみつに くみそめて みあへたむくる はるはきにけり | 家行 |
| 2118 | よよをへて くむともつきし ひさかたの あめよりうつす をしほゐのみつ | 延誠 |
| 2119 | ふちなみを みもすそかはに せきいれて ももえのまつに かけよとそおもふ | 西行 |
| 2120 | ふちなみも みもすそかはの すゑなれは しつえもかけよ まつのももえに | 俊成(藤原俊忠男) |
| 2121 | ふしておもひ あふきてたのむ かみちやま ふかきめくみを つかへてそまつ | 房継 |
| 2122 | かたそきの ちきはうちとに かはれとも ちかひはおなし いせのかみかせ | 朝棟 |
| 2123 | ひさかたの あまのいはふね こきよせし かみよのうらや いまのみあれの | 遠久 |
| 2124 | きみかため みくにうつりて きよきかはの なかれにすめる かものみつかき | 祐光 |
| 2125 | かたをかの いはねのこけち ふみならし うこきなきよを なほいのるかな | 惟久 |
| 2126 | あふきても たのみそなるる いにしへの かせをのこせる すみよしのまつ | 為兼 |
| 2127 | わかきみを まもらぬかみし なけれとも ちよのためしは すみよしのまつ | 国夏 |
| 2128 | おもひそめし ひとよのまつの たねしあれは かみのみやゐも ちよやかさねむ | 道平 |
| 2129 | みかさやま そのうちひとの かすなれは さしはなたすや かみはみるらむ | 肥後(京極前関白家) |
| 2130 | そのかみを おもへはわれも みかさやま さしてたのみを かけさらめやも | 長通 |
| 2131 | かすならて あめのしたには ふりぬれと なほたのまるる みかさやまかな | 頼輔 |
| 2132 | ふりにける かみよもとほし をしほやま おなしみとりの みねのまつはら | 為氏 |
| 2133 | しつみぬる みはこかくれの いはしみつ さてもなかれの よにしたえすは | 後伏見院 |
| 2134 | たのむまこと ふたつなけれは いはしみつ ひとつなかれに すむかとそおもふ | 光厳院 |
| 2135 | いのること わたくしにては いはしみつ にこりゆくよを すませとそおもふ | 光厳院 |
| 2136 | いままては まよはてつきを みかさやま あふくひかりよ すゑもへたつな | 公賢 |
| 2137 | わかこころ くもらねはこそ みかさやま おもひしままに つきはみるらめ | 祐春 |
| 2138 | かはらしな あとはむかしに なりぬとも かみのたむけの よよのことのは | 祐植 |
| 2139 | はるのひも ひかりことにや てらすらむ たまくしのはに かくるしらゆふ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 2140 | なくさやま とるやさかきの つきもせす かみわさしけき ひのくまのみや | 俊文 |
| 2141 | あきらけき たまくしのはの しろたへに したつえたまて ぬさかけてけり | 慈勝 |
| 2142 | うかやふき なきさにあとを ととめしそ かみよをうけし はしめなりける | 光房 |
| 2143 | かすかやま おなしあとにと いのりこし みちをはかみも わすれさりけり | 祐臣 |
| 2144 | よをいのる こころをかみや うけぬらし おいらくまてに われそつかふる | 教久 |
| 2145 | ひさかたの あまつひよしの かみまつり つきのかつらも ひかりそへけり | 尊円 |
| 2146 | うまれきて つかふることも かみかきに ちきりあるみと なほたのむかな | 成国(祝部) |
| 2147 | よよをへて あふくひよしの かみかきに こころのぬさを かけぬひそなき | 為相 |
| 2148 | ここのへに あまてるかみの かけうけて うつすかかみは いまもくもらし | 公賢 |
| 2149 | あまてらす みかけをうつす ますかかみ つたはれるよの くもりあらめや | 公蔭 |
| 2150 | かすかすに みにそふかけと てらしみよ みかくかかみに うつすこころを | 有長 |
| 2151 | あまくたる あらひとかみの しるしあれは よにたかきなは あらはれにけり | 師直 |
| 2152 | やまさくら ちりにひかりを やはらけて このよにさける はなにやあるらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 2153 | ひのもとは かみのみくにと ききしより いますかことく たのむとをしれ | 慈円 |
| 2154 | あまつかみ くにつやしろと わかれても まことをうくる みちはかはらし | 実兼 |
| 2155 | あまつかみ くにつやしろを いはひてそ わかあしはらの くにはをさまる | 後宇多院 |
| 2156 | かきりなき めくみをよもに しきしまの やまとしまねは いまさかゆなり | 為定(御子左二条為道男) |
| 2157 | まことにや まつはとかへり はなさくと きみにそひとの とはむとすらむ | 俊成(藤原俊忠男) |
| 2158 | おほよとの はまのまさこを きみかよの かすにとれとや なみもよすらむ | 俊頼(源経信男) |
| 2159 | きみかよの ほとはさためし ちとせとも いふはおろかに なりぬへけれは | 行宗 |
| 2160 | をののえを くたすやまひと かへりきて みるともきみか みよはかはらし | 頼政 |
| 2161 | みかさやま みねたちのほる あさひかけ そらにくもらぬ よろつよのはる | 公相 |
| 2162 | いはといてし ひかけはいまも くもらねは かしこきみよを さそてらすらむ | 実雄 |
| 2163 | わかきみの やまとしまねを いつるひは もろこしまても あふかさらめや | 師継 |
| 2164 | あめのした たれかはもれむ ひのことく やふしもわかぬ きみかめくみに | 宗秀(大江時秀男) |
| 2165 | ちよふへき かめのをやまの あきのつき くもらぬかけは きみかためかも | 俊定(藤原経俊男) |
| 2166 | くもりなく てらしのそめる きみかよは つきひとともに つきしとそおもふ | 実泰 |
| 2167 | くもりなく たかまのはらに いてしつき やほよろつよの かかみなりけり | 実夏 |
| 2168 | いのりこし くもゐのつきも あきらけき みよのひかりに みをてらすかな | 慈道法親王 |
| 2169 | あたらしく あくるとしをは ももとせの はるのはしめと うくひすそなく | 貫之 |
| 2170 | ときしもあれ はるのはしめに おひたてる まつはやちよの いろもそへなむ | 能宣 |
| 2171 | ゆきふれは はなさきにけり ひめこまつ ふたはなからや ちよをへぬらむ | 顕昭 |
| 2172 | はるはると とほきにほひは うめのはな かせにそへてそ つたふへらなる | 能宣 |
| 2173 | いろかへぬ まつもなになり よろつよに ときはににほふ はなもさけれは | 長家 |
| 2174 | あかてけふ かへるとおもへと はなさくら をるへきはるや つきせさりける | 中務(伊勢女) |
| 2175 | ちとせふる ためしをいまに はしめおきて はなのみゆきの はるそひさしき | 為氏 |
| 2176 | きみかよに あふもかひある いとさくら としのをなかく をりてかささむ | 実雄 |
| 2177 | さくらはな ちとせのはるの をりにあひて きみかときはの いろならはなむ | 通忠 |
| 2178 | けふよりは ちらてしにほへ さくらはな きみかちとせの はるをちきりて | 基平(近衛兼経男) |
| 2179 | きみかため うつしうゑける はななれは ちよのみゆきの はるもかきらし | 実雄 |
| 2180 | さくらはな あまたちとせの かさしとや けふのみゆきの はるにあふらむ | 少将内侍(後深草院) |
| 2181 | ゆくすゑを まつのみとりに ちきりおきて こたかくかかれ やとのふちなみ | 道教 |
| 2182 | ちよふへき くもゐのまつに みゆるかな ひとしほまさる はるのめくみは | 隆博 |
| 2183 | おほはらや かみよのまつの ふかみとり ちよもといのる すゑのはるけさ | 基忠(鷹司兼平男) |
| 2184 | もろひとの いはふことのは みるをりそ おいきにはなの さくここちする | 成仲 |
| 2185 | うつしううる やとのあるしも このはなも ともにおいせぬ あきそかさねむ | 右京大夫(建礼門院) |
| 2186 | かくしあらは ちとせのかすも そひぬらむ ふたたひみつる はこさきのまつ | 康資王母 |
| 2187 | かみちやま ももえのまつも さらにまた いくちよきみに ちきりおくらむ | 小宰相(土御門院) |
| 2188 | きみかよの しるしとこれを みやかはの きしのすきむら いろもかはらす | 良経(九条兼実男) |
| 2189 | ここのへの みかきにしける くれたけの おひそふかすは ちよのかすかも | 為定(御子左二条為道男) |
| 2190 | ももしきや おひそふたけの かすことに かはらぬちよの いろそみえける | 尊氏 |
| 2191 | はるあきの みやゐいろそふ ときにあひて よろつよちきる たけとこそみれ | 為子(従二位) |
| 2192 | あしたつは ちとせまてとや ちきるらむ かきらぬものを きみかよはひは | 永範 |
| 2193 | むかしいま ひろへるたまも かすかすに ひかりをそふる わかのうらなみ | 公相 |
| 2194 | ももとせに ととせおよはぬ こけのそて けふのこころや つつみかねぬる | 良経(九条兼実男) |
| 2195 | きみかため またななそちを たもちても あかすやいのる かみにつかへむ | 成茂 |
| 2196 | よをてらす ひたかのそまの みやきもり しけきみかけに いまかあふらし | 光俊(葉室光親男) |
| 2197 | みなかみに さためしすゑは たえもせす みもすそかはの ひとつなかれに | 花園院 |
| 2198 | あしはらや みたれしくにの かせをかへて たみのくさはも いまなひくなり | 花園院 |
| 2199 | くちなしの いろになかるる かはみつも とたひすむへき きみかみよかな | 公賢 |
| 2200 | みことのり みたれぬみちの さはりなく とよあしはらの くにそをさまる | 定忠 |
| 2201 | あひかたき みよにあふみの かかみやま くもりなしとは ひともみるらむ | 秀能(藤原秀宗男) |
| 2202 | みつきもの たえすそなふる あつまちの せたのなかはし おともととろに | 兼盛 |
| 2203 | みつきもの はこふふなせの かけはしに こまのひつめの おとそたえせぬ | 匡房 |
| 2204 | きみかよは しつのかとたに かるいねの たかくらやまに みちぬへきかな | 匡房 |
| 2205 | くもりなき きみかみよには あかねさす ひおきのさとも にきはひにけり | 匡房 |
| 2206 | こまつはら したゆくみつの すすしきに ちとせのかすを むすひつるかな | 匡房 |
| 2207 | ふくかせは えたもならさて よろつよと よはふこゑのみ おとたかのやま | 俊成(藤原俊忠男) |
| 2208 | くむひとの よはひもさこそ なかつきや なからのかはの きくのしたみつ | 隆博 |
| 2209 | きみかよの なかきためしに なかさはの いけのあやめも けふそひかるる | 俊光 |
| 2210 | すすしさを ますゐのしみつ むすふてに まつかよひくる よろつよのあき | 隆博 |
| 2211 | いはとあけし やたのかかみの やまかつら かけてうつしき あきらけきよは | 隆教 |
